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最新ソフトウェアDVDプレーヤー事情

~ソフトDVDプレーヤー9本をレビュー~



■最も安価に実現できるDVD再生環境

 ここにきて、ようやく国内でもDVD(DVD-Video)が本格的な普及期を迎えようとしている。リリースされたタイトルはすでに5,000タイトルを超え、2000年度の民生用DVDプレーヤー(専用プレーヤー)の出荷台数は100万台を超える見通しだという(ちなみにこれは2年前のアメリカに相当する)。もちろん、DVD-Videoの再生機能を持つプレイステーション2の発売という強力な追い風も、急速な普及を後押ししているに違いない。

 だが、DVD-Videoを再生する方法は、何も専用プレーヤーやプレイステーション2に限らない。PCだってDVD-Videoを再生することができる。それどころか、PC Watch読者の大半にとって、PCによるDVD-Videoの再生は、おそらく最も安上がりな方法であるハズだ。現在、市販されているCPUは、最低でも動作クロック500MHzに達している。インストールベースを考えれば、もう少し低いクロックのCPUを使っているユーザーもいることと思うが、それでもクロックが400MHzに満たないユーザーは、もはや少数派だろう。こうした「普通の」PCにDVD-ROMドライブを加えれば、あとは安価なソフトウェアDVDプレーヤーさえあれば、DVD-Videoの再生が可能になる。それぞれ個別に購入したとしても2万円に満たない金額で購入できるハズだし、多くの場合、DVD-ROMドライブにソフトウェアDVDプレーヤーソフトがバンドルされている。この場合、15,000円もあれば、PCはDVD-Videoプレーヤーに変貌する。


■インタレースタイトルの画質も向上した第3世代プレーヤー

 PC上のDVD再生というと、「品質的に専用プレーヤーに大きく見劣りするのではないか」、「不安定で映画を楽しむどころではないのではないか」、と考えている人もいるかもしれない。確かに、初期のPC用DVDプレーヤー、特にソフトウェアDVDプレーヤーには、完成度が十分でないものも見受けられた。極端な例では、インストール後、プレーヤーソフトのアイコンをダブルクリックしただけで異常終了したり、再生途中にフリーズしたり、といったこともあった。当時は、多少コマ落ちしても、つつがなく再生できたら合格で、安定した再生を望むなら、ハードウェアデコーダカードを使った方が無難という時代だった。

 しかし、その後ソフトウェアDVDプレーヤーは急速に進歩した。第2世代に入ると、プレーヤーソフトが動かないとか、再生できないということはまずなくなった。コマ落ちもほとんど気にならなくなり、画質を論じることが可能となり始めた。

 DVD-Videoには、24フレーム/秒で記録されているノンインターレースのタイトル(フィルム撮影された映画のほとんどが該当する)と、30フレーム/秒で記録されているインターレースのタイトル(ビデオ撮りされたテレビ番組を元にしたものなど)が存在する。ノンインターレースディスプレイを用いるPCにとって、前者の再生は容易だが、後者の再生は工夫(De-Interlace処理)を要する。第2世代のプレーヤーは、De-Interlaceの不要な前者に関してはほぼ問題のない画質レベルに到達していたものの、後者に関してはプレーヤーにより再生画質にバラつきが見られたのである。

 現在登場してきた第3世代のプレーヤーの大きな特徴は、30フレーム/秒で記録されているタイトルの再生品質が、大幅に底上げされたことだろう。もはや、動きの速いシーンでエッジがギザギザになる(コーミング。De-Interlace処理にWeaveを用いることで生じる)こともなければ、逆にシーンに埋めこまれたテロップやロゴが醜くなったりする(Bobによる補完の品質が悪い)ことも少なくなった。ベンダによって名称は違うが、ソフトウェアによるBob処理の精度が向上したことが、インターレースタイトルの画質を大幅に高めている(もちろん、そうした処理が可能なほど、CPUパワーのベースラインが上がった、ということも間違いのない事実だが)。


■第3世代はオーディオ機能の充実とWindows 2000対応

 第3世代プレーヤーの特徴として、オーディオ機能の充実も忘れてはならない。第2世代から、一部のプレーヤーが先行する形で、サウンドカードのS/PDIF出力(デジタル)やマルチスピーカー出力(アナログ)への対応がスタートしていた。こうしたフィーチャーを利用して、DVDに収められているドルビーデジタルのマルチチャネル(5.1ch)出力をサポートしようというわけだ。第3世代では、ほぼすべてのプレーヤーソフトがこの機能を正式サポートしている。第2世代で先行したプレーヤーの中には、この第3世代でさらにdtsにも対応したものもある。また、現在民生用プレーヤーで人気のフィーチャーになりつつある、ヘッドフォンを利用したドルビーデジタル「ドルビーヘッドフォン」に対応したソフトウェアDVDプレーヤーが登場したこともこの世代のトピックと言って良いだろう。

 第3世代プレーヤーのもう1つの特徴は、Windows 2000のサポートだ。今回取り上げた9本のプレーヤー中、DVD Expressを除く8本がWindows 2000での動作を保証している。DVD Expressも、非公式ながらWindows 2000での動作を認めており、すべてのプレーヤーソフトがWindows 2000でDVD-Videoを再生することが可能だ。だが、DVD再生で先行するWindows 98と同じ環境が、Windows 2000上でも得られるようになったわけではない。S/PDIFによるドルビーデジタルのマルチチャネルデジタル出力や、マルチチャネルアナログ出力といったオーディオ機能は、Windows 2000上ではサポート対象外とされている。

