山田祥平のWindows 7カウントダウン

クリーンインストールかアップグレードか



 Windows 7のインストールは、いくつかの条件さえ整っていれば、ほとんどトラブル知らずで行なえることが、前回の7台のPCへのインストールでわかった。今回は、その条件について考えてみることにしよう。

●既存ドライバやユーティリティをあらかじめ待避しておこう

 インストールにはクリーンインストールと、アップグレードインストールの2種類がある。クリーンインストールの場合は作成したDVDから起動して進めればいいし、アップグレードの場合は現在のVista環境からDVDのsetup.exeを実行すればいい。現在の環境を残しておいた上で、新たに新規インストールしたい場合は、別のドライブを用意してデュアルブートにする必要がある。現在のシステムドライブに新規インストールをした場合は、現在の環境は、保存はされるものの、起動システムとしては使えなくなってしまう点に注意してほしい。

 なお、ネットブックのように、光学ドライブを持たない環境では、外付けのドライブを接続する必要があるが、ない場合は、USBメモリなどからの起動ができないかどうかを確認してみよう。

 これからWindows 7のインストールにチャレンジしようというのなら、まず、いくつかの前準備をしておくことをおすすめする。

 まず、当たり前だが、インストールしようとしているPCに存在する重要なデータが失われても大丈夫なように、そこにしかないデータはきちんとバックアップをとっておくことだ。プログラムなどは再インストールすればいいが、データばかりはそうはいかない。最悪、システムが起動しなくなってしまうこともあるかもしれない。だから、バックアップは必須だ。

 次に、現在の環境にその時点で使っているデバイスドライバやユーティリティなどをまとめたフォルダがあるなら、それを待避しておこう。メーカー製のPCの場合、たとえば、パナソニックの製品ならシステムドライブのUtilフォルダ、ソニーの製品ならWindowsフォルダ内のDriversフォルダなどが用意されている。特に、メーカー製のPCにクリーンインストールする場合は、これらのフォルダの待避は必須だ。インストール後にデバイスドライバで見つかる不明なデバイスのドライバは、このフォルダを参照させることで、自動的に見つかる可能性が高いからだ。

 また、日本HPや東芝、パナソニック、デルなど、各種のドライバの最新版がウェブに用意されているので、そのURLをチェックしておき、必要に応じてダウンロードできるようにしておこう。そのためにも、もう1台、健全な状態で稼働しているシステムがあると心強い。ただ、ダウンロードはめんどうくさいので、あらかじめまとまったフォルダがあるなら、それを待避しておいた方が手っ取り早いのだ。ちなみに、VAIO Updateなど、IE7に依存したプログラムは動かなくなってしまう。自動的にドライバやユーティリティを最新版に更新するためのものだが、それが使えなくなっても、個別に手動でダウンロードして更新できるかどうかも確認しておきたい。

●Bluetoothが落とし穴

 アップグレードインストールのプロセスは、互換性の確認から始まる。この段階で問題が見つかると、プログラムのアンインストールを促すなどの対策が提示される。たとえば、マカフィーやSkypeがインストールされていたり、インストールのためのショートカットがデスクトップに存在するなどの場合は、いったんアンインストールして、うまくWindows 7が動き始めた段階で、再インストールする方法が安心だ。

 互換性を確認している時点では、まだ、Alt+Tabでデスクトップに戻ることができるので、ここでコントロールパネルを開き、「プログラムと機能」を使ってアンインストールなどの処置を行なえばいい。

 互換性の確認後、必要なファイルのコピーが始まり、そのコピーを展開後、インストール作業が始まる。さらに、ネットワークがオンラインの場合は、更新プログラムがインストールされ、最終処理を経てインストールが完了する。この間、何度かリブートが行なわれるが、その回数は、機種ごとにまちまちだった。手元のノートPCは、BIOSの設定で、再起動時にパスワード入力を求めるように設定してあるので、その都度、入力する必要があった。

 インストールの過程では、ネットワークは接続しておいた方がいい。ノートPCなど、WiFi内蔵の機種では、インストールの過程で、アクセスポイントへの接続が促されるが、最初から有線LANを接続しておいた状態でインストールをした方が確実だ。

 前回の7台のPCへのインストール状況でわかるように、インストール完了後、いかにWindows Updateでネイティブなドライバが拾えるかは、新しい環境にとってとても重要なポイントだ。

 ビデオドライバに関しては、ATIやNVIDIA、Intelのものに関してはきちんとダウンロードされる。逆にいうと、RCを快適に使うためには、ビデオに関して、この3社の製品を使っている機種が望ましい。だが、例外はかなり少なくなってきていると言えるだろう。

