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DDRのキーマン、デジー・ローデン氏が語るDDR SDRAMの展望--後編

Desi Rhoden氏
 サンノゼで開催された技術カンファレンス「Platform Conference」(7月18/19日)ではDDR SDRAMの立ち上げが大きなテーマとなった。DDR SDRAMのキーマンで、次世代DRAMの開発促進を行なうAdvanced Memory International(AMI2)のデジー・ローデン社長兼CEOに、DDR SDRAMの現在の状況をうかがった。前編と併せてお読みください。



(承前)

Q.DDR SDRAMのモジュールのスペックについて説明してほしい。

A.まず、最初は2種類のモジュールが提供される。184ピンのDIMMはもっとも一般的なモジュールで、デスクトップからサーバーまでカバーする。ノートPCなどには、200ピンのSO-DIMMを用意している。SO-DIMMは、筺体の小さなデスクトップなどにも使われて行くだろう。184ピンDIMMと200ピンSO-DIMMの電気的な特徴は非常に似通っている。これらのモジュールは、共通のガーバー(基板設計データ)を用意する。これまでのDRAMは(RDRAMを除き)、各モジュールメーカーがそれぞれガーバーを開発していた。しかし、DDR SDRAMでは、業界で初めてコモンガーバー(共通ガーバー)を開発、各社にそれに従って製品を開発してもらう。そのため、SDRAMの164ピンDIMMよりも、ずっとよくシミュレーションされていて、互換性が高い。この他に、将来製品化される232ピンDIMMがある。マイクロDIMM(SO-DIMMより小さなモジュール)も視野には入れている。

Q.モジュールにPC2100といった規格名があるが。

A.モジュール単位のメモリ帯域をわかりやすくするために、PC2100という名前をつけた。「PC2100 DIMM」、「PC2100 SO-DIMM」となる。これは、2.1GB/secのメモリ帯域のモジュールという意味で、ユーザーの混乱をなくすためにつけた。RDRAMは、ピン当たりの転送レートを取ってPC800という名称をつけた。しかし、ユーザーにとって重要なのはピン当たりの転送レートではなく、モジュールの帯域がどうであるかだ。RDRAMの場合、モジュールの帯域は1.6GB/secとなる。

Q.PC2100は逆算するとPC266のチップを使うことになる。

A.今、PC266と言ったが、現在、PC266という名称は使っていない。モジュールの名称と間違えやすいのでDDR266という名称に変えた。これは、266MHzのDDR SDRAMデバイスを示す。同様に、200MHzのデバイスのPC200はDDR200と呼んでいる。

Q.わかった。サーバーもPC2100を使うのか。

A.サーバーでは、クロック周波数よりも高い信頼性が要求される。そのため、最初はPC1600 DIMM(DDR200を搭載)が使われる。つまり、DDR200で1.6GB/secの帯域のモジュールだ。モジュール自体は同じ184ピンDIMMで、帯域が異なるだけだ。

Q.サーバーとワークステーション向けモジュールはレジスタードバージョンになるのか。

A.レジスタードバージョンはおもにサーバー向けとなる。一方、デスクトップPCは、アンバッファドバージョンが使われるだろう。ワークステーションはちょうどクロスオーバーするエリアだ。ある機種はアンバッファドで、ある機種はレジスタードを使うことになるだろう。OEMによりけりだ。

Q.チップセットの対応は?

A.17のチップセットのうち、おそらくほとんどすべてがアンバッファドはサポートするだろう。そして半分程度がレジスタードもサポートする。

Q.モジュールの製品が登場するのはいつ頃になるのか。

A.184ピンDIMMは、量産開始は第3四半期中の予定だ。もうすぐ立ち上がる。200ピンSO-DIMMは、現在限られた数のサンプルが出て、それをテストしている状況だ。テストの結果で多少の修正が加わるかもしれないが、最終ガーバー仕様も夏ごろには出るだろう。そのため、200ピンSO-DIMMは、第4四半期から2001年第1四半期ごろに量産立ち上げとなるだろう。つまり、今年の年末周辺ということだ。184ピンDIMMからは、約1四半期遅れとなる。

Q.SO-DIMMの策定では、CPUメーカーのTransmetaが協力しているようだが。

A.そうだ。Transmeta内には、SO-DIMMで仕様を詰めるためにいっしょにやっているチームがある。彼らは、SO-DIMMを最小の消費電力で動かすための仕様で協力している。Transmetaのプロセッサは、消費電力が1ワットなので、DDR SDRAMと組み合わせると非常に魅力的な製品ができるだろう。

Q.DDR SDRAMは低消費電力仕様がまだ明らかになっていないようだが。

A.ローパワーの仕様は最終段階に入っている。もともと、DDR SDRAMはローパワーだが、今はローパワーのすべての機能を定義しているところだ。仕様発表までにそれほど時間はかからないだろう。DDR SDRAMはノートPCでは非常に有望だと考えている。それは、SDRAMよりもローパワーだからだ。ノートPCでは、パフォーマンスよりパワーが重要だ。デスクトップでは、必ずしも全ての機種がDDR SDRAMを必要としないだろうが、ノートPCでは、将来100%がDDR SDRAMになるだろう。

Q.なぜDDR SDRAMは低消費電力なのか。インターフェイス電圧が低いためか。

A.DDR SDRAMが低消費電力である理由は2つだ。今、あなたが指摘したように、DDR SDRAMのインターフェイス電圧が2.5Vで、SDRAMの3.3Vより低いことがローパワーを助けている。もうひとつは、インターフェイスの設計で、ほとんどのオペレーション時にデータバスがターンオフされるように設計した。そのため、消費電力は大きく節約されている。

Q.DDR200とDDR266のどちらで市場は立ち上がるのか

A.それはプロセステクノロジによる。各メーカーが、どのプロセスでDDR SDRAMを製造するかで違ってくる。例えば、0.25μmでは、DDR266を製造することは難しいだろう。ほとんどはDDR200になる。しかし、0.17μmで製造するなら、DDR266を採ることは問題がない。もっとも、各社のプロセス技術は異なるため、会社によって答えは違ってくるだろう。
 だが、DRAM業界では年に2回のペースでプロセス技術がシュリンクしている。2001年には、どのサプライヤも、DDR266をハイボリュームで出せるようになるだろう。2001年には、100%がDDR266になっていると思う。PC133も、最初は歩留まりが悪かったが、すぐに歩留まりが高くなった。同じことだ。

Q.CASレイテンシについても同じと考えていいのか。

A.そうだ。最初のDDR266は、CASレイテンシ2.5が主流だろう。しかし、時間が経つにしたがってプロセス技術が進歩し、CASレイテンシ2が主流になる。

Q.DDR-1と次世代DDR規格DDR-1.5、DDR-II、それぞれの違いを説明して欲しい。

A.DDR-1は、最初の世代のDDR SDRAMで今年立ち上がる。DDR-1.5は、DDR-Iと(DRAMチップの)パッケージが異なる。DDR-1.5では、サイズの小さなBGAパッケージになるだろう。それは、周波数が高くなると、より特性の優れたパッケージが必要になるからだ。現在のDDR SDRAMが使っているTSOPは、多分、400MB/secでは十分ではないと思う。しかし、DDR-1とDDR-1.5は、今のところ電気的に同じになる予定なので、同じシステムにプラグインできる。

Q.チップセット側が特に対応する必要はないということか。

A.その通りだ。変わるのは基本的にパッケージだけだ。一方、DDR-IIは、その先のプロジェクトで、大きく技術が変わる。DDR-IIというのは、仮の名称で、正式な規格の名称は決まっていない。DDR SDRAMが、初めはSDRAM IIと呼ばれていたように、最終的には違う名前になるだろう。DDR-IIでは、(ピン当たりの)スピードはおそらく(DDR SDRAM)の2倍になる。ちょうどSDRAMからDDR SDRAMで、2倍になったのと同様だ。しかし、ひとつのコントローラで、今のDDRとDDR-IIの両方をサポートできるようにするだろう。これは、まだ決まっているわけではないが、そうした互換性はOEMにとって重要だと認識している。

Q.DDR-IIは、IntelとトップDRAMベンダー5社と策定する次世代DRAM規格「ADT」と時期的に重なる。関係はどうなるのか。

A.DRAM業界では、常に小規模なグループが先行して次世代規格を策定しようとする。その方が迅速に策定できると考えるからだ。しかし、結局は開発に時間がかかるとわかりJEDECに戻ってくる。JEDECは、24年もメモリの標準化をやっており、メインストリームのDRAM規格はすべてJEDECで策定されている。ADTについては、まだわからないが、歴史を見ると、こうした先行する規格策定グループは、常にJEDECに戻って来ている。

Q.DDR SDRAMの市場シェアはどの程度になると考えているか。

A.市場シェアは、顧客が決めるものだ。しかし、今年末にはおそらく10%近くいくのではないだろうか。2001年はトランジションイヤーになると考えている。20%以上、30%くらい行くかもしれない。

Q.意外と控えめな予測だが。

A.それは、PC133が非常に魅力的な製品だからだ。しかし、すでに5つのベンダーがSDRAMとDDR SDRAMを同じダイにしている。つまり、これらのメーカーでは、カスタマのニーズに応じて(同じDRAMチップを)SDRAMとして出荷するかDDR SDRAMとして出荷するかを出荷直前に決定できる。つまり、ほとんどの製品をDDR SDRAMとして出荷することも可能なわけだ。その意味では、ほとんどがDDR SDRAMになるとも言える。

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【7月21日】DDRのキーマン、デジー・ローデン氏が語るDDR SDRAMの展望--前編
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000721/kaigai02.htm
【7月19日】離陸に向かうDDR SDRAM、メモリモジュールが量産段階に
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000719/kaigai01.htm


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(2000年7月21日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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