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Windows 7のラインナップが明らかに、実質値上げか




Windows 7

 米Microsoftは3日、現在開発中であるWindows 7のSKU(製品構成)をQ&Aとして公開した。これによると、Windows 7のSKUは、Windows Vistaと同様の6種だが、位置づけと名称が若干変更になる。主に、コンシューマ向けにHome Premiumを、ビジネス向けにProfessionalを提供することで顧客の大半をカバーする戦略だ。

 まずコンシューマ向けのWindows 7だが、MicrosoftはほとんどのユーザーにWindows 7 Home Premiumを推奨するとしている。また、Windows 7が提供するすべての機能(BitLockerなど、ほかにはEnterprise版のみが提供する機能等)を欲するユーザー向けに、従来通りUltimateを提供する。

 現在と異なるのは、その下位にあたるHome Basicが新興国向けに位置づけられたことだ。これにより、おそらくわが国ではWindows 7について、Home Basicは提供されないことになる。Home Basicに代わって、低価格のPC向けにはStarter版が提供される。これまでStarter版は新興国向けのSKUとされてきたが、Home Basicと入れ替えられるわけだ。

 従来のStarter版は、提供される国が制限されていたことに加え、販売ルートや機能に制限が設けられていた。パッケージでも販売されるHome Basicと異なり、StarterはOEMによるプリインストールのみの提供であり、これはWindows 7のStarter版でも変わらない。したがって、ユーザーがパッケージとして購入可能なWindowsのSKUは1つ減ることになる。

 機能的な制限としては、Windows VistaのStarter版の場合、搭載メモリ最大1GB、HDD容量最大250GB、ディスプレイ解像度800×600ドットまで、といった厳しい制約が設けられている。Windows 7ではこのStarter版が、ULCPCライセンスのWindows XP Home Editionを置き換えることになるわけだが、すでにネットブックで1,024×600ドットの解像度が主流となっていることを考えれば、おそらくこの解像度までは規制が緩和されるものと思われる。だが、これを越えるものについては、上位のHome Premiumを搭載することが求められるようになるだろう。

 メモリとストレージについても、何らかの制限が設けられるハズだが、現状より緩和されるのかどうか、現時点では分からない。逆にHome Basicが、新興国でフルサイズの低価格PC向けと位置づけられていることから考えて、Starterに解像度制限が加わるのはまず間違いないところだ。

 またStarterが、Home Basicの下位に位置づけられていたことを考えると、Windows Aeroをサポートしない可能性も高い。AeroのないWindows 7(画面をCPUで描画する)と、GDIアクセラレーションが利用できる現行のWindows XP Home(画面描画にGPUの助けを得られる)の、どちらがネットブックのプラットフォームにとって幸せなのかは、微妙になるかもしれない。

 一方、ビジネス向けのWindows 7は、これまで通り、ソフトウェアアシュアランスを契約する大企業向けのEnterpriseが提供されることに加え、Professionalが提供される。コンシューマ向けのHome Premium同様、MicrosoftはこのProfessionalでほとんどのビジネスニーズを満たすことができるとしている。

 現行のWindows Vista Businessの後継となるProfessionalの名称は、Windows XP時代にならった形だが、名前が戻ったのと同様、機能的にもWindows XP時代と同様の形に戻る。すなわち、Windows 7 Professionalは、Windows 7 Home Premiumの完全上位となる。

 Windows Vista Businessは、Windows Vista Home Premiumが持つ機能のうち、Media Centerなどが省かれていた。Windows 7 Professionalは、Windows Vista Businessがサポートするドメインネットワーク機能等をすべて継承した上で、Windows 7 Home Premiumが備える全機能を持つスーパーセットとなる。つまり、Windows 7 ProfessionalはMedia Centerなどを含む。

 これによりWindows 7のSKUは上位からEnterprise(ボリュームライセンスのみ)、Ultimate(シングルライセンス可)、Professional、Home Premium、Home Basic(国内に提供されない)、Starterで構成されることとなった。現時点で、Microsoftは各SKUの価格について明らかにしていないが、現在の経済状況等を考えれば、大幅な値上げは考えにくいところだ。おそらくは現状維持ではないかと思われる。

●Windows 7は実質値上げか

 ただ、この場合、コンシューマ向けWindowsがHome Premiumに一本化されることは、Windows XP時代に比べ実質的な値上げではないか、という議論が生じるだろう。XP時代は高価なProfessionalと、安価なHomeの2本立てだった。Vista時代になって、安価なHomeはHome Basicとなり、その上位にHome Premiumが加えられた。7になりHome Basicがなくなると、残ったのはHomeの実質的な値上げということになってしまう。Home Basicをなくすのであれば、Home Premiumの値下げを期待したいところだ。

 製品分野として、Windows 7から事実上Home Basicがなくなることで、最も大きな影響を受けるのが、CeleronクラスのCPUを搭載した低価格ノートPCだろう。このクラスのノートPCは、ネットブックとの競争にさらされているにもかかわらず、ディスプレイ解像度の制約から割安なStarter版を採用することは難しいと考えられる。完全になくなってしまうわけではないだろうが、Centrinoクラスとネットブックに挟まれて、これまでに比べさらにそのニッチが狭まる可能性がある。

□Microsoftのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.microsoft.com/presspass/features/2009/feb09/02-03Win7SKU-QA.mspx
□ニュースリリース(和文)
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3622

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(2009年2月4日)

[Reported by 元麻布春男]


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