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オーバーギガヘルツ バリューPC向けCPU対決!
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●Morganコアとしては2製品目となるDuron 1.1GHz
本日発表されたDuron 1.1GHzは、MorganコアのCPUとしては2製品目にあたるCPUで、8月20日(現地時間)に投入されたDuron 1GHz( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010820/amd.htm )の高クロック版と考えてよい。以前本コーナーでもDuron 1GHzのリファレンスシステムを利用したレポート( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010824/hotrev122.htm )をお届けしたが、その時も説明したようにMorganコアのDuronは、従来のSpitfireコアのDuronに比べて以下の点が強化されている。
1.キャッシュ周り(ハードウェアプリフェッチ、TLBの排他制御)
2.SSE互換命令セットの追加
3.設計の見直しによる最大20%の発熱量の低下
4.温度センサーの内蔵
性能面に大きな影響を与える変更は1.と2.で、特にキャッシュ周りの強化はこれだけで10%程度の性能向上が期待できる。また、3DNow! Professionalと呼ばれる52の新命令セットが追加されている。これはIntelのストリーミングSIMD拡張命令(SSE)互換で、これによりMorganコアのDuronではAMDが定義した3DNow!テクノロジ、その拡張版であるエンハンスト3DNow!テクノロジ、さらにIntelのSSEと、Pentium 4のみでサポートされるSSE2を除きほとんどすべてのx86系拡張命令セットを実行することができる。なお、このほかの点、システムバスのクロック(200MHz)やL2キャッシュの容量(64KB)などに変更はない。
Celeron 1.1GHz、1GHz、950MHzの3製品は、基本的には従来のCeleron(Coppermine-128k)の高クロック版で、システムバスのクロックは100MHzとなっているなど、仕様に変更はない。なお、情報筋によればIntelはまもなくCeleron 1.2GHzを出荷するという。Celeron 1.2GHzは、CPUコアがこれまで利用されてきたCoppermine-128kからTualatin-256kという現在Pentium III 1.2GHz、1.13A GHzに利用されているコアに切り替えられる。Tualatin-256kは製造プロセスルールが0.13μmになったコアで、この変更によりL2キャッシュがこれまでの倍となる256KBになり、駆動電圧が下がるため、消費電力が低減するのが特徴といえる(システムバスは変わらず100MHzとなる)。性能に大きな影響を与えるL2キャッシュの容量が増えるため、性能面ではこちらがCeleronの本命となる可能性が高い。
ただ、Tualatin-256KコアのPentium IIIがそうであるように、Tualatin-256KコアのCeleronもシステムバスの電気信号の仕様が従来のCoppermineベースのCeleronとは異なるので、新しいシステムバスの仕様に対応したマザーボードが必要になる。そうした意味では、現在Celeronのシステムを利用しているユーザーのアップグレードに利用するのは難しいだろう。
●ベンチマークテストではDuron 1.1GHzがCeleron 1.1GHzに圧勝
今回はDuron、Celeronのパフォーマンスを確認するために、CPU、メモリ、マザーボードを除き同じ環境をそろえてテストを行なうことにした。前回のDuron 1GHzシステムのレビュー( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010824/hotrev122.htm )では、システム構成を変更することができなかったため、同じ環境をそろえて比較することができなかったが、今回はCPUに依存するチップセット(マザーボード)、そしてそのチップセットに依存するメモリを除いて全く同じ環境にそろえることができた。
【動作環境】
CPU | Celeron | Athlon | Duron |
---|---|---|---|
マザーボード | Intel D815EEA | GIGA-BYTE GA-7DXR | GIGA-BYTE GA-7DXR |
チップセット | Intel 815 | AMD-760 | AMD-760 |
メモリ | PC133 SDRAM(133MHz、CL=3) | PC2100(CL=2.5) | PC1600(CL=2) |
メモリ容量 | 256MB | ||
ビデオカード | GeForce3(64MB、DDR SDRAM) | ||
ハードディスク | IBM DTLA-307030(30GB) | ||
OS | Windows 2000+ServicePack2 |
チップセット、メモリはDuronがAMD-760+PC1600、CeleronがIntel 815+PC133 SDRAMを利用した。これはそれぞれ純正のチップセットを選択した結果で、IntelではP6バス向けとしてチョイスできる純正チップセットはIntel 815ファミリーだけになっているため、こうした選択となった。Intel 820というDirect RDRAMをサポートしたチップセットもない訳ではないが、現時点ではIntel 820を搭載したマザーボードは入手不可能といってよく、選択肢に入れることはしなかった。なお、比較対象の意味でAthlon 1.13GHz、1GHz(266MHz)、Duron 950MHzの結果も掲載しておく。
【SYSmark2001】
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Duron 1.1GHz Duron 1GHz Celeron 1.1GHz Celeron 1GHz Athlon 1.13GHz Athlon 1GHz Duron 950MHz |
【Winstone 2001】
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Duron 1.1GHz Duron 1GHz Celeron 1.1GHz Celeron 1GHz Athlon 1.13GHz Athlon 1GHz Duron 950MHz |
