最新ソフトウェアDVDプレーヤー事情~ DVDExpress、SoftDVD MAX2000、Software Cinemaster 2000 ~ |
■価格の改訂も含めたアップデートが必要な「DVDExpress」
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このDVDExpressは、今回取り上げた9本のプレーヤー中、唯一Windows 2000に正式対応していないプレーヤーだ。ただし、正式サポート対象外とはいうものの、Windows 2000上での動作が特に不安定ということはない(ただし、VARODVD同様、マウスを動かした際に若干のノイズが画面上に表示される、という問題は見られた)。またS/PDIF出力も、利用するためには販売元であるMSDジャパンのWebサイトからレジストリデータをダウンロードする必要があるなど、仕様に若干の古さを感じる(実際、発売時期も古いものと思われる)。
決して本プレーヤーがDVDプレーヤーとして、基本的な機能に欠けていたり、画質的に明らかに見劣りする、ということはないのだが、これといった特徴に欠けるのも事実だ。標準価格、実売価格ともに、今回取り上げた9本中、最も高価であることを考えると、価格の改訂も含めたアップデートが必要だと思われる。
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今回バージョンアップされたSoftDVD MAX2000の最大のセールスポイントは、何と言ってもドルビーヘッドフォンのサポートだろう。ドルビーデジタルの5.1チャネルマルチチャネルサウンドを、ヘッドフォンを前提に仮想再現する機能だ。もちろん、「ドルビー」の名前からもわかるように、ドルビー研究所が正式に認めた技術である。マルチチャネルサラウンドの効果が得られやすいタイトルを中心に試聴してみたが、ハッキリとその効果の高さが確認できた。手元にあるソニー製のバーチャル ドルビー デジタル ヘッドホン/サラウンドプロセッサとも比較試聴してみたが、ヒケをとらないものであった。強いて問題をあげれば、現在市販されているサウンドカードの多くがヘッドフォンアンプを内蔵していないため、サウンドカードの出力に直接ヘッドフォンを接続しただけでは十分な音量が得られない可能性があることだ。しかし、これはもちろんSoftDVD MAX2000の責任ではない。手軽にサラウンド効果が得られるという点で、極めて有効な機能だ。
プレーヤーとしてのSoftDVD MAX2000のもう1つの特徴(?)は、マウスの右ボタンをサポートしていない、ということだろう。多くのPC用プレーヤーは、右ボタンクリックによるプロパティメニューに、様々な機能を割り当てている。操作パネルを用いなくても、すべての機能がここから利用できるくらいだ。ところがSoftDVD MAX2000は、右ボタンを押しても何のメニューも表示されない。これは不都合というより、面食らってしまう。操作パネルがサポートする機能もシンプルなものにとどめられているため、たとえば特定のチャプタから再生したい場合など、ルートメニューを呼び出して、コンテンツ側の機能を利用しなければならない。大半のPC用プレーヤーなら右ボタンからチャプターリストを呼び出し、1クリックで目的のチャプタへ飛べることを考えると、ちょっとまどろっこしい。
全体的にはSoftDVD MAX2000は、前作のSoftDVD同様、手堅くまとめられたプレーヤーとの印象が強い。DVDExpress同様、米国でOEM中心(Diamond Multimediaなど)に販売されてきたプレーヤーであるからだろう。PCならではの機能という点に目立つところはないが、PC上で民生用DVDプレーヤー(それも最新のもの)を再現したという点では、ドルビーヘッドフォン対応も含め、高く評価できるプレーヤーだ。
■手堅いが新味に欠ける「Software Cinemaster 2000」
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最新版であるSoftware Cinemaster 2000の特徴は、価格を中心価格帯の5,800円に引き下げたことと、ノートPCでの性能向上のようだ。一般にノートPCでは、バッテリ駆動時間を延ばすためにパワーマネージメントが強化されており、それに伴う割込みなどが頻繁に発生、同じクロックのCPUを用いているデスクトップPCに比べてどうしても性能が劣る。どうやらCinemaster 2000は、このあたりの問題に目を向けているらしい。ハッキリと言えないのは、あまり情報が公開されていないことに加え、今回の評価プラットフォームにノートPCを用意できなかったためである。目に見えない機能だけに、果たして他のプレーヤーと比較評価するしかないのだが、今回は比べることができなかったため、他社比で優れている、と言いきれない。ただ、ノートPCのユーザーにとって、Cinemaster 2000が無難な選択になるであろうことは間違いない。
もう1つCinemaster 2000で新たに加わったのは、「Software Cinemaster 2000メンテナンスツール」と呼ばれる設定ユーティリティだ(オプションであり別途インストールする必要がある)。Cinemasterシリーズも、大手のOEMへの採用が多いせいか、以前のバージョンでは細かな設定を変更するユーティリティは付属していなかった。一応、コントロールパネルが用意されていたものの、そこで可能な変更はミニマムのものであった。今回加えられたメンテナンスツールは、ハードウェアの個別対応を中心にしたもので、どちらかといえば性能の向上より、障害が生じた場合の回避に貢献しそうなものが中心のように見えるが、こうしたツールが提供されることで、適応範囲は広がるだろう。
以上の点を除けば、Cinemaster 2000で以前のバージョンから変ったところはそれほどない。もちろん、ハードウェアサポートはアップデートされているし、CCのサポートも加わっている。だが、これらは他の競合するプレーヤーの多くでも行なわれているアップデートであり、Cinemasterならでは、というセールスポイントとは言いがたい。ユーザーインターフェイスが以前のバージョンと全く同じであることも、「あまり変りばえしない」という印象を与える一因だろう。また、他の多くのプレーヤーがマルチメディアファイルなら何でも開けるメディアプレーヤー的性格を強めているのに対し、Cinemaster 2000が今もDVDビデオやVideoCDの再生に特化しているのも、ハードウェアCinemasterと共通したユーザーインターフェイスゆえかもしれない。
いずれにせよ、手堅くまとめられたプレーヤーであることは間違いないし、画質も悪くないのだが、新味に欠ける印象は否めない。ただ、実売価格の安さは、ソフトウェアDVDプレーヤーがバンドルされていないハードウェア(PC本体のみならず、DVD-ROMドライブ、ビデオカードなど)を持つユーザーが最初のプレーヤーとして購入するのには、これまでの実績も含め、ふさわしいといえるだろう。
【テスト環境】
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注):店頭価格は、DVDExpressとSoftware Cinemasterの2製品はソフマップ新宿4号店にて、SoftDVD MAX2000はヨドバシカメラ新宿マルチメディア館で6月16日に店頭での表示価格を、PC Watch編集部が独自に調査したものです。各店ともそれぞれ独自のカードを併用することで、次回の買い物の際、現金同様に使用できる「ポイント」の還元を受けることが出来ます。
なおPC Watch編集部では、この価格で販売されることを保証するものではありません。実際の販売価格は変動いたしますので、購入時に各ショップの店頭にてご確認ください。各ショップの場所等については、各ショップにお尋ねください。
編集部では、個別のメールや電話でのお問い合わせにはお答えいたしかねます。
(2000年6月22日)
[Text by 元麻布春男]