笠原一輝のユビキタス情報局

45nmデュアルコアNehalemをキャンセルし、32nmを加速するIntel




 以前の記事で、普及版Nehalemのデュアルコア製品であるHavendale(デスクトップ向け)とAuburndale(ノートPC向け)が、2009年第3四半期から2010年の第1四半期へ延期されたことをお伝えした。今年に入り、さらにそのロードマップが変更され、Intelは、Havendale/Auburndaleの両プロセッサの計画をキャンセル、その代わりとしてClarkdale(クラークデール、デスクトップPC)、Arrandale(アレンデール、ノートPC)の2製品を投入することをOEMメーカーなどに通知した。

 Havendale/AuburndaleのCPU部分が45nmプロセスルールで予定されていたのに対して、Clarkdale/Arrandaleは32nmプロセスルールのWestmere世代へと変更されることになる。その背景には、Intelの32nmプロセスルールが順調に開発が進んでおり、予定を前倒しして製品を投入できる見通しがたったことがあると情報筋は指摘する。

●45nmで製造される2製品、32nm製品で代替

 OEMメーカー筋の情報によれば、2月の上旬にIntelからOEMメーカーに配布されたロードマップアップデートの中で、Nehalemアーキテクチャのデュアルコア版であるHavendale/Auburndaleの2製品が正式にキャンセルされ、その代わりにClarkdaleとArrandaleの2製品が投入されることが明らかになった。

 Havendale/Auburndaleは、元々NehalemアーキテクチャのCPUと、GPUを内蔵したノースブリッジ(GMCH)を1つのパッケージに収めたCPUとなっていたのだが、Clarkdale/Arrandaleは、CPUの部分を32nmプロセスルールで製造するWestmereベースのデュアルコア版へと変更した製品となる。

【図1】Havendale/AuburndaleとClarkdale/Arrandaleの違い(筆者予想)

 従って、それ以外のスペックに関しては、もともとのHavendale/Auburndaleとほぼ同等となっている。CPUソケットはSocket Hの開発コードネームで知られるLGA1156、最大で4MBのキャッシュメモリ、1x16の外部PCI Expressスロット、デュアルチャネルのDDR3-1066、Turbo Boost Technology、Hyper-Threading Technologyのサポートなどに変更はなく、外部から見た仕様は、ほとんど変化がないといっても過言ではない。

 また、Clarkdale/Arrandaleで利用できるチップセットに関してもアップデートがあった。すでに明らかになっている通り、IntelはLGA1156向けのチップセットとして開発コードネームIbexpeak(デスクトップ向け)、Ibexpeak-M(ノートPC向け)で知られる製品を投入するが、これらの詳しいSKU構成が今回明らかになった。

【表1】デスクトップPC向けIbexpeak SKU(筆者予想)

P57 P55 H57 H55 Q57
登場時期 2010Q1 2009Q3 2010Q1 2010Q1 2010Q1
2x8 PCI Express対応 - - -
PCI Express 2.0ポート数 8 8 8 6 8
SATA2ポート数 6 6 6 6 6
ポートマルチプライヤ -
USB 2.0ポート数 14 14 14 12 14
PCIデバイス 4 4 4 4 4
内蔵グラフィックスサポート - -
Brainwoodサポート - -
QST -
AMT6.0 - - - -
Rapid Storage Technology -

【表2】ノートPC向けIbexpeak-M SKU(筆者予想)

PM57 PM55 HM57 HM55 QS57 QM57
登場時期 2010Q1 2009Q3 2010Q1 2010Q1 2010Q1 2010Q1
スイッチャブルグラフィックス対応 -
PCI Express 2.0ポート数 8 8 8 6 8 8
SATA2ポート数 6 6 6 4 6 6
USB 2.0ポート数 14 14 14 12 14 14
内蔵グラフィックスサポート - -
Brainwoodサポート - -
AMT6.0 - - - -
Rapid Storage Technology -

 まずは第3四半期に、デスクトップPC向けはP55、ノートPC向けはPM55が投入される。これは同じ第3四半期に普及型Nehalemのクアッドコア版であるLynnfiled(デスクトップPC版)/Clarksfiled(ノートPC版)が投入されるためだ。そして、Clarkdale/Arrandaleが投入される2010年の第1四半期に残りの製品が投入され、LGA1156プラットフォームが本格的に立ち上がることになる。

●放熱問題という技術的課題とバリデーションという時間的課題

 Intelのこうした決定は、OEMメーカーからは、いささか驚きを持って迎えられたようだ。その理由は2つある。1つは技術的な理由で、もう1つはスケジュール的な理由だ。

