西川和久の不定期コラム

安価なネットトップ マウスコンピューター「LM-M100S」




本体

 すでにネットブックは多種多様の混戦模様になってきたが、ネットブックのデスクトップ版「ネットトップ」に関しては、ぼちぼち出始めたという状態だ。今回は、Atom 230を搭載した、マウスコンピューター「LM-M100S」の試作機が届いたのでファーストインプレッションをお届けする。

 筆者は、ネットトップのリファレンスとなりそうな、Intel D945GCLFマザーボード(同じくAtom 230搭載)を使ったパソコンを発売直後に組み立てており、一部、それとの比較も行なってみたい。


Text by Kazuhisa Nishikawa



●ご対面

 何と言ってもこのLM-M100Sは価格が39,800円。一般的なネットブックが59,800円なので、そこから液晶パネルや無線LANなどを引いたとしてもその差2万円はかなり大きい。仮に自作で組み立ててもWindows XPを含めこの値段内に収めるのは困難だ。従って、パッケージがどのような感じにまとまっているのか非常に興味のあるところ。

 ご覧のように、本体は実にシンプル。特別高級感は無いものの、安っぽい雰囲気も無く、普通のPCだ。サイズは、60×200×250mm(幅×奥行き×高さ)とスリム&コンパクトなので、置き場にも困らない。かなり昔にIntelのチップセットi810やi815などを使ったブックPCと言うのが流行ったがLM-M100Sは、まさにその現代版のようだ。

前面/DVDスーパーマルチドライブ
前面上。電源スイッチ、DVDスーパーマルチドライブ、そしてHDDとネットワークのインジケータが並んでいる

前面/USB×2、マイクイン、ヘッドホン
前面下。USBポート×2、マイク入力、ヘッドフォン出力。フロントパネルにこれらのポートがあると扱い易い

背面の各ポート
背面下。アナログVGA出力、シリアルポート、PS/2キーボードとマウスポート、USBポート×4、ネットワーク、マイク入力、ラインイン、ラインアウト、電源などが並ぶ。またこの上に小型のファンがある

付属品
付属品は、キーボード、マウス、ACアダプタ、電源コード。キーボードはPS/2タイプ、マウスはUSBだ

電源プラグはミッキータイプ
付属のACアダプタ。電源ケーブルとのコネクタがミッキータイプだ

台座
本体を縦置きにする時に使う台座も付属する。このようにネジ止めとなる


 キーボードがPS/2でマウスがUSB接続と言うのはチグハグと感じる。また、ACアダプタの電源ケーブルコネクタがミッキータイプなのも気になる。この形は特にネットブックが出始めてから国内でも結構見かけるようになった。できれば電源ケーブルが豊富(どこにでもある)なメガネタイプの方が扱いやすい。しかし、これらは少し気になる程度のことであり、実用面では全く問題無く、安価だからと言って特に手を抜いているような部分も見当たらない。逆に「これで本当にサンキュッパ!?」と驚くほどだ。あえてあげれば、スピーカーは付属しないので、音を出したい時には何らかのスピーカーを別途用意する必要がある。

●LM-M100Sの特徴

 ネットトップもネットブック同様、機能的な制限がIntelやMicrosoftからかけられている。従って、チップセットなどトピック的に目新しいものは無く、ご覧のように最近良く見かけるAtom搭載機と同等のスペックだ。この手のマシンとしては、スーパーマルチドライブを搭載しているのが珍しいところだろうか。
  • OS:Microsoft Windows XP Home Edition SP3 正規版
  • CPU:Intel Atom 230(1.60GHz/533MHz FSB)
  • チップセット:Intel 945GC Express
  • 内蔵グラフィックス:Intel GMA 950
  • メモリ:DDR2 SO-DIMM 1,024MB PC2-5300 (1,024MBx1)
  • HDD:SATA 160GB 7,200rpm
  • CD/DVDドライブ:DVD±R 2層書込対応8倍速DVDスーパーマルチ
  • I/F:PS/2キーボードポート×1、PS/2マウスポート×1、USB 2.0×6、シリアルポート×1、ミニD-Sub15ピン、100/10Mbps LAN×1、マイク/ヘッドフォン×1(前面)、ラインイン/ラインアウト/マイク×1(背面)
  • 消費電力:最大40W
  • サイズ:60×200×250mm(幅×奥行き×高さ)

