大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

【新春恒例企画】2013年は「MEBIUS(メビウス)」な1年!?

 2013年がスタートした。

 2013年を俯瞰してみると、さまざまな製品、技術、サービス、そしてIT産業や企業経営そのものが、大きな転換期を迎える1年となりそうだ。

 中でもPCが置かれた立場は変化を余儀なくされることになるだろう。スマートフォンの浸透に加え、タブレットが幅広いユーザーに広がり、PCの役割が改めて見直される時期に入っていくからだ。

 個人の利用において、これまで「表」を張っていたPCに代わり、スマートフォンやタブレットが「表」へと浮上。スマホ、タブレットの勢いと裏腹に、新たな提案に後れを感じざるをえないPCは、このままでは、いつのまにか「裏」に回ってしまうということにもなりかねないからだ。

 表を歩んでいたのに、いつのまにか裏を歩いている。そんな「メビウスの輪」の状態が、PCが置かれた立場だとはいえまいか。

 そこで、2002年から続けているこの新春恒例企画において、2013年を占うキーワードを「MEBIUS」としてみた。

 MEBIUSのそれぞれの文字に、PCおよびIT産業の2013年の注目ポイントが込められているというわけだ。恒例の言葉遊びから、2013年を占ってみたい。

モバイルは2013年の最大のトレンドに

 まずは、MEBIUSの「M」である。

 Mは「モバイル」のMとしたい。

 多くのユーザーの利用環境は、確実にモバイル中心へと移行している。スマートフォンを利用したソーシャルメディアによるつぶやきはその最たるものであり、もはや個人の情報発信はモバイル環境が主力だといっていい。

 こうしたモバイル環境での利用は、さらに進展することになるだろう。その背景には、いくつかの理由がある。

Androidはスマートフォン市場を引き続きリードする(写真は米Google本社)

 1つはさらなるスマートフォンの浸透だ。

 MM総研の予測によると、2013年度の携帯電話の出荷台数は4,370万台。そのうち、スマートフォンの出荷台数は3,520万台となり、出荷構成比は80.3%と初めて8割を突破することになる。これまで市場で利用されている携帯電話を含めても、2人に1人がスマートフォンを所有する時代がやってくるというわけだ。

 Android搭載のスマートフォンの広がりに加え、iPhoneが人気を博すという構図は2013年も変わらないだろうが、日本での発売が見送られたWindows Phone 8や、韓国SamsungとNTTドコモが共同開発しているという新たなスマートフォン向けOSの動向も気になるところだ。特に国内ベンダーが開発を断念しているWindows Phone 8搭載スマートフォンは、法人ユーザーからの期待が高まっているだけに、ドコモやauが、海外ベンダーの製品を扱うかどうかが1つの焦点となりそうだ。

 もう1つはタブレットの浸透である。

 実は、BCNの調べによると、2012年12月17日〜23日の集計で、タブレットの販売台数は、ノートPCの3分の2の規模にまで拡大しているという結果が出ている。

 iPad miniの人気に加えて、品薄が続いていたNexus 7が大量に入荷したのがその理由だというが、2013年のタブレット需要の拡大を予感させる出来事だといえよう。

 IDC Japanでも、国内のタブレットの販売台数が2013年第4四半期には、199万台に達すると予測。これは家庭向けノートPCの166万台を上回り、初めて家庭向けノートPCの販売台数をタブレットが抜き去るとみている。

 スマートフォンやタブレットの利用が促進される背景には、LTEをはじめとするモバイルブロードバンド環境の浸透や、FacebookやTwitter、mixi、LINEといったソーシャルメディアの浸透が欠かせない。

 このように、モバイル環境での利用がさらに進展する要素が揃っているのが2013年の重要なポイントだ。

林立する電子書籍のプレイヤーたち

 「E」は、「E-Book」。つまり、電子書籍である。

 毎年ように「元年」と言われ続けている電子書籍だが、ここにきて、ソニーの「Reader」、シャープの「GALAPAGOS」、楽天の「Kobo」、アマゾンの「Kindle」、BookLive!の「Lideo」といった端末が各社から投入されているのに加え、Android搭載のタブレットやスマートフォンでの利用も広がりつつある。

 そして、これまで日本での電子書籍展開が遅れていたAppleも、国内大手出版社と提携し、iPadやiPhone向けに日本語電子書籍の展開を本格化する姿勢を示しており、これも電子書籍の利用促進に弾みをつけることになりそうだ。

