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元麻布春男の週刊PCホットライン

折りこみチラシに見るPC市場の2極分化


■折りこみチラシで読むPC市場

 テレビで、公務員に賞与が支給されたというニュースを聞くと、ボーナス商戦もたけなわ。毎朝届く新聞の折込み広告にも、ボーナス商戦を意識したものが増えてくる。ボーナス商戦に期待をかけるのはPC業界とて例外ではなく、ウチの新聞にもヤマダ、コジマ、ダイエー、ビックカメラ、J&P、T-ZONEなど、PCを扱ったチラシがはさまれてきた。別に何かを探すというアテがあるわけでもなく、漠然とチラシを眺めていたら、あることに気づいた。売っているPCは、ほとんどCeleronかK6-2を搭載したものばかりで、Pentium IIIを搭載したPCなどどこにもないのである。

 いや、嘘を言ってはいけない。Pentium IIIを搭載したPCが広告に載っていないと言うのは大げさすぎる。極めて少ないだけである。ウチにきた広告に掲載されているPCについて、どんなCPUを搭載しているか調べたのが下の表だ(スペックが明記されているもののみを集計)。

【ノートPC】
  Celeron K6-2 Pentium II/III MMX Pentium
ダイエー 5 0 3 0
コジマ 7 2 2 1
ヤマダ(大) 8 3 1 0
ヤマダ(小) 8 2 1 0
ビックカメラ 8 1 7 1
T-ZONE 10 2 5 1
J&P 1 3 2 0
小計 47 13 21 3
※Pentium II/III搭載機は25%

【デスクトップPC】
  Celeron K6-2 Pentium II/III MMX Pentium
ダイエー 6 1 0 0
コジマ 4 6 0 0
ヤマダ(大) 6 3 0 0
ヤマダ(小) 3 0 0 0
ビックカメラ 8 3 3 0
T-ZONE 7 2 3 0
J&P 5 0 0 0
小計 39 15 6 0
※Pentium II/III搭載機は10%

【合計】
  Celeron K6-2 Pentium II/III MMX Pentium
合計 86 28 27 3
※Pentium II/III搭載機は18.75%

 ノートPC、デスクトップPCとも、圧倒的にCeleronが多数を占めている。特に、デスクトップPCの分野では、Pentium IIIを搭載したPCは非常に少ない。というより7枚のチラシのうち、Pentium III搭載デスクトップPCが掲載されているのは2枚だけなのである。

 だが、このコラムを読んでいる読者の中にも、Pentium IIIを搭載したPCを使っているユーザーはたくさんいるはずだ。秋葉原に行けば、箱に入ったリテールパッケージのPentium IIIが沢山売られている。特に、ローエンドのPentium III(450MHzや500MHz)は、CPU単体の実売価格が18,000円~23,000円程度と、極めて値ごろ感のある価格設定がされており、かなり売れているように思う。

 また、今回集めたチラシには掲載されていなかったが、TV CMでおなじみ? のソーテックが販売する168,000円のPC(Pentium III 500MHzベースで、DVD-ROMドライブとCD-R/RWドライブの両方を標準搭載したヤツ)は、納期がいつになるかわからないほど売れているという。おそらく同様に、デルやゲートウェイといった直販系のメーカーは、かなりの数のPentium III搭載機を販売しているのではないかと想像される。

 だが、こうしたPentium IIIが売れているという様子は、広告チラシからは全く読み取れない。そこにあるのは、Celeronを搭載した安価なシステムばかりだ。いったい、これはどういうことなのだろう。

■PC発展のカギとは?

 おそらく今、日本のPC市場は、かなり極端な2極分化が進んでいるのではなかろうか。Celeronを搭載した低価格PCを支える新しいタイプのPCユーザーと、Pentium IIIを搭載した多機能なPCを支持する古いタイプ? のPCユーザーだ。PCに様々な機能を求める後者は、単純に安価なPCより、ある一定の予算枠の中で最も価格性能比の高いPCを求めるものと思われる。PC WatchのようなPC関連のWebサイトを見たり、パソコン雑誌を買ってくれるのは、こちらのユーザーだ。

 これに対して前者は、PCにさまざまな機能を求めておらず、“インターネットにアクセスできる”ということが第一義であり、それが満たされる限り安価な方が良いと考えている、と思われている。だが、本当にそうなのだろうか。もちろん、そういう割り切った考えのユーザーがいることを否定はしないが、むしろそれ以外の使い方を知らない人が多いように思う。あるいは、ほかの使い方を知っていても、難しくて自分に関係ないと考えているのかもしれない。機能を欲張って高いPCを買っても、使いこなせなければ無駄になってしまう。そうした心配が安価なPCへ向かわせている、ということはないのだろうか。

 安価なPCは、こうしたユーザーにもPCへの道を開いたという点で、高く評価すべきには違いない。だが、PC業界がもっと楽しいPCの使い方の提案、PCの使い勝手を向上させるための努力をしなければ、PCの低価格化とインターネット端末化(単機能化)に歯止めをかけることは難しいだろう。PCが発展を続けていくカギは、PCの多機能性を維持したまま、いかに多くのユーザーに様々な機能を実際に使わせるか、という点にかかっているように思われてならない。

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('99年12月15日)

[Text by 元麻布春男]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp