レポートをお送りする前に、日本市場から見たComputex Taipeiの位置付けについてご紹介しよう。ご存じの通り、台湾には世界のPC市場をリードする企業が数多く存在する。国内の通信機器市場においては、かなりのモデムが台湾メーカーからOEM供給されており、オールインワンモデルに標準搭載されているものも含めると、7割近いシェアを持つのではないかと言われている。そのOEM供給元を探す格好の展示会がCOMPUTEX TAIPEIというわけだ。そのため、会場ではBUYERのバッジを付けた日本人が数多く見受けられ、PCメーカーの重役や秋葉原のPCショップのスタッフに出くわすこともある。出展社側も商談相手を探すのに躍起になっており、私が日本人とわかるや「コレ、JATE、OKね」などと片言の日本語で話しかけてくる。つまり、COMPUTEX Taipeiはエンターテインメント性の強い日本の展示会と明らかに性質が異なるというわけだ。
こうした事情もあるため、今回のレポートは「どこのメーカーがどんな製品を出していたか」というより、「どんな製品が存在するか」ということを重点的にレポートすることにした。
気になる方式についてだが、日本と同じようにRockwell Internationalなどが提唱するK56flexに対応した製品が目につく。採用するチップセットはRockwell製だけでなく、Lucent Technologies製も多く、「途中で切り替える」とコメントするベンダーもいた。
ただ、気になるのはいくつかのベンダーがデータシートなどで、K56flex 2と表記した点だ。まだ詳しいことはわからないが、K56flexにはいくつかのバージョンがあるとの情報もあり、ひょっとするとK56flexにもまだ仕様変更があることを意味しているのかもしれない。この点については取材の上、改めてレポートしよう。
一方、U.S.Roboticsなどが採用するx2 Technologyに対応した製品も予想以上に数多く陳列されていた。搭載されているチップセットはU.S.Roboticsなどと同じTexas Instruments製が圧倒的に多いが、GVCのように、Cirrus Logic製のx2 Technology対応チップセットも採用するとコメントしているメーカーもあった。実は、GVCは国内メーカーへのOEM供給元として最大手と言われおり、この他にもRockwell製、Lucent Technologies製、Texas Instruments製チップを採用した56kbpsモデムを展示していた。つまり、「どれでも来い」というわけだ。また、その他のメーカーではデータシートに「56kbps : K56flex or x2」と表記するところも見受けられた。
これらのことを総合すると、多くの台湾メーカーはITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)や業界各社による標準化団体OPEN 56K Forumの動向などによって、臨機応変に対応できる体制を整えているということになる。やはり、56kbpsモデムはまだまだ混沌としそうな気配だ。
右の写真を見てもわかる通り、HSPモデムは圧倒的に部品点数が少ない。モデムに限った話ではないが、製品を安くするには部品点数を減らすのが第一と言うわけだ。HSPモデムはパソコンに搭載されたCPUにDSPと同じような役割を持たせ、PentiumのCPUパワーで高速通信環境を実現している。すでに、V.34対応の28.8/33.6kbpsモデムは出荷されている。HSPモデムはコストが安くなる上、ソフトウェアをパソコンにインストールしたソフトウェアを更新するだけでアップグレードできるというメリットも持っており、特にオールインワンモデルの内蔵モデムに最適と言われている。
このHSPモデムを開発しているのがアメリカのPC telというメーカーで、すでに56kbps対応モデムチップ(ただし、現状は33.6kbpsまで)も出荷を開始している。Windows3.11、Windows95、Windows NT4.0、OS/2 WarpなどのOSが動作するPentium100MHz以上のCPUを搭載したマシンというのが動作条件だが、最新版ではMMX PentiumのCPUパワーをフルに活用したソフトウェアも供給するとアナウンスしている。56kbpsプロトコルはK56flex、x2 Technologyのどちらにでも対応できるとしており、今回のショーでもこのPC tel製チップを採用した製品が数多く出品されていた。ただし、いずれの製品も56kbps対応のソフトウェアアップグレードは年内になる模様だ。
また、他のモデムチップメーカーもコントローラ部分をパソコン本体のCPUに処理させる内蔵モデムを製造していると言われている。56kbpsの標準化がどうなるかという問題は残されているが、今年の年末商戦に投入されるオールインワンモデルには安価なHSPモデムやコントローラレスモデムが増えることになるかもしれない。
