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最後にして最強のThunderbirdコア製品となるか?
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本日、AMDはAMD Athlonプロセッサ(以下Athlon) 1.4GHzとAMD Duronプロセッサ(以下Duron) 950MHzを正式に発表した。先週末には、秋葉原でAthlon 1.4GHz、Duron 950MHzが発売され、既に実際に購入することが可能だ。今回のレポートではAthlon 1.4GHz(システムバス266MHz)を利用してベンチマークテストを行ない、ライバルであるPentium 4の最高クロックであるPentium 4 1.7GHzと比較してみよう。
●最後のThunderbirdコアとなる可能性が高いAthlon 1.4GHz
今回AMDが投入したAthlon 1.4GHzは、これまで同様Thunderbirdコアに基づいたものだ。本誌読者であればご存じだろうが、AMDはThunderbirdコアの後継として、Palominoコアを用意しており、既にこれを利用したモバイルAthlon 4プロセッサと、サーバー/ワークステーション向けのAthlon MPプロセッサを発表している。しかし、AMDはデスクトップPC向けのPalominoも第3四半期に投入する予定で、今回のAthlon 1.4GHzはThunderbirdコアとなっている。コア電圧はこれまでと変わらず1.75Vで、システムバスのクロックも200/266MHzに対応、拡張命令はエンハンスド3DNow!テクノロジなど、基本的には従来のAthlon 1.33GHzの延長上にある高クロック製品であると言える。
ところで、当初Thunderbirdコアは1.3GHzあたりが限界と言われていたが、いったいどのクロックまで利用されるのだろうか。情報筋によれば、現在のAMDのロードマップでは、今回発表されたAthlon 1.4GHzがどうも最後のThunderbirdコアの製品になりそうだという。複数からの情報をまとめると、5月時点でのAMDのロードマップでは以下のようになっているという。
第2四半期 | 第3四半期 | 第4四半期 | 第1四半期(2002年) |
---|---|---|---|
Palomino 1.73GHz | |||
Palomino 1.6GHz | |||
Palomino 1.53GHz | |||
Palomino 1.5GHz | |||
Thunderbird 1.4GHz(266) | Palomino 1.4GHz(266) | ||
Thunderbird 1.4GHz(200) | Palomino 1.4GHz(200) | ||
Palomino 1.33GHz | |||
Palomino 1.3GHz |
その情報筋によれば、AMDは第3四半期にPalominoを1.53/1.5/1.4/1.33/1.3GHzと一挙にリリースする予定であるという。さらに、第4四半期には1.6GHzが追加され、さらに2002年の第1四半期には1.73GHzを追加していく予定であるという。複数の情報筋がこの情報を確認しており、AMDがこうしたロードマップをOEMメーカーに説明しているのは間違いないだろう。仮にこのロードマップが今後も変更されないとすれば(もちろんAMDの公式見解ではないので変更される可能性もあるが)、本製品はThunderbirdコアとしては最後の製品と言うことになる。
●オフィスアプリケーションではPentium 4をブッチギリ
それでは、実際にベンチマークテストによりAthlon 1.4GHz(システムバス266MHz)とライバルであるPentium 4 1.7GHzとの差を計測してみよう(なお参考のために、Athlon 1.33GHz、Pentium 4 1.5GHzと1.4GHzの結果も掲載しておく)。今回ベンチマークに利用したのは、BAPCO( http://www.bapco.com/ )のSYSmark2001、MadOnion.com( http://www.madonion.com/ )の3DMark2001とVideo2000のMPEG Encoding Test、id Software( http://www.idsoftware.com/ )のQuakeIII Arenaによるフレームレート計測(demo001というデモファイルを利用)を行なった。テスト環境以下の通りだ。
【テスト環境】
CPU | Pentium 4 | Athlon |
---|---|---|
マザーボード | Intel D850GB | ASUSTeK A7M266 |
チップセット | Intel850 | AMD-760 |
メモリ | PC800 | PC2100(CL=2.5) |
メモリ容量 | 256MB | |
ビデオチップ | GeForce3(64MB、DDR tr align=center) | |
ハードディスク | IBM DTLA-307030(30GB) | |
OS | Windows 98 Second Edition(英語版)+Direct X 8.0a |
SYSmark2001( http://labpro.madonion.com/products/sysmark2001/ )は、アプリケーションベンチマークのスタンダードといってよいSYSmark2000の新バージョンで、これまで通り複数の実在アプリケーションを利用してその実行時間を計測し、相対的な数値を出すというもので、前バージョンのSYSmark2000に比べて利用されているアプリケーションが新しくなっているのが特徴だ。SYSmark2001ではOfficeやWebブラウザなどのオフィスアプリケーションの総合結果であるOffice Productivity、PhotoshopやHtml作成ソフトなどのコンテンツを作成系アプリケーションの総合結果であるInternet Contents Creationの2つ結果と、さらにそれの平均であるSYSmark2001 Ratingという3つの結果が出る。
