後藤弘茂のWeekly海外ニュース

次世代Athlon「Palomino」、1.5GHzでCOMDEX/Fall 2000に登場

●Pentium 4と同じクロックのデモで宣戦布告

Athlon 1.5GHz テクノロジデモ

 これは、AMDによるPentium 4への宣戦布告だ。というのもPentium 4の事実上のお披露目となったCOMDEX/Fall 2000で、対抗馬である次世代Athlon(Palomino:パロミノ)のデモをプレス向けに公開したからだ。COMDEXの会場では1.5GHzのPentium 4のデモが行なわれているが、AMDがデモしたのは同じ1.5GHzで動作するPalomino。AMDが打倒Pentium 4を意図しているなら、これ以上の対決宣言はない。

 もっとも、実際のPalomino 1.5GHzの製品化時期は来年第2四半期にずれる。そのため、クロックではPentium 4がAthlonを上回り続けるが、AMDは実際の性能ではAthlonがPentium 4を超えると主張する。このあたりは、Pentium 4が登場したらAMDがベンチマーク結果などを明らかにしてくるだろう。


 だが、AMDがCOMDEXでプレスに説明したCPUロードマップは、Palomino 1.5GHzのデモ以上に刺激的だ。それによると、AMDは2002年の前半までに、0.13μm化と新アーキテクチャの投入を含む、2世代のCPUコアチェンジを行なう。その間、AMD CPUの最高クロックはリニアに向上、来年中に1.7GHz、2002年前半に2GHzを超えるという。アグレッシブなAMDの製品計画は、勢いに乗る同社の自信を裏付けている。

デスクトッププロセッサ
ロードマップ
デスクトップチップセット
ロードマップ
デスクトッププロセッサの
ポジショニング

 COMDEX/Fallで説明されたAMDの新ロードマップは、直前に行なわれたAMDのアナリストミーティングで公開されたものと基本的に同じだ。大まかな流れを概説すると次のようになる。

200020012002
Hammer--SledgeHammer
--ClawHammer
AthlonThunderbirdPalominoThoroughbred
DuronSpitfireMorganAppaloosa



 まず、AMDは2001年早々に次のCPUコアチェンジを予定している。1,000ドル以上のメインストリームデスクトップPC向けCPUでは、現行のAthlon(Thunderbird:サンダーバード)から「Palomino(パロミノ)」に移行する。Palominoはサンプル出荷が今年12月で、量産が来年第1四半期だ。今回、デモにこぎ着けたことで、AMDはPalominoがスケジュール通りに進行していることを証明できた。

 Palominoは、基本的にThunderbirdの発展型で、製造プロセスも同じ0.18μm。しかし、AMDの以前の説明によると、より高クロックが可能になり、相対的に消費電力も低くなる。Palominoのキャッシュ構成は、Thunderbird(L1が128KB、L2が256KB)と同様になるという。AMDは、Palominoをデュアルプロセッサまでのエントリレベルサーバー&ワークステーション市場にも投入する。

 1,000ドル以下のバリューデスクトップ市場向けCPUでは、現行のDuron(Spitfire:スピットファイア)から「Morgan(モルガン)」へと移行する。サンプル出荷が来年第1四半期、量産出荷が第2四半期の予定だ。製造プロセスは0.18μm。Morganは、基本的にSpitfireの発展型で、CPUクロックの向上とクロック当たりの消費電力の低減を果たすようだ。Morganのキャッシュ構成は、Spitfire(L1が128KB、L2が256KB)と同様になるという。

 MorganはPalominoと同じCPUコアを使うが、製品スケジュールが1四半期遅れる。それは、新製品出荷によるAMDの負担を分散するためのようだ。2001年のAMD CPUファミリは、このPalominoとMorganのコンビで構成される。PalominoとMorganは、製造プロセス技術自体は従来と変わらないため、コアの世代交代は急速に進むと見られる。


●0.13μm化でさらに攻勢を強める

 2002年に入ると、AMDはいよいよ0.13μmへのシフトを開始する。まず、パフォーマンスデスクトップでは、Palominoから「Thoroughbred(スローブレッド=サラブレッド)」へ移行する。Thoroughbredは、基本的にはPalominoのシュリンク版だ。微細化により、高速化/低コスト化/低消費電力化を実現する。Thoroughbredは来年第4半期にサンプル出荷、2002年の第1四半期に量産の予定だ。つまり、Palominoからちょうど1年遅れとなる。

 バリューデスクトップでは、Morganから「Appaloosa(アパルーサ)」へ移行する。AppaloosaはMorganのシュリンク版だ。2002年第1四半期にサンプル出荷、第2四半期に量産の予定だ。

 ちなみに、AMDはAthlon/Duronのブランド名は当面維持し続けるという。つまり、Palomino/ThoroughbredはAthlon、Morgan/AppaloosaはDuronブランドになる。

 AMDは、0.13μmではこれらAthlon系CPUの他に新アーキテクチャのHammerファミリも投入する。Hammerは、まずハイエンドデスクトップとデュアルプロセッサまでのエントリレベルサーバー&ワークステーション向けの「ClawHammer(クローハマー)」から始まる。ClawHammerのスケジュールはThoroughbredと同じ。来年第4半期にサンプル出荷、2002年の第1四半期に量産となっている。

 Hammerでは、次に4~8ウエイサーバー&ワークステーション向けの「SledgeHammer(スレッジハマー)」が続く。AMDは、念願のミッドレンジから上のサーバー市場を、このSledgeHammerで初めて攻略することになる。SledgeHammerのスケジュールはAppaloosaとほぼ同じ。2002年第1四半期にサンプル出荷、第2四半期に量産となっている。

 また、AMDはPalominoとMorganのモバイルバージョンも同時期に提供する。従って、Mobile Athlonはサンプル出荷が今年12月で、量産が来年第1四半期、Mobile Duronはサンプル出荷が来年第1四半期、量産出荷が第2四半期のスケジュールとなる。

 新たにコードネームが増えて複雑になったAMDのCPUロードマップ。しかし、その一方で消えたコードネームもある。まず、サーバー&ワークステーション向けCPUコアだった「Mustang(ムスタング)」の製品化はなくなった。また、第1世代のMobile Duronとして投入されるはずだった、モバイル版Spitfireも延期になっている。こうしたCPUロードマップの変化の突っ込んだ分析は、次の機会に行ないたい。


●ClawHammerで2GHzを突破

Duron 850MHzのデモ

クロックは来年第1四半期に1.33GHz、来年第2四半期には1.5GHz以上、来年後半には1.7GHzに引き上げられる。そして、ClawHammerでは2GHz以上を実現するという。ハイエンドが高クロック化するのと同時に、ローエンドのクロックも上がってゆく。来年第1四半期には、Athlonのローエンドは1GHzに上がり、来年後半には1.2GHzがAthlonのローエンドになる。

 Duronのクロックもリニアに向上し、来年第1四半期には850MHz、第2四半期には900MHz、来年後半には1GHzになる。同時にローエンドも引き上げられ、AMDのデスクトップCPUのローエンドは、来年後半には900MHzを超える。つまり、900MHz以下のCPUはなくなってしまうのだ。今回、COMDEX/Fall 2000では、AMDはプレス向けにSpitfire版Duronの850MHzも公開している。


 モバイルプロセッサに関しては、詳しいクロックは明らかにされなかったが、Palominoのモバイル版は、来年半ばには1GHzに達するという。このほか、チップセットでは、新たに次世代システムバスアーキテクチャ「Lightning Data Transport(LDT)」を採用したチップセットが、来年後半に登場することも明らかにされた。

 これ以上にないほどアグレッシブなAMDのロードマップ。AMDは、今の絶好調を維持してロードマップをたどり、目標であるPC市場の3割シェアを獲得できるだろうか。


バックナンバー

(2000年11月14日)

[Reported by 後藤 弘茂]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp

Copyright (c) 2000 impress corporation All rights reserved.