 ネットブックでは普通になっている、無線LANやBluetooth、カードリーダなどは搭載していない。残念なのは、有線LANが100/10MbpsでGbEに対応していないこと。またビデオ出力もミニD-Sub15ピンでDVIは無い。余談になるが最近、Atom搭載のマザーボードやベアボーンキットが何種類か出てきているものの、どちらか一方に対応したものはあるが、両方に対応しているものは筆者の知る限り1機種しかない。GbEはともかく、ミニD-Sub15ピンはデジタル出力に回路を1つ挟むため若干でもコストアップしているハズ。いまどきDVIが無いディスプレイは珍しいので、惜しい部分だ。

 Windows XPで使うならメモリ1GB、そしてHDDが160GBもあれば、余程メモリを食うアプリケーションを使わない限り容量的な問題無いと思われる。ネットや写真、動画を見たり、オフィス関連を動かす程度=もともとネットトップの用途なら十分だろう。背面にあるファンは筆者が聞く限り全く気にならない音で、静音性は高い。

●中身拝見

 ここで内部も見てみたい。手順は意外と簡単で、背面のネジ2本を外し、押さえているフレームをパカッと抜く。後は側面のパネルを引っ張るだけだ。写真をご覧頂きたいが、SO-DIMMのスロットが2つある。Atom系のマシンでメモリスロットが2つあるのは珍しく増設が無駄なく簡単な上に、チップセットのIntel 945GC Expressはデュアルチャネルメモリアクセスにも対応しているので、パフォーマンス向上も期待できる。手元にSO-DIMM 1GBがあったので、早速実験した。

外し方その1
まず背面のネジ2本を外す。フレームは両端は爪のようなもので引っかかっているので、それをうまく外せば、ご覧のようにパカッとあく

外し方その2
側面は特にネジ止めなどは無く、先のフレームに押さえ込まれているだけである。少しスライドさせれば簡単に外れる

内部
注目すべきはSO-DIMMのスロットが2つあることだ。ネットブック、ネットトップに関われず、この構成は珍しい

1GB
1GBメモリ搭載時(シングル)。

2GB
2GBメモリ搭載時(デュアル)。

Intel D945GCLF/2GB
Intel D945GCLF/2GB(シングル)搭載時


 HDBenchで計ってみたところ、結果は期待に反してあまり変化が無かった。ただ内蔵グラフィックスのGMA 950は、メインメモリと共有タイプなので、少し速度が上がっているのが解る。先に書いたように各社のマザーボードがシングルチャンネルのみなのは、(このテストだけで判断するのは危険であるが)この程度の差なのでコスト優先でメモリスロットを1つにしているものと思われる。筆者もこの結果を見て納得だ。Intel D945GCLFとの比較はHDDなど搭載しているもの自体が違うため、値は異なっているものの、他の部分は瓜ふたつ。シングルコアのAtomプロセッサであればどれも同じ。逆にそれがある意味安心だったりする。

●LM-M100Sの使い勝手など

 この価格だと、OS以外は何も入っていないのではと思ってしまうが、「CyberLink DVD Suite」(DVDビデオ再生やCD/DVDライティングに対応)、「McAfee SecurityCenter(期間限定版)」など、必要最低限のソフトウェアがインストールされている。筆者は昔からアプリケーションが山盛り入っているPCはアンインストールが面倒なので好みではないが、この2本は(ブランドに好き嫌いはあるかも知れないが)逆に無いと困るものなので、嬉しい限りだ。