【SYSmark2001】
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Athlon 1.4GHz Athlon 1.33GHz Pentium 4 1.7GHz Pentium 4 1.5GHz Pentium 4 1.4GHz |
さて、最初にオフィスアプリケーションによる結果(Office Productivity)だが、Athlon 1.4GHzは、実クロックでは大きく上回るPentium 4 1.7GHzを大きく上回った。同じ1.4GHz同士での比較では27%も上回っている。これに対して、コンテンツ作成系の結果(Internet Contents Creation)では、同クロックのPentium 4 1.4GHzは上回っているものの、Pentium 4の最高クロックである1.7GHzに対しては下回っている。これは、1つにはPentium 4がこうしたアプリケーションにフォーカスしたCPUであるためで、他方の理由としては今回のInternet Contents Creationテストに、ストリーミングSIMD拡張命令(SSE)やストリーミングSIMD拡張命令2(SSE2)に対応しているアプリケーションが多数含まれているためだ。ThunderbirdはSSEに対応していないため、これらのアプリケーションではやや不利な結果がでてしまうのだ(SSEに対応するPalominoコアに切り替わればもうすこし状況が変わるだろう)。なお、総合結果ではAthlon 1.4GHzがPentium 4 1.7GHzを若干上回った。
【3DMark2001】
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Athlon 1.4GHz Athlon 1.33GHz Pentium 4 1.7GHz Pentium 4 1.5GHz Pentium 4 1.4GHz |
3Dベンチマークだが、今回からビデオチップをGeForce3に変更した(前回まではGeForce2 MXを利用してのテストだった)こともあり、利用していた3DMark2000をDirectX 8に対応した最新バージョンの3DMark2001に変更した。その3DMark2001の結果だが、3DMark2000ではAthlon 1.33GHzがPentium 4 1.7GHzを上回っていたが、こちらではPentium 4 1.7GHzがAthlon 1.4GHzを上回ることになった。3DMark2001ではDirectX 8に対応したより負荷の重いテストが含まれるため、こうした異なった結果になった可能性が高い。さらに、QuakeIII Arenaの結果でも、CPUの差が出やすい低解像度ではPentium 4 1.7GHzがAthlon 1.4GHzを上回った。
【QuakeIII Arena】
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Athlon 1.4GHz Athlon 1.33GHz Pentium 4 1.7GHz Pentium 4 1.5GHz Pentium 4 1.4GHz |
なお、Video2000だが、このテストはSSEには対応しているため、SSEに対応しているCPUに有利な結果が出やすい。このため、SSEに対応したPentium 4がAthlonを上回っている。
【Video2000】
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Athlon 1.4GHz Athlon 1.33GHz Pentium 4 1.7GHz Pentium 4 1.5GHz Pentium 4 1.4GHz |
●Palominoが待ち遠しいが、今欲しいユーザーであれば買いのCPUである
以上のように、Athlon 1.4GHzはPentium 4 1.7GHzと比較して、オフィスアプリケーションの結果は非常に高速であるが、コンテンツ作成系や3Dなどでは若干Pentium 4に遅れをとっているといっていいだろう(もちろん同クロックで比べれば総合的にAthlonの方が高いパフォーマンスを持っているといって差し支えないだろう)。仮に、SSEに対応したPalominoコアが投入されれば、より差が縮まる可能性が高く、そういう観点からPalominoコアは非常に待ち遠しいということができるだろう。
ただ、だからといってPalominoを待った方がよいわけでもない。ThunderbirdとPalominoは基本的に同じCPUソケットで利用できる。そういう意味では、とりあえずThunderbirdを買っておいて、あとでPalominoがでたらPalominoに乗り換えるということも不可能ではないので、特にその点を気にする必要はないだろう(ただ、現行のSocket AマザーボードでPalominoが利用できるかどうかは現時点では必ずしも明確ではない)。
以上のようなことから、Athlon 1.4GHzは、オフィスアプリケーションで高い性能を発揮し、コンテンツ作成系・3Dなどでは若干Pentium 4 1.7GHzに劣るもののバランスは優れており、高い処理能力を持つCPUを買いたいというユーザーであれば検討に値する製品といっていいだろう。
□Akiba PC Hotline!関連記事
【6月2日】Athlonの最上位モデル1.4GHzがフライングでデビュー
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010602/etc_athlon14.html
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【6月6日】AMD、「Athlon MP」を国内でも公開
~Athlon 1.4GHzも正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010606/amd02.htm
(2001年6月6日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]