 各社が提供する電子書籍のマーケットプレイスも年々充実しているが、ここでもAppleのiTunes Storeの展開が台風の目となり、市場を沸かすことになりそうだ。

楽天はKoboシリーズで電子書籍市場に攻勢をかける
BookLive!が投入した電子書籍専用端末「Lideo」

ビッグデータが変える社会が訪れる

 「B」は、「ビッグデータ」である。

 2013年はビッグデータの利活用がさらに本格化し、これに伴い、企業活動や我々の生活そのものの変化を加速させそうだ。

 個人が発信するソーシャルメディアの情報や、あちこちに据え付けられたセンサーやカメラから発信される非構造化データを収集/蓄積/分析し、予測や対策へとつなげることができるビッグデータは、「マーケティング」、「運用、保守、サービス」、「リスク管理」という観点で、あらゆる業種で利用されはじめている。

 例えば、マーケティング利用では、すでにこんな世界が訪れようとしている。

 あるファッションアイテムを販売する店舗のショーウィンドウに設置したデジタルサイネージの前に人が立った途端に、カメラでその人が男性か女性か、何歳ぐらいかを認識。さらに、顔認識機能を利用し、その人がその店舗の会員であるかどうかも識別する。また、これまでの購入履歴や、現在着ている洋服の情報、店舗内の在庫情報や、キャンペーン情報などを組み合わせて、個別のお勧め情報を表示するといった具合だ。加えて、デジタルサイネージから、ソーシャルメディアを使い、その人のスマートフォン向けに限定のお得情報を流すこともできるようになる。これまで以上にきめ細かなターゲットマーケティングが可能になるというわけだ。

 だが、その一方で、個人のプライバシー保護やセキュリティの強化といった問題も浮上してくることになろう。ビッグデータの活用によって、個人の特定やプライバシーが明らかになる可能性もあるからだ。2013年はそのあたりの議論も増えそうだ。

 Bでは、あと2つの項目に触れてみたい。1つが「BYOD」である。

 Bring your own deviceの頭文字をとったBYODは、個人が所有するデバイスを仕事でも使用することを指す。欧米やアジアの先進国のなかでは、9割以上の企業でBYODを採用している国もあるが、日本では3割以下の状態。だが、BYODの流れは止めることができないというのが業界内に共通した認識であり、2013年は日本においてもBYODが浸透するのは明らかだろう。

 もう1つのBは、次期Windowsと噂されるMicrosoftの「Blue」(開発コードネーム)である。

 2012年10月26日のWindows 8の発売からわずか1年でのバージョンアップは、異例ともいえるが、これがメジャーバージョンアップなのか、マイナーバージョンアップなのか、あるいはサービスパックのようなものになるのかは現時点では不明だ。ただ、AndroidやiOSのように、クラウド時代に対応した形でのバージョンアップも見込まれるだけに、これまでの常識は通用しないともいえる。

 実は、Windows 8は、発売以来、PC市場を拡大させたとはいえない。

 業界団体である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が先頃発表した2012年11月の国内PCの出荷台数は、前年同月比8.8%減と前年割れとなっていることからもそれは明らかだ。

 BCNの調べでも、11月12日〜18日の集計で前年同期比9.8%減と前年割れとなって以降、12月の最終週まで6週連続の前年割れとなっており、ボーナス支給後の年末商戦本番を迎えても、前年実績を上回ってはいないという状態だ。

 今後のマーケティング施策を加速させる必要もあるだろうが、早くも次期Windowsに頼らざるを得ないという厳しい状況も浮き彫りになっている。

 最初にWindowsが発表されたのは1983年。それからちょうど30年の節目を迎える2013年は、Windowsにとってどんな1年になるのだろうか。

Windows 8は市場の起爆剤になりえていないのか?

やはり今年も台風の目となるApple

 「I」という点では、「iPhone」「iPad」を挙げておきたい。

 2012年は年間2回のiPadの新製品投入をはじめ、数々の話題の製品を投入してきたAppleだが、2013年も引き続き、その動きに注目が集まるのは明らかだ。

 ティム・クックCEO体制になってからも話題の製品を投入し続け、株価も堅調に推移しているのは周知の通りだが、iOSの開発を担当していたスコット・フォーストール氏や、Appleストアを指揮してきたジョン・プロウェット氏の退社など、クック体制にも大きな変化が訪れている。

 いよいよ2013年は、「ジョブズの遺産」ではなく、「クックの真価」が問われる時期に入ってくるともいえそうだ。

Appleは2013年も引き続き、注目される企業の1つ(写真は米Apple本社)
Appleは2012年には相次ぎ新製品を発表した
ティム・クックCEOの真価が問われる2013年になる

UltrabookはHaswellでどう変わるか?

