すでにネットブックは多種多様の混戦模様になってきたが、ネットブックのデスクトップ版「ネットトップ」に関しては、ぼちぼち出始めたという状態だ。今回は、Atom 230を搭載した、マウスコンピューター「LM-M100S」の試作機が届いたのでファーストインプレッションをお届けする。 ●ご対面 何と言ってもこのLM-M100Sは価格が39,800円。一般的なネットブックが59,800円なので、そこから液晶パネルや無線LANなどを引いたとしてもその差2万円はかなり大きい。仮に自作で組み立ててもWindows XPを含めこの値段内に収めるのは困難だ。従って、パッケージがどのような感じにまとまっているのか非常に興味のあるところ。
キーボードがPS/2でマウスがUSB接続と言うのはチグハグと感じる。また、ACアダプタの電源ケーブルコネクタがミッキータイプなのも気になる。この形は特にネットブックが出始めてから国内でも結構見かけるようになった。できれば電源ケーブルが豊富(どこにでもある)なメガネタイプの方が扱いやすい。しかし、これらは少し気になる程度のことであり、実用面では全く問題無く、安価だからと言って特に手を抜いているような部分も見当たらない。逆に「これで本当にサンキュッパ!?」と驚くほどだ。あえてあげれば、スピーカーは付属しないので、音を出したい時には何らかのスピーカーを別途用意する必要がある。 ●LM-M100Sの特徴ネットトップもネットブック同様、機能的な制限がIntelやMicrosoftからかけられている。従って、チップセットなどトピック的に目新しいものは無く、ご覧のように最近良く見かけるAtom搭載機と同等のスペックだ。この手のマシンとしては、スーパーマルチドライブを搭載しているのが珍しいところだろうか。
ネットブックでは普通になっている、無線LANやBluetooth、カードリーダなどは搭載していない。残念なのは、有線LANが100/10MbpsでGbEに対応していないこと。またビデオ出力もミニD-Sub15ピンでDVIは無い。余談になるが最近、Atom搭載のマザーボードやベアボーンキットが何種類か出てきているものの、どちらか一方に対応したものはあるが、両方に対応しているものは筆者の知る限り1機種しかない。GbEはともかく、ミニD-Sub15ピンはデジタル出力に回路を1つ挟むため若干でもコストアップしているハズ。いまどきDVIが無いディスプレイは珍しいので、惜しい部分だ。 Windows XPで使うならメモリ1GB、そしてHDDが160GBもあれば、余程メモリを食うアプリケーションを使わない限り容量的な問題無いと思われる。ネットや写真、動画を見たり、オフィス関連を動かす程度=もともとネットトップの用途なら十分だろう。背面にあるファンは筆者が聞く限り全く気にならない音で、静音性は高い。 ●中身拝見 ここで内部も見てみたい。手順は意外と簡単で、背面のネジ2本を外し、押さえているフレームをパカッと抜く。後は側面のパネルを引っ張るだけだ。写真をご覧頂きたいが、SO-DIMMのスロットが2つある。Atom系のマシンでメモリスロットが2つあるのは珍しく増設が無駄なく簡単な上に、チップセットのIntel 945GC Expressはデュアルチャネルメモリアクセスにも対応しているので、パフォーマンス向上も期待できる。手元にSO-DIMM 1GBがあったので、早速実験した。
HDBenchで計ってみたところ、結果は期待に反してあまり変化が無かった。ただ内蔵グラフィックスのGMA 950は、メインメモリと共有タイプなので、少し速度が上がっているのが解る。先に書いたように各社のマザーボードがシングルチャンネルのみなのは、(このテストだけで判断するのは危険であるが)この程度の差なのでコスト優先でメモリスロットを1つにしているものと思われる。筆者もこの結果を見て納得だ。Intel D945GCLFとの比較はHDDなど搭載しているもの自体が違うため、値は異なっているものの、他の部分は瓜ふたつ。シングルコアのAtomプロセッサであればどれも同じ。逆にそれがある意味安心だったりする。 ●LM-M100Sの使い勝手など この価格だと、OS以外は何も入っていないのではと思ってしまうが、「CyberLink DVD Suite」(DVDビデオ再生やCD/DVDライティングに対応)、「McAfee SecurityCenter(期間限定版)」など、必要最低限のソフトウェアがインストールされている。筆者は昔からアプリケーションが山盛り入っているPCはアンインストールが面倒なので好みではないが、この2本は(ブランドに好き嫌いはあるかも知れないが)逆に無いと困るものなので、嬉しい限りだ。 これらのアプリケーション以外は普通のWindows XPなので特にここで書くべき事は無い。また、パフォーマンスも先に書いたように、他のAtom搭載機との速度的な違いはHDD程度。他のレビューに載っているベンチマークやアプリケーションを使った感想などが、そのままこのLM-M100Sにも当てはまる。なお、「iiyama製20型ワイド液晶ディスプレイとセット」になった「LM-M100S-T」、「Microsoft Office Personal 2007」がインストールされたモデルが「LM-M100S-A」という型番で用意され、それぞれ59,800円になっている。 特筆すべきは冒頭でも触れたように、価格が39,800円(1年間無償保証付)と言うこと。秋葉原でAtomプロセッサ搭載のマザーボード+ケース(もしくはベアボーンキット)、1GBメモリ、HDD、スーパーマルチドライブらを購入するともういくらも残らず、Windows XPまで手が出ない。従って自作やデザインなどに拘らないのであれば、このマシンをピックアップしたほうが結果安上がりだ。家族一人一人マイPCも十分可能だろう。また、企業で購入するのも、この価格帯であれば稟議は通りやすい上、机の上も綺麗にまとまる……と、PCがこの価格帯まで下がってくると一気に裾野は広がることが予想される。 ●総論
実は昔、ハードウェアエンジニアと話した時に聞いたのだが、その時点で最も安価なCPU、HDDなどを組合せば500ドル以下のPCを出荷するのは可能だった。ただ、それでは手間暇かかる割りにメーカーが儲からないから作らなかっただけのことなのだ。ところがAtomが登場して以来、その状況は一転。海外メーカーだけでなく、国内メーカーも出荷もしくは検討をはじめた。Atom自体は動画のエンコードやフルHDの再生など、目茶なことさえしなければ、十分普通に使えるCPUであり、TPDも低く環境にも優しい。
□関連記事 (2008年11月25日) [Reported by 西川和久]
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