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DDRのキーマン、デジー・ローデン氏が語るDDR SDRAMの展望--前編

Desi Rhoden氏
 サンノゼで開催された技術カンファレンス「Platform Conference」(7月18/19日)ではDDR SDRAMの立ち上げが大きなテーマとなった。DDR SDRAMのキーマンで、次世代DRAMの開発促進を行なうAdvanced Memory International(AMI2)のデジー・ローデン社長兼CEOに、DDR SDRAMの現在の状況をうかがった。



Q.Rambusは、DDR SDRAMとSDRAMに関して東芝、それからRambusから提訴されていた日立とライセンス契約を結んだ。今後、あらゆるDRAMベンダーは、Rambusにロイヤリティを支払わなければならないのではないか。

A.ロイヤリティは、合意したベンダーだけが払っている。Rambusは、SDRAMもDDR SDRAMも発明したわけではなく、ただ主張しているだけだ。DRAMでは、2~3年置きに誰かが標準のメモリ規格に挑戦するのはごく普通のことだ。しかし、毎回そのチャレンジは失敗に終わっている。今回(ロイヤリティ)の件は、もちろんすべては裁判所が決定を下す。しかし、SDRAMもDDR SDRAMもすべてのテクノロジはすでに何年も前から存在していた。1年かそこら待てば結果が出るだろう。

Q.なぜRDRAMではなくDDR SDRAMなのか。

A.メモリ業界では、決定は常にユーザーにまかされている。率直に言えば、サプライヤーはどのタイプのメモリを出荷するかをあまり考慮しない。なぜなら、どんなタイプのメモリであっても、売れればOKだからだ。しかし、彼らも利益を出さなければならない。その点で、RDRAMは問題がある。それは非常に高コストだからだ。RDRAMの製造コストは(SDRAMの)300~400%だ。ところが、ユーザー(PCメーカーなど)の関心事のナンバー1は常に価格だ。だから、RDRAMにはノーというだろう。彼らは買うDRAMを、名前で決めるのではなく価格で決める。

Q.Rambusは製造コストはそれほど高くないと言っているし、今後下がるとも言っている。

A.Rambusはそう主張している。しかし、DRAMサプライヤに聞いてみるといい。RDRAMは製造が難しい技術だ。歩留まりが非常に低い。典型的なDRAMは、多分95~98%の歩留まりだ。つまり、ほとんどすべてのチップを出荷できるわけだ。ところがRDRAMの歩留まりは20%くらいだ。

Q.ではDDR SDRAMの製造コストはどうなのか。

A.DDR SDRAMは5つのサプライヤが、SDRAMと同じダイ(半導体本体)を使う。完全に同じシリコンだ。そのため、歩留まりはSDRAMとまったく変わらない。つまり、SDRAMとDDR SDRAMのコストは同じということだ。もっとも、DDR SDRAMの方がずっと高速なので、需要を供給が満たすまで価格は変わってくるだろう。これは需要と供給の経済学の問題だ。しかし、コストが同じなので、価格差はまったくマーケティング的な理由だけだ。おそらく年末には、SDRAMとDDR SDRAMの価格差は5~10%程度になるだろう。

Q.RDRAMに対してDDR SDRAMのコスト以外の利点は何か。

A.DDR SDRAMは、イニシャルアクセスレイテンシで優れている。SDRAMと同じだからだ。それに対して、パケットプロトコルを取るRDRAMのイニシャルアクセスレイテンシはよくない。RDRAMは、PC100と比べても(アクセスレイテンシ)ではほとんど変わりがない。PC133の方が、RDRAMより(アクセスレイテンシでは)優れている。アクセスレイテンシはパフォーマンスに影響するため、これは重要だ。

 しかし、公平に言うなら、メモリのパフォーマンスは決定的な問題ではない。例えば、パフォーマンスベンチマークでは、キャッシュメモリに吸収されるため、メモリ性能はほぼ影響しない。そのため、メモリでは、性能よりも量が常に重要だ。より大きなメモリを搭載する方が、性能が高くなる。だから、メモリでは価格が重要になるのだ。PCで、64MBよりも128MBを搭載した方が性能は高くなるのは知っての通りだ。われわれがコストを重視するのはこのためだ。

Q.しかし、DDR SDRAMベンダーがすべてRambusにロイヤリティを払わなければならなくなったら、コストが上がりDDR SDRAMが普及できないのではないか。

A.そうは思わない。もし、不幸にもロイヤリティを払わなければならなくなったとしても、ロイヤリティはたんにベースコストに上乗せされるだけだ。それは、300%にはなりえない。つまり、DDR SDRAMとRDRAMのコスト差以上にはならない。DDR SDRAMの成功はカスタマーにかかっている。DDR SDRAMはデザインがしやすいので、カスタマーは支持するだろう。

Q.RambusはDDR SDRAMのマザーボードへのインプリメンテーションと互換性の確保は非常に難しいと主張している。

A.DDR SDRAMの基板設計は簡単だ。なぜなら、今回はわれわれは企業間で協力してシミュレーションと設計を綿密に行なっている。その理由は、高クロックでオペレートすることで要求されている技術が高いためだが、協力して当たった結果、メモリシステムのデザインはSDRAMの時よりもずっと完全になった。DDR SDRAMでは、システム開発者はメモリベンダーの違いによる非互換性を心配する必要がない。どのメーカーのDDR SDRAMも、電気的にもタイミング的にも同じで、モジュールも同じだ。

 SDRAMでは、もっとメーカー間の違いがあった。そのために、'93年に標準化しても、本格的な普及は'97年からで、普及までに4年かかった。しかし、DDR SDRAMでは標準化が終わった今年のうちに量産出荷も始まる。

Q.IntelはサーバーではDDR SDRAMをサポート(Serverworksのチップセット)するが、デスクトップではDDR SDRAMをサポートしない。これは、DDR SDRAMの普及の妨げにならないのか。

A.まったくならない。現在、ナンバーワンのチップセットサプライヤはVIAだ。そして、複数のサプライヤから17のDDR SDRAM対応チップセットが公式にアナウンスされている。対してRDRAMチップセットはIntelの2つだけだ。Intelは、RDRAMチップセットの唯一のサプライヤで、業界の残りはDDR SDRAMこそがもっともコストエフェクティブで容易なソリューションだと信じている。業界は、Intelの要求を満たすだけのRDRAMを供給するだろうが、それだけだ。RDRAMはハイエンドのニッチにとどまるだろう。

Q.DDR SDRAM対応チップセットはまだ量産出荷されていない。RDRAMに対して大きく出遅れているが。

A.すでにいくつかのチップのサンプルは出ている。第3四半期から第4四半期の間に出荷されることになるだろう。

Q.IntelがデスクトップにDDR SDRAMを採用する可能性はあると思うか?

A.Intelは、現在サーバーにだけDDR SDRAMを使うと言っている。しかし、彼らはPC133 SDRAMの時も最初はサポートしないと言っていたのに、途中で考えを変えた……。

Q.またIntelが考えを変えると思うのか。

A.決めるのは私ではなくIntelだ(笑)。そういう可能性もありうるだろうし、もしIntelがそうした決定を行なうなら、DRAM業界はPC133の時のようにやはりIntelを助けるだろう。

Q.Intelとあなたの関係はどうなっているのか。

A.私個人のことか? 個人的にはIntelにも知っている人が何人もいる。DRAM業界は、結局、同じ人がずっとやっている。途中で勤める会社が変わったりするが、常に顔ぶれは一緒だ。だから、Intelにも、過去に一緒に働いたことがある人はたくさんいる。

Q.Intelが、サーバー向けDDR SDRAMでPC100の時のような仕様の拡張を出す可能性はないのか。

A.ない。Intelは、PC133 SDRAMの時はそうした独自の拡張仕様を出さなかった。それは、PC133ではすでに仕様がきっちり決まっていたからだ。Intelは、業界仕様を認めただけだった。DDR SDRAMでも同じことになるだろう。Intelが、仕様のマイナーチェンジを推奨する可能性はあるが、それは大きな変更ではないだろう。実際のところ、DDR SDRAMのサーバー開発はすでに動き始めている。サーバーでは、信頼性の高い製品を作るために、開発に1年なりの時間がかかるのでまだしばらく登場しないが。

Q.Intelが、サーバーでDDR SDRAMを選んだ理由は何だと考えているのか。

A.まず、サーバー開発者がDDR SDRAMを選ぶ理由は、高い信頼性だ。それから、多数のデバイス(DRAMチップ)を接続できることも重要だ。この両方をDDR SDRAMは提供できる。RDRAMは16デバイスしか接続できないので十分ではない。DDR SDRAMなら100デバイス以上を接続できる。

Q.RDRAMは1チャネル32デバイスのはずだが。

A.それはアーキテクチャ上の最大値だ。実際のシステムではたった16デバイスしか動作しない。ところが、サーバーメーカーは何10ギガバイトものメモリを搭載したい。テラバイトメモリのサーバーのプロジェクトもある。だから、RDRAMではなくDDR SDRAMなのだ。サーバーは、台数は少ないが非常に多くのメモリを搭載する。そのため、今はサーバーがメモリマーケットをドライブしている。今年か来年には、サーバー用メモリがDRAM市場の50%を占めるだろう。つまり、サーバーがナンバーワンのメモリユーザーになる。そして、近い将来サーバー向けメモリがDDR SDRAMになるなら、それだけで大多数のメモリがDDR SDRAMになることになる。 後編へ続く

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【7月19日】離陸に向かうDDR SDRAM、メモリモジュールが量産段階に
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000719/kaigai01.htm

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(2000年7月21日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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