山田祥平のRe:config.sys

ツインテール、インテルふたつ入っている!?

 UltrabookはHaswellこと第4世代Coreプロセッサによって新たな世代に入った。Intelは、東京・丸の内の商業施設KITTEにおけるイベントスペース「Experience Intel. Look Inside」のオープニングセレモニーを開催、その魅力を一般に広く知らしめるための活動を開始した。

新しくなったIntelのコーポレートロゴ

 今週末の3日間、KITTEで行なわれる「Experience Intel. Look Inside」の開催にあたり、インテル代表取締役吉田和正氏は「Intelは強力だが、なにしろ機械の内側に入っているから見えない。だから、その中を見てほしい」とイベントの抱負を語った。セレモニーにはゲストとして、m-floのメンバーであり、DJとしても有名なVERBAL氏、そして、雑誌Popteenのモデルとして女子中高生に絶大な人気を誇る椎名ひかりさんと松本愛さんが参加した。

 Intelロゴの下につくタグラインは、ちょっと前まで「インテル。さあ、その先へ。」(2006年~)だった。「さあ、その先へ。」は「Leap ahead」の日本語訳だ。そして、先日のCOMPUTEXの時期にコーポレートロゴのタグラインが「Look Inside」に変わった。今回は日本でも英語のタグラインがそのまま使われている。けっこう積極的に打って出たタグラインだ。語感もLeapよりLookの方がずっと強い。

 2009年にスローガンとして「Sponsors of Tomorrow」がアピールされたこともあったが、基本的にタグラインは無印Intelから、「Intel inside」へ、そして「Leap ahead」を経て、「Look Inside」と変遷してきた。誰も知らなかった無印Intelが、Intel入りを明らかにするようになり、未来を模索し続けてきた結果、「中を見て! 」と自己主張を始めたことになる。

 もちろん、イベントに出かけて、最新のUltrabook各社製品を実際に手にとって確かめても、Intelが中に入っていることを確認できるわけじゃない。かろうじて、ロゴ入りステッカーが貼り付けられているのに気がつくくらいだろう。それでもIntelは、中味がIntelであることを主張したいのだ。そして、Intelが中に入っていることが、どんなにすごいことなのかを、多くの人々に知らしめたいと考えている。Intel製のPCがあればわかりやすいのだが、それをやらないところがIntelの奥ゆかしさだ。

 会場に並んだ各社Ultrabookの数々を見て、Intelなら、これらの異なるメーカー製PCの電源アダプタのプラグ形状を統合し、互換性を持たせるくらいカンタンにできそうなものなのにとも思った。それをやらないのがIntelの美学ということなんだろう。

似合う似合わないという価値観

 セレモニーのゲストとして登場した二人の女性、というよりも女の子は、調べてみると二人とも1994年生まれだ。10歳くらいでPCを意識したとしたら、2004年。すでにWindows XPのデビュー後だ。携帯電話にカメラがついたのは2000年のシャープ「J-SH04」の「写メ」とされるので、電話にカメラは当たり前の世代だともいえる。

 その2人が、2-in-1のUltrabookを手に持って操作する様子は、はっきりいって、ちょっと違和感があった。モデルとはいえ、小柄で華奢といってもいい彼女たちの手には、現在の2-in-1 PCの筐体は手に余るようにも見えた。誤解を怖れずにいえば、似合わない……。大人の都合であてがわれたマシンを持て余しているようなイメージだ。あの重量を知っていると、軽々と持っているように見えて、感じる重さをナイショにしているようにも見える。

 だが、そこだけに違和感を感じているのでは、何も新しいことは始まらない。そもそも違和感という考え方自体が先入観に左右されるものだからだ。それに、Haswellや、今後計画されている新世代のプロセッサは、フォームファクタの追加をもたらすのだと個人的には考えている。従来のクラムシェルや一体型は、もちろんこれからも順当な進化を見せるだろう。

 また、2-in-1は斬新ではあったが想像の域を逸脱するようなものでもなかった。だが、想像もしなかったようなフォームファクタが、これからはどんどん出てくるだろう。2-in-1は、その前兆に過ぎない。だから、外観だけを見たら、とてもIntelが入っているとは思えない何かが、ぼくらの前に登場する日がやってくる。そのときに「ほら、中を見て。やっぱりIntel入ってるでしょ」という想いが、今回の「Look Inside」というコーポレートロゴには込められているんじゃないだろうか。

 実際、ステージ上の2人が、Ultrabookをプライベートで持っていたとしても、いったい何に使うのか。そのユーセージモデルは、ぼくらのようなおじさんには実感がない。WordやExcelで文書を作り、PhotoshopやPremiereでビジュアル加工したりはもちろん、ブラウザでTwitterやFacebookというイメージもあまりない。イベント当日の様子は椎名ひかりさんのブログにさっそく公開されているが、投稿はiPhoneからだった。でも、彼女たちの使い方のモデルが見えてくれば、それがPCの新たなフォームファクタを誕生させるようにも思う。

 彼女たちは、女子中高生にとってのカリスマ的存在だというが、思いっきりとんがったように見える彼女たちの背後には、数多の現役女子中高生がいて、彼女たちの一挙手一投足に注目している。新たなムーブメントがそこから起こったりもするに違いない。

 ちなみに椎名ひかりさんは、日本ツインテール協会の師範代だそうだ。もちろん「Twin Intel」というわけではなさそうだが、もう、ちょっと理解の範疇を超えていて、自分が情けなくなってくる。

もっと新しい当たり前としてのジョーシキが起こすムーブメント

 ぼくらは今、便利と豊かさのまっただ中にいて、その恩恵が見えにくくなっているようにも思う。過去において、IntelがPCで指し示してきた新しい当たり前とは、まったく別のところに、ムーブメントとしてのジョーシキがあって、それは、便利や豊かとは正反対の位置にあるかもしれないけれど、なにやらときめきを感じる何かに向かうためのヒントがそこにあるのかもしれない。

 Intelの新しいタグライン「Look Inside」はダブルミーンで、自分自身の内面を見つめ直して未来に向かおうということなのかもしれない。セレモニーでの光景は、そんな壮大なことを考えさせるに十分な体験だった。

(山田 祥平)