Intel Developer Forumレポート

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Intel Developer Forumレポート

Intelがチップセットのロードマップを公開
~Intel 820も2+2が正式サポートへ~



2000年2月15日~17日 開催(現地時間)

会場:Palm Springs Convention Center
   Wyndham Hotel
   Marquis Hotel


 IntelはIntel Developer Forumの会場で、今後のチップセット戦略に関する概要を明らかにした。このレポートではIntelが公式に明らかにした内容を元に、Intelのチップセット戦略を探っていこう。


●Intel 820で2RIMM+2DIMMサポートが実現へ

IntelがIDFで公開したIntel 820とその後継に関するロードマップ
 IntelはIDFのIntel 820に関するテクニカルトラック、およびメモリのロードマップに関するテクニカルトラックで、Intel 820に関するメモリサポートに関してアップデートを行なった。それによると、Intelは今後Intel 820で2RIMM+2DIMMのソリューションをサポートしていくという。つまり、'99年9月のIDFの段階で示されていた3RIMMと2RIMM+2DIMMのうち、少なくとも一方は実現されることになる。

 ここで、もう一度Intel 820とDirect RDRAMが抱えていた問題が何であったか振り返ってみよう。Intel 820が出荷直前に延期になったのは、3本のRIMMソケットすべてにRIMMを挿した場合、メモリエラーが起こるという事だった。これを避けるために、IntelはOEMメーカーに配布するデザインガイドラインを「2RIMMないしは2DIMMのみ」に変更し、11月の出荷にこぎつけた。デザインガイドとはメーカーがマザーボードを設計する時に参照する資料で、このデザインガイドで指定されている以上、正式にサポートされているのは「2RIMMないしは2DIMM」のみという状況になるのだ(ちなみに、実際にマザーボードベンダなどから3RIMMや2RIMM+2DIMMという製品も登場していたのは、多くはIntelが問題を発見する以前にマザーボードベンダに配布していた3RIMMないしは2RIMM+2DIMMのデザインガイドに基づいて作られたものである)。

 今回Intelが「Intel 820で2RIMM+2DIMMをサポートすることにした」ということも、11月にIntelが行なったデザインガイド変更の延長上にある。チップセットそれ自体に手を加えるのではなく、デザインガイドに手を加えることで2RIMM+2DIMMを問題なく利用できるようにしたのだ。これにより、マザーボードベンダは現在市場に出回っているIntel 820を利用して、2RIMM+2DIMMのマザーボードを作ることが可能になる。Intel プラットフォームアーキテクチャ部門ディレクタ兼フェローのペーター・マクウイリアムズ氏はテクニカルトラック後に開かれた記者向けQ&Aセッションで「MCH(Intel 820のノースブリッジ)のチップそれ自体には手は入れていない。先週(この原稿が載る時点では先々週)、台湾のマザーボードベンダなどOEMメーカーに向けて新しいデザインガイドを配布した。その中で2RIMM+2DIMMが実現できるように変更されている」と述べ、その点を確認した(ただし、現在Intelのホームページで公開されているデザインガイドは12月時点のもので、特にアップデートはされていない)。

 この2RIMM+2DIMMを正式に実現したことにより、IntelはDirect RDRAMの普及に弾みをつける武器を手に入れた事になる。現在Direct RDRAMで最も問題になっているのはコストの問題だ。SDRAMに比べてあまりにコストが高いため、コストが何よりも最優先される現状において、PCベンダがDirect RDRAMを採用するのは非常に難しい。しかし、この2RIMM+2DIMMのマザーボードが普及していけば、近い将来にDirect RDRAMの価格が安価になってきた時に、PCベンダ(やユーザー)はDIMM(SDRAM)をRIMM(Direct RDRAM)に変更することで、即メリットを享受することができるようになる。つまり、SDRAMからDirect RDRAMへの移行をスムーズに行なうことができるようになるのだ。ただし、このシナリオはDirect RDRAMの価格がSDRAMに近い値段に下がるということが前提であり、Intelの思惑通りに事が進むかどうかは不透明だ。

 なお、マクウイリアムズ氏は「2月24日(現地時間)から開催されるCeBITでは、マザーボードベンダの多くが2RIMM+2DIMMのIntel 820搭載マザーボードが展示されるだろう」という見通しを明らかにした。


