最新ソフトウェアDVDプレーヤー事情~ PowrDVD 2000、MightyPEG DVD 2000、Media Wizard/DVD ~ |
■とにかく安定感がある「PowerDVD 2000」
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PowerDVDの最大の特徴は、安定感にある。とにかく、どんな環境でも異常終了やエラーメッセージを出さずに、DVD-Videoを再生してしまう。ここで「再生してしまう」と表現したのは、YUVのオーバーレイサーフェイスが設定できない場合であっても、強引に(?)再生してしまうからだ。YUVオーバーレイができないと、よほど高速なシステムでない限り、画質の低下やコマ落ちが顕著になる。そうした不充分な画質しか得られない条件でも、エラーを出さずに再生するべきかどうかということについては、意見が分かれるところだろうが、とりあえず再生してくれるというのは、売る側(特にOEM)にとっては助かるのではないか、という気がする。
ただ、不充分な環境で再生してしまうだけでは、なぜ画質が悪いのだろうと、ユーザーが途方に暮れてしまう可能性がある。しかしPowerDVDでは、技術情報のタブで、現在の再生環境に関する情報を教えてくれるため、トラブルシュートも容易だ。
もう1つ、環境を選ばず再生できる理由は、ハードウェアサポートが充実していることだろう。様々なCPUの拡張命令をすべてサポートしているのみならず、マルチチャネル出力が可能なサウンドチップの数でもトップを誇る。もちろん、ビデオチップのハードウェアアクセラレーションサポートも充実している。実際、今回テストに用いたビデオカードはリリースされたばかりのGeForce 2 GTSだったが、GeForce 2 GTSのMCにちゃんと対応していることが確認できた。環境を問わない、という強みからか、PowerDVDをバンドルしているサードパーティ製ハードウェアは少なくない。以前はDVD-ROMドライブへのバンドルが目立っていたが、最近はビデオカードへのバンドルも増えているようだ。
こうした安定性の反面、これまでのPowerDVDは画質、特に30フレーム/秒モードのタイトルの画質(Bobの画質)については、それほど評価は高くなかった。最新版であるこのPowerDVD 2000では、Bobの高画質化が図られている。同社がプログレッシブ・プロセッサと呼ぶ機能で、他社のプレーヤーに勝るとも劣らない画質を実現している。他にもスキン(操作パネル)の変更、インターネット上の関連サイトへのアクセス(スキンもここからダウンロード可能)をプレーヤーに統合したiPowerと呼ばれる機能のサポートなど、オールラウンドなプレーヤーとして、充実した機能を持つ。
1つだけPowerDVDで難点をあげれば、ビデオカードの再生支援機能(ハードウェアアクセラレーション)の使用と、プログレッシブ・プロセッサが両立しないことだろう。設定プロパティのグラフィックタブにある「グラフィックカードの再生支援機能を使用する」のチェックボックスがチェックされていると、30フレーム/秒モードのタイトルの再生品質が以前と同じレベルになってしまう。PowerDVDではハードウェアサポートが充実しているため、ここがチェックされたままPowerDVDを利用し、画質が悪いと誤解しているユーザーもいるかもしれない。ハードウェアアクセラレーションを無効にした場合のペナルティが決して大きくない(Pentium III 600EB MHzで約10%)ことを考えると、このチェックボックスは外しておいた方が良いかもしれない。
また、これは筆者の個人的な利用に即したテスト項目なのだが、ATI TechnologiesのAll In Wonder 128(AIW128)でキャプチャしたMPEG-2ファイルの再生が、最新版のPowerDVD 2000から可能になった。これまでのバージョンでは、全く再生できなかったことを考えれば進歩しているのだが、若干リップシンクがずれる傾向が見られた。
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ただ、商品化されたのはMightyPEG DVD 2000の方が新しいため、手元にあるPowerDVD 2000のパッケージとの比較では、MightyPEG DVD 2000の方がファイルのタイムスタンプが若干新しかった(ファイルサイズも同じではない)。これはロットにより異なると思われるため、将来的にも同じことが言えるかどうかは不明だが、今すぐに選ぶのであればMightyPEG DVD 2000の方が新しいビルドである可能性は高い。
