山田祥平のRe:config.sys

Googleが調べたマルチディスプレイの使われ方

 スマートフォンとPC、そしてTV。ごくごく普通の人々が、毎日の生活の中で接するディスプレイは、この3種類だ。PCはスマートフォンに置き換わってしまっているのか、そして、TVディスプレイはかつてほどの影響力を持っているのか。Googleによるその分析結果を考えてみる。

ユーザーを5つのタイプに振り分け

 今回の調査では、インテージのシングルソースパネルのデータを使い、約500人のユーザーが2013年6月1日から30日までの1カ月間に、どのようなメディアに触れたかを調べたという。ちなみに、日本全国の20代から60代の男女で、スマートフォン、PC、TVを保有しているのは3人に1人の割合だという。

 スマートフォンとPCについては、個々のデバイスにソフトウェアを常駐させておき、30秒に1度、どのようなサイトを見たかを調べた。すべて自動的に記録されるようになっていて、ユーザー自身が忘れているような行動についてもきちんと記録に残る。そこがアンケート調査や聞き取り調査などとは異なる点だ。

 また、TVについては、TVの音声を録音するデバイスを設置して録音、それをセンターサーバーで分析して、表示されていた番組を特定したという。この方法なら、録画番組の再生であっても、ある程度は信頼性のあるデータが採れそうだ。

 詳しい調査結果については、前編後編に分けてレポートがまとめられているので、そちらを参照していただきたいが、その分析によって、ユーザーは5つのグループに分類された。似た行動をとるユーザーをグループに振り分けていった結果である。

  • キマジメ大食らい - 22% デバイス利用時間が長く、メディアを使ってどんどん知識を蓄積していく。
  • ハラハチブ自由人 - 15% TVは夜くらいしか見ない。ゆとりを持って自分だけの時間を大切にする。SNS空間も騒がしく感じている
  • ヒマツブシ貴族 - 30% TVをつけっぱなしで、PCやスマートフォンを見ている。リアルな人間関係を大事にする。
  • 探索ナルシスト - 22% PCの利用が少なく、メインはスマートフォン。気になったことはすぐに調べないと気が済まない。
  • 社交的ハンター 12% 常に人とつながっていたい。そのためにもSNSでも積極的に発信する。リアル、バーチャル問わずにネットワークづくりが好き。

 ここで興味深かったのは、性別や年代による行動の偏りが、予想以上に小さかったことだという。つまり、過去においてはシニア層に向けた○○、女性向けの××といったターゲティングをするのが、メディアプランナーの腕の見せ所だったわけだが、スマートフォンやPC、TVを個々にとらえた場合と違い、クロスメディアで捉えると、その定説が必ずしも当てはまらないのだそうだ。

きっかけはどのデバイスが起こすのか

 マルチディスプレイユーザーが、TVを見ている総時間のうち、PCやスマートフォンでインターネットを利用している時間は24%だったという。つまり、60分の番組を見ているうち、15分程度はスマートフォンやPCを併用しているわけだ。

 Googleでは、ここで集めたデータをさらに深く分析する予定でいるという。ある番組が始まるとSNSでは「祭り」が始まるが、これをソーシャル化として、十把一絡げにしてしまっていいのかどうか、どういう人が積極的で、どういう人が距離を置いているのかといったことを、さらにデータを分析することで、まだまだ隠された事実が分かってくるらしい。

 この分析では、TVでの出来事が、スマートフォンやPCでの検索のきっかけになるような行動が見て取れるが、本当にそうなのかどうかは分からない。

 例えば、スマートフォンでSNSを見ていたら、なにやら大騒ぎになっているからTVを付けてみたということもあるかもしれない。また、ネコが見ても1%と言われるTVの視聴率だから、TVはついているだけで、スマートフォンやPCでの行動とは無関係かもしれない。また、録画したTVドラマを見ている途中に、大事な用件のメールが届いて、再生を一時停止させてメールの返事を書いているような行動もありそうだ。データを調べていくことで、こうした行動も明らかになっていくのだという。

 ちなみに、これらのデータの収集と分析だが、Googleが持つデータだけではどうにもならないことが明らかにされている。つまり、ユーザーの行動はGoogleを通り過ぎるトラフィックばかりではないため、いやがおうにも調査機関のデータに頼らなければならないということで、Googleが我々の全ての行動を監視しているようで怖いという話にはならないのだそうだ。これはちょっと安心した。

自分は違うぞという意識

 読者諸氏はどのグループに分類されそうだろうか。あるいは、どのグループにも当てはまらないぞという方もいると思う。

 ぼくが自分自身のことを考えたとき、TVを見るきっかけは、スマートフォンやPCが起こすことが多いように思う。その一方で、TVを見ている時は、スマートフォンやPCをいじることが少ないようにも思う。なんとなく1〜5のグループのどれにも当てはまらないように思うのだ。

 この3つのディスプレイを比べたときに、個人的には、PCがもっとも饒舌であり、融通がきくデバイスだと感じている。スマートフォンには、さまざまな情報が同期されているので、いつでもどこでもそれを参照できるし、PCの代わりにも使える。でも、あくまでもPCのサブセットであり、ある程度以上のことをするためには結局PCを手に取ることになる。その方が手っ取り早いからだ。例外はPCが手元にない時なのだが、外出時を含めてPCが手元にないということは、ほとんどない。

 まして、自宅で使っているようなフルHDを4台といった環境での調べものや、ニュースやトピックスのチェックは、スマートフォンの小さなディスプレイだけでやるよりも圧倒的に効率がいい。モバイルPC 1台でも、スマートフォンとは比べものにならないのだが、デスクトップPCのマルチディスプレイ環境には敵わない。一目で見渡せる情報量が圧倒的に多いからだ。とにかく効率がまるでちがう。

 また、TVについては、その一方通行のコミュニケーションに、あきらめにも似た感情を持っていて、まずは、手元のタブレットやPCで番組表を確認し、面白そうな番組をやっていることを知ってから電源を入れるという感じだ。そして、お目当ての番組が終わったら、ほとんどの場合、すぐに電源を切ってしまう。

 ただ、夜中に地震の揺れを感じたようなとき、最初に見るのはスマートフォンかTVかというと、やっぱりTVだったりする。でも、TVのディスプレイに地震速報が表示されるよりも、それを待つ間に手に取ったスマートフォンのTwitterタイムラインの方が早く地震の様子がわかる。こういうのを経験していると、これからもTVを速報メディアとして期待していいものかどうか迷うところだ。

新人類はいないのか

 自分自身を新人類のように位置付けたいわけではないが、行動分析の結果が、たった5つのグループに累計化できてしまったことは驚きだ。この時代になってもそうなのかという印象だ。どれにも当てはまらないように、突飛な行動パターンを持つ層が一定量いるような気もするのだが、実際にはどうなのだろう。先入観にパターンを当てはめる調査ではあぶり出されないようなことも、ビッグデータの分析をすれば、見えてきそうなだけに気になるところだ。テクノロジーの進化によって、かつては考えられなかったような詳細さで、各種の調査ができるようになったのは興味深い。

 ということで、今年もあとわずか。いろんなことがあった年だが、今年は特に通信関連での動きが記憶に残っている。今週も、日本通信から、MVNO市場育成の時代が終焉し、本格競争による切磋琢磨時代の到来を宣言した新たなサービスの発表があった。来年は、いったいどんなことが起こるのか。

 いずれにしても、引き続き、よろしくお願いいたします。どうか、よいお年をお迎えください。

(山田 祥平)