ゲーミングPC Lab.
4K液晶搭載の薄型ゲーミングノート「Lenovo Y50」
~バッテリで2時間のゲームプレイを実現
(2014/7/19 06:00)
レノボ・ジャパン株式会社は、3,840×2,160ドット(4K)表示対応15.6型ワイド液晶ディスプレイを搭載したゲーミング向けノートPC「Lenovo Y50」(以下:Y50)を発売した。価格はオープンプライスで、直販価格は169,560円だ。今回レノボよりお借りできたので、レポートをお届けする。
レノボのゲーミング向けノート第2弾
Y50は、レノボが“ゲーミング向け”として初めて2012年末に国内に投入した「IdeaPad Y500」の後継モデルで、位置づけ的にはゲーミング向けの第2弾の製品となる。
レノボと言えば、「Think」や「Idea」シリーズが代表するような、コストパフォーマンスや信頼性を重視した「無難な製品」が多いイメージであるが、Yシリーズはそのブランドイメージを刷新する挑戦的な製品だと言ってもいい。
ゲーミングノートに必須なのは、何よりも見た目(外観デザイン)が重要だと思うが、Y50はゲーミングノートらしい風貌となっている。まず開封してすぐに23.9mmという15.6型ゲーミングノートとして薄い点に目が行く。「クアッドコアCPUと、ディスクリートGPUが内蔵された高性能ノート」だと言われれば、まず30~40mmの厚みを想像してしまうが、Y50を見ると技術も随分と進んだなぁと考えさせられる。
天板と底面は、メッシュ状のヘアライン加工を大胆に施したパネルで、ソリッドな印象を受ける。天板は車のボンネットのように後部にかけて狭くなるよう斜めに折り曲げられ、シャープなフォルムとなっている。
一方キーボード側も、スピーカーとみられる部分はハニカム構造で、赤の布地を入れたり、底面パネルも前後でラウンドの角度を変えてくさび形に見せるような工夫がされていたりと、あらゆる所に意匠が凝らされている。
キーボードはアイソレーション式で、浮石のようになっており高級感がある。赤LEDによるバックライト付きで、部屋が暗くてもキートップを認識できるようになっている。明るさは4段階に調節可能だ。赤をアクセントを採用すると“ゲーミング向けになる”のデザインは、Intel 9シリーズチップセット搭載マザーボードで定着したわけだが、Y50もそのトレンドを踏襲しているわけだ。
Y50を使っているところを見れば、明らかに「仕事をしているね」ではなく「ゲームをしているね」と誰もが思うことだろう。少なくとも、会社のデスクで使うマシンではないのは明らかだ。レノボはゲーミング市場に参入してまだ間もないし、シリーズ展開もしていないのだが、製品デザインに関してはレベルがかなり高いと言えよう。
圧巻の4K液晶ディスプレイ。そのほかの使い勝手も上々
それでは、注目となるディスプレイについて見ていこう。冒頭で述べたとおり、本製品は4K表示対応の15.6型ワイド液晶ディスプレイを搭載している。密度は282dpiに達し、これは東芝が4月に発売した「dynabook T954」と同じスペックだ。
282dpiでWindowsのデスクトップを表示させると、情報量が非常に多いのだが、文字幅が1mm未満となってしまうため、可読性が低下する。もちろん目が良いユーザーはこの設定でも問題はないと思うが、本製品は標準でWindowsの文字を含むすべての項目のサイズが「最大」という設定になっていた。この状態では文字の情報量という意味では100%時に劣るが、フォントのエッジが滑らかに表示されるほか、画像や映像コンテンツの精細感には影響しないので、「情報量最優先で使いたい」というニーズを除き、このままにしておいて問題はないだろう。
なお、採用されているパネルについては明らかにされていない。やや白浮きっぽい印象を受けたが、色味は正確で、視野角は上下/左右ともに良好であった。ただ気になったのはリフレッシュレートが48Hz留まりである点で、普段使いには問題ないが、いささか“ゲーミング用”としてはスペックが物足りない印象だ。
もっとも、4Kという高解像度に対し、GPUはミドルハイのGeForce GTX 860Mに留まっている点を考えると、Lenovoが言う「ゲーミング」は、FPSゲームなど高いハードウェアスペックを要求するものではなく、ライトな3Dゲームを想定した仕様設定だと思われる。このため48Hzのパネルでも問題はない、ということだろう。