 なお、リカバリCDは付属せず、替わりにHDDの別パーティション約2GBを使ってイメージが収められ、マシン起動時に[F3]キーを押すとリカバリモードに入る仕掛けになっている。マニュアルはPDF形式だ。

起動直後のDesktop
起動直後のデスクトップ。右下に見える立方体の塊が「CyberLink DVD Suite」のランチャーだ。PDFのマニュアルはデスクトップにショートカットがある

デバイスマネージャ
DVDスーパーマルチドライブはOptiarc AD-7590S、サウンドはVIA High-Definition Audio、HDDはWD1600AAJS、ネットワークはAtheros社のが使われているのが分かる

マニュアルはPDF
マニュアルはPDF。箱を開けてWindows XPが起動するまで、配線なども特に難しくないため、PDFのマニュアルで十分だろう。検索などもこちらの方が手っ取り早い

CyberLink DVD Suite
CyberLink DVD Suite。DVDビデオの再生やCD/DVDメディアの書き込みなどに対応する。AtomプロセッサでもDVDビデオは十分再生可能だ

HD ADeck
VIAのHD ADeck。ご覧のように6CHまで対応している。Effect/Equalizerはロックやジャズなどプリセットがあり、手軽に楽しめる

McAfee SecurityCenter
McAfee SecurityCenter。VirusScanとPresonal Firewallがインストールされている。あればある程度安心だ


 これらのアプリケーション以外は普通のWindows XPなので特にここで書くべき事は無い。また、パフォーマンスも先に書いたように、他のAtom搭載機との速度的な違いはHDD程度。他のレビューに載っているベンチマークやアプリケーションを使った感想などが、そのままこのLM-M100Sにも当てはまる。なお、「iiyama製20型ワイド液晶ディスプレイとセット」になった「LM-M100S-T」、「Microsoft Office Personal 2007」がインストールされたモデルが「LM-M100S-A」という型番で用意され、それぞれ59,800円になっている。

 特筆すべきは冒頭でも触れたように、価格が39,800円(1年間無償保証付)と言うこと。秋葉原でAtomプロセッサ搭載のマザーボード+ケース(もしくはベアボーンキット)、1GBメモリ、HDD、スーパーマルチドライブらを購入するともういくらも残らず、Windows XPまで手が出ない。従って自作やデザインなどに拘らないのであれば、このマシンをピックアップしたほうが結果安上がりだ。家族一人一人マイPCも十分可能だろう。また、企業で購入するのも、この価格帯であれば稟議は通りやすい上、机の上も綺麗にまとまる……と、PCがこの価格帯まで下がってくると一気に裾野は広がることが予想される。


●総論

マウスコンピューター LM-M100S
スリムでコンパクト。しかも安い

 実は昔、ハードウェアエンジニアと話した時に聞いたのだが、その時点で最も安価なCPU、HDDなどを組合せば500ドル以下のPCを出荷するのは可能だった。ただ、それでは手間暇かかる割りにメーカーが儲からないから作らなかっただけのことなのだ。ところがAtomが登場して以来、その状況は一転。海外メーカーだけでなく、国内メーカーも出荷もしくは検討をはじめた。Atom自体は動画のエンコードやフルHDの再生など、目茶なことさえしなければ、十分普通に使えるCPUであり、TPDも低く環境にも優しい。

 とりあえず適当なディスプレイが手元にあり、この年末年始Atomプロセッサマシンを試してみたい人にはお勧めできる。筆者としてはデュアルコアのAtom N330搭載版の登場も期待したい。



□関連記事
【10月10日】マウス、39,800円のAtom搭載ネットトップ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1010/mouse.htm
【10月22日】【Hothot!】ASUSTeK「Eee Box B202」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1022/hotrev382.htm

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(2008年11月25日)

[Reported by 西川和久]


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