元麻布春男の週刊PCホットライン

今年の目標:ノートPCの購入


 どうも明けましておめでとうございます。元麻布です。本年もよろしく。
 と、形通りの挨拶をすませたところで、この国で年の始めといえば、やはり今年の抱負や展望を語るというのがお定まり。1年の計は元旦にありということなのだが、筆者はこうした習慣をもたない。それどころか、このところ毎年、年越しと新年を過ごす箱根の某ホテルで、元旦の朝食が今年から「おせち」に統一されたことに腹をたてているほどだ(元旦から洋食のセットメニューを要求するのは、そんなに変なことだろうか?)。

 しかし、実は今年に限っては、個人的にちょっとした目標をたてている。それは、ノートPCの買い換えである。筆者が今使っているノートPCは、東芝のT-3600というi486DX2-50MHzベースの骨董品? なのだが、いよいよこれを更新したい、というのが'99年の野望だ。いまだに486ベースのノートPCを使っていることでも明らかなように、そもそも筆者にとってノートPCの優先順位は低い。自宅で仕事をする職業柄、普段ノートPCを持ち歩く機会などほとんどない。Webにニュース原稿を書くなど、「日」単位の締め切りを抱えている身なら、発表会や説明会の場にノートPCを持ち込む必要もあろうが、幸い筆者が抱える締め切りは、もっとも短いサイクルのものでも「週」単位である(このコラムがまさにそうだが)ので、ノートPCを常時携帯する必然性はない。
 にもかかわらずノートPCが必要なのは、年に2~3回出かける海外取材(米国取材と言い換えても構わない)のためである。現地で電子メールを読み、現地で書いた原稿を送るために、やはりノートPCが要る。だが、筆者が海外で過ごすのは、どう多く見積もっても年間で30日程度。たかだか1年の1/12のために、高額の投資などできるハズがない。使える予算があれば、まず1年の11/12を占めるデスクトップPCに注ぎ込むのが必然だ。

 そんな筆者が、ノートPCを買い換えようかという気になったのは、自民党の税制調査会で、'99年4月1日から1年限りの時限措置として、100万円以下の情報機器の単年度償却を認める方針が決定されたから(後述するが、筆者はこれを良いことだとは思っていない。誤解なきよう)。デスクトップPCに比べ割高なノートPCの価格は、ほとんどが20万円を超えてしまう。これを現在の税制にあてはめると、6年間での減価償却が必要になる。だがノートPCに限らず、PCを6年間使うというのは、そもそも現実味がない。'98年、個人向けPCの売り上げが好調だったのに対し、企業向けの売り上げが不振を極めた理由の1つは、間違いなく'98年4月1日から適用されたこの税制だろう。

 しょせんPCなど6年ももたないという意味では、今回の時限措置など全くナンセンスなものでしかない。少なくとも筆者は、この枠組み自体を変えようとしない政権党(自民党)には、絶対に投票していないのだが、正当な手続きで決定されている以上、国民としては従わざるを得ないのも、また事実である(筆者が選挙を棄権したのは20歳の頃にあるだけで、21歳以降はない)。できれば、帳尻合わせの時限措置の尻馬に乗るようなことはしたくないのだが、さすがに486では辛い。国民の半数近くがいまだに自民党に投票するという現実を考えると、今年ノートPCを買い換えなければ、2度とノートPCを買う機会などないかもしれない。そう思って、半ば渋々ではあるものの、ノートPCの購入を考えている、というわけだ。
 では、どんなPCが良いのか。「表1」に筆者の要求する仕様をまとめてみた。若干補足しておくと、筆者は流行りのB5薄型ノートPCには、あまり興味がない(大人のおもちゃとしての魅力は認めるが)。欲しいのは、海外出張時に仕事をするマシンであり、毎日持ち歩く気がない以上、機能がすべて揃っていることが軽量薄型に優先する。また、移動中に使うこともほとんどないので、バッテリ駆動時間も重要ではない。

