安価なミニノートPC、特にIntelのAtomプロセッサを採用したネットブックが、今年のヒット商品の上位にランクされるのは間違いない。すでに国内市場において25%のシェアを占めているとも言われている。が、これはわが国だけに限った話ではない。10月23日に2009年度第1四半期(2008年9月末まで)決算を発表したMicrosoftも、ネットブックの影響の大きさを認めている。
図1はMicrosoftが第1四半期決算で開示した、クライアント向けOSのライセンス状況である。前年同期比でOEM向けのライセンス数が8%伸びているにもかかわらず、金額での伸びは2%にとどまっている。つまり安価なライセンスが増えていることを意味しており、ここにネットブックの影響が見て取れる。ちなみに、ネットブックや新興国市場の成長でPCの出荷台数が10~12%伸びているにもかかわらず、ライセンス数の伸びがそれを下回っているのは、ネットブックに代表される低価格PCにおいてLinuxがプリインストールOSとして、一定のシェアを獲得しているためだと考えられる。 つまりネットブックは、ライセンス料の実質的な引き下げ、Linuxの進出という両面でMicrosoftを脅かしていることになる。製品価格が安価である以上、支払えるOSのライセンスフィーには自ずと限りがある。ネットブックのOSがWindows XPであろうが、Windows 7になろうが、それは変わらない。昨年(2007年)の時点で、この低価格ミニノートPCの市場実績は、全世界で50万台程度だとされている。それがたった1年で、Microsoftの決算に影響を与えるまでに成長したわけだ。 とはいえ、将来性はどうなのさ、という声もある。今年、それから来年くらいはまぁ問題ないとして、その後は? という声だ。これについては、経済状況の変動など多くの要因がからんでくるため、一概にどうと言うことは難しいかもしれない。だが、少なくとも新興国の市場が、ネットブックやネットトップの市場を牽引していくのは確実に思える。米国の調査会社であるIDCも、2012年に4,100万台の規模になると予想するなど、このブームを一過性と見る向きは減りつつある。加えて、この金融危機による支出の見直しで、PCの価格にもこれまで以上に厳しい目が向けられるだろう。これまで以上にネットブックやネットトップが成長する可能性もある。もはや無視できない存在であることは間違いない。 にもかかわらず、わが国のPCベンダ、特に大手の動きは鈍い。大手がこの種の製品を手がけたくないことは理解できる。基本的にプラットフォームが1種類しかない上、価格を低く抑える必要があるため、製品の仕様で差別化を図ることが難しい。低価格のため、元から利幅が薄い上に、仕様が同じで価格競争に陥りやすいのでは、すすんで手がけたくはないという気持ちが働くのも無理はない。 ●NECが作ったLaVie Lightの出来はどうだ そんな中、東芝と並びわが国の大手PCベンダとしてネットブックに参入しているのがNECだ。9月29日発表の東芝に続き、同社がLaVie Lightを発表したのは10月16日のこと。 「LaVie Light」のLaVieは、NEC製のノートPCシリーズの名称として広く知られている。通常のノートPCではLaVieの後に、アルファベット1文字のシリーズ名が付与されるのだが、ネットブックではLightが用いられている。一般的なLaVieシリーズに比べると、軽めの仕事しかできないよ、ということなのかもしれない。 ネットブックである以上、その仕様に特筆するべきことはあまりない。IntelのAtom N270プロセッサに945GSEチップセット、1GBのメモリ、100Base-TXのLAN(Realtek)とIEEE 802.11b/g対応の無線LAN(Atheros)など、標準的な仕様だ。Webカメラの画素数(131万画素)とHDD容量(160GB)は、このクラスとしては若干大きめ、というところだろうか。 液晶ディスプレイも標準的な8.9型の1,024×600ドットのWSVGAで、10.2型にも対応可能な筐体に入れるというあたり、AcerのAspire oneと同じ路線だ。筐体が大きくなり、ディスプレイ周りの額縁が太くなるものの、キーボードには余裕が出る。さすがにすべてのキーが等ピッチとはいかないが、十分に「打てる」キーボードだ。 このキーボードが真っ白であることが、本機のデザイン上のアクセントであることは間違いない。遠目に真っ黒に見える(よく見ると天板は黒無地ではない)本体と合わせて、シンプルさを際だたせるデザインだが、真四角な弁当箱のような外形も含め、どこか昔の――そうDOS時代のノートPCを連想させる。
3セルのバッテリは、本体後部の下面に取り付けるが、取り付け方がちょっと変わっていて、背部から回転させるようにして取り付ける。大容量バッテリを用意するのは難しい構造かもしれない。バッテリ駆動時間は2.6時間となっているが、ごく一般的なネットブックのバッテリ駆動時間と思っていて間違いない。PC(液晶パネル)を開くだけで(電源スイッチ等を押さなくても)スリープ状態から復帰できるのも、特徴の1つに数えて良いかもしれない。 I/Oポートは左右に振り分けられており、左側のUSBポートのみがパワーオフ充電機能を備える。シャットダウン中でも接続されたACアダプタ、あるいは内蔵バッテリから(BIOSによる設定が必要)左側のUSBポートに給電し、デバイスの充電を行なう機能だ。左側面にはCPUファンの吹き出し口があるが、ノイズは大きめでちょっと気になる。 右側にはSDカード/SDHCスロット、2つのUSBポート、Ethernet、ACアダプタ入力が並ぶ。USBポートは距離がとられており、比較的大型のUSBメモリを利用しても、残る1つのポートと干渉することは少ないだろう。逆に、EthernetとAC入力はかなり接近しており、引き回しによってはACアダプタのL字プラグとEthernetケーブルが干渉する。無理な力がかからないように気をつけたい。
●ソフトも軽量化した結果の使い勝手 もう1つ、LaVie Lightの大きな特徴は、追加インストールされているソフトウェアが少ないことだ。さすがに皆無というわけにはいかないが、これまで必ずといって良いほどインストールされていたJword検索プラグインがないなど大幅に削減され、デスクトップはかなりスッキリしている。121ポップリンクやLaVie Lightメニューなど、初回セットアップ時に常駐しないように設定することも可能だ。 121ポップリンクというのは、NECからのサポート情報を中心に、各種の通知を行なうツールで、何かあるとポップアップメッセージを表示する。時にこれはうっとうしくもある(特にキャンペーン等)のだが、このツールがあるということは、安価な本機にも他のLaVieシリーズと同等(あるいはそれに近い)サポートがある、ということでもある。実際、LaVie Lightにも、フリーコールによるサポート電話、24時間対応の修理受付、海外保証サービスまで用意されている。こうしたサポートの充実が差別化のポイントということになるだろう。 本機の実売価格は、量販店で6万円台の半ばというところだ。6万円台後半には、リチウムポリマー電池を採用し、軽量・薄型化を量ったASUSTeKのEee PC S101があるが、ストレージが16GBのSSDで、大容量160GBの2.5インチHDDを内蔵する本機とはやや性格を異にする。モバイル志向が強いEee PC S101に対し、LaVie Lightはより普通のノートPCに近い。自分でアプリケーションソフトを追加インストールする、大量のデータを持ち運ぶといった、ノートPCに近いことができる。 スペック的に最も近いのはAcerのAspire oneということになるが、こちらは本機より1万円ほど安い。この差額をサポートや安心感と捉えられるかどうかが、機種選択の分かれ道になるだろう。一方、もう1社の国内大手である東芝のNB100は、筐体が一回り小型で持ち運びが容易になる分、キーボードも小さくなる。このあたりで好みが分かれることになりそうだ。 持ち運びを重視しないのであれば、液晶ディスプレイが一回り大きな10.2型液晶を採用したEee PC 1000HDシリーズやマウスコンピューターのLB-G100、あるいはソーテックのC101シリーズ(表記としては10.1型液晶)もある。何より低価格のCeleronノートが、ほぼ同等の価格で売られている。これなら液晶ディスプレイは大きいし、光学ドライブだって内蔵しているが、格段に重くなる。ネットブックだからといってひとくくりにせず、場合によってはCeleronノートにも目配りを忘れずに、自分の用途を良く見極めて機種選択をする必要がありそうだ。 □関連記事 (2008年11月19日) [Reported by 元麻布春男]
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