●Tehama、Camino2、Solano2……続々とコードネームが公開

 基調講演でのレポートでもお届けしたように、今回は実に多くのチップセットの製品名やコードネームが公開された。基調講演に引き続き行なわれたメモリに関するテクニカルトラックでは、さらにいくつかのチップセットの存在が明らかにされた。そこで、今回のIDFで明らかになった内容を整理しておきたい(あくまでIntelがIDFで公開した内容だけに基づいたものである)。

Intelのメモリとチップセットに関するロードマップ デモショーケース(展示会)で公開されていたIntel 815を搭載したPC。AIMMと思われるメモリモジュールがAGPスロットに挿さっていた。GMCHの型番は「FW82815」だった

★Tehama:Willametteのチップセット

 TehamaはWillamette用のチップセットだ。プロセッサバスはもちろんWillametteの400MHz(100MHzのQDR=1クロックで4つのデータを送信するバス)のソースシンクロナスデータバスで、バンド幅は3.2GB/秒(P6バスは100MHzで0.8GB/秒、133MHzで1GB/秒)。Direct RDRAMは2チャネルがサポートされ、バンド幅は最大で3.2GB/秒。ICHはUltra ATA/100、イーサネットコントローラ、4ポートのUSBの機能が追加されるICH2に変更される。なお、サーバー版のチップセットはColusaになる。

★Tehamaの次世代:Willametteのチップセット

 2001年の後半に計画されているTehamaの次世代チップセット。詳細については公表されず。時期から考えて、シリアルATAなどが追加されるものと思われる。

★Camino2:Direct RDRAMをサポートしたP6バスチップセット

 現在のIntel 820の後継チップセットで、2000年第2四半期に投入される。MCHには特に変更は加えられないが、2+2の構成は発表時からサポートされる。ICHのみ新しいICH2に変更される。なお、ICH2ではCNR(Communication Network Riser)もサポートされる。

★Camino2の次世代:Direct RDRAMをサポートしたP6バスチップセット

 Camino2の次世代として「Camino Follow-on」として紹介されたチップセット。コードネームなどは一切明らかにされていないが、2001年の第2四半期に投入されることが明らかにされた。「将来的なI/O拡張」という説明がされているので、時期的なものなどから考えるとシリアルATA対応の可能性が高い。

★Intel 815チップセット:SDRAMをサポートしたP6バスチップセット

 コードネームSolanoとして知られてきたIntel 810Eチップセットの後継の統合型チップセット。Intel 815の仕様だが、133MHzFSBとPC133 SDRAMに対応、内蔵のグラフィックスアクセラレータはIGT(Intel Graphics Technology)であること(つまりはIntel 810/810Eと同じ)、外部の4Xモードに対応したAGPスロットが利用可能であることなどが明らかになった。

 なお、IDFの展示会場の一角に設けられたDDWGのブースにはIntel 815搭載マシンが展示されていた。残念ながら撮影はできなかったが、確かにノースブリッジであるGMCHには「FW82815」という型番がついており、Intel 815であることが確認できた(ちなみにICHはICH2ではない)。なお、AGPスロットにはSDRAMが2チップ搭載されたメモリモジュールが挿さっていた。これについて、展示員は「ノーコメント」ということで、具体的に説明はしてもらえなかったが、マザーボードにIntel 810-DC100/810Eには搭載されている4MBのディスプレイキャッシュがない事を考えると、ディスプレイキャッシュに変わるものだと考えられるだろう。これは既にIntelが規格などを明らかにしているAIMM(Agp Inline Memory Module)である可能性が高い。

 つまり、3Dグラフィックスの性能を上げていくには以下、2つのアップグレードパスがあることになる。

(1)AIMMを利用して内蔵のグラフィックスコアの性能を上げる
(2)スタンドアローンのビデオカードを利用して性能を上げる

 OEMメーカー(およびユーザー)は、ターゲットとするユーザーやコストなどから柔軟にグラフィックス周りの選択を行なえる訳だ。

★Solano2:SDRAMをサポートしたP6バスチップセット

 Solano2ではICHがICH2に変更されたものとなる(ICH2に関してはTehamaの項を参照)。

★Solano2の次世代 SDRAMをサポートしたP6バスチップセット

 詳細は明らかにされなかったが、Solano2の後継チップセットがCamino2の後継と同じタイミング(2001年第2四半期)で出荷される。こちらも詳細は明らかにされなかったが、やはりシリアルATAへの対応などが予想される。