まず、会場を入ってすぐに目についたのがAcer NetxusのISDN T30というISDNターミナルアダプタだ。写真ではわかりにくいが、デザインがなかなかユニークな製品だ。スペック表を見る限り、V.110及びV.120非同期通信モード、PPP/64Kbps、MP/128Kbpsなどに対応し、BACPやBOD機能まで搭載するなど、ほぼ申し分のないスペックを持っている。実はこの製品、すでにテレコムデバイスというメーカーが日本向けにローカライズしており、DSUなしのモデルが秋葉原などで3万円台で販売されている。「ショーで発見したら、すでに出荷されていた」とは随分動きが早い気もするが、画一的なデザインの製品が多い中、注目できる存在と言えそうだ。
一方、ルータではGVCが曲線を使ったデザインの製品を展示していた。製品のスペックなどはわからないが、日本向けにOEM供給する最大手のメーカーであるだけに、今後、他のメーカーなどから登場することになりそうだ。
また、今回のショーで最も数多く見かけたのがISDNカードだ。もちろん、OEM供給が中心ということになるのだろうが、モデムを製造しているメーカーの半数以上がISDNカードを手掛けているといった感じで、その多くがデータシートなどでINSネット64対応を謳っている。しかもそれらの製品の多くが前述のHSPモデムにも負けないほど、部品点数が少なく、非常にシンプルな構成になっている。国内でも9800円のISDNカードが話題になったが、これらの製品なら5000円以下でも十分利益が出そうだ。今年の後半のオールインワンモデルではISDNカードを標準装備するメーカーが増えるかもしれない。
家庭用テレビに接続するからと言って、決していい加減なものではない。システム部分はITU-T H.324、オーディオ部分はITU-T G.723、ビデオ部分はITU-T H.263といった具合いに、標準的なテレビ会議の規格に準拠し、内蔵モデムもV.34/33.6kbps対応。背面にはテレビとつなぐAV端子、ローゼットと電話機に接続するTEL/LINE端子などが並んでいる。
筐体の大きさは既存のモデムなどよりもわずかに大きい程度で、テレビの上に置いてもまったく違和感はない。OEM供給価格も5万円程度とかなり手頃だ。もちろん、実際のテレビ会議をするには両方にTeleVyou400が必要になるが、テレビと電話回線があれば、使えるので、パソコンに詳しくない人にもおすすめできる製品と言えそうだ。どこか、TeleVyou400を日本向けに販売してくれませんかねぇ……。
まず、KINGROYALというメーカーが出展していた外付け赤外線通信ポートIrJet(写真上左)。マザーボードのIrDAコネクタやシリアルポートに接続し、PDAやノートパソコンなどとデータ転送が可能になる代物。ケーブルの部分がフレキシブルに曲げられるようになっているのがなかなか面白い。通信速度は最大115.2kbpsまでだ。
次に、大理石模様のモデムのケース(写真上右)。実は、モデムそのものが参考出品されていたのだが、そのスペックよりもケースのデザインが気に入ってしまった。この他にも同じような大理石模様の製品がいくつか展示されていたんだけど、ひょっとして台湾の人々は大理石がお好みなのだろうか。日本でもウケるかな?
3つめはUSBポートの増設カード。これも複数のベンダーが展示していた。USBのないパソコンでもUSBカードを増設すれば、USB周辺機器が利用できるというわけだ。もちろん、Windows95 OSR2.1以上でなければ、ドライバがないので使い道がないのだが、編集長のCOMDEXレポートにもある通り、今年の後半はUSB周辺機器が一気に増えることになりそうなので、ちょっと気になる存在。ちなみに、Computex Taipeiでは各ホテルと会場を回るバスがINTELの提供でサービスされていたが、その中で流れていたビデオではUniversal Serial Busというバスの運転手がUSBについて解説していた(笑)。ひょっとして、COMDEX Springでもやってるのかな?
このパッケージを販売するSOHO MEDIAという会社は、この他にも同様のパッケージをいくつか販売しているようで、他のコンビニエンスストアでは音楽ビデオを収録した『非常娯楽』(Cyber Music)というパッケージも見つけることができた。音楽ビデオをブラウザ上で鑑賞しようというわけだ。アクセス先のURLはソニーミュージック台湾法人が指定されていた。
日本でも花王がコンビニエンスストアでCD-ROMタイトルを販売しているが、音楽会社や食品メーカーとタイアップしてしまうのは商魂たくましい台湾ならではの発想かもしれない。台湾だからと言ってニセモノのたまごっちだけじゃないんだなと感じさせられる商品だった。
[Text by 法林岳之]