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●サウスブリッジにもプロセッサを内蔵
IGPはGeForce2 MX相当のグラフィックスコア(Graphics Processor)が入っているのでプロセッサなのはわかる。では、MCPはなぜプロセッサなのか。じつは、MCPの正体はDSPだ。というか、DSPとサウスの各種インターフェイスを統合したものだ。右のnForceのブロック図を見ると、それがよくわかる。
MCPの内部には3D/2Dオーディオをプロセッシングする「APU(Audio Processing Unit)」がある。NVIDIAは、このAPUをGPUと対になるプロセッサだと表現している。実際、APUは豪華なシロモノで、256ボイスの2Dオーディオ、64ボイスの3Dオーディオをハードウェアでサポートし、ドルビーデジタル5.1エンコード機能を持つ。基本的に、Xboxのオーディオ機能と同等の機能を備える。
APUはサウンドをレンダリングする固定機能DSPであるボイスプロセッサ(Voice Processor)のほかに、エフェクト処理などを担当するデュアル構成の汎用DSPを搭載する。このDSPは、APUの中に含まれているが、フルプログラマブルで基本的には独立したユニットだ。Xbox版のMCPである「MCPX」では、汎用DSPは200MHzで動作すると言われており、nForce MCPも同じスペックだと見られる。ちなみに、APU全体の処理性能は4BOPS(Billion Operations / Second)だ。
おそらくNVIDIAは、このMCP内のDSPに他の処理もさせていくと思われる。基本的にサウス側でプロセッシングした方が効率がいいもの、例えばADSLモデムのデジタル部処理などを、将来的にMCP側のDSPで処理させるという発想で、アーキテクチャを組み立てているのではないだろうか。PCの処理を、CPUでも専用LSIでもなく、強力なサブプロセッサを中心にしたチップに吸収させていこうという発想が見えるような気がする。
こうした考え方は、かつて流行った「メディアプロセッサ(Mediaprocessor)」に多少似ている。メディアプロセッサは、MPEG-2デコードから2D/3Dグラフィックス、サウンドジェネレーション、モデムまですべてをワンチップで実現することで、MPUの周辺マルチメディアチップを統合化してしまおうというコンセプトだった。そして、NVIDIAは、'95年の最初の製品「NV1」当時から、グラフィックスにサウンドプロセッシング機能も取り込むという、メディアプロセッサの香りがするコンセプトを持っていた。もともと、そういう指向性の会社だったのだ。
●投機的データプリフェッチング
では、それぞれのプロセッサの特徴は何なのか。まず、IGPの目立つ特徴は、DASP(Dynamic Adaptive Speculative Pre-processor)と呼ばれるデータのプリフェッチング機能を備えたことだ。これは、AMDの次期Athlon(Palomino:パロミノ)が備えている機能と同種のものだ。つまり、必要と思われるデータを前もってメモリから投機的にロードしておくことで、メモリアクセスのレイテンシを減らす。メモリ帯域の制約が緩くなるに従って、このアプローチはポピュラーになって来るかもしれない。ただし、nForceが現在サポートするAthlon/Duronの場合、次のコアでハードウェアプリフェッチを備えてしまうため、アドバンテージは薄くなってしまう。
IGPのもうひとつの特徴はデュアルチャネルDDR SDRAMインターフェイスで、これは独立した2つのメモリコントローラ(MC0とMC1)で構成される。それぞれDDR266(PC2100)をサポートするため合計4.2GB/secのメモリ帯域となる。これは、PC向けチップセットでは最大だ。それぞれのMCは同時に独立して動作が可能で、IGP内部の各ユニットとクロスバー式に結ばれている。NVIDIAでは、これを「TwinBank Memory Architecture」と呼んでいる。そのため、IGPではデュアルチャネルと言っても片チャネルだけで動かすことがスペック上は可能になっている。メモリは512Mbit世代まで対応で、x8かx16の構成。最大1.5GBまでサポートする。
また、内部のグラフィックスコアはAGP 6X相当の帯域のバスで接続されている。バス幅が同じだとすると内部バスのクロックは100MHzということになる。ただし、チップ内配線なので、バス幅自体が拡張されている可能性もある。また、IGPはクロックジェネレータも内蔵する。
●アイソクロナス転送に力点
IGPとMCPの間はHyperTransportで結ばれている。帯域は800MB/secだ。NVIDIAは、HyperTransportを選択した利点を、帯域が広いだけではなくアイソクロナス(Isochronous)転送をサポートするため、帯域の確保が必要なデータの転送に優れる点にあると強調する。
nForceのMCPは、基本的にXbox向けのMCPXと同じものだ。おそらく、ダイ(半導体本体)が共通でボンディングオプションで作り分けるものと思われる。というのは、MCPにはPCIバスのようにXboxでは使われないファンクションが入っているからだ。MCPXは0.15μmプロセスで製造され、600万トランジスタで構成されると言われており、nForce MCPも同様だと思われる。
MCPで目立つのはもちろんAPUで、これは実際には汎用DSPと3つの専用ユニットで構成される。インターフェイス回りでは、10/100Base-TとHomePNA2.0のMACを搭載しており、これとUSBコントローラを合わせてコミュニケーションスイートと呼んでいる。また、MACからHyperTransportまでのアイソクロナス転送を実現する「StreamThru」と呼ぶアーキテクチャも備える。
また、OEMベンダーによると、NVIDIAはIEEE 1394インターフェイスをMCPに集積する計画を伝えていたというが、今回のMCPでは入っていない。機能ブロックとしては持っているのだが、まだ機能していないだけかもしれない。
(2001年6月8日)
[Reported by 後藤 弘茂]