元麻布春男の週刊PCホットライン

メインストリーム向けのデュアルコアNehalemを分析



 2010年の新年早々、Intelはメインストリーム向けプロセッサの新製品を大量に発表すると見られる。1月7日からラスベガスで開かれるCESに合わせたものであり、かねてから予告していた発表である。

 今回発表されたのは、32nmプロセスによるCPUコアと、45nmプロセスによるグラフィックスコア/メモリコントローラを1つのパッケージに封入した、グラフィックス機能内蔵型のCPU。デスクトップPC向けはClarkdale、モバイルPC向けはArrandaleという開発コード名で、それぞれ呼ばれてきたものだ。32nmプロセスで製造されるCPUコアは、Nehalemを継承するWestmere世代のものであり、製品として登場するのはこれが初となる。

 デスクトップPC向けに発表されたプロセッサは、Coreブランドが6製品、Pentiumブランドが1製品の計7製品。位置づけ的にはすでに販売されているCore i7/i5プロセッサの下位となる(表1)。従来のCore i7/i5プロセッサは、内蔵グラフィックスをサポートしないため、外付けグラフィックスが必須であり、どうしても市場の上位セグメントにしか受け入れられなかった。低価格化が進んでいることに加え、欧米と比べてもノートPCの比率が高いわが国では、従来のCore i7/Core i5プロセッサは、量販店で販売される大手ベンダ製のPCには、ほとんど採用されていないのが実情だ。

【表1】デスクトップ向けのCore iシリーズ(水色背景のものが今回発表の製品)


開発コード名ソケットCPUコア定格クロックTurboBoostL3キャッシュHyper-Threadingサポートメモリ(最大)グラフィックス(コアクロック)TDP備考
Core i7-975 *1BloomfieldLGA1366クワッド3.33GHzMax 3.60GHz8MBありDDR3-1066 *2なし130W
Core i7-965 *1BloomfieldLGA1366クワッド3.20GHzMax 3.46GHz8MBありDDR3-1066 *2なし130W
Core i7-960BloomfieldLGA1366クワッド3.20GHzMax 3.46GHz8MBありDDR3-1066なし130W
Core i7-950BloomfieldLGA1366クワッド3.06GHzMax 3.33GHz8MBありDDR3-1066なし130W
Core i7-940BloomfieldLGA1366クワッド2.93GHzMax 3.20GHz8MBありDDR3-1066なし130W
Core i7-920BloomfieldLGA1366クワッド2.66GHzMax 2.93GHz8MBありDDR3-1066なし130W
Core i7-870LynnfieldLGA1156クワッド2.93GHzMax 3.60GHz8MBありDDR3-1333なし95W
Core i7-860LynnfieldLGA1156クワッド2.80GHzMax 3.46GHz8MBありDDR3-1333なし95W
Core i5-750LynnfieldLGA1156クワッド2.66GHzMax 3.20GHz8MBなしDDR3-1333なし95W
Core i5-670ClarkdaleLGA1156デュアル3.46GHzMax 3.73GHz4MBありDDR3-1333あり(733MHz)73W
Core i5-661ClarkdaleLGA1156デュアル3.33GHzMax 3.60GHz4MBありDDR3-1333あり(900MHz)87WNo vPro
Core i5-660ClarkdaleLGA1156デュアル3.33GHzMax 3.60GHz4MBありDDR3-1333あり(733MHz)73W
Core i5-650ClarkdaleLGA1156デュアル3.20GHzMax 3.46GHz4MBありDDR3-1333あり(733MHz)73W
Core i3-540ClarkdaleLGA1156デュアル3.06GHzなし4MBありDDR3-1333あり(733MHz)73W
Core i3-530ClarkdaleLGA1156デュアル2.93GHzなし4MBありDDR3-1333あり(733MHz)73W
Pentium G6950ClarkdaleLGA1156デュアル2.80GHzなし3MBなしDDR3-1066あり(533MHz)73W ?No AES-NI
*1 Extreme Edition
*2 非公式にDDR3-1333をサポート

 今回、プロセッサにグラフィックス機能が内蔵されたことで、メインストリームへの展開が可能となる。表1を見ても、真ん中から下をカバーする感じであり、量販店で販売されるPCにもCore i5やCore i3を搭載した製品が増えるだろう。

