悲運のビデオカード Voodoo3 3500 TV/Millennium G400 MAX |
双方ともシリーズ最高峰の製品ということで発売前から注目度の高かったVoodoo3 3500TVとMillennium G400 MAXが市場に登場してはや1カ月。しかし、未だにVoodoo3 3500 TVは日本語環境で問題山積の英語版のみの販売、Millennium G400 MAXは流通量が極端に少なく入手困難と、ほとんどの人が入手を控えている、または入手できない、という状況は発売当初からほとんど変わっていない。
Millennium G400 MAX |
Voodoo3 3500 TV |
本来であれば、双方とももっと早い時期に本連載で取り上げるべき製品であることはわかっているが、製品自体の問題や流通量の問題などのために見送らざるを得なかった。しかし、S3やNVIDIAが次世代チップを発表するなど、ビデオチップの世代交代が迫ってきており、このままでは完全に時期を逸してしまうため、入手済みのVoodoo3 3500 TV英語版とMillennium G400 MAXを急遽取り上げることにした。特にVoodoo3 3500 TVでは製品本来の機能全てを試せない状態でのレビューとなってしまうがご了承願いたい。
■魅力的な機能に、現状最高のパフォーマンス
まずは、この2製品の特徴を簡単に紹介しておこう。
“大蛇”のようなケーブル。ディスプレイのみを接続する場合もこのケーブルが必要となる |
Voodoo3 3500 TVは、Voodoo3シリーズ最高峰として期待されていた製品である。搭載されているVoodoo3チップはコアが183MHzで動作し、内蔵RAMDACも350MHz対応と、シリーズ最高峰のチップである。また、ビデオメモリとしては16MBのSDRAMが搭載されている。ビデオ入出力やVGA出力が、“大蛇”のような専用ケーブル経由でなければならないため、ケーブルの取りまわしではやや問題が生じる可能性がある。付属ソフトとしては、Uleadのビデオキャプチャ・編集ソフト「VideoStudio 3.0SE」、DVD再生ソフトの「WinDVD」、ゲームソフト「Unreal」などがある。
Voodoo3 3500 TVの特徴は、TV/FMチューナー搭載によるテレビ/FM受信機能やビデオキャプチャ機能などだ。これらは従来のVoodoo3シリーズには用意されていない機能で、この点に魅力を感じるユーザーも少なくないはずだ。そして、最大の特徴といえるのが、ソフトウェアによるMPEG-2ビデオキャプチャ機能である。
これまでも、TVチューナー機能やビデオキャプチャ機能を搭載するビデオカードは多数あった。しかし、MPEG-2によるビデオキャプチャ機能はほかにはない大きな特徴といえる。もちろんソフトウェアによるMPEG-2エンコードなので、かなりのCPUパワーが必要になることは間違いないはずだ。しかし、AKIBA PC Hotline! 8月7日号でも既報のとおり、MPEG-2によるビデオキャプチャ機能やTV/FMチューナー機能は、日本語Windows 98環境ではほとんど使用不能と考えなければならず、せっかくの機能も現状では意味がない。これら機能を利用したいのであれば、日本語版の登場を待つしかない。
対するMillennium G400 MAXは、ビデオメモリとしてSGRAMを32MB搭載し、標準でDualHead Displayをサポートするなど、Voodoo3 3500 TV同様シリーズ最高峰の製品である。ただ、従来製品との違いとしては、搭載されるビデオチップのパフォーマンスが高い点と、標準でDualHead Displayをサポートしている点が中心で、それ以外の機能には大きな違いはない。
PowerStripの情報ウィンドウ。Millennium G400 MAX搭載時のものだが、メモリクロックが201.0MHz、コアクロックが150.8MHzと表示された |
搭載されるビデオチップは、従来製品同様「256-bit DualBus」アーキテクチャの採用、「Environment-Mapped Bump Mapping」のサポートなどといった特徴があるが、従来製品に搭載されているチップとの大きな違いは、動作クロック周波数と内蔵RAMDACの性能である。残念ながら、ビデオチップやビデオメモリの動作クロック周波数は従来同様発表されていないため正確な数字は不明だが、ビデオメモリとして5nsのSGRAMが搭載されていることを考えると、ビデオメモリの駆動クロック周波数は200MHz以下であると思われる。ちなみに、PowerStrip(ビデオカード設定ツール)を利用してビデオチップとビデオメモリの駆動クロック周波数を表示させてみると、ビデオチップは150.8MHz、ビデオメモリは201.0MHzであった。
