RADEONは3Dチップ界の「カリスマ」となるか!?
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ATI Technologiesが4月末のWinHEC2000において発表した3Dグラフィックスチップ「RADEON256」を搭載したビデオカードが早くも発売になった。既に発売されているNVIDIAのGeForce2 GTS、3dfxのVoodoo5 5500などと並び、新世代3Dアクセラレータとして注目を集めている製品で、「Charisma Engine(カリスマエンジン)」と呼ばれるジオメトリ(ハードウェアT&L)エンジンを搭載するなど、旧モデルにあたるRAGE128 PROに比べて大幅に機能が強化されている。
●久々登場したNVIDIA以外の「大物」はいくつかの新機能を搭載
ここ最近、ハイエンドグラフィックスに関してはNVIDIAの一人勝ちという印象が否めない。NVIDIAが昨年の9月に初めてハードウェアT&LをサポートしたGeForce256をリリースして以来、常にグラフィックス関連の話題の中心となっている。以前、NVIDIAと激しく覇権を争っていた3dfxがVoodoo5 5500は何とかリリースしたものの、それ以外のカードは登場する気配もなく、元気がないことも大きく影響しているとはいえ、市場が停滞気味になっていたのは事実だ。そこに登場したのが、今回紹介するRADEON256だ。RADEON256はATI Technologies(以下ATI)が'98年の秋に発表したRAGE128以来となるフルモデルチェンジ(RAGE128 PROはクロックがあがっただけのマイナーモデルチェンジ)の製品で、ハイエンドグラフィックスの市場でNVIDIAに対抗すべく投入された新製品だ。
RADEON256の特徴はいくつかあるが、大きなところでは以下の点が挙げられる。
Pixel TapestryはRADEONのレンダリングエンジンの総称で、これまでの3Dグラフィックスチップにはないような新しいファンクションを持っている。具体的には以下のような機能を備えている。
これにより単なる描画性能もさることながら、表現力が大幅に向上しており、ATIによれば特に32bitカラー(1,677万色)モードでのパフォーマンス・表示クオリティの高さがRADEON256の大きな特徴となっているということだ。
●32MBのDDR SDRAMを搭載したRADEON 32MB DDR
既に秋葉原で販売が開始されているRADEON256を搭載した「RADEON 32MB DDR」は、ATI自身が発売する英語版のパッケージだ。パッケージこそ英語だが、添付されているドライバCDには日本語バージョンも同梱されている。
気になる動作クロックだが、EnTechのPowerStripで確認したところ、コアが166MHz、メモリが166MHz(実際にはDDR SDRAMなので倍の333MHz)であることが確認された。RADEON256の発表時には200MHzのDDR SDRAM(つまりDDRで400MHz)にも対応すると発表されたが、現時点では200MHzのDDR SDRAMを搭載したモデルは投入されていないようだ。なお、現在はまだ出荷されていないようだがビデオメモリにSDRAMを利用したバージョンもラインナップされている。こちらは廉価版という位置づけになる可能性が高く、NVIDIAのGeForce2 MX搭載カードと競合する形になるだろう。
カードのデザインは標準的なもので、ビデオ入出力などは用意されていない。ただ、PCB上にはパターンだけは用意されており、将来的にはそうしたカードが出荷される可能性もある。なお、既にATIはTVチューナーやビデオキャプチャ機能などをビデオカードに統合したALL-IN-WONDERのRADEON256バージョンである「ALL-IN-WONDER-RADEON」を発表済みで、ビデオキャプチャなどを必要とするユーザーであれば、こちらを選択するのも悪くない(現時点ではまだ発売されていない)。
●16bitカラーと32bitカラーの差が小さいRADEON256
RADEON256のパフォーマンスを計測するために、今回もいくつかのベンチマークテストを行なった。今回は環境として、CPUにPentium III 800EB MHz、マザーボードにIntelのD815EEA(Intel 815E搭載)、メインメモリにPC133 SDRAM(128MB)、さらにハードディスクにはIBM DTLA-307030(30GB、Ultra ATA/100)という環境を用意した。さらに、同じ環境で比較対象として下記のカードを用意した。
RADEON256 | GeForce2 GTS | Voodoo5 5500 | GeForce2 MX | |
---|---|---|---|---|
コアクロック | 166MHz | 200MHz | 166MHz | 175MHz |
メモリクロック | 333MHz | 333MHz | 166MHz | 166MHz |
ドライバ製造元 | ATI Technologies | NVIDIA | 3dfx | NVIDIA |