 もともとHavendale(およびAuburndale)は、2つのチップをMCM(Multi Chip Module)の形でCPUパッケージのプレート上に搭載するという形をとっていた。つまり、CPUとノースブリッジ(GMCH)相当の機能が搭載されていた。しかし、こうしたMCMでは熱設計が問題になる。というのも、2つのチップの発熱量が異なっていることから、ヒートスポットが片側に偏ることがあるため、それに対処する必要があるのだ。デスクトップPC用に関してはヒートスプレッダを装着できるため、ある程度の対処は可能だが、ノートPCの場合には、OEMメーカー側で用意するヒートシンクで対処してもらう必要がある。

 こうした問題があるのに、32nmプロセスルールにすると、別の問題が発生する可能性がある。それは、CPUだけが32nmプロセスルールになることで、ダイの高さが異なってしまい、この点にもなんらかの対処をしなければいけなくなる可能性があるのだ。

 もう1つ、スケジュール的な問題とは、バリデーションと呼ばれる動作検証に関する問題である。一般的にCPUの開発には、数年という時間がかけられる。その中にはCPUを開発する時間も含まれるが、割と長くとられるのがバリデーションの期間だ。そこでは、既存のOSやアプリケーションとの互換性、さらにはさまざまな周辺機器などとの組み合わせが試されることになる。さらに、OEMベンダ側でもさまざまなテストを行ない、そうしたデータも製品に反映する。これも含めると、通常1年ぐらいはかかるので、Clarkdale/Arrandaleを1年後にリリースするとなると、結構ギリギリのタイミングなのだ。

●Intel内部で順調と伝えられる32nmプロセスルールが進化を加速

 そうした課題があるのに、なぜIntelはHavendale/Auburndaleに変えて、Clarkdale/Arrandaleを投入することを決定したのだろうか?

 そこには2つの理由が考えられる。1つはClarkdale/Arrandaleが、元々2010年にリリースすることが決まっており、ある程度の開発が進んでいたこと。また、それにより、Havendale/Auburndaleから、2四半期程度でClarkdale/Arrandaleを投入することになるので、Havendale/Auburndaleが微妙なポジションになってしまう可能性があったのだ。前出のような課題があったとしても、もともとある程度開発が進んでいたので、なんとかクリアできるレベルだったということが考えられる。

 もう1つの理由は、Intelの32nmプロセスルールが我々が想像していた以上に順調であるという可能性だ。Intelに近い関係者によれば、開発はかなり順調だという。実際2010年の生産計画では、元々の計画よりも前倒しで32nmプロセスルールの生産量が増やされているのだという。

 しかし、通常、Intelの製品計画では、まず生産量が少なくてよいハイエンド製品から最先端のプロセスルールへと移行し、その後にメインストリーム製品へと移行する。これは最先端のプロセスルールが順調に立ち上がらなかった場合でも、被害を最小限にとどめられるからだ。ところが、今回Clarkdale/Arrandaleを前倒しした結果、いきなり量を必要とするメインストリーム市場から始めることになり、一種のギャンブルと言える。

●32nmにリスクはないのか

 当然のことながらギャンブルにはリスクがつきものだ。そのリスクとは言うまでもなく、32nmプロセスルールが予定通り立ち上がらず、充分な数が生産できずに、出荷数が限られてしまうというストーリーだ。実際、Intelは45nmプロセスルールの立ち上げ当初、若干躓き、チャネル市場ではクアッドコアの供給が限られるという事態が発生した。それでも影響を受けたのはハイエンドのみで、メインストリームは65nmプロセスルールだったので、Intelの収益そのものに大きな影響は与えなかった。

 しかし、もしメインストリーム向けのClarkdale/Arrandaleが順調に立ち上がらないということになれば、Intelの屋台骨に大きな影響を及ぼす可能性がある。もちろんIntelはそのことを百も承知だろうから、今回の決定は自信の表われとも言えるだろう。

 少々うがった見方をするのであれば、Intelに32nmプロセスルールのラインを早急に埋める何らかの必要性がでてきているのかもしれない。いうまでもなく、こうした厳しい経済状況の中、Intelにとっても製造ラインへの投資は重たくなりつつある。実際、微細化が進めば進むほど生産設備への投資額は増えていくので、Intelといえども決算に与える影響は小さくないはずだ。従って、そうした状況の中で早めに生産を立ち上げ、利益を生み出す必要に迫られているという可能性もあると言える。

 いずれにせよ、OEMメーカーにとっては、早急にロードマップを書き換える必要がでてきており、現在、各社とも大急ぎで対応を進めている状況だ。

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【2008年9月18日】【笠原】Intelが普及版Nehalemの量産を2010年Q1に延期
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0918/ubiq227.htm

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(2009年2月6日)

[Reported by 笠原一輝]


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