その他の特徴については、PowerDVD 2000の項目を参照していただきたい。
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こちらもCyber Link製のエンジンを用いたソフトウェアDVDプレーヤーだが、MightyPEG DVD 2000と異なり、若干独自性を持ったプレーヤーに仕上がっている。最大の違いは、MPEG-1/MPEG-2ビデオやMP3オーディオなど、多くのプレーヤーがサポートしているフォーマットに加え、WAVEやMIDIなどのフォーマットをサポート、メディアプレーヤー的な性格を強めていることだ。音楽CD再生機能も、CDDBからのデータダウンロードに対応するなど、強化されている(その代りにiPowerは省略されている)。
こうした機能強化により独自性が強まったことで、PowerDVD/MightyPEGとの互換性はかなり失われている。たとえば、PowerDVD/MightyPEGで共通だったスキンも、本プレーヤーでは利用できない。混同を防ぐためか、Media Wizard/DVDではスキンと呼ばず、マスクウェアという呼称を用いている。
気になったのは、「Matrix DVD-ROM対応特別版」との互換性がなかったことだ。Matrix DVD-ROM特別版は、映画をモチーフにした一種のシェルを持ち、簡単なゲーム、オフィシャルWebサイトへのアクセス、劇場予告編といったコンテンツを呼び出すことができるのに加え、Flash Playerと呼ばれるDVDプレーヤー機能を備えている。ただ、このFlash PlayerはDVDプレーヤーといっても、MPEG-2デコーダなどを持ったスタンドアロンのプレーヤーではない。すでにシステムに登録されている(DVDプレーヤーのインストールにより登録された)MPEG-2デコードCODEC(MicrosoftのDirectShow流に言えばフィルタ)を呼び出す、一種のシェルのようなプレーヤーである。
Media Wizard/DVDをインストールした後、Matrix DVD-ROM対応特別版をインストールし、Flash Playerからの再生を試みたのだが、フィルタが見つからない、というエラーになってしまった。このことからMedia Wizard/DVDは、標準的なDirectShowに準拠していないプレーヤーである可能性がある。もちろん、Media Wizard/DVDから直接Matrixを再生すれば、ちゃんと映画を見ることはできるから、それほど問題は深刻ではない。とはいえ、「Matrix DVD-ROM対応特別版」というコンテンツに完全に対応できていない、という点でやはり改善が必要だろう(こうした「オマケ」が利用できるのも、PCでDVDを再生する場合ならではの付加価値だと思う)。
また、おそらく同じ原因で、Mad Onionの動画再生性能ベンチマークテストであるVideo 2000も、Media Wizard/DVDではちゃんと動作しなかった(Video 2000も、ベンチマークプログラムの中からサードパーティ製のDVDデコーダをDefault Decoderとして呼び出す)。Video 2000が認識しなかったのは、今回取り上げた9本中、このMedia Wizard/DVDだけである。
そのほかの点では、おおむねPowerDVDに準じたプレーヤーだ。DVDプレーヤーとしての安定性や画質などは、ほぼ同等(つまりはトップクラス)と考えて良い。不思議だったのは、AIW128でキャプチャしたMPEG-2ファイルの再生が、拡張子の変更が必要だったものの、PowerDVD/MightyPEG DVDよりスムーズだったことだ。同じエンジンを用いていながら、かなり異なった味付けのプレーヤーといえるだろう。
【テスト環境】
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注):店頭価格はヨドバシカメラ新宿マルチメディア館で、6月16日に店頭での表示価格をPC Watch編集部が独自に調査したものです。独自のカードを併用することで、次回の買い物の際、現金同様に使用できる「ポイント」の還元を受けることが出来ます。
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(2000年6月20日)
[Text by 元麻布春男]