ドライバ日付 | 7/9/2000 | 5/18/2000 | 7/9/2000 | 5/18/2000 |
ドライババージョン | 4.12.3044 | 4.12.01.0512 | 4.12.01.684 | 4.12.01.0512 |
(1)2D描画能力
2Dの描画能力を計測するのに利用したのはZiff-Davis,Inc.のWinBench99 Version 1.1に含まれるBusiness Graphics WinMark99とHigh-End Graphics WinMark99だ。16bitカラー(65,536色)と32bitカラー(1,677万色)の2つのモードでそれぞれ計測した。しかし、結論から言えば、これまでの結果と同じようにどのカードでも差はない。従って、2Dで利用する場合にはどのカードを選択しても(パフォーマンスという観点においては)変化がないと言える。
Business Graphics WinMark99 | High-End Graphics WinMark99 | |||
---|---|---|---|---|
1,024×768/85Hz | 1,024×768/85Hz | |||
16bit | 32bit | 16bit | 32bit | |
RADEON256 | 334 | 333 | 954 | 938 |
GeForce2 GTS | 335 | 337 | 992 | 972 |
Voodoo5 5500 | 338 | 309 | 941 | 887 |
GeForce2 MX | 355 | 328 | 990 | 970 |
(2)DirectX 7.0対応ベンチマーク
DirectX 7からサポートされたハードウェアT&Lの機能を利用するベンチマークが、MadOnion.comの3DMark2000とZiff-Davis,Inc.の3D WinBench2000の2つだ。
3DMark2000(CPU)
800×600 | 1,024×768 | |||
---|---|---|---|---|
16bit | 32bit | 16bit | 32bit | |
RADEON256 | 4,681 | 4,584 | 4,366 | 4,223 |
GeForce2 GTS | 5,115 | 5,039 | 5,062 | 4,495 |
Voodoo5 5500 | 4,316 | 4,089 | 4,200 | 3,368 |
GeForce2 MX | 5,043 | 4,451 | 4,371 | 3,256 |
1,280×1,024 | ||||
16bit | 32bit | |||
RADEON256 | 3,562 | 3,308 | ||
GeForce2 GTS | 4,727 | 3,090 | ||
Voodoo5 5500 | 3,470 | 2,284 | ||
GeForce2 MX | 3,160 | 2,045 |
3DMark2000(HW T&L)
800×600 | 1,024×768 | |||
---|---|---|---|---|
16bit | 32bit | 16bit | 32bit | |
RADEON256 | 5,824 | 5,657 | 4,554 | 4,329 |
GeForce2 GTS | 6,852 | 5,973 | 6,119 | 4,589 |
GeForce2 MX | 5,650 | 4,483 | 4,361 | 3,181 |
1,280×1,024 | ||||
16bit | 32bit | |||
RADEON256 | 3,326 | 3,068 | ||
GeForce2 GTS | 4,897 | 3,026 | ||
GeForce2 MX | 3,075 | 2,005 |
3D WinBench2000
1,024×768/75 | 1,280×1,024/75 | |
---|---|---|
32bit | 32bit | |
RADEON256 | 91.8 | 62.9 |
GeForce2 GTS | 91.2 | 57.5 |
Voodoo5 5500 | 69.9 | 45.2 |
GeForce2 MX | 32.0 | n/a |
ここではなかなか面白い結果がでた。まずGeForce2 GTSとの比較だが、3DMark2000のSVGA(800×600ドット)の16bitカラーと32bitカラーの両方で、さらにはXGA(1,024×768ドット)の16bitカラーでRADEON256はGeForce2 GTSに遅れをとり、XGAの32bitカラーではほぼ同等か若干下回っている。
さらにSVGA、XGAの16bitカラーでは1クラス下といってよいGeForce2 MXにも遅れをとっており、やや16bitカラーに弱い傾向があると言える。なお、高解像度・多色モードではRADEON256がGeForce2 GTSをわずかに上回っている。
