大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

デスクトップの4台に1台の割合でMacが売れる理由




販売が好調な新iMac

 iMacの新モデルが3月3日に発売となった。発売以降、一気にシェアを伸ばしている。一部販売店では、デスクトップパソコンにおいて、3〜4割を占めるという、これまでにない驚くべき状況ともなっている。

 なぜ、iMacがここにきて、売れているのだろうか。

 全国の大手量販店の販売データを集計しているBCNランキングによると、デスクトップパソコンにおけるアップルのシェアは、今年に入ってから2月末までの2カ月間、毎週5〜7%台で推移していた。それが、新iMacの発売以降、シェアは一気に拡大。3月2日〜8日までの集計では、15.1%と3倍近くのシェアを獲得し、3月9日〜15日の集計でも12.9%、3月16日〜22日の集計でも12.5%と2桁台のシェアを獲得した。

 東京圏では、その傾向がさらに顕著だ。今年に入ってからも、2桁台のシェアで推移していた。3月2日〜8日の集計では、28.3%のシェアを獲得しトップに躍り出たのに続き、3月9日〜15日の集計でも26.0%のシェアを獲得。3月16日〜22日の集計でも25.1%と3週続けて首位になった。東京圏では、実に、店頭で売れるデスクトップパソコンのうち、4台に1台以上がMacという状況になっているのだ。

 名古屋、大阪では、まだここまでの状況にはなっていないが、新iMac発売週の3月2日〜8日の集計では、名古屋では前週の9位から3位へ、大阪では9位から5位へと上昇。存在感を高めてきている。

アップルの販売台数シェア推移
アップルのエリア別販売台数シェア推移
アップルのエリア別販売台数順位推移

 液晶一体型デスクトップパソコンである新iMacは、20型液晶搭載モデル1機種と、24型液晶搭載モデル3機種を用意。Core 2 Duo CPUやNVIDIA製GPUを採用しているのが特徴となっている。

 24型液晶を搭載した下位モデルは158,800円。最上位モデルでは、244,800円。また、20型液晶搭載モデルは、128,800円と買い得感が高いものとなっている。

 「24型液晶を搭載した下位モデルが売れ筋。購入しやすい価格が人気」と語るのは、ビックカメラ有楽町本館Macintoshコーナーの江澤哲也主任。また、ヤマダ電機LABI渋谷 Apple PCスーパーアドバイザーの田中正直氏も、「24型という鮮明な大型ディスプレイを見て、足を止める来店客が増えてきた。予想を超える売れ行きを見せている」とする。

 両店における新iMacの販売は好調だ。

 「デスクトップパソコン全体の3割から4割を占める売れ行き」(ヤマダ電機LABI渋谷 矢村隆店長)、「3月に入ってからは、デスクトップパソコン全体の3割は超えているのではないか」(ビックカメラ有楽町本館・江澤氏)という状況だ。

 初期需要としては、昨年来、新製品の発売が噂されていたことから、買い控えていたMacユーザーが飛びついたようで、「出足では、全体の約3割が買い控えていたユーザー」(ヤマダ電機LABI渋谷・田中氏)だが、一方で、これまでMacを使ったことがない新規ユーザーや、Windowsから乗り換えるユーザーの購入も見られるという。

ヤマダ電機LABI渋谷 矢村隆店長 ヤマダ電機LABI渋谷 Apple PCスーパーアドバイザーの田中正直氏
ヤマダ電機LABI渋谷 3階のMac売り場 売り場では、田中氏が作成した独自の告知で来店客を引きつける

 「依然として、Windows XPから、Windows Vistaへの乗り換えを懸念するユーザーがいる。こうしたユーザーが、Macにしてみたいと検討する例が増えている。Macで、Windows環境を構築できるのも、購入を後押しする理由となっている」(ビックカメラ有楽町本館・江澤氏)という。

 さらに、「Macには、画像や音楽に特化したPCであるとか、右クリックがない、オフィスソフトが動作しないというような誤解がある。その点の誤解を解くような説明すると一気に関心が高まる。Windowsユーザーからの乗り換えは、十数%を占めるほか、女性客からの注目度も高い」(ヤマダ電機LABI渋谷・田中氏)という声もある。

 iMacの販売増加の背景には、Macユーザーだけでなく、Windowsユーザーから乗り換え、女性層の購入増加などが下支えしているようだ。

 先頃、財団法人日本産業デザイン振興会が発表した都市圏在住の20代前半(20歳〜26歳)の女性を対象にしたデザインに関する意識調査では、「所有したことがないもののなかで、デザインがとても優れていると感じる商品」として、アップルの商品が上位5位中4つを占めている。1位のiPod、2位のiPhoneに続いて、4位にはiMacなどのアップルのデスクトップパソコン、5位にはMacBook AirなどのアップルのノートPCという順番だ。女性の潜在的需要が高いことが裏付けられている。

 さらに付け加えるならば、例年は、米国での進入学需要にあわせて、9月を前後して投入されたiMacが、今回は3月投入となったことで、日本の進入学需要期と重なり、こうした需要にあわせ、販売増加につながっていることも見逃せない。

 一方で、Macの着実なシェア拡大に寄与しているのが、国内における販売体制の強化だ。販売機会を増やす店舗の拡大に加え、専門販売員の育成など、Macという特別視された商品を販売するための仕掛けづくりにも余念がない。

 現在、アップル直営のアップルストアは全国に7店舗。アップルの正規販売代理店は、全国に1,000店舗以上。また、量販店内にショップ・イン・ショップで展開するAppleショップは18店舗。正規販売代理店と協業し、独立店舗型で運営するApple Premium Resellerが4店舗となっており、拡大基調にある。

 東京・有楽町のビックカメラ有楽町では、Appleショップ第1号店舗を、5階のPCフロアに出店。この3月に2周年を迎えたところだ。

 「Appleショップを設置してから、Macの販売は明らかに増加している。この2年間に、Macを販売できる担当者を増やし、さらにアクセサリーコーナーの充実、Windows PC売り場のなかにもMacコーナーを開設するなど、売り場の拡充を図ってきた。定期的なセミナーの開催も定着してきたほか、Appleサポートカウンターでは、量販店として唯一即日修理が可能な窓口であるため、利用者からの評価が高い」(ビックカメラ有楽町本館・江澤氏)と語る。

 Macを安心して購入できる販売店の増加が、Macの売れ行きにプラスとなっている。

ビックカメラ有楽町本館 Macintoshコーナー主任 江澤哲也氏 2周年を迎えたビックカメラ有楽町本館のAppleショップ アクセサリー売り場も広げている
ビックカメラ有楽町本館では、Mac売り場をWindows売り場の真ん中にも設置している 即日修理が可能なAppleサポートカウンター。量販店では唯一のもの

 もう1つは、販売担当者の育成へとの取り組みである。アップルでは、アップル・セールス・トレーニング・オンライン(ASTO)と呼ばれる、正規販売代理店を対象にしたウェブトレーニングの仕組みを提供している。

 ここでは、Macの基本的な知識から、製品に関する情報、顧客への接客や販売方法などについて、店員自らが学習することができる。

 履修した課目には、1課目あたり100ポイントから400ポイントといったように点数が用意され、課目ごとに出されるテストにパスすると、このポイントを獲得できる。累積が9,000ポイントに達した時点で、プロダクトプロフェッショナルに認定。14,000ポイントに到達するとセールスプロフェッショナルに認定される。

 毎日受講しても、プロダクトプロフェッショナルに認定されるには、最低でも1カ月はかかる計算であり、またこのポイントは毎年更新されるため、プロダクトプロフェッショナル、セールスプロフェッショナルの認定を維持しようとすれば、常に、ASTOを受講する必要がある。

セールスプロフェッショナルの認定証(上)と、プロダクトプロフェッショナルの認定証。このバッヂをつけた店員に聞けば安心だ

 それぞれの認定者には認定証が授与され、店頭でもこれを表示しながら接客することができる。来店客にとってみれば、この認定証を持った販売員に聞けば、Macに関して安心して購入できるというわけだ。

 日本国内におけるプロダクトプロフェッショナルの認定者は、2008年実績で数千人規模に達するという。

 この仕組みを積極的に取り入れているのが、ヤマダ電機だ。多くの正規販売代理店が、店員の自主性に任せて認定取得を推進しているのに対して、ヤマダ電機では社員の教育プログラムの1つとして、ASTOを採用。上位となるセールスプロフェッショナルは、90店舗に約150人の認定者がいるという。さらに、これらの認定者を対象に、東京・初台のアップル本社において、個別の集中研修を行なうことで、より高い専門知識の修得にも取り組んでいる。

 自らセールスプロフェッショナルであるヤマダ電機LABI渋谷 Apple PCスーパーアドバイザーの田中正直氏は、「認定証を見て、安心して相談してくれる来店客もいる。また、他の販売員と連携してMacの説明をすることもできる。Macの専門販売員がいるという点での安心感はあるだろう」と語る。

 矢村店長も、「Mac売り場ではリピーターが増えつつある。専門販売員の成果が明らかに出ている」とする。

 田中氏は、自らのMacに関する知識を生かして、Macの利点を紹介するコンテンツを作成。これを店頭展示している新iMacに表示することで、来店客の関心を引いているという。

 「昨年12月に、Mac売り場を1.5倍に拡張した。これにより、商品展示だけでに留まらず、Macの良さを魅せる展示が可能になった。まだまだ訴求方法の工夫次第では、売れる可能性が高い。まだ、Macの良さを知らないユーザーが多いだけに、売り場で足を止めてもらえれば、Macの良さを訴求できる」。

 Macの販売増の裏には、こうした地道な販売支援策の強化が見逃せない。

 製品の魅力とともに、売り場づくりへの取り組みが功を奏しているといえそうだ。

 もちろん、その一方で、Windows PCの売れ筋がネットブックを中心としたノートPCに移行し、デスクトップパソコン全体の構成比が減少しており、その影響でデスクトップにおけるMacのシェアが高いという見方もできるだろう。

 だが、デスクトップで魅力的な製品を投入し続けるという点で、アップルの取り組みは評価したい。円高効果を背景にした戦略的な値付けにより、コストパフォーマンスの観点から見ても、新iMacは魅力的だといえよう。

 いずれにしろ、いまや、デスクトップパソコン市場の牽引役の一角を、iMacが担っていることは間違いない。これを定常的な動きにできるかどうかが鍵になる。

【お詫びと訂正】初出時、一部カタカナ表記を誤っておりましたので修正させていただきました。

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【3月4日】アップル、iMacをモデルチェンジ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0304/apple02.htm
【3月4日】アップル、お買い得な24型iMacを主力に
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0304/apple4.htm

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(2009年3月31日)

[Text by 大河原克行]


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