大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

オンキヨー、スレートPCやゲーミングPCの投入計画を公表
~2010年は倍増となる年間30万台を出荷、周辺機器事業にも本腰



 オンキヨーは、2010年度におけるPCの出荷計画を、前年比2倍となる年間30万台においた。オンキヨーの常務取締役であり、同社PCカンパニー社長の菅正雄氏が明らかにした。また、独自に開発した薄型スピーカーを搭載したオールインワン型デスクトップPC「E7シリーズ」の販売が予想を上回る出足をみせ、7月から増産を開始することも明らかにした。さらに、同社では、すでにスレートPCやゲーミングPCの製品化に向けて開発をスタートしているほか、PC周辺機器事業を強化することなどを明らかにした。今後、オールインワン、パーソナルモバイル、スマートトップという3つの領域から、オンキヨーのPC事業を加速することになる。

 6月3日から発売したオールインワン型デスクトップPC「E7シリーズ」は、同社が開発した幅45mm、長さ226mm、厚さ10mmのスリム型プレミアムスピーカーを採用。PCで音楽を楽しめる環境を実現しているのが特徴だ。

オンキヨー 常務取締役兼PCカンパニー社長の菅正雄氏オンキヨーPCカンパニー量販営業部・砂長潔部長

 「新開発のスピーカーだけでなく、PCとしては世界で初めて、DTSが提供するオーディオソリューション『DTS Premium Suite』を採用。またiPodを直接差し込めるiPod Dockを用意し、PCを立ち上げなくても高音質で音楽再生ができる環境を実現している。オンキヨーが持つノウハウを生かし、音にもこだわった製品に仕上がった。オンキヨーの優位性を発揮できるオールインワンPCであり、それが予想を上回る評価を受けている」と、菅カンパニー社長は語る。

 また、オンキヨーPCカンパニー量販営業部・砂長潔部長は、「音に関するユニット開発を自前でできるのはオンキヨーだけ。音への関心が高まる中で、他社にリードした提案ができたと自負している」と語る。

 6月3日から都内の量販店を中心に展示を開始。7月3日からOffice 2010搭載モデルを追加し、販売に弾みをつける。

 「台湾のODMを活用して生産しているが、専用ラインを1ライン増やして、2ライン体制で生産できるようにした。当初計画を倍増させ、量販店や直販を通じた販売を加速させていく」(菅カンパニー社長)という。

販売好調の「E7シリーズ」を前にする菅カンパニー社長(右)と砂長部長増産を決定したオールインワン型デスクトップPC「E7」シリーズ

 こうした新製品の好調ぶりも貢献し、同社では、2010年度におけるPCの販売台数を、前年度の約15万台からほぼ倍増となる約27万台に拡大。今後、事業を拡大する周辺機器の出荷台数を含めて年間30万台の出荷計画を目指すことを明らかにした。

 「まだまだオンキヨーの存在感が低い。30万台の出荷規模に到達することで、国内市場でようやく十指のなかに入ることができる。2010年度は、まずは、そこへの到達を目指す」とする。

 重点カテゴリーとしては、オールインワン、パーソナルモバイルをあげるほか、スマートトップと呼ばれる新たな領域の市場を創出する製品展開も目指す。

 オールインワンでは、出足が好調なE7シリーズに加えて、下期に向けてラインアップを強化していく考えで、前年比5倍の出荷台数を目指すことになる。

 「オールインワンPCにおける強化ポイントは、オンキヨーの強みが発揮できる音の追求。最先端のスピーカー技術を投入することで、AVセンターに匹敵する音を、PCでも実現したいと考えている。2009年から2010年にかけては、地デジチューナーの自社開発などにより、TV視聴を重視した提案を行なってきたが、これをさらに一歩進めて、映像と音の強みが、オンキヨーのオールインワンPCであるというイメージを作り上げたい」とする。

 国内PCメーカーのオールインモデルは市場想定価格で20万円を切る価格帯が中心となっているが、オンキヨーではそのクラスをハイエンドと位置づけ、15万円を切るミッドレンジ、10万円を切るローエンドといった品揃えも強化する考えだという。

 さらに、デスクトップPCではスリムタワー型のゲーミングPCの新規投入も計画している。2010年9月にも製品化する計画であり、「最新のグラフィック性能を搭載し、2010年中に発売が予定されている「ファイナルファンタジーXIV」にも対応した製品にしていきたい。オンキヨーの新たな挑戦領域になっていく」としている。

 なお、3Dパソコンについては、「準備をしているが具体的な製品化の時期などは未定。コンテンツなどが出揃い、3Dに対する機運が高まってきたところで投入していきたい」と語った。

パーソナルモバイルのカテゴリーに位置づけられるBXシリーズ

 パーソナルモバイルにおいては、2009年12月に発表した4.8型ポケットサイズのBXシリーズ、回転式タッチパネルを搭載したNXシリーズ、デュアルディスプレイを搭載したDXシリーズを相次ぎ発表したが、これらのラインアップに加えて、年内を目処にタブレット機能を搭載したスレート型の新たなPCを投入する計画を明らかにした。

 「日本のPCメーカーは、ネットブックではASUSをはじめとする台湾メーカーに先を越された。次のPC市場拡大のチャンスがスレートPCだとすれば、オンキヨーはこの分野にいち早く参入し、新しい技術に対して、チャレンジする会社であることを訴えたい」。

 詳細については明らかにしていないが、10型の液晶パネルを搭載した製品を軸に複数の製品企画が進んでおり、Windowsを搭載した製品のほかに、Android搭載モデルも視野に入れているようだ。