3DMark2000のSXGA(1,280×1,024ドット)/32bitカラー、3D WinBenchのXGA/32bitカラー、SXGA/32bitカラーではRADEON256がGeForce2 GTSを上回った。逆にGeForce2 GTSは高解像度・多色モードでの落ち込みが著しく、RADEON256もやはり落ち込むがGeForce2 GTSほどではない。
高解像度・多色モードでパフォーマンスが低下する主な主要因は、メモリのピーク時バンド幅の不足だ。例えば、GeForce2 GTSやRADEON256では333MHzのDDR SDRAMを利用しているため、5.2GBのバンド幅が確保されている。これはSVGA/16bitカラーやXGA/16bitカラーなどでは充分なものだが、SXGA/32bitカラーのような高解像度・多色モードでは充分ではない。そのため、メモリのバンド幅がボトルネックとなってしまい、こうした高解像度・多色モードではパフォーマンスが上がらなくなってしまうのだ。その証拠にXGA/16bitカラーではGeForce2 GTSがRADEON256を大幅に上回っているが、SXGA/32bitカラーでは同等か下回るという結果になってしまっていると考えられるだろう。
(3)OpenGL対応ゲームベンチ
OpenGLに対応した3Dゲームの代表格としてはid SoftwareのQuake III Arenaを利用した。Quake III Arenaは3Dシューティングゲームだが、フレームレート(1秒間に何フレーム表示できたか)を計測するテストとしても利用することが可能だ。
QuakeIII Arena
1,024×768/75 | 1,280×1,024/75 | |||
---|---|---|---|---|
16bit | 32bit | 16bit | 32bit | |
RADEON256 | 69.7 | 62.9 | 47.4 | 45.8 |
GeForce2 GTS | 108.5 | 79.6 | 87.2 | 43.1 |
Voodoo5 5500 | 92.0 | 67.5 | 64.9 | 39.7 |
GeForce2 MX | 74.6 | 42.4 | 46.8 | 24.2 |
結果は3DMark2000と同じように、低解像度ではGeForce2 GTSが大きくRADEON256を引き離し、高解像度ではほぼ同等という結果になった。
【テスト環境】
CPU:Intel Pentium III 600EB MHz
マザーボード:Intel D815EEA
メモリ:PC133 SDRAM(128MB、CL=3)
ハードディスク:IBM DTLA-307030(30GB、Ultra ATA/100)
OS:Windows 98 Second Edition+DirectX 7.0a
●3Dゲームで高解像度・多色モード重視のユーザーにお勧め
以上のような結果から、RADEON256は3Dグラフィックスチップとしての純粋な描画性能はGeForce2 GTSに若干劣ると言えるだろう。特にメモリのバンド幅がボトルネックにはならない低解像度でRADEON256が大きな差をつけられているのが何よりの証拠だ。しかし、32bitカラーモードを重視するユーザーであれば、その差はあまり大きくなく、特にバンド幅がボトルネックとなるような高解像度・多色モードでは、RADEON256はGeForce2 GTSを若干上回るかほぼ同等のパフォーマンスを持っている。しかも、ATIでは最終的にRADEON256のメモリクロックを200MHz(DDRで400MHz)に高めたビデオカードを出荷する計画も持っている。それならば、現在の高解像度・多色モードにおけるアドバンテージをさらに広げることができる可能性もあり、期待したいところだ。
これまでATIのビデオカードの特徴はALL-IN-WONDERシリーズに代表されるような、単に3D描画だけでなく、ビデオキャプチャやTVチューナーといった付加価値を搭載したカードが人気を集めてきた。そういう意味では先日発表されたばかりのALL-IN-WONDER RADEONは、最新のハイエンドビデオチップにふさわしいパフォーマンスを持ちながら、TVチューナーやビデオキャプチャといった機能を統合した魅力的なビデオカードだ。既に述べたようにGeForce2 GTSでもRADEON256でもビデオチップによる違いはほとんどなくなってきている(あとは趣味の問題かもしれない)。今後は前述のTVチューナーやビデオキャプチャといった「付加価値」がビデオカードの選択基準の中では高い位置を占めていくようになる可能性は高く、そうしたカードの大本命と言えるALL-IN-WONDER-RADEONに期待したい。
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32MB DDRメモリ版の英語リテール版が3万円台で販売中
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20000729/radeon.html
(2000年8月4日)
[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]