また、内蔵RAMDACは従来の300MHzから360MHzに変更されている。これにより、2,048×1,536ドット32bitカラーモードというような表示環境でも85Hzという高いリフレッシュレートを選択できる。
Millennium G400は、今年前半の最速ビデオカードであると言われているが、それよりもパフォーマンスの優れたチップを搭載するMillennium G400 MAXは、現時点で最速のビデオカードであると言って間違いないだろう。
■Voodoo3 3500 TVのビデオキャプチャ機能、TV/FMチューナー機能について
Voodoo3 3500 TVのビデオキャプチャ機能、TV/FMチューナー機能であるが、日本語Windows 98上で利用できないと紹介したが、日本語Windows 98上でWindows 95用ドライバを導入することで、それら機能を利用できるようになる(らしい)という報告がある。Windows 95用のMicrosoft WebTV for Windowsは存在しないため、ビデオキャプチャやTV/FMチューナー機能をMicrosoft WebTV for Windowsなしで利用できるというのだ。
TVチューナー、FMチューナーを起動しようとすると、このメッセージが表示されてソフトは強制終了される。Windows 95ドライバをインストールした環境ではこのメッセージは表示されなくなるものの、それでも正常に動作することはなかった |
また、ビデオキャプチャ機能であるが、VideoStudioを起動して入力ソースにビデオ入力端子を指定すると、ビデオ入力端子から入力された画面がオーバーレイ表示ウィンドウにきちんと表示された。しかし、いざキャプチャしようとすると、ソフト自体がハングアップしてしまい、何度やってもキャプチャに成功しなかった。
ちなみに、今回は製品付属のドライバおよび3dfxホームページに掲載されている最新ドライバを利用して試してみたが、Windows 98インストール直後の環境でもうまくいかなかった。ドライバやソフトのバージョン、マシン環境によって差があるのかもしれないが、今回試したような状況では、「使える」というレベルにはほど遠いといわざるを得ない。やはり日本語版のドライバが登場するまで待つ、というのが最善の方法であろう。
■描画パフォーマンスは双方ともシリーズ最高峰らしい結果
これら2製品について、これまでのHotHotレビューでビデオカードを取り扱った場合と同様のベンチマークテストをおこなった。もちろん測定環境も従来と全く同じである。さらに、過去の結果の中で主だったものもあわせて掲載しておく。
1.2Dパフォーマンス
2D描画パフォーマンスの測定には、Ziff-Davis,IncのWinBench 99 Version1.1に含まれるBusiness Graphics WinMark 99とHigh-End Graphics WinMark 99を利用した。このベンチマークテストでは、ワープロや表計算、フォトレタッチソフトなど実在するアプリケーションの描画コードを再現することで、総合的な2D描画パフォーマンスを測定できる。測定条件は従来同様、解像度は1,024×768ドットで、16bitカラーモードと32bitカラーモードで測定した。
【WinBench 99 Version 1.1 Graphics WinMark】
Business Graphics WinMark 99/16 |
High-End Graphics WinMark 99/16 |
Business Graphics WinMark 99/32 |
High-End Graphics WinMark 99/32 |
|
---|---|---|---|---|
Millennium G400 MAX |
194 | 550 | 190 | 541 |
Voodoo3 3500TV |
180 | 520 | 177 | 511 |
Voodoo3 3000 |
182 | 528 | 179 | 517 |
Millennium G400 |
192 | 556 | 189 | 548 |
Viper V770 Ultra |
186 | 522 | 182 | 518 |
