■本城網彦のネットブック生活研究所■
Inspiron Mini 10v |
5日発売になったばかりのデル「Inspiron Mini 10v」(以下Mini 10v)が届いた。先行販売している「Inspiron Mini 10」(同Mini 10)のAtom N270版と言えばわかりやすいだろうか。Mini 10の廉価版で、Mini 9の後継にあたる製品だ。使用感やMini 10との比較を中心としてレポートしたい。
●Mini 10vの仕様
Mini 10vは、Mini 10と同じく名前の通り液晶パネルのサイズが10.1型となっている。解像度は1,024×576ドット。最近10.1型に多い16:9のアスペクト比で、縦方向が若干短い。表面は反射のあるグレアパネル。背後の照明などはそれなりに映り込む。
他の部分は、Atom N270(1.6GHz/533MHz FSB/512K Cache) 、Intel 945GSE Expressチップセット、内蔵グラフィックはGMA950、メモリ1GB、ミニD-Sub15ピン、音声入出力、USB 2.0×3、5in1カードリーダ、有効画素数130万画素のWebカメラ、Windows XP Home Edition SP3……ここまでがBTOモデルの共通仕様。Atom N270を搭載したネットブックによく見られるスペックと言える。
BTOで選べるのは、HDD 160GB/SSD 8GB(MLC)/16GB(MLC)、3セルもしくは6セルリチウムイオンバッテリ、IEEE 802.11b/gもしくはIEEE 802.11a/b/g/n対応無線LAN、Bluetooth V2.1+EDRの有無、そしてカラーバリエーションがパール・ホワイト/オブシディアン・ブラック/プリティ・ピンク/チェリー・レッド/アイス・ブルー/ジェイド・グリーン/パッション・パープルの7色だ。
今回手元に届いたのは、SSD 16GB、IEEE 802.11b/g、Bluetooth V2.1+EDRを搭載した「アイス・ブルー」モデル。同社のサイトへアクセスして調べたところ、SSDが選択できず、HDD 160GBの構成にして47,330円(販売価格59,000円、割引額11,670円)だった。ちなみにOSを「Ubuntu 8.04(DELLカスタマイズ版)」にすると-3,150円。無線LANを「IEEE 802.11a/b/g/n」にすると+3,150円、6セルバッテリだと+4,200円。またカラーバリエーションは「オブシディアン・ブラック以外は+2,100円」。意外にWindows XPとLinuxの差はそれほど大きくない。逆にこのカラーバリエーションでこんなにかかるの……と思ってしまう。
なお、店頭モデルは固定仕様で、先の共通仕様に加え、160GB HDD、IEEE 802.11b/g、Bluetooth V2.1+EDRで価格は44,800円。スペック的にはちょうど今回届いたマシンのSDDがHDDとなったモデルとなる。
Eee PC 901-Xとのサイズ比較。パネルサイズの違いがそのまま現れている。ただ持ち上げた時、Mini 10vの方が軽く感じる(Eee PC 901-Xは約1.1kg)。 | Eee PC 901-Xとの液晶パネル比較。明るさは断然IMini 10v。しかし縦が短い分、情報量はEee PC 901-Xに負けている。このパネルも赤が弱く色温度が高い(青い)。 |
大きな特徴としては、Atom N270を搭載したネットブックで完全にファンレスという点。これは珍しく、電源ONにしても全く音がせず、一瞬動いているのか不安になるほど。またデザインは、一見Atom Zシリーズ搭載のMini 10と区別つかないものの、USBの配置が違ったり、HDMIがミニD-Sub15ピンになったりしている。スピーカーはボディーの裏にステレオで左右2つ配置。これは同じだ。音量は十分とは言えないまでも、最大時にはそこそこのボリュームとなる。ただ音質はサイズの関係もあり、あまり期待しない方が良い。
更に今回はSSD搭載機のため、振動も皆無だ。日頃それなりに音や振動のあるPCで作業しているため、これだけノイズも振動も無いと逆に大丈夫か? と思ってしまうほどだ。熱も試した範囲ではボディは冷たい。うまく冷却が出来ているのだろう。カラーバリエーションの「アイス・ブルー」は写真でうまく撮れなかったが、非常に綺麗だ。他の色も含め、ぜひ量販店などで実機をご覧頂きたい。
●Inspiron Mini 10との違い
Atom Zシリーズを搭載したMini 10との違いは、前述のようにCPUやチップセットなど基本的なアーキテクチャ以外に、ビデオ出力がHDMIかミニD-Sub15ピンかも挙げられる。Mini 10のレビューで指摘した「ビジネス用途で使う場合、プロジェクタなどに接続するにはHDMIは不便」と書いたが、この点Mini 10vでミニD-Sub15ピン出力となり問題はなくなっている。
いずれにしてもMini 10vは、Atom N270+Intel 945GSE ExpressチップセットのMini 9の液晶サイズを大型化した製品に見える。Mini 10は、Atom Zシリーズ+Intelシステムコントローラ Hub US15Wの「Inspiron Mini 12」の液晶小型化版……と言うのがアーキテクチャ的に見た違いとなる。結果的に同じメーカーから10型のパネルを搭載してデザインもそっくりの異なったアーキテクチャのネットブック2台が共存し、ユーザーから見ると少しわかりにくい構図になっている。
実はこの違いによって発生している最大の問題がある。それは「Mini 10vは液晶ディスプレイに1,366×768ドットのタイプは選べない」のだ。一方Mini 10はBTO時に1,366×768ドットを+3,150円で選択できる。縦方向に情報量が少ない解像度なだけに、選べるか選べないかの差は大きい。
Inspiron Mini 10/GMA 500とInspiron Mini 10v/GMA950のベンチマークテストを比較すると以下のようになる。ただしストレージに関してはHDDとSSDなので、チップセットの性能差ではない。
HDBench結果(左がMini 10、右がMini 10v)。CPUとメモリに関してはほぼ同じ、ストレージはHDDかSSDかの差だ。グラフィック性能の差が一番大きい |
CrystalDiskMark(同)Mini 10とMini 10vとの性能比較には直接関係無く、HDD vs SDD(MLC)の比較となる。全てにおいてSSDの方が勝っている。問題は容量だ |
ご覧のように、CPUやメモリに関しては似たり寄ったり。グラフィック性能だけが大きく違う事がわかる。デスクトップと違いノートPCはグラフィックエンジンを交換できないため、この差はどうにもならない。GMA 500と比較してパフォーマンスがいいGMA 950でも1,366×768ドットが使えればと思うユーザーは多いはずだ。Mini 10vは廉価版という位置づけだからしょうがないとも言えるが、残念な仕様だ。
ストレージに関しては、MLCタイプとは言え、Mini 10vに搭載しているSSDが、全ての項目について勝っており、操作中プチフリーズも無く快適に使えている。
1,024×576ドットの10型液晶パネル搭載ネットブックとしては価格も手ごろでデザインも良く、しかもファンレス。重量も1kgちょっとと、非常にバランス良く満足度の高い商品に仕上がっている。ただ、Mini 10で選べる1,366×768ドットのパネルが、Mini 10vで選択肢に無いのは、とても残念だ。これを知ってしまうと逆にテンション(評価)が下がってしまう。いろいろ政治的に難しい問題もあるのだろうが、是非BTOで選択可能にして頂きたい。