●TimnaのメモリインターフェイスはDirect RDRAMがネイティブ

 プレビューデーのレポートでもお伝えしたように、Timnaのメモリインターフェイスは標準ではDirect RDRAMだと言われてきた。しかし、初日のアルバート・ユウ副社長の基調講演では「TimnaはSDRAMをサポートするバージョンが2000年の後半に出荷され、その後Direct RDRAMをサポートするバージョンが発売される」として、IntelからはTimnaの標準メモリインターフェイスがDirect RDRAMであるということは明らかにはされなかった。しかし、メモリ関連のQ&Aセッションでマクウイリアムズ氏は「Timnaの標準のメモリインターフェイスはDirect RDRAM」と述べ、初めて公式に認めた。

アルバート・ユウ副社長が手に持つTimna Timnaを利用した小型のマザーボード

 すかさず記者陣から「低価格向けのTimnaで、なぜ高価なDirect RDRAMのメモリを標準にしたのか?」という質問が飛んだ。それに答える形でマクウイリアムズ氏は「TimnaでDirect RDRAMを標準サポートにした理由は3つある。ピン数、電圧、バンド幅だ」と述べた。16bitのデータバスでデータの転送を行なうDirect RDRAMでは、64bitのSDRAMに比べてピン数を少なくすることができる。ピン数が増えれば増えるほどマザーボード上にCPUソケットの占める場所が大きくなってしまい、せっかくTimnaのように複数のチップを統合しても、あまり意味が無くなってしまう。また、SDRAMのI/O電圧は3.3Vであるのに対して、Direct RDRAMのそれは1.8Vとなっている。駆動電圧が低ければ低いほど消費電力や発熱は低くなるわけで、電源ユニットを小さくしたり、Timnaのような小型のPCに採用してもらう場合にはメリットがある。

 3つ目のバンド幅という点だが、メモリのバンド幅が広ければ広いほど内蔵のグラフィックスコアの描画性能を上げることができる。Timnaではローカルのビデオメモリは搭載されておらず、メインメモリをビデオメモリとして利用する。この時にメモリのバンド幅が十分でないと、メモリのバンド幅がボトルネックとなりグラフィックス性能が思ったほど向上しない。そこで、バンド幅がPC100 SDRAM(0.8GB/秒)に比べて倍(1.6GB/秒、PC800のRIMMを利用した場合)であるDirect RDRAMを利用すれば、それも解消できるという訳だ。

 そういう意味では非常に論理的なDirect RDRAMのサポートだが、しかし記者陣から疑問の声がでたように現実には論理的では無くなってしまった。なぜだろうか? それはIntelがDirect RDRAMの普及時期について見誤ったからだ。'99年、'98年のIDFで示されたメモリのロードマップでは、Timnaが発売される頃(2000年の後半)にはDirect RDRAMが十分普及して、メモリの価格も現在のSDRAMに近いものになっている予定だった。しかし、実際にはそうはなっておらず、こうした理想と現実の乖離が起きてしまった訳だ。

 そのような事情で、最初の世代のTimnaはMTH(Direct RDRAMのインターフェイスをSDRAMに変換するチップ)を利用して、Timna+MTH+ICH(おそらくICH2)という構成で出荷される。本来であればTimna+ICHという2チップで済んだところが、MTHという最初からSDRAMのインターフェイスをサポートするかDirect RDRAMが普及していれば必要のないチップを搭載することになる。せっかく、CPU+統合型チップセットで、チップの数を1つ減らしたのに、MTHを載せなければならないことにより結局トータルでのチップの数は変わらなくなってしまったのだ。実に皮肉な話だが、こんなところにもIntelのメモリ戦略の躓きの影響が現れているのだ。

□IDFホームページ
http://developer.intel.com/design/idf/

(2000年2月21日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp