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新世代統合型チップセットがついに登場
~VIA ProSavage PM133/ALi Aladdin TNT2搭載マザーボード~



 先週秋葉原では、以前から登場が待ち望まれていたAcer Laboratories Inc.(ALi)のAladdin TNT2を搭載したASUSTeK COMPUTERのマザーボード「CUA」が登場した。Aladdin TNT2はNVIDIAのRIVA TNT2相当のグラフィックスアクセラレータを搭載したPentium III/Celeron用統合型チップセットで、従来の統合型チップセットに比べて高い3D描画能力を持つとされており、大きな注目を集めてきた。

 また、8月9日にはSOLTEK COMPUTERからVIA TechnologiesのProSavage PM133を搭載したマザーボード「SL-65MV」が発表された。ProSavage PM133はその名前からもわかるように、現在VIAが買収する予定となっているS3のグラフィックス部門の3DグラフィックスアクセラレータであるSavage4を統合した統合型チップセットで、Aladdin TNT2同様にやはり高い3D描画能力を持つと注目を集めてきた。今回は秋葉原で販売されているAladdin TNT2を搭載したASUSTeK COMPUTERの「CUA」と、まだ販売は開始されていないがProSavage PM133を搭載したSOLTEK COMPUTERの「SL-65MV」の製品版を入手したので、この2製品をテストしよう。

ASUSTeK COMPUTER:CUA SOLTEK COMPUTER:SL-65MV


●単体でも定評のあるグラフィックスチップを統合した両製品

 Aladdin TNT2はNVIDIAのRIVA TNT2、ProSavage PM133はS3のSavage4という昨年前半にメインストリームであった3Dグラフィックスチップを統合している。これまでの統合型チップセットと言えば、世代的にかなり古いものが統合されていたり、3Dファンクションがないようなものが統合されていたりと、正直なところ3D機能があったとしてもおまけ程度の製品が多かった。それに比べて、今回紹介する2製品は昨年のメインストリームとはいえ、十分現役として利用できる3Dグラフィックスチップが統合されている。

ALLADIN TNT2 ProSavage PM133

 Aladdin TNT2を搭載したASUSTeKのCUAは、秋葉原市場に久々に登場したALiチップセット搭載製品だ。ALiはP6バス(Pentium III Celeron)用チップセットとしては、既にAladdin Pro2、Aladdin Pro4をリリースしているほか、つい先日にはDDR SDRAMをサポートしたAladdin Pro5というスタンドアロンのチップセットをリリースしている。しかし、これらのチップセットを搭載したマザーボードはいずれも市場には登場しなかった。

 その最も大きな原因は、ALiがIntelからP6バスに関するライセンスを入手したのがかなり遅かったことだ。VIAやSiSといったライバルメーカーが'98年の暮れにはIntelとのP6バスライセンスに関する契約に合意していたのに対して、ALiはそれから半年後にやっとライセンスを入手したという状況だった。

 また、チップセットの出荷時期も、Aladdin Pro2と同じようなスペックだったApollo Pro(VIAのP6バス用チップセット)に比べて時期がかなり遅れた。Aladdin Pro2が実際に出荷できた頃には既にほとんどのメーカーがApollo Proないしはその後継であるApollo Pro133/133Aを採用してしまった後で、搭載されたマザーボードはわずか出荷されたにすぎなかった(実際に出荷されたのはIwillなど一部メーカーのみ)。

 この状況を逆転すべく、RIVA TNT2という非常にハイスペックなチップを統合したのがAladdin TNT2だ。元になっているのは、ALiのPC133 SDRAMをサポートしたAladdin Pro4というチップセットで、そこにRIVA TNT2のエンジンが統合されている。特徴的なのはフレームバッファ(描画に利用するデータを一時的に展開する場所のこと)としてメインメモリとは別にメモリを利用できることだ。最近の統合型チップセットではUMA(Unified Memory Architecture)ないしはSMA(Shared Memory Architecture)といわれる、メインメモリの一部をフレームバッファとして利用するのに対して、Aladdin TNT2では別途SDRAMを搭載しそれをフレームバッファとして利用できるのだ。つまり、通常のビデオカードと同じようになっていると考えることができるだろう。なお、ほかの統合型チップセットと同様、メインメモリをフレームバッファとしても利用できる。

 ただし、RIVA TNT2がビデオメモリへのバス幅が128bitであるのに対して、Aladdin TNT2では64bitになっている。

  (RIVA TNT2)=====(ビデオメモリ)
        128bit

(Aladdin TNT2)-----(ビデオメモリ)
         64bit

 このため、1秒間に転送できるデータ量を示すピーク時バンド幅はRIVA TNT2に比べて劣っており、メモリバスのバンド幅がパフォーマンスに与える影響が大きい高解像度・多色モードではRIVA TNT2に比べてパフォーマンスが低下する可能性が高い。そういう意味ではRIVA TNT2コアを利用していて、メモリバス幅が64bitに制限されているRIVA TNT2 m64相当だというのが正確な表現だろう。なお、CUAには8MBのSDRAMがフレームバッファとして搭載されている。

 また、Aladdin TNT2では外部AGPスロットは利用はできない。CUAも6つのPCIスロットと1つのAMRスロットしか用意されておらず、AGPスロットはない。このため、内蔵のグラフィックスに不満を持ったとしても、PCIのビデオカードを利用しないとアップグレードができない。ライバルとなるであろう、Intel 815/815EやProSavage PM133がAGPカードを利用したアップグレードが可能であることを考えると、この点は欠点と言える。なお、Aladdin TNT2のスペックは以下のようになっている。

★ノースブリッジ:M1631
 P6バス(66/100MHz):Pentium III/Celeron(実際には133MHzにも設定可能)
 PC133 SDRAM/VC SDRAM(最大:1.5GB)
 NVIDIA RIVA TNT2
 ビデオメモリ:SGRAM/SDRAM(最大16MB)
★サウスブリッジ:M1535D
 Ultra ATA/66
 4ポートUSB
 AC'97サウンド/モデム


●Intel 815/815Eの直接のライバルとなるProSavage PM133

 VIA Technologies(以下VIA)のProSavage PM133は、その名の通りVIAが買収する予定にしているS3のグラフィックス部門が開発したSavage4をグラフィックスコアとして採用している統合型チップセットだ。基本的には、同社のスタンドアロンチップセットであるApollo Pro133A(VT82C694XないしはVT82C694Z)に、Savage4コアを組み込んだものとなっている。ただし、ProSavage PM133はフレームバッファはメインメモリの一部を利用するSMA構成のみサポートなっており、専用のビデオメモリを利用することはできない。従って、フレームバッファとしてローカルのビデオメモリを利用できるAladdin TNT2に比べるとパフォーマンスが落ちる可能性はある。なお、今回ProSavage PM133搭載マザーボードとして用意したSOLTEK COMPUTERの「SL-65MV」では、メインメモリのうちフレームバッファとして8MBまたは32MBを割り当てることができる。

 ProSavage PM133の特徴は、Apollo Pro133Aの後期バージョンであるVT82C694Zとピン互換である点と、外部AGPスロットが利用可能である点だろう。前者はマザーボードメーカーにとって、基板を共通化できるというメリットがあり、後者はユーザーがあとからアップグレードするときにメリットがある。最初は内蔵のSavage4コアのグラフィックスを利用し、そのパフォーマンスに飽き足らなくなったらGeForce2 GTSのような最新ビデオチップを搭載したビデオカードを追加することが可能であり、フレキシブルに対応できる点は評価できる。この外部AGPスロットが利用可能である点は、IntelのIntel 815/815Eなどと同様であり、そうした意味ではIntel 815/815Eの直接のライバルだと言える。

 チップセットとしての基本的なスペックはApollo Pro133Aとほとんど同じで、以下のようになっている。

★ノースブリッジ:VT8205
 P6バス(66/100/133MHz):Pentium III/Celeron
 PC133 SDRAM/VC SDRAM(最大:1.5GB)
 S3 Savage4(SMA)/AGP 4X外部スロット
★サウスブリッジ:VT82C686A
 Ultra ATA/66
 4ポートUSB
 AC'97サウンド/モデム


●統合型チップセットとしてはずば抜けているAladdin TNT2

 今回はチップセット自体の性能と、内蔵グラフィックスコアの性能に分けて計測することにした。チップセット自体の性能を計測するのに利用したのはZiff-Davis,Inc.のWinBench99 Version1.1に含まれるCPUmark99、FPU WinMark、Business Disk WinMark、High-End Disk WinMark、Disk Transfer Rateの5つだ。さらに内蔵グラフィックスの性能を測るために、2D描画性能にはWinBench99に含まれるBusiness Graphics WinMark/High-End Graphics WinMark、3D描画性能にはMadOnion.comの3DMark2000 Version1.1の2つを利用した。なお、ProSavage PM133、Intel 815Eの場合は外部AGPスロットを利用することもできるので、GeForce2 GTSを搭載したABIT COMPUTERの「Siluro GF256 GTS 64MB DDR」を利用した場合のパフォーマンスも比較として計測した。

 基本的にはマザーボード以外のコンポーネント(CPU、メモリ、HDDなど)は全く同じものを利用したので、差は純粋にマザーボードの差と言える。なお、テスト環境は以下の通りだ。

【テスト環境】
★CPU
 Pentium III 600EB MHz
★マザーボード
 ProSavage PM133:SOLTEK COMPUTER SL-65MV
 Aladdin TNT2:ASUSTeK COMPUTER CUA
 Intel 815E:Intel D815EEA
★メモリ
 PC133 SDRAM(128MB、CL=3)
★ハードディスク
 IBM DTLA-307030(Ultra ATA/100、30GB)

 結論から言えば、チップセットの持つ純粋な性能は、Intel 815Eが最も高かった。CPU、キャッシュ、メモリ周りのパフォーマンスを計測するCPUmark99では、Intel 815Eが55.5と最も高速であったのに対して、Aladdin TNT2は49.8、ProSavage PM133に関しては47.3とかなり差がついた。これは両マザーボードとも出始めでBIOSのチューニングなどがすんでいない可能性が高いが、やはりIntel 815Eのメモリ周りが高速であることの証明と言っていいだろう。また、ディスク周りのテストでもIntel 815Eの高速性が目立った。例えば、Business Disk WinMark/High-End Disk WinMarkというアプリケーション利用時の総合的なディスク性能を計測するテストでは、Intel 815EとAladdin TNT2がほぼ同等で、ProSavage PM133がやや劣るという結果になった。

CPUmark99FPU WinMark
PM133(FB=8MB)47.3 3,170
Aladdin TNT249.8 3,110
Intel815E55.5 3,170

Business DiskWinMark99High-End Disk WinMark99
PM133(FB=8MB)5,280 18,700
Aladdin TNT25,440 19,100
Intel815E5,400 19,500

Disk Transfer Rate/BeginningDisk Transfer Rate/End
PM133(FB=8MB)37,300 35,400
Aladdin TNT237,300 35,200
Intel815E37,400 35,300

 さらにグラフィックス周りのテストだが、こちらではAladdin TNT2の性能の高さが目に付く。2D性能を計測するBusiness Graphics WinMark/High-End Graphics WinMarkでは、ローカルのビデオメモリをフレームバッファとして利用している場合(Aladdin TNT2やGeForce2 GTSを利用している場合)と、SMA構成で内部のグラフィックスコアを利用している場合のパフォーマンス差は思ったよりも大きい。これは、グラフィックスコアが画面のリフレッシュ時に常にメモリにアクセスするために、メモリのバンド幅が十分でなくなるために起こるものだ。こうしたSMA構成の時には必ずこのように2D描画性能が低下してしまうのだ(仮にピーク時のバンド幅が広域なメモリ、例えばDirect RDRAMなどを利用している場合には改善できる)。

Buisness Graphics WinMark99High-End Graphics WinMark99
ProSavage PM133
(Internal,8MB)
167538
ProSavage PM133
(Internal,32MB)
169539
ProSavage PM133
(GeForce2 GTS 64MB DDR)
259709
Aladdin TNT2
(Internal,8MB)
245686
Intel815E
(Internal)
167533
Intel815E
(GeForce2 GTS 64MB DDR)
273762

 内蔵グラフィックスの3Dに関してだが、やはりRIVA TNT2を内蔵したAladdin TNT2がほかの2つに大きな差を付けた。しかし、ビデオメモリが8MBしか搭載していないこともあってか、表示できたのは1,024×768ドットの16bitカラー(65,536色)までで、高解像度・多色モードでは3D表示ができないという問題点はある。

 これに対して、意外と健闘したのがIntel 815Eで、Savage4コアを内蔵しているProSavage PM133を上回った。ただ、Intel 815Eが32bitカラー(1,677万色)をサポートしていないのに対して、ProSavage PM133は32bitカラーモードをサポートしており、32bitカラーでゲームをプレイできる点は評価していいだろう。現時点ではドライバもまだ初期バージョンであり、今後バージョンアップがすすめば、もう少しはパフォーマンスアップが望めるだろう。なお、余談だが情報筋によればIntelが2001年の第2四半期に投入する予定の次期バージョン「Almador」(アルマドール、開発コードネーム)で、内蔵グラフィックスの3D表示も32bitカラーに対応するとOEMメーカーに説明しているということだ。

【3DMark2000】
800x600/16800x600/16/HWTL800x600/32800x600/32/HWTL
ProSavage PM133
(Internal,8MB)
1,280n/a 834n/a
ProSavage PM133
(Internal,32MB)
1,379n/a 847n/a
ProSavage PM133
(GeForce2 GTS 64MB DDR)
3,4415,0643,4314,821
Aladdin TNT2
(Internal,8MB)
2,445n/a1,635n/a
Intel815E
(Internal)
1,434n/an/an/a
Intel815E
(GeForce2 GTS 64MB DDR)
4,0395,9384,0255,397

1,024x768/161,024x768/16/HWTL1,024x768/321,024x768/32/HWTL
ProSavage PM133
(Internal,8MB)
 872n/an/an/a
ProSavage PM133
(Internal,32MB)
 888n/a 496n/a
ProSavage PM133
(GeForce2 GTS 64MB DDR)
3,4224,9123,3644,115
Aladdin TNT2
(Internal,8MB)
2,012n/an/an/a
Intel815E
(Internal)
 908n/an/an/a
Intel815E
(GeForce2 GTS 64MB DDR)
4,0435,5153,8914,357

1,280x1,024/161,280x1,024/16/HWTL1,280x1,024/321,280x1,024/32/HWTL
ProSavage PM133
(Internal,8MB)
n/an/an/an/a
ProSavage PM133
(Internal,32MB)
 526n/an/an/a
ProSavage PM133
(GeForce2 GTS 64MB DDR)
3,4294,2622,9862,913
Aladdin TNT2
(Internal,8MB)
n/an/an/an/a
Intel815E
(Internal)
 539n/an/an/a
Intel815E
(GeForce2 GTS 64MB DDR)
3,9384,5303,0312,980


●自作ユーザーにお奨めは柔軟な構成が可能なIntel 815かProSavage PM133

 以上のように、チップセットとしての性能ではIntel 815、内蔵グラフィックスの性能ではAladdin TNT2といえる。それでは、この出そろった統合型チップセットはどの製品が買いなのだろうか? 正直なところ、外部AGPスロットを持たないAladdin TNT2はかなり特殊用途に限られてしまうのではないだろうか? 最初からビデオチップの性能を気にするユーザーであれば統合型チップセットではなく、スタンドアロンのチップセットとビデオカードを組み合わせる方が性能が高くなるのは、GeForce2 GTSを利用したベンチ結果を見ても明らかだ。となると、Aladdin TNT2を必要とするユーザー像というのはすぐには浮かんでこない。

 それに対して、Intel 815やProSavage PM133は、確かに2D/3Dともに描画性能は高くはない。しかし、最初はコストをセーブするために内蔵グラフィックスで利用し、お金に余裕ができたのでビデオカードを買うといった柔軟な自作が可能なメリットがある。自作PCのようなカスタムPCは、そうした自由度こそ命であるので、そうした意味ではIntel 815とProSavage PM133を搭載したマザーボードはよい選択となるだろう。性能面ではIntel 815が若干リードという感じだが、チップセット単体の値段ではIntel 815に比べてProSavage PM133の方が安いので、コストではProSavage PM133を搭載したマザーボードに軍配があがる可能性が高い。従って、Intel 815かPM133かは、ユーザーの趣向(コスト重視かパフォーマンス重視か)で選択すればよいだろう。

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http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20000805/aladdintnt2.html

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(2000年8月11日)

[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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