 また、新しい設計のプロセッサを、このタイミングでPentiumブランド製品にも投入してきたことも異例だ。現在Intelのプロセッサブランドは、上からCore、Pentium、Celeronとなっている(Atomを除くデスクトップPC向け製品の場合)。通常、新しいデザインのプロセッサは最上位ブランドに投入され、順に下位へと降りてくるものだが、いきなりのPentiumブランドである。後述のモバイル向けも含め、一挙に18製品を投入してきたことと合わせ、32nmプロセスが順調に立ち上がっていることをうかがわせる。また、立ち上がりに問題なければ、微細なプロセスの方が当然コスト競争力は高い。早い時期にCeleronまでClarkdale化される可能性もある。

 この表1を見て思うのは、Intelのプロセッサはずいぶん分かりにくくなったなぁ、ということだ。同じCore i7ブランドでもソケットレベルの互換性がなかったり、Core i5だからといってグラフィックス機能を内蔵しているとも限らない。Hyper-Threadingの有無やコア数でさえ、ブランドによる分類と必ずしも一致しない。こうした混乱しやすいブランディングでは、上位の製品が売れにくくなることが多いのだが、そうした心配はしなかったのだろうか。

 さて、このClarkdaleだが、すでに述べたように32nmプロセスによるCPUコアと、45nmプロセスによるグラフィックス/メモリコントローラーで構成される。CPUコアは、新しい製造プロセスを主眼としたTick世代だけに、基本的にはNehalemマイクロアーキテクチャを32nmに縮小したもの。Westmereという名前があるものの、Intel自身が「Nehalem for all(みんなのNehalem)」と呼んでいるほどだ。

 とはいえ、WestmereコアはNehalemと全く同じというわけではない。新しい命令セットとして、WestmereコアにはAES-NIが追加されている。Advanced Encryption Standard New Instructionの頭文字をとったAES-NIは、米連邦政府が2001年に採用した暗号技術の標準であるAESを処理するための6つの命令で構成される。すでにWindows 7がAES-NIに対応しており、AESに関連する処理が高速化される。

 一方、別ダイとはいえ、IntelのPC向けプロセッサとして初めて内蔵されたグラフィックス機能だが、GMA HD(Graphics Media Accelerator High Definition)という名前が与えられている。同社がこれまでチップセットに統合してきたGMA X3100(G965)やGMA X4500HD(G45)の改良型だが、名称から数字がなくなった。性能上の改良点は実行ユニットの数が10から12へ増えたこと、コアクロックが400MHzから733MHzへ引き上げられたことだ(いずれも対G45比)。さらにコアクロックを900MHzまで引き上げたCore i5-661もコンシューマ向けに用意される。ほかにも従来はシングルストリームしかサポートできなかったBlu-ray再生が、デュアルストリーム再生が可能になる、HDCP付きのデジタル出力を2系統サポート可能、HDMI経由での音声出力チャンネルの増加、といった強化が加えられた。

 こうした特徴を持つClarkdaleプロセッサに組み合わせられるのはH57、H55、Q57のチップセットだ。すでに提供されているP55チップセットと同じ、Ibex Peakという開発コード名で、P55との最大の違いはClarkdaleが内蔵するグラフィックスコアのディスプレイ出力を受け持つことができることである。3種の主要な違いは、vProに対応するのがQ57、RAIDをサポートしないのがH55、サポートするのがH57とQ57だ。

 なお、P55とClarkdaleを組み合わせることも可能(BIOSの対応が必要になることもある)だが、その場合、内蔵するグラフィックス機能を用いることができない。逆に、H57、H55、Q57チップセットとLynnfieldを組み合わせた場合、外付けグラフィックスカードが必須となる。それもあって、H57、H55、Q57ベースのマザーボードでは、多くの場合PCI Express x16スロットがサポートされる。

●TDPを抑えたArrandale

 モバイルPC向けのArrandaleも、基本的な特徴はClarkdaleと同じ。モバイルPCでは、TDPによって筐体が変わってくるので、プロセッサーナンバー別ではなくTDP別にまとめたのが表2だ。これを見れば、従来のCore i7プロセッサ(Clarksfield)が、ゲーミングノートPC、AVノートPC向け、今回発表された通常電圧版(TDP 35W)がメインストリームノートPC向け、低電圧版(TDP 25W)がウルトラスリムノートPC向け、超低電圧版(TDP18W)がモバイルノートPC向けであることが分かる(最近のLV/LM、ULV/UMプロセッサでは、必ずしも動作電圧が異なるとは限らないが、従来からの表記に従った)。

【表2】モバイル向けCore iシリーズ(同)


開発コード名パッケージCPUコア定格クロックTurboBoostL3キャッシュHyper-Threadingサポ^−トメモリ(最大)グラフィックス(コアクロック/Turbo)TDP
Core i7-920XM *1ClarksfieldPGAクワッド2.0GHzMax 3.20GHz8MBありDDR3-1333なし55W
Core i7-820QMClarksfieldPGAクワッド1.73GHzMax 3.06GHz8MBありDDR3-1333なし45W
Core i7-720QMClarksfieldPGAクワッド1.6GHzMax 2.80GHz6MBありDDR3-1333なし45W
通常電圧版
Core i7-620MArrandalePGA/BGAデュアル2.66GHzMax 3.33GHz4MBありDDR3-1066あり(500MHz/766MHz)35W
Core i5-540MArrandalePGA/BGAデュアル2.53GHzMax 3.06GHz3MBありDDR3-1066あり(500MHz/766MHz)35W
Core i5-520MArrandalePGA/BGAデュアル2.40GHzMax 2.93GHz3MBありDDR3-1066あり(500MHz/766MHz)35W
Core i5-430MArrandalePGA/BGAデュアル2.26GHzMax 2.53GHz3MBありDDR3-1066あり(500MHz/766MHz)35W
Core i3-350MArrandalePGA/BGAデュアル2.26GHzなし3MBありDDR3-1066あり(500MHz/667MHz)35W
Core i3-330MArrandalePGA/BGAデュアル2.13GHzなし3MBありDDR3-1066あり(500MHz/667MHz)35W
低電圧版
Core i7-640LMArrandaleBGAデュアル2.13GHzMax 2.93GHz4MBありDDR3-1066あり(266MHz/566MHz)25W
Core i7-620LMArrandaleBGAデュアル2.0GHzMax 2.8GHz4MBありDDR3-1066あり(266MHz/566MHz)25W
超低電圧版
Core i7-640UMArrandaleBGAデュアル1.20GHzMax 2.26GHz4MBありDDR3-800あり(166MHz/500MHz)18W
Core i7-620UMArrandaleBGAデュアル1.06GHzMax 2.13GHz4MBありDDR3-800あり(166MHz/500MHz)18W
Core i5-520UMArrandaleBGAデュアル1.06GHzMax 1.86GHz3MBありDDR3-800あり(166MHz/500MHz)18W
*1 Extreme Edition

 1つ前のCore 2世代では、通常電圧版のTDPは25Wあるいは35W、低電圧版は18W、超低電圧版はデュアルコアで10W、シングルコアで5.5Wほどだったから、数字だけを見ればTDPが増加しているように見える。だがArrandaleでは、通常12W程度のTDPであるモバイルPC向けグラフィックス内蔵型North Bridgeチップの機能をほぼ内蔵している(グラフィックスコアおよびメモリコントローラ)。それを踏まえれば、システムTDPとしては若干減っているわけだ(同じことはデスクトップPC向けのClarkdaleにも当てはまる)。ひょっとすると、これを実現するにはCPUコアの製造に、45nmプロセスではなく32nmプロセスを用いる必要があったのかもしれない。そうは言っても、従来のプロセッサ/チップセットとは熱設計が異なるから、PCベンダには新たな取り組みが、特にUMプロセッサを用いたモバイルノートPCに対しては、求められるだろう。

 省電力機能が拡張されているという違いはあるものの、プロセッサとしての基本的な機能は、上述したClarkdaleとほぼ同じ。1つだけ大きく違うのは、内蔵するグラフィックス機能が、CPUコアのTurbo Boostと同様の可変クロック機能を備えることだ(Clarkdaleにこの機能はない)。

 Intel HD Graphics with Dynamic Frequencyと呼ばれるこの機能は、熱と消費電力に余裕がある場合、必要に応じてグラフィックスコアの動作クロックを引き上げる。CPUコアのTurbo Boostと連携して動作するため、その時々のアプリケーションの要求に応じて、CPUクロックとグラフィックスコアクロックがダイナミックに変化することになる。

 熱と消費電力の枠内でクロックを引き上げる技術は、モバイルPCにおいてもClarksfieldでTurbo Boostが導入されている。が、ClarksfieldはモバイルPCの中でもデスクトップ代替のような大型のノートPC向けであったため、冷却の問題はそれほど大きくなかった。

 Turbo BoostやHD Graphics with Dynamic Frequencyが、より小型のノートPCでも使われるようになると、PCベンダの熱設計によって生じる性能のバラつきが大きくなったり、同じ性能でも冷却ファンのノイズレベルに差が生じる可能性がある。熱設計の巧拙が問われるという点で、ArrandaleはPCベンダにとってチャレンジとなるかもしれない。特に超低電圧版のUMプロセッサを採用した小型のモバイルPCで、どれくらいの性能を引き出せるかは、PCベンダの腕の見せ所といったところだろう。