 法人市場における特定用途向けの提案、教育分野向けの展開のほか、個人向けにも広く展開していく計画だ。

4月から発売しているスマートトップ「DP312」

 スマートトップは、すでに4月に、オンキヨーダイレクト専用モデルとして「DP312」を発表。第1弾製品として市場投入しているが、秋を目処に第2弾製品を追加投入。より機能をシンプル化したもの、TVやオーディオなどに機能を特化したものなどを用意し、量販店などへの展開も計画していくという。

 オンキヨーのスマートトップは、コンシューマエレクトロニクスと融合した、家庭での利用を意識した製品と位置づけられるもの。第1弾の「DP312」では、幅156mm、高さ47.1mm、奥行き162.2mm、重量1.2Kgという小型化した筐体に、320GBあるいは500GBのHDDと、地上デジタルTVチューナ、FM/AMラジオチューナを搭載。統合視聴再生ソフトPureSpaceを利用することで、番組表から見たいテレビの選択したり、録画・録音予約が手軽にできる。HDMI端子を搭載したモデルでは、ディスプレイやTVにケーブル1本で接続を可能とし、スロットイン型のDVDスーパーマルチドライブを利用することで、映像の再生などが可能となっている。

 「次期スマートトップ製品では、ワイヤレス技術を活用したものにしたいを考えている。他の部屋と結んでコンテンツを共有したり、オーディオ機器との連動を図ったりといった提案を促進していく」という。

 さらに、「シンクライアントとしての法人からの引き合いや、ビジネスホテルの客室で利用するインターネット端末としての導入商談も始まっており、なかには数千台単位での商談もある。2010年度はスマートトップだけで2万台の出荷を目指す」としている。

 一方、2010年度下期からは周辺機器の拡充にも本格的に乗り出す。

 1つは、オーディオメーカーならではの強みを生かしたスピーカーの投入だ。

 かつてオンキヨーでは、WAVIOブランドでPC周辺機器として、スピーカーを生産していた経緯があったが、今後投入するスピーカーでは、ワイヤレス機能を搭載し、PCから有線で接続せずに、音楽を流したりといったことができるようになる。

 「独自開発のデジタルアンプを搭載し、オンキヨーならではの音質を実現することができる。音の楽しさを提案することができる製品になる」と位置づける。

ワイヤレススピーカーの試作品。筐体は従来のWAVIOブランドのスピーカーを使用しているワイヤレススピーカーに搭載される独自開発の(左から)コネクタ部、デジタルアンプ、つまみ部デジタルアンプにオンキヨーのノウハウが注ぎ込まれている

 さらに、HDMI端子を搭載したデジタルフォトフレームを7月に出荷する計画であるほか、ホームネットワークの利便性を高めるためのHDMI端子を用意したワイヤレスレシーバーを用意。2.4GHz帯、5GHz帯に加えて、50GHz帯、60GHz帯といった高速ワイヤレス通信への対応も視野に入れているという。

 スマートトップやPCの中に蓄積されたコンテンツをワイヤレスレシーバーに飛ばし、そこからHDMIケーブルでデジタルフォトフレームに接続し、デジタルフォトーム上で動画を表示するといった使い方も可能になる。

 「周辺機器においては、ワイヤレス技術における先進性を訴求していきたい」として、ワイヤレス技術を機軸とした周辺機器のラインアップにも力を注いでいくことになる。

7月にも出荷する予定のオンキヨー初のデジタルフォトフレーム。HDMI端子を搭載しているのが特徴開発中のワイヤレスレシーバー

 一方、サポート体制の強化についても着実に成果があがっていることを示した。

 砂長部長は、「2009年12月から、オンキヨーダイレクトで購入したユーザーを対象に、現在、納品に向けて、どの段階にあるのかといったステータス情報を携帯電話に提供するサービスを実施してきた。これに加え、6月1日からは修理品に関するステータス情報を携帯電話に配信するサービスを予定通り開始した。また、現在午後8時までとしているカスタマーセンターの受付時間を、9月からは午後10時にまで延長する予定であるほか、オンキヨーダイレクトの購入者を対象に、7月1日からは、1年間の保証期間を、新たに3年間の長期保証制度としたほか、今後、これを店頭購入の製品にまで広げる計画」と、順次、新サービスを開始する計画を示した。

 今後は、PCコンシェルジュサービスにおけるアップグレードサービスやデータ消去などの新サービスについても準備が整い次第実施していく考えだ。

 「ソーテック時代には、ネガティブな評価だったサポートについても、カスタマセンターの内製化、自社運営へとシフトしたことで、55人の社員が直接サポートする体制を整えている。コールセンターへの接続率は90%を超えており、待ち時間は平均30秒以内。カスタマセンターに対する顧客満足度が高まっており、かつてのイメージは完全に払拭できた。量販店のスタッフからも、安心して販売できるという声ももらっている」と自信を見せた。

 サポート品質のレベル向上が、同社のPC事業の拡大を下支えすることになるだろう。

修理のステータス情報を携帯電話に配信するサービスを6月1日からスタート

 菅カンパニー社長は、「スマートトップやゲーミングPCは、これまでのオンキヨーのPCには無い領域を埋めていく製品になる。また、周辺機器はオンキヨーブランドの浸透、オンキヨーが提案するPC利用環境の具現化、収益確保という点で意味がある。2010年度は、既存PC領域に加えて、今後の新規事業領域として掲げてきたプレミアムPC、パーソナルモバイル、CEとの融合製品、周辺機器というカテゴリーが具体的な製品として初めて出揃う年となる。これをベースに、事業を拡大し、将来的には国内PC市場でのベスト5入りを目指す」と、今後の事業拡大に強い意思をみせた。