この結果を見ると、双方とも従来の製品と比較して大きなパフォーマンス向上は見られなかった。それどころか、数字自体は若干悪くなっている。もちろんこれは誤差の範囲内と考えられるのであまり気にする必要はないだろう。ただ、1割とはいわないまでも、多少のパフォーマンス向上が見られると考えていただけに、この結果にやや驚きを感じたのも事実である。もちろん描画品質に関しては双方とも申し分なく、特にMillennium G400 MAXの描画品質は従来同様非常に高いレベルであるといっていいだろう。
2.Direct 3Dパフォーマンス
Direct 3D環境での総合的な3D描画パフォーマンスは、FutureMarkの3DMark99 Maxを利用して測定した。測定条件は、解像度は800×600ドット、1,024×768ドット、1,280×1,024ドットの3種類で、それぞれについて16bitカラーモードと32bitカラーモードで測定した。
800x600/16 | 800x600/32 | 1,024x768/16 | 1,024x768/32 | |
---|---|---|---|---|
Millennium G400MAX | 5,002 | 4,975 | 4,873 | 4,487 |
Voodoo3 3500TV | 4,940 | d/s | 4,789 | d/s |
Millennium G400 | 5,062 | 4,971 | 4,820 | 4,107 |
Voodoo3 3000 | 5,002 | d/s | 4,631 | d/s |
Viper V770 Ultra | 4,930 | 4,856 | 4,567 | 3,881 |
1,280x1,024/16 | 1,280x1,024/32 | |
---|---|---|
Millennium G400MAX | 4,063 | 3,063 |
Voodoo3 3500TV | 4,762 | d/s |
Millennium G400 | 3,504 | 2,582 |
Voodoo3 3000 | 3,314 | d/s |
Viper V770 Ultra | 3,009 | 2,089 |
この結果を見ると、解像度が800×600ドットの場合のパフォーマンスが従来製品よりも劣っているが、解像度があがるにつれてパフォーマンスが高くなっている。また、Millennium G400 MAXでは32bitカラーモード時でのパフォーマンス向上が顕著となっている。
3.3Dゲーム(Direct 3D、Glide対応)のパフォーマンス
次に、実際にDirect 3DおよびGlideに対応する3Dゲームを用意し、そのゲームに用意されているフレームレート計測機能を利用してパフォーマンスを測定してみた。利用したゲームは、これまで同様Direct 3D/Glide両方の3D APIをサポートしたTurok2:Seeds of Evilである。
800x600/16 | 800x600/16/Glide | 800x600/32 | |
---|---|---|---|
Millennium G400MAX | 56.9 | d/s | 59.2 |
Voodoo3 3500TV | 58.8 | 75.3 | d/s |
Millennium G400 | 57.8 | d/s | 57.0 |
Voodoo3 3000 | 60.2 | 73.7 | d/s |
Viper V770 Ultra | 60.6 | d/s | 57.7 |
1,024x768/16 | 1,024x768/16/Glide | 1,024x768/32 | |
---|---|---|---|
Millennium G400MAX | 58.6 | d/s | 57 |
Voodoo3 3500TV | 53.4 | 72.0 | d/s |
Millennium G400 | 56.0 | d/s | 53.8 |
Voodoo3 3000 | 57.9 | 65.5 | d/s |
Viper V770 Ultra | 57.8 | d/s | 52 |
1,280x1,024/16 | 1,280x1,024/16/Glide | 1,280x1,024/32 | |
---|---|---|---|
Millennium G400MAX | 54.2 | d/s | 47.8 |
Voodoo3 3500TV | 39.4 | 53.2 | d/s |
Millennium G400 | 51.0 | d/s | 42.2 |
Voodoo3 3000 | 45.6 | 45.9 | d/s |
Viper V770 Ultra | 53.1 | d/s | 35.3 |
こちらも、先ほどの3DMark99 Maxと同じような傾向となっている。Millennium G400では高解像度で32bitカラーモードであるほどパフォーマンスが良くなっている。また、Voodoo3 3500 TVでは、Direct3Dモードでのパフォーマンスはあまり良くないが、Glideモードでのパフォーマンスは従来製品を上回っており、十分にパフォーマンス向上を確認できる。
4.OpenGL対応ゲーム
最後にOpenGL対応ゲーム、Quake IIを利用したベンチマークテストの結果だ。
800x600/16 | 1,024x768/16 | 1,152x864/16 | 1,600X1,200/16 | |
---|---|---|---|---|
Millennium G400MAX | 64.3 | 62.5 | 56.4 | 測定不能 |
Voodoo3 3500TV | 117.8 | 91.1 | 73.8 | 測定不能 |
Millennium G400 | 66.0 | 58.6 | 50.5 | 28.2 |
Voodoo3 3000 | 117.2 | 82.1 | 67.2 | 35.2 |
Viper V770 Ultra | 79.1 | 51.9 | 41.2 | 21.6 |
この結果もこれまでの結果と同じように、解像度があがるほど結果が良くなっている。双方ともに非常によいスコアを記録しており、OpenGL対応ゲーム利用時でも高いパフォーマンスを発揮できるといっていいだろう。ただし、今回利用した2製品では、1,600×1200ドットの解像度を選択した場合、正常にゲームが動作しなかったため、計測はおこなわなかった。
■確かに現状最速だが、もはや買うべき製品とは言えない
Voodoo3 3500 TV、Millennium G400 MAXともに、今回のベンチマークテストの結果から考えると、双方ともにシリーズ最高のパフォーマンスを誇る製品であるといって間違いないだろう。
Voodoo3 3500 TVは、従来のVoodoo3シリーズ同様、32bitでの3Dレンダリングをサポートしないという大きな欠点はあるものの、MPEG-2ビデオキャプチャ機能とTV/FMチューナー機能が魅力であることは確かだ。英語版は日本語Windows 98環境下でこれらの機能を利用できないものの、日本語版が登場すればその問題も解決される。
また、Millennium G400 MAXに関しては、現状での最速ビデオカードであるといっていいだろう。標準で搭載されるDualHead Display機能も魅力で、パフォーマンスだけでなく機能にも魅力を感じるユーザーも少なくないはずだ。
とはいっても、これら2製品は既に購入時期を過ぎてしまっていると言って過言ではない。なぜなら、S3およびNVIDIAから、ハードウェアジオメトリ演算機能を搭載する次世代ビデオチップ(S3のSavage2000、NVIDIAのGeForce256)が発表され、それら次世代ビデオチップを搭載する製品が早ければ来月以降には市場に登場しそうだからである。
確かにVoodoo3 3500 TVやMillennium G400 MAXのパフォーマンスや機能には魅力があるし、現状最速ビデオカードであるかもしれない。しかし、9月2日のIDFレポートでも触れられているように、Savage2000やGeForce256の圧倒的な3D表示能力を前にすると、これら2製品のパフォーマンスも完全に色あせてしまう。それほどまでに、次世代ビデオチップのパフォーマンスは飛び抜けているのである。
8月中に出荷されると言われていたVoodoo3 3500 TV日本語版の発売は未だ定かではなく、Millennium G400 MAXの出荷量もまだまだ非常に少ない。もしここ1~2週のうちにVoodoo3 3500 TV日本語版が登場したり、Millennium G400 MAXの出荷量が大幅に増えたとしても、その数週間後には圧倒的な3D表示能力を持つビデオカードが確実に登場してしまうのである。そうなると、これら2製品をおすすめすることなど到底できないのである。
残念ながらこの2製品は、せっかく魅力的な機能や高いパフォーマンスを持っているにもかかわらず、登場時期が遅くなったり、製品出荷が順調におこなわれなかったために活躍の場を失ってしまった悲運の製品であると言わざるを得ないだろう。
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[Text by 平澤寿康@ユービック・コンピューティング]