山田祥平のRe:config.sys

16:9の功罪




 ディスプレイのアスペクト比は、どうやら16:9で決まりのようだ。ネットブックでさえ、1,024×576ピクセルといった解像度でトレンドに忠実であろうとしている。また、いわゆるフルHDは、1,920×1,080ピクセルだ。果たして、このアスペクト比、本当に使いやすいといえるんだろうか。

●トレンドは16:9で決まり

 今、この原稿を書いている環境は、24型の1,920×1,200ピクセルと21型の1,200×1,600ピクセルのマルチディスプレイだ。片方は16:10で、もう片方は3:4、つまり、縦にして使っている。自分では、この環境はとても使いやすいと思っているのだが、ちょっと前までワイド液晶のトレンドだった16:10のアスペクト比が、16:9へとシフトしていく傾向にあるようだ。

 画面の縦横比が16:10から16:9に変わることで、映画や地デジ番組などの16:9コンテンツをフルスクリーン表示する際に、上下の黒い帯ができず、画面いっぱいにコンテンツが表示されるようになることを喜ぶユーザーも多い。また、製造ライン的に家電のテレビと同じアスペクト比にしておいた方が効率がよくコストを抑えられるという話も聞く。

 だが、この比率が、コンピュータを使うという観点から見たときに、ほんとうに使いやすいのかどうかには、まだ疑問が残る。というのも、ただでさえワイド液晶をうまく使うように、OSもアプリケーションも進化を遂げていないのに、ハードウェアのスペックが一人歩きをしてしまっているからだ。

 まず、コンテンツということでいうと、16:9以外のコンテンツはまだまだ多い。テレビや映画を見ている時間と、それ以外のコンテンツを扱っている時間では、どっちが長いかにもよるが、今も昔もA4縦の書類がその典型だし、コンパクトデジカメの4:3写真や一眼レフデジカメの3:2写真などもある。また、ブラウザで読み進めるウェブページなどは、もっと中途半端で縦方向は無限大、つまり、アスペクトレスともいえる。

 Windows 7では、任意のウィンドウをデスクトップの左または右、上、下に振ると、デスクトップの半分のサイズを使って最大化される。左右の場合、だと1,920ピクセルを半分ずつ使うことになり横方向は960ピクセルとなる。XGA液晶で最大化したときの横幅よりは狭いが、それなりに実用的な横幅でウィンドウを表示できる。ただ、縦方向は長い方が使いやすいのは当たり前で、1,080ピクセルよりも、1,200ピクセルあった方が、表示できる情報の量は多くなる。そのためなのか、ウィンドウの上または下の枠線をダブルクリックすると、横幅はそのままに上下いっぱいにウィンドウが広がるような工夫も盛り込まれている。

 いずれにしても、トレンドは16:9で決まりで、今後、再び16:10に戻ることはないだろう。少しでも解像度の高い、そして品位の高い16:10ディスプレイが欲しいユーザーは、まだラインアップが揃っている今のうちに買っておいたほうがいいかもしれない。そうしないと将来的に、4:3ディスプレイとともに16:10ディスプレイも入手できなくなってしまう可能性もある。レアな贅沢品になるかもしれない。今買っておけば、たぶん5年以上は使えるだろう。その先のことはそれから考えればいい。

●Windows 7のワイドへのアプローチ

 Windows 7も、これだけワイド液晶が当たり前になってきているのに、そのことをあまり考慮しているとは思えないのが残念だ。たとえば、タスクバーの幅は、従来よりも縦に10ピクセル増えてしまった。設定で、従来通りの幅にすることもできるが、多くのユーザーは、タスクバーをデフォルトで使うために、ここでも縦方向の長さが余計に短く感じられるだろう。

 それでは、タスクバーを、右に持って行ったらどうか。それなりに使いやすそうではあるが、横方向のピクセルを占有し、ウィンドウを左右に振っての最大化時の横幅を圧迫してしまう。

 そもそも、Windows 7は、多くのウィンドウを開いたときにも、目的のウィンドウに切り替えやすい環境を目指しているようだ。いくつものウィンドウがオーバーラップしていても、タスクバーのサムネールを使って、それぞれのウィンドウの内容を確認でき、素早く目的のウィンドウをアクティブにできる。

 発想を変え、ウィンドウそのもののデザインを変えるというのはどうだろう。たとえば、タイトルバーは本当に必要なんだろうか。タイトルバーをウィンドウの左か右に表示するような工夫はできないだろうかなど、妄想に近いGUIを想像してしまう。

 これらOS側からのアプローチに加え、アプリケーションの工夫も必要だ。たとえば、タブのGUIを持つアプリケーションは多いが、それは本当に横方向のタブ切り替えでいいのだろうか。横方向のタブ表示は、ただでさえ短い縦のピクセルを消費してしまう。それよりは、縦に積み重ねるタブ表示にした方がワイド画面を有効に生かせるかもしれない。

 アプリケーションが、そのGUIを縦方向に拡張してきたのは、画面の縦スクロールが比較的容易で、しかも、コンテンツは上から下に読み進めるものが多かったという背景もあるのだろう。スクロールすればいいのだから、全部を表示できなくてもかまわないという考え方だ。マウスにホイールが用意されたときも、最初は縦方向のスクロールだけだった。横のチルトがサポートされ、横スクロールができるようになったのは、比較的最近になってのことだ。かくして、メニューバー、ステータスバー、ツールバーなどはもちろん、Officeなどで用意されたリボンのインターフェイスも、やけに縦のピクセルを消費する。まるで、ディスプレイのワイド化と逆行するかのようだが、この傾向はこのまま続いていくんだろうか。ウィンドウの横方向をうまく生かしたGUIが登場しなければ、16:9ワイドは16:9コンテンツをフルスクリーンで見るという用途以外では、かえって使いにくいかもしれない。

●変わることが求められるアプリのGUI

 昨今のアドビのアプリケーションは、横方向をうまく使っているように見える。たとえば、Photoshop CS4にはタイトルバーが存在しない。Photoshopはマルチプルドキュメントインターフェイス(MDI)のアプリケーションだが、それをタブのインターフェイスで提供している。ツールは縦に並んでいるし、各種の調整パネルも横に表示される。また、Lightroomなども、操作系のGUIを扱う写真の左側、右側で実現することで、縦方向にコンテンツが圧迫されない工夫がなされている。

 いずれにしても、OSやアプリケーションが、もっと真剣にワイド比率のデスクトップを有効に生かすことを考えない限り、本当の使いやすさを得ることはできないだろう。実際のGUIが4:3当時のときのままでは使いにくいのは当たり前だ。

 とはいうものの、WindowsはあくまでもWindowsであり、ここまで世界標準的な存在になった以上、どんなに使いやすかったとしても、そこにドラスティックな変化を求めるのは酷だ。変わることを拒むユーザー層も半端ではないからだ。

 Windows 7では、ウィンドウのリサイズをセミオート化し、最大、最小、任意サイズという3つの状態に加えて、上半分、下半分、右半分、左半分という新たな状態が加わった。これらはタイル表示を促すナビゲートだが、オーバーラップの場合も、タスクバーのサムネールで複数のウィンドウの切り替えが容易だ。

 ここにきて、ようやくWindowsは、複数形の「〜s」を意識し始めたのかもしれない。ユーザーに大きな作法の変更を求めずに、半端なワイドを有効に生かすには、それがもっともリーズナブルだからだ。

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【2月6日】【山田】スタートボタンをターミネイトするWindows 7
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0206/config246.htm

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(2009年3月13日)

[Reported by 山田祥平]


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