表1

理想妥協点
サイズA4/厚さ40mm以下
キーボード英語101キー
ポインティングデバイスTrackPoint or アキュポイントトラックボール
CPUPentium II以上
メモリ64MB以上
HDD4GB以上
リムーバブルSuperDiskFDD
液晶サイズ14.1インチ13.3インチ
液晶解像度1,024×768ドット
内蔵モデム(非PC Card)56kbpsモデム内蔵モデム非内蔵
PCカードスロット×1(モデム非内蔵の場合 ×2)
バッテリ駆動時間3時間以上1時間
重量2.5kg以下3kg以下
価格20万円以下30万円以下

 そのほかの仕様で重要なのは、DVD-ROMドライブの内蔵である。しばらく前まで筆者は、

CD-ROMドライブ内蔵 > 非内蔵薄型

と考えていたが、今は、

DVD-ROMドライブ内蔵 >非内蔵薄型 > CD-ROMドライブ内蔵

に変わっている。'98年にMicrosoftが開催したPDC(Professional Developers Conference)から、配布資料のメディアはDVD-ROMになった。ということは、今回購入するノートPCの有効寿命をふまえ、たとえば2年後のMicrosoftやIntel主催のカンファレンスで、資料がCD-ROMで配られる可能性はほとんどゼロであろう。つまり、今回CD-ROM内蔵ノートPCを買うと、2年後は利用価値のほとんどなくなったCD-ROMドライブを抱えて、太平洋を渡らなければならなくなる(着脱式ならまだ救われるが)。そのくらいなら、CD-ROMドライブを内蔵しない方が、デッドウエイトがないという点で、まだマシである。そして、最も優れているのは、当然ながらDVD-ROMドライブ内蔵モデル、ということになる(カンファレンスの参加者の数を考えれば、資料はスタンプ可能なDVD-ROMを用いるハズで、現時点で大半のDVD-ROMドライブに欠けているDVD-RAMメディアとの互換性はまず問題にならない、というのが筆者の読みである)。A4サイズで厚さ40mmを掲げているのも、DVD-ROMドライブの内蔵を前提にしていればこそだ。したがって非内蔵であれば、話は変ってくる。

 A4である以上、液晶ディスプレイの解像度は1,024×768ドットであることが、筆者にとってほとんど必然だ。液晶ディスプレイの大きさは大きければ大きいほど良いが、14.1インチか13.3インチかは、どちらでも構わない。リムーバブルメディアをSuperDiskにしているのは、フロッピーディスクと互換性を持つ大容量リムーバブルメディアで、実用化されているのがほかにないからである。とはいえ、通常のFDDでは不可というほど、強い要求ではない。
 残るスペックのうちモデムの内蔵は、パワーマネージメント上、カードモデムより有利な点を買ってのことだが、バッテリ駆動時間に大きなこだわりがない以上、必須というほどのものではない。むしろ、持って行くのを忘れる心配がないことの方が重要かもしれない。入力デバイス(英語キーボードとスティック系のポインティングデバイス)は、完全に筆者の好みである。プロセッサのスペックは、3年後も利用しなければならないであろうことを考えれば、このくらいが最低条件だと思う。
 さて、問題の価格だが、現行の税制上20万円以下なら3年間の償却期間で済むことを考えれば、これがPCに払える上限である。妥協点に示した30万円という数字は、時限措置を踏まえた上で、筆者が1年の1/12利用するマシンに支払う適切な価格を考えて算出したものだ。したがって、時限措置を踏まえた上で、メインマシンとしてノートPCの購入を考えるのであれば、もう少し予算をとっても良いと思う。あるいは、最近東芝が打ち出している、ノートPCのアップグレードというのは、日本の税制を意識してのものかもしれない(ただ、現時点では同社のアップグレードで、ノートPCが6年間利用可能になるかどうかは、実績がないため不明である)。

 以上のような「理想」を前提に、現時点で入手可能なオールインワンタイプのノートPCを調べたのが「表2」だ。赤で示したのは、理想どころか妥協点からも完全に外れた項目、黄色で示したのは妥協点には何とかおさまった項目である。ベンダの選択は、主に英語キーボードのマシンが買えそうなベンダという観点から選んでいるが、たとえば松下電器産業、ソニー、日本電気といったベンダには、DVD-ROMドライブ内蔵のノートPC自体が存在しなかった。ただ、日本IBMの英語モデルのように、代理店販売で英語キーボードが事実上の受注生産である場合、一括導入の大企業はともかく、筆者のような個人/SOHOユーザーには、ほとんど無関係かもしれない。

表2

メーカー名日本IBM東芝東芝ダイレクトデルコンピュータ日本ゲートウェイ2000コンパック
機種名ThinkPad 600ETECRA 780DVDTECRA 8000 DVDINSPIRON 3500SOLO5150ARMADA 7800Pro
サイズA4/36.5mmA4/54mmA4/43mmA4/39mmA4/40.5mmA4/50.8mm
キーボードJISひらがな *1英語キーオプションあり(有償)英語キー標準JISひらがな *2英語キーオプションありJISひらがな *3
ポインティングデバイスTrackPointアキュポイントアキュポイントタッチパッドEZPad PlusイージーポイントIII
CPUPentium II 300MHzPentium II 266MHzPentium II 300MHzPentium II 266MHzPentium II 233MHzPentium II 300MHz
メモリ64MB標準64MB標準64MB標準96MB64MB64MB
HDD6.4GB8.1GB8.1GB4.0GB4.0GB8.0GB
CD/DVD-ROMドライブDVD-ROMDVD-ROMDVD-ROMDVD-ROMDVD-ROMDVD-ROM
リムーバブルSuperDiskオプションありFDDFDDFDDSuperDiskオプションありSuperDiskオプションあり
液晶サイズ13.3インチ13.3インチ14.1インチ14.1インチ14.1インチ14.1インチ
液晶解像度1,024×768ドット1,024×768ドット1,024×768ドット1,024×768ドット1,024×768ドット1,024×768ドット
内蔵モデム(非PCカード)x2K56Flexなしなしなしなし
PCカードスロット2基2基2基2基2基2基
バッテリ駆動時間3時間4時間3.5~4時間3時間3.3時間2時間
重量2.5kg3.3kg3.0kg2.9kg3.0kg3.8kg
標準価格
実売価格
499,000円
NA
788,000円
NA
NA
498,000円
NA
383,355円
NA
332,640円
748,000円
NA
*1 同時発表のThinkPad 235には英語キーボード交換サービスあり。過去のThinkPad 600には英語モデルあり
*2 英語OSの英語モデルは英語キーボードのハズだが、日本語OSで英語キーボードが選べるかは不明
*3 過去に英語キーボード採用の英語モデルを提供した実績あり

 「表2」を見ればわかる通り、すべてのDVD-ROMドライブ内蔵PCが、筆者には予算オーバーである。だが、直販であるデルとゲートウェイの価格には、今後の値下げを考えれば希望が持てる。デルの場合、液晶サイズを13.3インチに落とせば(同時にCPUがPentium II 233MHzになる)、ゲートウェイ並の価格になる。また、ゲートウェイには、SOLO3100という、この表にはない隠しダマが存在する。表から漏れたのは、ディスプレイ解像度が800×600ドットであるからだが、もしSOLO3100に1,024×768ドット液晶パネル搭載モデルが設定されれば、一気にダークホースになるかもしれない。SOLO5150と異なり、SOLO3100のポインティングデバイスがスティックであるのも筆者にはポイントが高いし、重量も2kgそこそこと軽量だ。デルと異なり、オンラインショップの標準オプションに英語キーボードが用意されている点も、筆者にとって好ましい。MPEG-2デコーダカードを外す、モバイルCeleronを搭載するなどして、価格を下げたモデルが欲しいところである。時限措置の発効期間内に、果たしてそのようなモデルは登場するだろうか。
 そのほかのベンダは、価格の点で筆者には縁遠い。確かにThinkPad 600は、色のついた項目が最も少ないし、東芝ダイレクトのTECRA 8000 DVDも、43mmの厚みさえ許容してしまえば、ほぼスペック的には満点である。だが、両者ともCPUやハードディスクのスペックが高い分、価格も高く、とても筆者の予算にはおさまりそうもない。この点で、BTOの直販メーカーがやはり有利であることを実感する。

 果たして、筆者は年内に(夏ごろをメドに考えているのだが)ノートPCを買いかえられるのか(本当に時限措置が実施されるのかを含め)、自分自身が興味を持って成り行きに注目している。

[Text by 元麻布春男]


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