元麻布春男の週刊PCホットライン

21世紀初の買い物は3万円でデジカメを衝動買い


●21世紀初の買い物は?

 みなさんは、新しい世紀になってもう何か購入されただろうか。筆者にとって21世紀最初の買い物は、デジタルカメラであった。

 このコラムをずっと読んでいる方ならご存知の通り、筆者は手持ちのデジタルカメラ(FinePix1700Z)の買い替えを考えては断念する、ということを繰り返してきた。どれをとっても「帯に短しタスキに長し」という感じがして、踏ん切りがつかなかったのである。それが、ついに新しいデジタルカメラを買ったわけだが、慎重に考えた上での後継機選びに結論が出たというより、どちらかというと衝動買いに近い。また、こちらの心づもりも、FinPix 1700Zを置きかえる「買い替え」というより、「買い増し」に近いものだった。要するに、新年初売りでバーゲンになっていたものを購入したのである。


●DC280J Zoomを買ったわけ

今世紀初の買い物
コダック「DC280J Zoom」
'99年7月23日 発売
 買ったのは、コダックのDC280J Zoomだ。正確にいつからいつまでの売出しだったのかは分からない(筆者が購入したのは1月2日)のだが、新宿エリアのカメラ量販店で、この機種が28,800円~29,800円で売られていた(おおむね平常価格より1万円安)。この価格が直接の引き金になったわけだが、若干の伏線がなかったわけではない。

 某メーカーの発表会の帰り道、たまたま同席した山田祥平氏と話をする機会があった。氏は、F5はもちろんD1も所有するニコン党(ご本人は否定されているようだが)であるのだが、最近首からサブカメラとしてコダックのDC4800を下げていることが多い。筆者はその理由について、3倍ズームのワイド端が28mmだからですか? みたいな話をしたのである。デジタルカメラが広角に弱いことは、レンズ交換可能な一眼レフタイプでも変らない(CCDサイズの関係)。D1を持つ山田氏がわざわざDC4800を持つことの意味は、28mmにあるのではないかと考えたわけだ。そしてその時、「焦点距離が2mm長くなるけれど、古くなった分だけ実売価格の安くなったDC280J Zoomでもいいかもね」みたいな話が出たように思う。これが記憶のどこかに残っていたらしい。

 それはともかく、購入したDC280J Zoomだが、手にしてまず感じたのは「大きくて重い」ということだ。もちろん、このカメラはそれほど巨大なものではない。が、コンパクトなFinePix1700Zに慣れていたこと、見た目にそれほど大きさを感じさせないことが、こうした印象につながったのだと思う(FinePix1700Zの前に使っていたC-840Lと比べても一回り大きい)。

 おそらくDC280J Zoomが大きく重くなっている最大の理由は、電源に単三電池4本を使っていることだろう(FinePix1700ZはNP-80という専用リチウムイオン電池を用いるが、完全に独自というわけではなく、DC4800やAllegretto M70と同じもののようだ)。単三電池は入手が容易である上、充電池として安価な市販のニッケル水素電池が使えるという利点もあるが、容積や重量といった点で不利になるのは否めない(ニッケル水素電池の充電器も決して大きくはないが、コンパクトなFinePix1700ZのACアダプタよりはかさばる)。

 このニッケル水素電池4本を使った場合の電池寿命だが、あまり良い方ではないようだ。正確に何枚撮れるか測ったわけではないのだが、すぐにバッテリ残量の警告ランプが点灯する印象を受ける。だが、この警告ランプが点灯してからもある程度の枚数が撮れることを考えると、バッテリ残量が徐々に減って行くタイプではなく、いきなり警告として点灯することが、印象を悪くしている気がする。加えて、バッテリ交換時に、向きを気にしながら4本を入れ替えねばならないというのも、専用バッテリ(通常1本で済む上、逆挿しできない形状になっている)より見劣りするところだ。


●使用感をFinePix1700Zと比較 -- 言いたいことがないわけではないが

 DC280J Zoomの特徴の1つは、上述した通りズームの広角端が30mmと、一般的なコンパクトタイプのデジタルカメラに比べ、5mmほど焦点距離が短くなっていることだ。DC4800ではさらに2mm広角側が広がると同時に、3倍ズーム化されているが、DC280J Zoomは2倍ズームどまり。この差はかなり大きい。2倍ズームレンズが本体とほぼツライチになるところまで沈胴するのだから、取り外し式のレンズキャップ(撮影時には自動的に外れるようになっている点は工夫されているのだが)ではなく、開閉式のレンズバリアになっていればもっと良かったのにと思う。

 実際に撮影してみた感想は、基本的なカラーバランスは筆者の好む方向にあるものの、どうもハイライトが白飛びしがち、というものだ。コントラストの強い被写体は、あまり得意ではないように思われる。それ以上に気になったのは、メディアへの書き込みが遅いということ。DC280J Zoomは、最高画質で3枚分のバッファを持っており、そこまでは連続でシャッターが切れる(といっても、一眼レフのように連写できるのではなく、シャッターとシャッターの間に1呼吸必要になる)。それを超えるとメディア(CF)への書き込みが始まるのだが、1枚の書き込みに16~17秒かかる。これは、標準添付の8MBメディア(コダックブランド)でも、レキサー・メディアの8倍速タイプにしても変らなかった(ボトルネックになっているのはCFメディアではなく、本体側なのだろう)。

 幸い、バッファの管理は、一度フルになるとすべてクリアされるまでシャッターが切れなくなるタイプではなく、空きができた分だけシャッターが切れるタイプなのだが、1枚16~17秒というのはあまりに時間がかかる。FinePix1700Zは、バッファは持たないものの、最高画質でも3~4秒で書き込みが完了するため、待たされるという感覚はあまりなかった。逆に、書き込みのランプが点滅している間はシャッターを押さないクセがついてしまっているので、DC280J Zoomのようなタイプは扱いにくく感じてしまう。この点は、かなり慣れが必要になりそうだ。

 これまた慣れが必要で、まだ馴染めていないのは、液晶ディスプレイの輝度調整が可能、ということだ。おそらく様々な光線条件下で見やすいように、という配慮なのだろうが、おかげで撮影した写真がどのような明るさに写ったのか、サッパリ分からない。マクロモードの最短撮影距離が25cmどまりで、ズームがテレ端固定になるのも(これはこれで合理的かもしれないが)、慣れられないでいる部分だ。

 逆に、FinePix1700Zから見て明らかに良いのは、液晶ディスプレイの視野率だ。このクラスのカメラの光学式ファインダに多くを期待できないことは、なかば諦めている。しかしFinePix1700Zは、液晶ディスプレイの表示であっても、必ずしも実際に記録される画像データとフレーミングが一致しないため、常に頭の中での補正が要求される。その結果、写っていて欲しい部分が切れてしまったり、写らないで欲しいものが写ってしまったり、といったことが多々ある。このDC280J Zoomは、液晶ディスプレイの表示と、記録されるデータの一貫性という点では安心していられる。

 もう1つ良い点は、USBでPCと接続できることだ。FinePix1700Zはシリアルだったが、DC280J ZoomはUSB対応で、ケーブルやWindows 98用のドライバが標準で添付されている。USBのカードリーダを使えば済む、とも言えるのだが、筆者はUSBのカードリーダーで何度もトラブルに遭遇している。たとえばファイルを1枚づつ転送する分には問題ないのだが、まとめて転送するとフリーズするとか、カードリーダーがホットプラグで認識されない、といった問題だ。本体からいちいちメディアを抜き差しするのが面倒、ということも合わせ、PCに直接ケーブル1本で接続できるのはありがたい。ぜいたくを言わせてもらえれば、できれば接続に使うケーブルはUSBの標準的なケーブルであって欲しい(DC280J Zoomは本体側はDINコネクタ)とか、ドライバソフト経由でカメラが完全なストレージデバイスとして見えて欲しい(Windows 98用ドライバではカメラアイコンで、一般的なストレージと同じようなカット&ペーストはサポートされない)とか、言いたいことが無いわけではないが、大きな不満ではない。

 やはり、筆者がDC280J Zoomに最も大きな違和感を感じるのは、その大きさのようだ。どうも筆者には厚みがあって、ホールドしにくく感じる。が、FinePix1700Z並みに小さくて、ズームは3倍で、などと言い出すと、選択肢が極端に狭くなることも事実。本格的な後継機選びは、なかなか難しそうだ。

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【'99年6月22日】コダック、USBインターフェイスを備えた206万画素デジタルカメラ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990622/kodak.htm
【2000年11月8日】元麻布春男の週刊PCホットライン
デジタルカメラを買い換えられなかったわけ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001108/hot116.htm

(2001年1月24日)

[Text by 元麻布春男]


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