 Arrandaleで使われるモバイルPC向けのチップセットは、QM57、QS57、HM57、HM55の4種類HM57とHM55の関係は、デスクトップPC向けのH57とH55の関係とほぼ同じ。QM57とQS57はvProをサポートするが、QS57は小型のパッケージを採用しているものと思われる。

 このArrandaleを用いたモバイルプラットフォームのコード名はCalpellaと呼ばれるが、ここで大きく変わることは、プラットフォームのブランドとして「Centrino」が使われなくなることだ。Centrinoは無線LANモジュールのブランド名となり、3x3 MIMOをサポートしたIntel Centrino Ultimate-N6300、2×2 MIMOをサポートしたIntel Centrino Advanced-N 6200、そして1×2 MIMOをサポートするIntel Centrino 1000の3本立てになる。WiMAX付きはIntel Centrino Advanced-N+WiMAX 6250となり、Montevina世代では提供していなかった2×2 MIMOがWiFiの主流となる(WiMAXは1×2 MIMOのまま)。現在Intelはアクセスポイント(親機)側のチップセットを手がけておらず、こうした部分についてイニシアチブを握るのが難しいのかもしれない。

●マザーボードも同時発表

 この発表に合わせて、Intelは自社の製品としてClarkdaleに対応したマザーボード(Desktop Board)5種を発表した。5種のうちATXは1製品のみで、3製品がmicroATX、1製品がMini-ITXとなっており、Clarkdale世代の主流はmicroATXといった印象だ。ここではH55チップセットをベースにしたDH55TCマザーボードを用いて、Core i5-661(Clarkdale)の簡単なベンチマークテストを行なってみた。

テストに用いたIntel Desktopboard DH55TCDH55TCのI/Oパネル部。アナログVGAに加えてDVI-DとHDMIを備える。PS/2ポートはマウスとキーボード兼用になっている

 DH55TCは、microATXフォームファクタのマザーボードで、DDR3-1333に対応した4本のメモリスロット、PCI Express x16を含む4本の拡張スロット、2系統のデジタルディスプレイ出力(DVI-D+HDMI)、6つのSATAポート(3Gbps)、Gigabit Eterhetnなどを備える。おそらく最も手軽に使える(買える)Clarkdale対応マザーボードの1つだと思われる。テスト時の構成については表3にまとめておいた。

【表3】今回テストした環境

CPUIntel Core i5-661
MotherboardIntel DH55TC
Memory2GB DDR3-1333×2
ChipsetIntel H55 Express
Graphics内蔵GMA HD(900MHz)
HDDBarracuda 7200.12 320GB
OSWindows 7 Ultimate 32bit

 テストに際しては、2つの比較を行なった。1つは内蔵グラフィックス(GMA HD)の性能を確認するため、GMA HDに代わり現在市場で最も安価な外付けグラフィックスカードであるRadeon HD 4350(約3,000円)を使っての比較。もう1つはこのRadeon HD 4350をそのまま使い、こんどはプロセッサをクワッドコアのCore i5-750(Lynnfield)に差し替えての比較である。

 Core i5-750は、Core i5-661に比べて動作クロックが低い(3.33GHz対2.66GHz)ものの、クワッドコアという利点がある。ただし、i5-750はHyper-Threadingをサポートしていないため、両者とも同時処理可能なスレッド数は4だ。こうした違いが、ベンチマーク結果にどう反映するのか興味がもたれる。

表3の構成でのWindowsエクスペリエンスインデックス

 その結果は表4にまとめておいた。まずお断りしておかなければならないのは、CrystalMark 2004R3の実行時、Radeon HD 4350を用いるとOpenGLのテスト(OGL)において、画面に激しくフリッカーが生じたことだ。おそらくはディスプレイドライバのバグに起因すると思われる問題のため、CrystalMark 2004R3におけるOGLのスコアと、それを加算したMarkの数値は信頼性に欠ける。表に載せたように300前後の数字が出るときもあれば、9,000前後のスコアになることもあった。したがって、この2つの項目に関してはとりあえず無視して欲しい。