 実際、筆者自身のテストでも、Windows 2000上で上記の機能を利用することはできなかった。YMF744のWindows 2000用Ver 2225ドライバには、通常のステレオ出力をS/PDIFへリダイレクトする機能を持っている。この機能を使ってオーディオ信号をデジタル出力することは可能だが、ドルビーデジタルのマルチチャネル出力はできなかった。難しいのは、これがどのモジュールに起因するものなのか、判断がつきかねることだ。プレーヤーソフト、サウンドドライバ、DirectShow等Microsoftが提供するモジュール、あるいはこうしたモジュール間のインターフェイス整合性のいずれが問題なのか、わからないのである。

 同様にWindows 2000では、動き補償(MC)や逆離散コサイン変換(iDCT)といった、グラフィックスチップが持つMPEG-2ビデオ再生のためのハードウェアアクセラレーション機能も利用することができないようだ。が、こちらはほとんど実害はないだろう。というのも、ことDVD-Videoの再生に関する限り、MCやiDCTといった機能が必要になることはほとんどないと考えられるからだ。かつてのようにクロック300MHz前後のCPUでは、MCやiDCTの助けがなければ、DVD-Videoの再生は難しかった。

 しかし、冒頭でも述べた通り、CPUパワーの向上した今日では、こうした機能がなくてもDVD-Videoの再生は十分可能だ。今回、筆者は現時点でのローエンドに近いPentium III 600EB MHzをテストに用いたが、ハードウェアアクセラレーションなしでも、CPU占有率は40%前後に過ぎない。よほど古いマシンを使っているユーザーでもない限り(そうしたマシンのユーザーがWindows 2000を使っている確率は低いと推定するが)、MCやiDCTのサポートは、気にする必要がないと思われる。

 だからといって、グラフィックスチップにMCやiDCTが不要だと言っているのではない。DVD-Videoの鑑賞(DVDプレーヤーの目的)だけを考えればMCやiDCTは不要だと思うが、たとえば、MPEG-2ビデオデータをテクスチャとして用いる、といったゲームが出現した場合、MCやiDCTのサポートがフレームレートに大きな影響を及ぼすことは考えられる。ただ、そうしたゲームタイトルが出現するには、Windows OSに標準でMPEG-2デコードCODECが搭載され、ゲームデベロッパが安心してMPEG-2データを使えるような環境が提供される必要がある。将来必要になるかもしれない機能、と考えておけば良いと思う。

 話がWindows 2000からそれてしまったが、現状でWindows 2000上でのDVD-Video再生は、十分実用になるレベルには達している。だが、ハードウェアサポート、特にオーディオ機能のサポートの点で、Windows 98に追いついてはいない、というのが率直なところだ。


■全9本を3日連続でレビュー

【テスト環境】
  • CPU:Pentium III 600EB MHz
  • メモリ:128MB PC800 RDRAM
  • DVD-ROMドライブ:東芝 SD-M1212
  • HDD:IBM DPTA-372050
  • ビデオカード:WinFast GeForce 2 GTS
  • ビデオドライバ:5.22(Windows 98)
            5.17 Beta(Windows 2000)
  • サウンドカード:Labway Xwave6000 (YMF744)
  • サウンドドライバ:Ver 2013(Windows 98)
             Ver 2225 (Windows 2000)

 そこで、今回はWindows 98をベースに、以下の現在入手可能な最新のソフトウェアDVDプレーヤー9種を取り上げてみたいと思う。ソフトウエアDVDプレーヤーは、1日3本ずつ3日間レビューを行ない、最後に総評を掲載する全5回の連載を予定している。

 なお、評価に際しては、プレーヤーソフトウェア間、あるいは各プレーヤーがインストールするDirectXモジュール間のコンフリクトを防ぐため、1度に1種類のプレーヤーしかインストールしていないことを明言しておく。


6月20日掲載
PowerDVD 2000MightyPEG DVD 2000Media Wizard/DVD
発売元サイバーリンク住友金属システム開発リンク
開発元Cyber Link
(台湾)
Cyber Link
(台湾)
Cyber Link
(台湾)
標準価格5,800円5,800円5,800円
店頭価格4,640円
4,680円
4,350円
6月21日掲載
VARODVD 2000WinDVD 2000WinDVD Millennium
発売元高電社カノープスインフォマジック
開発元VasoVision
(韓国)
InterVideo
(米国)
InterVideo
(米国)
標準価格3,980円5,800円7,800円
店頭価格3,180円4,920円4,880円
6月22日掲載
DVDExpressSoftDVD MAX2000SoftWare
Cinemaster 2000
発売元MSDジャパンランドコンピュータ長瀬産業
開発元MediaMatics
(米国)
MSI Software
(米国)
Ravisent Technologies
標準価格7,800円5,800円5,800円
店頭価格5,780円4,930円4,980円

注):店頭価格は、DVD Express、Software Cinemasterを除く7製品はヨドバシカメラ新宿マルチメディア館で、DVD ExpressとSoftware Cinemasterの2製品はソフマップ新宿4号店にて、6月16日に店頭での表示価格をPC Watch編集部が独自に調査したものです。各店ともそれぞれ独自のカードを併用することで、次回の買い物の際、現金同様に使用できる「ポイント」の還元を受けることが出来ます。

 なおPC Watch編集部では、この価格で販売されることを保証するものではありません。実際の販売価格は変動いたしますので、購入時に各ショップの店頭にてご確認ください。各ショップの場所等については、各ショップにお尋ねください。
 編集部では、個別のメールや電話でのお問い合わせにはお答えいたしかねます。

(2000年6月19日)

[Text by 元麻布春男]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp