大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

三洋開発者に聞く無線フォトフレーム「ALBO」の新たな使い方とは




 デジタルフォトフレームが注目を集めるなか、それとは一線を画したホームネットワークビューワ「ALBO(アルボ)」が、徐々に注目を集めようとしている。

ホームネットワークビューワ「ALBO」

 三洋電機が2008年11月から発売したALBOは、同年3月に京セラに売却した携帯電話事業で培った通信関連技術やノウハウを活かし、無線LAN機能を活用した新たな製品として市場に投入したもの。鳥取県鳥取市に本社を置く三洋電機コンシューマエレクトロニクス内に設置された事業推進部において、新市場開拓型製品のひとつとして、開発されたものだ。

 同社事業推進部事業企画課主任企画員の川口弥文氏は、「もともとの発想は、携帯電話に蓄積された画像をどうやって共有化するかということから始まった。デジカメの画像データの共有化が発端ではなかった」と語る。デジタルフォトフレームがデジカメの写真を表示することを前提に開発されたものであるのに対して、ALBOは発想の原点が異なる。

 それはどんな点に違いとなっているのか。1つは、無線LAN接続機能を搭載したこと、さらに、Windows CEをベースとした独自のメーラーを内蔵し、PCでメール受け取る感覚で、ALBOでメールを受け取れる点だ。ALBOでメールを受信すると、添付された画像を画面に大きく表示し、その手前にテキストを表示する。

 これにより、携帯電話からALBOに割り当てられたアドレスにメールを送信すれば、ALBOの画面に、フォトアルバムとして画像を直接表示できる。

三洋電機コンシューマエレクトロニクス事業推進部事業企画課主任企画員・川口弥文氏

 デジタルフォトフレームの多くは、SDカードなどを利用して、物理的にデータを移動させるものが多いが、ALBOでは離れた場所にいても、携帯電話から直接送信できる。また、10分間に1度、サーバーにアクセスするように設定できるため、送信された画像は、ほぼリアルタイムで表示できる。

 デジタルフォトフレームでよく想定されるシーンが、離れて暮らす両親に、孫の写真を見せるという使い方。だが、実際には、デジタルフォトフレームを両親にプレゼントしても、1度蓄積したデータが、なかなか更新されないままとなっているというのが実状だ。ALBOでは、無線LANの設定とアドレスの設定を一度してしまえば、あとは携帯電話から写真を送信するだけで、自動的にALBOに最新の写真が表示されるという仕組みが実現される。まさに、田舎の両親に、最新の画像を送り、手間をかけずに画像を更新するということが可能になるのだ。

 また、携帯電話から写真を手軽に転送する使い方としては、赤外線で直接転送する機能がある。大容量の画像を複数枚転送するにはあまり現実的ではないが、これも携帯電話の利用シーンから発想したが故の機能だ。

 「携帯電話から、物理的にデータを移動させようとすると、microSDを取り出して、アダプタをつけて、それをPCに差し込んで、ダウンロードの作業を行なうことになる。だが、ALBOでは、携帯電話が持つ通信機能を活用することで、そうした手間をなくしている」というわけだ。

 また、携帯電話では縦位置で撮影された写真が多くなりがちだが、横置き位置での表示に加えて、90度画面を傾けることができる「くるりんビュー」を使えば、縦位置での表示が可能になる。加えて、画像データが大きくても、読み込む段階で最大で480×600ドットにリサイズすることから、ALBOの256MBの容量でも、100枚程度の画像の蓄積が可能だ。さらに、USB端子、SDメモリーカード、メモリースティックの利用が可能で、SDカードに収録したMP3やWMA、WAVによる音楽データを、画像表示とともに流すこともできる。

台座部分に操作用インターフェイスを装備 側面にはメモリカードとUSBのインターフェイス

 ALBOでは、メールによって、ALBOに画像データを送信する機能を、「メールdeフォト」と呼んでいる。「メールdeフォト」機能は、こんな意外な使い方も可能となる。

 結婚式でのことだ。配布された座席表などにアドレスを記載したQRコードを掲載し、まずは参加者に、携帯電話でQRコードからアドレスを読みとってもらう。このアドレスは、ALBOの受け取り用のものである。この時に受け取りようとして利用するアドレスは、フリーメールアドレスを利用すれば、それほど手間もかからない。

 式の最中に参加者が携帯電話で撮影した画像は、次々とこのアドレスに配信してもらう。式が終わるころには、出席者が撮影した数多くの写真が、ALBOに収録される。画像が数多く収録されたALBOを、式が終わるとと同時に新郎新婦にプレゼントするというサプライズ的な使い方だ。

 「無線LANの機能があれば、こうした使い方もできる。これは、実際に結婚式場の協力を得て、無線LAN環境を用意し、実現した例」と川口氏は語る。一般的なデジタルフォトフレームとは異なる利用方法が可能になるといえよう。

 ALBOは、イタリア語で掲示板、アルバムを意味する。その意味からも明らかなように、家族がALBOを掲示板のようにして利用し、情報を共有することも製品企画の柱の1つだ。それを具現化する機能として、写真表示機能以外に同社がこだわったのが、メールを活用した伝言板機能だ。

 子供が家で留守番している時に、外出中の親から「おやつは、棚にありますよ」といったメールを配信できる。子供が、このメールを受け取ったことを確認するための仕掛けもある。子供から、「ありがとう」、「了解しました」などの定型文による返信が、ボタン操作だけで行なえるようにするという工夫も凝らしているのだ。

 そして、掲示板としてのもう1つの機能が、RSS対応のニュースサイトから最新情報を表示するという仕組みだ。これにより、ALBO上に自動配信されるニュースを取得し、ニュースのアウトラインを表示。常に最新の情報を確認できる。ニュースサイトは10件まで登録でき、用途にあわせて切り替えができる。

 デジタルフォトフレームは、最初は楽しく画像を見ていても、結果として同じ画像ばかりが繰り返し表示され、「3日間もつけていると飽きてしまう」ということになりがちだ。だが、ALBOでは、RSSに対応し最新ニュースが常に表示されることで、飽きるということがなくなるのだ。これも掲示板としての機能のひとつであり、継続的に利用するための仕掛けといえよう。

 ALBOは、デジタルフォトフレーム売り場で、他社のデジタルフォトフレームと一緒に展示販売されていることがほとんどだ。だが、1万円前後の価格設定が多いデジタルフォトフレームにおいて、3万円前後の価格設定は、割高感を感じざるを得ない。ALBOならではの機能の説明が店頭で行なわれていないため、ALBOへの注目度はまだまだ低いといえる。

 また、無線LAN機能を搭載することで場所を選ばない設計としているが、有線でのLAN接続が不可能なために、無線LANを家庭内に設置していることが前提となるなど、初心者ユーザーには、ハードルがやや高いことも気になる。

 「リビングに設置してもらうことを前提に開発した。設置する場所に必ずしもネットワークの端子があるわけではないという判断から、設置場所の自由度を持たせて、無線LAN対応のみとした」(川口氏)という割り切りからの製品設計であることを明かす。

 現時点で、ALBOの評価を下すのは早計だが、デジタルフォトフレーム市場における存在感を発揮する必要があるのは明らかだ。

 「PCやケータイは、1対1のコミュニケーションツール。それに対して、ALBOは、ファミリーユースを狙った家族が情報を共有するためのツールに位置づけたい。次の進化としては、家庭のなかに置かれているコルクボードの伝言板の代わりに利用されたり、喫茶店のメニューやチェーン店における店頭でのPOPなど、デジタルサイネージとしての商業利用の提案も加速したい」と、川口氏は語る。デジタルサイネージとしての活用では、各売り場に設置されたALBOに、本部から一括でPOP情報を配信して表示するといった使い方もできるようになる。

 まだスタート地点についたばかりのALBO。通信機能を利用することで、活用提案は広がりを見せることになるだろう。その点では、次の一手が楽しみな商品ではある。

□三洋のホームページ
http://www.sanyo.co.jp/
□製品情報
http://www.e-life-sanyo.com/albo/wireless/
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(2009年3月30日)

[Text by 大河原克行]


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