【3DMark2001】
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Duron 1.1GHz Duron 1GHz Celeron 1.1GHz Celeron 1GHz Athlon 1.13GHz Athlon 1GHz Duron 950MHz |
【Quake III Arena】
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Duron 1.1GHz Duron 1GHz Celeron 1.1GHz Celeron 1GHz Athlon 1.13GHz Athlon 1GHz Duron 950MHz |
【Pentium 4 Application Launcher】
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Duron 1.1GHz Duron 1GHz Celeron 1.1GHz Celeron 1GHz Athlon 1.13GHz Athlon 1GHz Duron 950MHz |
結論からいえば、一部のテストを除き、ほとんどすべてのテストで、Duron 1.1GHzはCeleron 1.1GHzを上回った。アプリケーションベンチマークのSYSmark2001では、コンテンツ作成系のInternet Contents Creationを除き、総合スコア(SYSmark2001 Rating)、オフィスアプリケーションによるOffice ProductivityなどでDuron 1.1GHzがCeleron 1.1GHzを上回った。また、同じくビジネスアプリケーションベンチのBusiness Winstone 2001、コンテンツ作成系アプリケーションベンチのContents Creation Winstone 2001、3Dアプリケーションベンチの3DMark2001、3DゲームのQuake III ArenaなどいずれもDuron 1.1GHzがCeleron 1.1GHzを大幅に上回っている。SSE、SSE2に対応したアプリケーションを実行し、かかった時間を計測することで相対性能を計測するPentium 4 Application Launcherでも、Incoming Forcesを除きDuron 1.1GHzがCeleron 1.1GHzを上回って見せた。
●現時点ではバリューPC向け最強のDuron 1.1GHz
以上のような結果から、今回リリースされたDuron 1.1GHzは、現在あるバリューPC向けCPUの中では最強といえるだろう。まだ、実際に市場に出荷されていないため市場価格は不明だが、1,000個ロット時の価格は103ドル(日本円で約1万2千円)となっており、実際この程度の価格で市場に投入される可能性が高い。
先週末のAKIBA PC Hotline!の調査( http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010929/p_cpu.html )によれば、Celeron 1.1GHzの市場価格は1万2~3千円であるという。となると、Celeronとあまり変わらない価格で購入することができるため、ほぼ同じ価格に並ぶことになる。であれば、相対性能で上回るDuron 1.1GHzがコストパフォーマンスが高いということができ、コストパフォーマンスの観点からみてもメリットは小さくない。
また、自作ユーザーにとってアップグレーダビリティという意味でもDuronはCeleronを大きく引き離す。すでにCeleronのシステムを持っているユーザーで、マザーボードがTualatinのシステムバスの仕様をサポートしていない場合、前述のCeleron 1.2GHz、そして今後発売されるそれ以降のCeleronにアップグレードすることはできない。もちろん、システムバスの仕様も、ソケットの形状も全く異なるPentium 4にアップグレードすることはできない。
これに対して、Duronは既存のSocket Aのインフラの上に成り立っており、今後より高速なクロックのDuronが出荷されても使い続けられる可能性が高い。また、マザーボードが266MHzのシステムバスクロックをサポートしていればAthlonや、今後登場するであろうデスクトップ版Palominoへのアップグレードも可能だ。このため、自作ユーザーが少ない投資でできるだけ高いパフォーマンスを望むのであればDuron 1.1GHzはよい選択肢といえるだろう。
メーカー製PCを購入するコンシューマユーザーにとっては、Duron 1.1GHzを手にするまでにはもう少し時間がかかるだろう。その理由は、Duron 1.1GHzは大手PCメーカーにとってはパフォーマンスPCとするにはクロックが低く、バリューPC用としてやや高めという製品であるからだ。というのも、現在PCメーカーがバリューPCで利用するCPUは、いずれも100ドルを切ったもので、現在の主流は950MHz、1GHzあたりとなっている。100ドルを超えるようなDuron 1.1GHzやCeleron 1.1GHzは採用しにくい。
今後、各PCメーカーから秋、冬モデルが続々と登場するが、そうした中にはとりあえず1GHzクラスのCPUを搭載したマシンが主流になる可能性が高い。そうした意味では、コンシューマがDuron 1.1GHzを搭載したマシンを手にすることができるのは次の商戦期となるだろう。しかし、ホワイトボックス系など、ショップブランドメーカーはいち早く採用してくることも考えられ、Duron 1.1GHz搭載PCがほしいユーザーはそうした製品を検討してみるといいだろう。
□米AMDのホームページ(英文)
http://www.amd.com/
□ニュースリリース (英文)
http://www.amd.com/us-en/Corporate/VirtualPressRoom/0,,51_104_543~9923,00.html
□関連記事
【10月1日】米AMD、Duron 1.1GHzを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011001/amd.htm
(2001年10月1日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]