Windows 7は、WDDM1.1対応のビデオドライバがあって初めて各種の新機能を堪能できる。ATIやnVidia、インテルのうち、どれかであればドライバが用意されているはずだ

 ノートPCで使われているポインティングデバイスに関しては、Windows 7ネイティブのドライバは使いものにならないと思った方がいい。これは、Vista用のものを探してきて、自分でインストールしよう。

 今回は、東芝機でBluetoothスタックが問題を起こしたが、アクションセンターからの通知で最新スタックをダウンロード、正常に使えるようになった。

 マイクロソフトは現存するすべてのBluetoothチップセットをネイティブでサポートすることを表明しているが、それがうまくいかないこともあるようだ。これはRC特有の問題かもしれない。Bluetoothのスタックは、チップセットそのものを制御するドライバ部分と、Enumeratorに分けて考えることができるが、そのうち前者に関しては、現在使っているシステムのものを使った方がいい結果が得られるかもしれない。

 いずれにしても全チップをサポートするとマイクロソフトがいっている以上、Bluetoothに関しては、Windowsの標準機能であると考えるのが妥当だ。できれば、今後はネイティブのスタックを使うようにしたい。アップグレードインストール後に、以前のスタックが動いていても、デバイスドライバでBluetooth関連デバイスをいったん削除し、新たにネイティブのものを再導入することで、マイクロソフトスタックでBluetoothが使えるようになるので、ダメモトで試してみるといいだろう。もしダメだった場合には、既存のスタックを再導入すればすむ話だ。

●リモートデスクトップで環境を追い込もう

 これまで、VistaのHome Premiumなどを使っていた方には、あまりなじみがないかもしれないが、Windows 7のRCは、Ultimate Editionなので、リモートデスクトップをホストすることができる。手元にデスクトップ環境があるなら、ちまちまとノートPCで作業をするよりも、リモートデスクトップで接続し、デスクトップの広々とした環境で、インストール後のメンテナンス作業をした方が快適かもしれない。

 リモートデスクトップを有効にするには、Windows 7側でスタートボタンをクリックし、スタートメニューでコンピュータを右クリック、プロパティを表示させ、ウィンドウの左ペインに表示されている「リモートの設定」で有効にすればいい。

 また、接続する側のコンピュータでは、アクセサリ内に「リモートデスクトップ接続」が見つかるはずだ。特に、VAIO type PのようなノートPCでは、チマチマと小さい画面で作業するよりも、この方法で環境を追い込んでいく方が、圧倒的に効率的だ。

広いデスクトップ環境があるなら、リモートデスクトップで接続して作業した方が効率がいい

 いずれにしても、失敗のないWindows 7への移行は、メーカー製のPCに関しては、リカバリ状態からのアップグレードインストールがよさそうだ。Vistaから7で、デバイスドライバとして大きな変更があったのは、ビデオだけなので、それ以外のものに関しては、Vistaのものがそのまま使えると考えてもいいようだ。

 ポイントは、機種に関する細かい設定を、OS起動前にBIOS設定できるかどうかだ。それができるならクリーンインストール、できないならアップグレードが無難だ。今回の場合は、VAIO type Pにはクリーンインストールを試みたが、その後、ディスプレイを開いたときの挙動や、Fnキーコンビネーション、また、各種無線のオンオフ切り替えなどで不便があるため、リカバリしてアップグレード後、環境を再構築しているところだ。

 また、MacBook ProのBootcampのような環境は、クリーンインストールは考えない方がいい。とにかくきちんとVistaを動かすこと、そして、その健全な環境をアップグレードすることが重要だ。なお、アップグレード対象では、Vista SP1が必要である点にも注意してほしい。

 もし、Vista用のドライバやユーティリティをインストールする際に、バージョンチェックなどにひっかかる場合は、プログラムを騙す方法も用意されている。そのプログラムを右クリックしてプロパティを表示させ、互換性タブを開き、互換モードに対して「Windows Vista (Service Pack 1)」などを選べば、多くのプログラムはそのまま動いてしまうはずだ。場合によっては、管理者としてそのプログラムを実行しなければ、正常なインストールができないこともある。このあたりは、ちょっとした試行錯誤が必要だ。

以前使っていたユーティリティやドライバのインストール時に、setup.exeなどが動かない場合は、互換性タブを使ってプログラムを騙してしまおう。

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(2009年 5月 20日)

[Text by 山田 祥平]