ゲーミングで重要になるキーボードについては、使い勝手は上々と言ったところ。アイソレーション方式のためミスタイプが少なく、キーピッチは19mmのピッチを確保、ストロークの深さも筐体の薄さからは頑張っており、しなやかなキータッチを実現している。タッチパッドはボタン一体型だが、約105×73mm(幅×奥行き)の面積で快適に操作できる。
スピーカーはJBLブランドがついており、サブウーファーも装備している。ただし筐体が薄いこともあり、有名ブランドやウーファー付きであることを期待して聞くと、低音がやや物足りない印象だ。とは言えボリュームは十分あり、こだわらなければ外付けスピーカーは不要だ。
ただし本製品で特筆すべきなのは騒音の少なさだ。筐体の薄さやクアッドコアCPU/ディスクリートGPUの装備からすると、負荷時は甲高いファンノイズが聞こえるだろう……という先入観で3Dベンチマークを走らせてみたが、思いのほか静かで、ゲーミングノートとしてはトップクラス。以前レビューしたASUSのR.O.G.ブランドの「G750JH」に次ぐ静音性だ。筐体の薄さを考慮すると、素晴らしいの一言に尽きる。
その一方で熱に関しても、キートップは全体的に熱くなるものの、パームレストはかなり抑えられており、不快になることはなかった。これは開発陣の考慮が見られる。
Maxwell搭載でバッテリだけで2時間超のゲームプレイを実現
本製品にはGeForce GTX 860Mが搭載されているが、GPU-Zで確認したところMaxwellアーキテクチャのものが搭載されていた(860MにはKeplerモデルもある)。GeForce 800Mシリーズは特徴として、GeForce Experienceの「Frame Rate Targeting」設定、およびゲームの自動画質設定を組み合わせることで、バッテリ駆動時間を伸ばす仕組みが搭載されている。
今回は短期間での試用であったため、実際のゲームプレイと画質設定による影響をテストできなかったものの、3DMarkのループテストと、Frame Rate Targetingの設定によるバッテリ駆動時間の延長効果を計測してみることにした。
まず、一般的な用途におけるバッテリ駆動時間について計測した。電力プランはバランス、輝度は約30%、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オフ、キーボードバックライト/オフの設定で、BBenchを実施。Web巡回とキーストロークありで計測したところ、約4時間駆動した。
続いてGeForce Experienceで何も設定せずに、3DMarkのIce Stormのデモをデフォルト設定でループ再生した。Fire Strikeなど重いテストを選択しなかったのは、そもそもFire Strikeは負荷が高く、Frame Rate Targeting設定値(今回は30fps)に達さない可能性があったからだ。バックグラウンドでBBenchをWeb巡回/キーストロークなしで実施。この結果、約1.2時間でバッテリが切れた。
そしてGeForce ExperienceでFrame Rate Targetingを30fpsに設定し、同じテストを繰り返したところ、なんと約2倍の2.3時間を達成した。今回は時間の都合で、Frame Rate Targeting設定時のクロックの挙動などを監視できなかったが、確かにNVIDIAが謳う通り、バッテリ駆動時間の延長効果を確認できた。
実際のゲームプレイにおける効果や、ゲーム内の画質設定を含む「Battery Boost」、そしてFrame Rate Targeting設定時のクロックの挙動については、機会があれば再度テストしてレポートをお届けしたいと思うところだが、いずれにせよ効果は確実にあり、モバイル環境でゲームプレイを考えているユーザーにとって有用であることは確認できた。
ゲーミング性能はミドルレンジ
最後にベンチマークを実施し、ゲーミングノートの性能を確認したい。ベンチマークは「PCMark 7」、「SiSoftware Sandra」、「ファイナルファンタジーXI オフィシャルベンチマーク3」(以下FF11ベンチ)、「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(以下FF14ベンチ)、「3DMark」の5つ。
せっかくの4K液晶なので、FF14ベンチのみ4K解像度で実施した数値も掲載する。FF14ベンチの設定は「最高設定」である。
比較対象は、以前レビューしたASUSの「G750JH」、および筆者自身が愛用しているマウスコンピューターの「NEXTGEAR-NOTE i300」である。
まずPCMark 7に関しては、SSD搭載モデルには敵わない。実はY50はストレージに珍しくWestern DigitalのSSHDを搭載しているのである。このためベンチマークの数値はHDDモデルよりは高性能だが、SSDと比較するとどうしても見劣りしてしまう。しかし実際の動作は軽快そのもので、大容量ファイルのコピーや高解像度の動画編集などを除けば、実際の一般作業において不満になることはまずないだろう。
高い演算処理性能はSandraの結果に出ており、CPU/GPUともにNEXTGEAR-NOTE i300を上回っている。さすが新世代アーキテクチャと言ったところだ。特にGPUのGraphics Rendering FloatはKepler上位のGeForce GTX 780Mをも上回り、消費電力を考えると、Maxwellの効率の高さがよく分かる。
Sisoftware Sandra | Lenovo Y50 | G750JH | NEXTGEAR-NOTE i300 |
---|---|---|---|
Dhrystone | 99.7GIPS | 140GIPS | 85GIPS |
Whetstone | 69.6GFLOPS | 82GFLOPS | 66.68GFLOPS |
Graphics Rendering Float | 1.12Gpixel/sec | 763.92 Mpixel/sec | 536.8 Mpixel |
Graphics Rendering Double | 41.32Mpixel/sec | 83.47Mpixel/sec | 30.83Mpixel |
FF11ベンチについては文句なしのスコアで、もはや頭打ちだと言っても良い。一方FF14ベンチについて、1,920×1,080ドット解像度で5552(とても快適)、4K解像度で1603(設定変更を推奨)であった。つまり、実際の3Dゲーム性能は、デスクトップで言えばミドルレンジよりやや高いレベルに留まることが分かる。
FF14 | Lenovo Y50 | G750JH | NEXTGEAR-NOTE i300 |
---|---|---|---|
最高画質(1,920×1,080ドット) | 5552 | 8789 | 3887 |
最高画質(3,840×2,160ドット) | 1603 | - | - |
とは言え映像を見る限り、4K解像度の最高設定でも「プレイはできなくはない」レベルだ。表示キャラクターが増えると重い印象だが、ソロ~3キャラクター程度であれば、そのまま動作できそうだ。
FF11の3Dエンジンは遠景のテクスチャ描写が緻密で、以前2,560×1,600ドット(WQXGA)の30型ワイド液晶を購入し、FF11をプレイしたところ、その圧倒的な描写に驚かされた。特にアトルガンの白門などのエリアで、遠くの壁のレンガを1枚1枚しっかり描写しているのは圧巻だった。その意味で今回もぜひ4K解像度で感動を得たかったところだが、残念ながら機材スケジュールの関係で実現できなかった。また4K液晶をレビューする機会があるなら、テストしたいところだ。
3DMarkについては、クラス相応の結果となっている。DirectX 9ベースのIce Stormの結果がやや悪いが、これはMaxwellアーキテクチャの特性かもしれない。
4K液晶搭載でコストパフォーマンス良好、ホームユースでも買い
以上、Lenovo Y50を概観してきた。4K液晶の表示は良好であり、なおかつ性能的にもミドルレンジの3Dゲームまでなら十分、静音性の高さやパームレストの低発熱、2時間バッテリで3Dをゲームプレイできるなど、総合的な使い勝手も良く、まだ歴史が浅い同社ゲーミング製品としては完成度が高い機種であるように思う。
何よりもこのスペックと使い勝手を実現しながら、実売169,560円(現在直販では15%引きクーポン付きで144,126円)という低価格は魅力的だ。単純に4K対応ノートとして見てもかなり安い。ビジネスで使うにはやや抵抗があるデザインかも知れないが、ホームユースなら問題はない。家で使うメインのノートを考えているのなら、オススメできる製品だと言えるだろう。