【表4】ベンチマーク結果

CPUCore i5-661Core i5-661Core i5-750
GPUGMA HD(内蔵)RADEON HD 4350RADEON HD 4350
CrystalMark 2004R3
Mark144420142299166810
ALU428124232651142
FPU418594313148380
MEM310723201143565
HDD114721067110716
GDI121321118710207
D2D218827262457
OGL2885247 *343 *
* フリッカーがひどい
PCMark05 v120
PCMark810474847337
CPU938294339521
Memory7749781610360
Graphics386533003219
HDD707763556712
PCMarkVantage(1,024×768)
PCMark714071446569
Memories400736603829
TV and Movies458242164899
Gaming409240224197
Music660066436532
Communications10353103886235
Productivity553555565704
HDD445744864395
3DMark06 v110
3DMark Score203219111906
3DMark Vantage
[Performance] Score460446444
GPU SCORE349338336
CPU SCORE9290999012924
[Entry] Score536242694309
GPU SCORE469235823525
CPU SCORE93811005412918
CINEBENCH R10
OpenGL Standard257332953136
1 CPU Rendering393539063515
4 CPU Rendering8832905811259
FF Bench3
Low522891449040
High360648424789

 まずGMA HDとRadeon HD 4350との比較だが、どうもこの2つは性能的にはほぼ同等のようだ。FF Bench3やCINEBENCH等で、Radeon HD 4350が明らかに上回ることで明らかなように、アプリケーションへの最適化という点ではRadeonに1日の長があるものの、それ以外のテストでは拮抗しているものが多い(もちろんGMA HDが上回るものもある)。かつてはIntelのチップセット内蔵グラフィックスというと、外付けグラフィックスカードのローエンドにも全く歯が立たなかったものだが、ついにローエンドには追いついたようだ。前世代(GMA X4500HD)からコアクロックを2倍以上に引き上げたのがかなり効いているのではないかと思われる。もしClarkdaleのシステムにグラフィックスカードを追加するのであれば、メインストリームクラス以上にしないと投資効果に見合わないだろう。

 この構成のままプロセッサをCore i5-750に換装して同じテストを実行してみた。全体的にみて、クワッドコアのCore i5-750には不利な結果になったものが多い。比較的新しいテスト(PCMark Vantage、3DMark Vantage)は、古いものよりスレッド化が進んでおり、Core i5-750の4コアの優位性が発揮されているが、コア数が2倍、ということから期待するような差ではない。3DMark Vantageでも、テストが同時にディスパッチするスレッド数が2~3程度であることを考えれば、うなずける結果ではある。

 Core i5-661の優位性が際だつのがPCMark VantageのCommunicationsのスコアだ。このテストにはAESによる暗号化と復号化が含まれており、AES-NIの効果がハッキリと現れている。PCMark Vantage自体は2007年にリリースされたもので、PCMark VantageがAES-NIに対応しているわけではない。が、PCMark Vantageが利用するWindows側のライブラリがAES-NIをサポートしているため、こうした結果となった。ハードディスクやファイルシステムの暗号化、ネットワーク接続の暗号化など、これからますますAESが活用されるようになると、AES-NIの重要性も増すものと考えられる。

 最近も48コアの試作チップを発表するなど、口を開けばメニーコアを力説するIntelだが、その同社がメインストリーム向けにリリースしてきたのはClarkdaleとArrandaleというデュアルコアプロセッサである。そして、テストの結果を見ても、想像以上にデュアルコアプロセッサが健闘している。おそらく今のソフトウェア環境を前提にする限り、大半のユーザーにとってデュアルコアは必要十分なものであり、Intelもそれを理解している。

 2010年、Microsoftはいよいよ64bit化されたOfficeをリリースする。昨年リリースされたWindows 7は、64bit環境を普及させるきっかけになると期待されている。しかし、AMDが初のx64プロセッサとなるOpteronを発表したのは2003年4月のことだ。それからOfficeが64bit化されるのに7年を要したことになる。それくらいソフトウェアの更新には時間がかかる。現状のメインストリームがデュアルコアだったとしても、メニーコアを唱えソフトウェアの更新を今から促しておかねば、ソフトウェアがマルチコア/メニーコアに対応することなど、いつになるか分からない、ということなのである。

 というわけで、デュアルコアのClarkdaleとArrandaleだが、大半のユーザーにとって十分な性能を提供してくれるハズだ。動作クロックが高いことも、あまりスレッド化が進んでいない既存のソフトウェア環境には適しているだろう。メインストリーム向けを標榜するだけに、価格的にもこなれている。

 本稿執筆時点で円建ての価格は分かっていないが、デスクトップPC向けで最も高価なCore i5-670が284ドル、最も安価なCore i3-530が113ドルとされている。価格は分からないが、さらに下位のPentium G6950なら100ドルを切る可能性が高い。おそらく大手ベンダ製のPCにも大量に採用されるだろう。普通のユーザーが、普通に使うPCに使われるNehalemに違いない。