Intel、32nmへの大型投資と順調な立ち上がりを強調
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ワシントンD.C.での講演に出席したIntel CEOのポール・オッテリーニ氏(中央)。左右はオレゴン州選出の上院議員とカリフォルニア州選出の下院議員(提供:Intel) |
2月10日(米国時間) 発表
Intelは2月10日(米国時間)、ワシントンD.C.にある「Economic Club」で記者会見を開催し、同社が32nmプロセスルールの研究開発、工場の建設などの費用としてに今年の終わりまでに70億ドル(日本円にして約6,300億円)の投資を行ない、さらに来年には80億ドル(同約7,200億円)に達する見通しであることを明らかにした。
さらに、32nmプロセスルールでCPU部分が製造されるGPU統合型デュアルプロセッサとなるClarkdale/Arrandaleの2製品を、今年の第4四半期より前倒しで製造を開始することを公式に明らかにした。
●ポール・オッテリーニCEOが32nmプロセスルールへの強力な投資を発表
Intelのポール・オッテリーニCEOは、同社が32nmプロセスルールの技術開発や工場建設に関して積極的に投資を行なっていることをアピールし、米国内における1つのプロセステクノロジに対する投資として過去最大のものとなると述べた。オッテリーニ氏は、「Intelは今年の末までに32nmプロセスルールの研究開発や工場建設などに70億ドルもの資金を使ってきた」と言い、Intelが厳しい経済状況の中でも積極的に投資していくのだという姿勢を明らかにした。
また、「確かに現在の米国経済が置かれている現状は厳しいが、Intelは社風として危機の時こそ攻めの経営姿勢をとる」と述べ、攻めの姿勢を見せることが、結果的に米国経済を復活させるのだとという認識を明らかにし、他の米国の製造業にもそれに続いて欲しいと呼びかけた。
●32nmプロセスルールの大量生産は今年の第4四半期から可能になる
オッテリーニ氏がこうした講演をワシントンD.C.で行なうということは多分に政治的な意味があると考えるのが正しいとらえ方だろう。また、IntelのCEOがこうした講演を行なうということは、32nmプロセスルールが順調な立ち上がりを見せているということの証拠でもある。
Intel ロジックテクノロジ開発担当上級フェローのマーク・ボーア氏は「弊社の32nmプロセスルールの開発は順調に進んでいる。32nmプロセスルールの立ち上がりは45nmの時と同様順調で、第4四半期には歩留まりが出荷可能なレベルにまで向上する見通しだ」と述べた。
ボーア氏によれば、32nmプロセスルールは第2世代のHigh-K+メタルゲートトランジスタ、銅とLow-Kから構成される9層構成、45nmプロセスルールに比べて70%の面積削減、Pb/ハロゲンフリーなパッケージなどの特徴を備えており、45nmプロセスルールと比較して22%の性能向上を期待することができるという。
Intelの32nmプロセスルールにはCPU用のP1268とSoC用のP1269の2つが用意されており、CPUのみならず、AtomベースのSoCといった製品の製造にも利用することができる。米国オレゴン州にあるD1Dですでに製造が開始され、第4四半期には同じくオレゴンにあるD1C、2010年にはアリゾナ州にあるFab32、ニューメキシコ州にあるFab 11Xにおいて製造が開始されることになる。
●Clarkdale/Arrandaleの計画が公式に明らかになる
Intel 副社長兼デジタルエンタープライズ事業本部 グループオペレーション担当ディレクターのスティーブン・L・スミス氏は、32nmプロセスルールが好調に立ち上がりつつあるという現状を踏まえて、改訂されたIntelの新しいロードマップを公開した。基本的には45nmプロセスルールで製造される予定だった、Nehalemのデュアルコア版となるHavendale(デスクトップPC向け)、Auburndale(ノートPC向け)の2製品が正式にキャンセルされ、その代わりに32nmプロセスルールで製造されるClarkdale(デスクトップPC向け)、Arrandale(ノートPC向け)の2製品が投入されるというものだ。
Clarkdale/ArrandaleはMCP(Multi Chip Package)と呼ばれる技術を利用し、1つのサブ基板上にCPUと、GPU/メモリコントローラという従来でいえばチップセットのノースブリッジに相当する機能が実装される。2つのチップは、各々を低レイテンシで接続できるQPI(Quick Path Interconnect)で接続されることになる。なお、GPU+メモリコントローラとなるチップは45nmプロセスルールで製造される。
Clarkdale/Arrandaleはメインストリーム向け市場のデュアルコア版として投入されることになるが、クアッドコア版は今年後半に投入される予定のLynnfiled(デスクトップPC向け)/Clarksfiled(モバイルPC向け)が継続して生産される。さらに、2010年には、現在のCore i7の後継として、32nmプロセスルールで製造される6コア版のGulftownも投入される。
スミス氏によれば、32nmプロセスルールへの移行は、クライアントだけでなく、サーバーなどに利用されるXeonでも行なわれることになる。1Pの3000シリーズは今年の後半にクアッドコアのLynnfiledが投入され、その後デュアルコアのClarkdaleが投入される。さらに5000シリーズ、7000シリーズといったより大規模なサーバー向けのプラットフォームでも32nmプロセスルールへの移行が2010年以降に計画されているのだという。
●Clarkdale/Arrandaleの実働デモを行ない、32nmプロセスの順調さをアピール
スミス氏は「我々の開発しているシリコンは非常に順調に進んでいる。プロセス技術の開発も順調に進んでおり、Clarkdale/Arrandaleの製造は第4四半期に開始する」と話し、現在すべてのスケジュールが順調に進んでいることをアピールした。その上で、Intelが米国において、Clarkdale/Arrandaleの実働デモを行なったことを明らかにし、「すでに我々のシリコンではWindows 7が動作し、3Dレンダリングソフトウェアのような実際のアプリケーションを動作させ、45nmプロセスルール世代の製品と比較して非常に大きな性能向上があるこを確認している」と、Clarkdale/Arrandaleがエンドユーザーにとっても魅力的な製品になるという認識を示した。
なお、記者会見後の質疑応答において、こうした経済上状況の中で32nmプロセスルールへの移行を、いきなり大量出荷が期待されるメインストリーム市場の製品から始めることにリスクはないのかという質問もでたが「過去、新しいプロセスルールの導入でもメインストリーム向けの製品から始めた場合も少なくない。そこでも問題なく出荷できたし、問題はないと考えている。何よりも重要なことは、32nmプロセスルールが非常に順調に立ち上がっていることだ」(スミス氏)と語った。
□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.intel.com/pressroom/archive/releases/20090210corp.htm
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【2月6日】【笠原】45nmデュアルコアNehalemをキャンセルし、32nmを加速するIntel
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0206/ubiq245.htm
【2月10日】【海外】クアッドコアに力を入れる2010年までのIntelモバイルCPUロードマップ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0210/kaigai489.htm
(2009年2月12日)
[Reported by 笠原一輝]