すでに140機種以上が発売されているUltrabook。Haswellでどう進化するか

 「U」では、Ultrabookの進化に期待したい。

 Intelが提唱するUltrabookは、Windows 8の発売以降、国内だけで140機種以上が登場し、トラを起用した積極的なTV CMも、認知度の向上に大きな役割を果たしている。

 だが、現時点で、ノートPC市場全体に占める構成比は約8%と、市場を牽引しているわけではない。

 理由としては、一般的なノートPCと比べて価格が高いことなどが挙げられるが、その一方で、Intelの調べによれば、Ultrabookの説明を受けた人の90%が次のPCとしてUltrabookを購入したいと回答。一般的なノートPCに比べて2万円高くても購入するとした人が87%に達しているという結果が出ている。より認知度を高め、Ultrabookに触れる場を広げることで、販売に弾みがつく可能性があるわけだ。

 2013年は、Haswellが登場し、これを搭載したUltrabookの進化にも注目しておきたい。

Surfaceは日本市場に投入されるのか?

 最後の「S」だが、ここでは「ソーシャル」「スマート」、そしてMicrosoftの「Surface」を挙げておきたい。

 ソーシャルは、モバイル、ビッグデータと並んで、2013年の3大キーワードともいわれているが、ソーシャルメディアのさらなる浸透は、全世界における大きなトレンドとなることは間違いない。

 利用者数の増加や、個人同士のコミュニケーションの広がり、ソーシャルゲームの拡大というだけでなく、企業活動やサービス向上といった観点でもソーシャルメディアの活用は広がっていくことになるだろう。

 スマートでは、スマートフォンのほか、スマート家電、スマートシティなど、スマートのオンパレードとなるのが2013年。とくに、スマート家電は、音声認識技術との連動によって、大きな進化が見込まれることになりそうだ。

Surfaceは日本での発売が注目される

 MicrosoftのSurfaceについては、現時点で投入されているWindows RT搭載製品の日本での発売が見送られているが、2013年1月にも投入が予定されているWindows 8を搭載したSurfaceに関しては、日本で投入される可能性が高そうだ。

 これまでの各国でのSurfaceの販売体制をみると、現地法人を飛び越えて、米国本社主導で投入されており、現地法人は販売後のサポート体制の構築をすればいいだけという状況にある。キーボードは英語版のみということにもなりそうだが、日本マイクロソフトが国内にサポート体制を構築するのは容易であり、その点でも、Surfaceの日本投入の可能性は高い。

 日本マイクロソフト幹部の発言も、これまでのようにSurfaceの国内投入を否定する発言から徐々に軟化していることも、その期待感を煽るものとなっている。

IT産業もメビウスのような戦略が必要に

 一方、メビウスの輪という点では、その形をベースに考案されたというリサイクルマークがあるが、リサイクルをはじめとした環境問題も2013年は大きなテーマになるだろう。

 日本がリードするこの分野で大手電機各社がどんな提案をするのかも注目される。

 こうしてみると、2013年もいくつかの楽しみな製品が登場しそうである。

 国内では自民党による新政権の発足により、産業界では「アベノミクス」への期待も高まる。グローバル化を推進する電機大手各社にとって、円安への進行は追い風になり、すでに効果がみられている株高の動きにも注目が集まる。2013年最初の取引となった1月4日の日経平均株価は、1年10カ月ぶりの高値となり、円も2年5カ月ぶりの安値となった。

 たばこでは、JTが2013年2月に、「メビウス」という新たな名称のたばこを発売する。

 これは、MEBIUSではなく“MEVIUS”の表記だが、日本で最も売れているたばこである「マイルドセブン」の名称を変更してまで、グローバルナンバーワンに挑む製品であり、2013年の日本の企業によるグローバル戦略の象徴の1つともなりそうだ。

 市場成長が低迷する日本に留まらず、海外に目を向けなくてはならないのは、どの産業でも同じだ。

 日本のIT産業も、MEVIUS(メビウス)のような思い切ったグローバル戦略に踏み出さなくてはならない1年となるだろう。

(大河原 克行)