元麻布春男の週刊PCホットライン

Intelのモバイル向け新チップセット、ちょっと謎なデビュー



■ モバイル向けの440MXと440ZX-66チップセット

 今年の初め、筆者は今年の目標?の1つに、ノートPCの更新を挙げた。その後、つなぎとして3年落ちのThinkPad 560旧モデルを衝動買いしたものの、これで当分の間を乗り切れるとは思っていない。近い将来、もっと新しくてパワーのあるノートPCを買いたいとは思っている。だが、なかなかコレというマシンが見つからない。というより、新しいマシンは出るのだが、いずれも高価で、とても筆者の予算には合致しないのである。そういう意味で筆者が期待しているのは、Pentium II/IIIより安価なCeleronを採用したバリューPCクラスのノートPCということになる。この5月17日にもIntelは、このセグメント向け新製品の発表を行なった。

 発表の中心はモバイル向けのCeleron 366MHzプロセッサ。既存のモバイルCeleronのクロックアップ版で、動作クロック以外の仕様で特に変わったところはないが、1,000個ロット時の価格は170ドルで、非常にリーズナブルである。だが、Celeron以上に注目されるのは、このCeleron 366MHzと同時に2種のチップセットが発表されたことだろう。




■ データシートが公開されていない440MX

 発表されたチップセットは、モバイル向けの440MXと440ZX-66チップセット。440ZX-66は、すでにデスクトップPC向けには発売済みであり、厳密な意味での新製品は440MXのみ、ということになる。今回の発表で異例なのは、この440MXについて、ちゃんとした?資料がまだ公開されていないことだ。通常Intelは、プロセッサやチップセットを発表すると同時に、開発者向けのWebサイトで、正式な仕様(データシート)を公開する。しかし、440MXについては、本稿執筆時点で、データシートが公開されておらず、440MX Mobile Platform Performance Briefと呼ばれる文書が公開されているのみである。Performance Briefというのは、Intelが自社のプロダクト間の性能比較のために出す資料で、これまで主にプロセッサについて出されてきた。おそらくチップセットを対象にPerformance Briefが出されたのは、これが初めてではないだろうか。今回比較の対象となっているのは、440BXと440MXの2つで、結論は両者の性能はほぼ等しい、というものだ。

 この440MXの特徴だが、データシートがない以上、手がかりは上のPerformance Briefとプレスリリースしかない。これらによると440MXは、440BXのNorth BridgeとSouth Bridgeを1チップ化したようなアーキテクチャだが、AGPのサポートがない。現時点でサポートしているFSBは66MHzのみだが、将来モバイルPentium III(0.18ミクロンプロセスで製造されるモバイルCoppermine)をサポートする100MHz FSB対応版がリリースされる予定だ。また、新しい機能として、AC'97コントローラが実装されており、外部にAC'97互換のCODECチップを接続するだけで、ソフトウェアオーディオとソフトウェアモデムが実現できる。

 以上のような特徴から、440MXの位置付けを考えた場合、ローエンドのバリューPCセグメント向け、と見るのが普通だろう。チップセットを1チップ化したこと、ソフトウェアオーディオやモデムを可能にしたことなど、ローコスト化を主眼にしたことは間違いない。あえてAGPをサポートしていないのも、バリューPC向けであることを考えればそれほど不思議ではない。ところが、モバイルPentium IIIをサポートするために将来100MHz FSB対応版が登場するというのは、明らかに440MXがパフォーマンスPCセグメントにも使われることを示している。この一見矛盾に見える記述は、何を意味しているのだろう。




■ ローエンド向け?440MXとPentium IIIを組み合わせる意味

 本来440MXはやはりバリューPC向け、それも1チップという特徴を生かして、ミニノートPC(日本でいうサブノートPC)向けに開発されたものだと思う。しかし、年内はCeleronには使われず、Pentium IIIにのみ用いられる0.18ミクロンプロセスの省電力性を活かすには、消費電力の低い1チップ構成の440MXが望ましい。これが440MXをPentium IIIと組み合わせる理由だろう。元々バリューPC向けに開発された440MXを、パフォーマンスPC用としても売らなければならないことが、チップセット初のPerformance Briefの提供になった(性能が悪くないことを断らなければならない)、と考えてはうがちすぎだろうか。

 それはともかく、今回発表されたチップセットの価格は、10,000個ロット時に、440MXが22.35ドル、440ZX-66が26ドル。モバイルCeleron 366MHzと合わせても、200ドルしない。後は、これらを生かした低価格なノートPCの提供を望みたい。筆者の偏見かもしれないが、ノートPCで大きなシェアを持つ日本のベンダーは、価格を下げることに抵抗が強いようだ。価格を下げたからといって売れるわけではないという発言は良く耳にする。本当にそうなのかもしれないが、筆者はもっと安価なノートPCがあっても良いと思う。液晶パネルが不足気味(つまりは値段が下がりにくい)という事情はあるだろうが、440MXにモバイルCeleronを組み合わせた筆者にも買えるノートPCを誰か作って欲しいものである。

□Intel Mobile Celeron 366MHzと440MX/440ZXチップセットのプレスリリース(英文)
http://developer.intel.com/pressroom/archive/releases/mp051799.htm
□Intel 440MXチップセット製品資料(英文、PDF)
http://developer.intel.com/design/chipsets/440mx/440mxpf.htm
□Intel 440ZX-66Mチップセット製品資料(英文、PDF)
http://developer.intel.com/design/chipsets/440zx/66m.htm
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[Text by 元麻布春男]


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