発売中 価格:オープンプライス(実勢価格 59,800円) 東芝「NB100」は国内大手メーカー初の8.9型ワイド液晶搭載ネットブックである。フォトレビューでは試作品をもとに外観などを中心にレポートをお届けしたが、今回は10月下旬に製品版が発売された製品版NB100を使って実際の液晶モニタの視認性やベンチマークなどチェックしていこう。 スペックはいわゆるネットブックの基本を踏襲した形で、CPUはIntel Atom N270(1.6GHz)、チップセットはモバイルIntel 945GSE Express、メモリは1GB、HDDは120GB、OSはWindows XP Home Edition SP3。またBluetoothとIEEE 802.11b/g無線LANを備えている。 ネットブックの情報を集めているユーザーならば、すでに当然のことだが、IntelやMicrosoftのレギュレーションがあるため、Atomを搭載したネットブックやUMPCのスペックは横並びだ。そのため、注目点はベンチマークスコアよりも使い勝手へとシフトしつつある。「NB100」の場合はとくに液晶の美しさが秀逸だ。 ●dynabookと同じ液晶で視認性バツグン
ラッチレスの天板を押し上げて、まず目がいくのは光沢処理された8.9型ワイド液晶だ。解像度は1,024×600ドット(WSVGA)。「Clear SuperView液晶」と呼ばれる、dynabookシリーズに採用されているパネルで、視認性の高さ、映像の見やすさはバツグンである。さらにモバイルを視野に入れて低反射処理もされており、モバイル中に気になるほど映り込むケースは少ない。 とはいえ、やはり光沢処理されているので、ある程度の場所選びは必要となるが、屋外での視認性の高さは、ちょっとメールを確認するときでもありがたく感じられるほどだ。なお液晶の色味は、筆者がチェックに使用したものはやや青が強く感じられた。店頭展示機によっては赤が少し強く感じるものもあったので、グラフィックオプションで調整するといいだろう。 よく見る部分がキレイで見やすいことは大切なファクターだ。そこで屋外や室内などで視認性を確認してみた。様子は以下の通りで、バッテリ駆動であるため、やや輝度は落ちている状況でチェックした。さすがに直射日光下では視認できないが、日陰などを選べば確認程度なら問題はない。壁紙を黒くするなどしておくなどである程度視認性を向上させることもできるだろう。ノングレアのほうがいいという人もいると思うが、実際に各所で使ってみると低反射処理された光沢パネルもいいものだとわかってくる。ただ、たしかに微妙に映り込む具合は気になってしまうので、次期モデルのパネルに期待したい。
移動中に動画を見たいと思わせてくれる液晶なので、負荷などをチェックしてみた。ニコニコ動画やYouTubeといったFLVを再生した場合はコーデックにもよるが、問題なく見られるレベルでCPU負荷は30~50%だった。H.264の場合はソースによってもたつきがときどき発生したものの、移動中やランチついでに動画を見るのであれば、気にせず使えるといった印象だ。 取材時の写真確認にも使ってみたが、見やすい分、バッテリ駆動時間の少なさを残念に思ってしまった。カタログスペックでは2.9時間となっているが、写真を取り込み、画像ビューアで確認をしていたところ、約1時間でバッテリ残量が50%を切ってしまった。そこから考えるとテキスト作成や無線LAN接続をしてブラウジングなどをしていた場合は、1時間30分の駆動が限界だろう。実際にビットレート1,011kbps、解像度640×480ドットのWMVを無線LAN経由でストリーミングしてみたところ、約1時間40分でスタンバイモードへと移行した。出先でメールの確認程度なら問題はないが、長引きそうな打ち合わせなどのシーンでは輝度を下げる、無線LANをOFFにするなどして駆動時間を稼ぐのが良さそうだ。 ●持っても打鍵しやすいキーボード環境 キーボードは日本語配列84キー、キーピッチ15.9mm、キーストローク1.5mmと試作モデルからの変更はない。キーの大小はA~Zなど使用頻度の高いキーピッチは15.9mm、そのほかのキーのピッチは約10.77mmと小さくなっている。8.9型ワイド液晶搭載モデルならではのキー配列だ。
この記事作成はNB100で行なっている。慣れてくると右手の小指でキーピッチの狭いキーを叩けるのだが、やはり慣れるまでに時間がかかった。出先での使い勝手を考えると、使用頻度の高い句読点はやはり辞書登録に限ると思う。またBackSpaceもキーピッチが狭いため、頻繁に打鍵ミスをしてしまった。スペース的に難しいと思うが、やはり日本語入力下で使用頻度の高いキーの扱いは大きくしてもらいたいものだ。 片手持ち、いわゆるモバイルなスタイルでの入力はとても快適である。出っ張ったバッテリを持つことで他のネットブックにはない安定性を得られるのだ。片手打ちとなるので慣れに左右されるが、メーラーを開いてメールを確認、カンタンな返信を送る程度ならばストレスを感じることはなかった。またそのとき便利に感じたのだが、左右非対称のクリックボタンだ。左クリックボタンが右クリックボタンよりも長く、手の位置をあまり意識する必要がなかった。この部分は店頭でぜひ試してもらいたい。かなり快適に感じられるハズである。
キーボード面の熱を見てみよう。ベンチマーク終了直後の状態では全体が暖かくなっているものの、局所的に温度が高いといったことはなく、あまりストレスを感じなかった。反面、背面は温度が高めでとくに中心部に熱が集中している。バッテリをつかんでいれば気にならないレベルになるので、熱回りの処理は上出来といったところである。 ●メモリ増設はカンタン メモリの増設は分解をする必要もなく、背面のカバーを1つ外すだけでOKだ。この時期であれば静電気にさえ注意しておけば、苦なくメモリの換装を行なえるだろう。
また大手初のネットブックということで中身が気になったので分解もしてみた。先述した通り、メモリへのアクセスは容易なのでHDDを換装してみたいという場合のみ参考にしてもらいたい。
ベンチマークはFuturemarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」で行なった。また比較としてASUSTeK「Eee PC 901-X」、Acer「Aspire one」のベンチマーク結果も掲載したので参考にしてほしい。なお、「PCMark05 (Build 1.2.0)」の測定は解像度を1,024×768にしても測定できなかったため、外部ディスプレイに出力しての結果だ。 【表】ベンチマーク結果
実質スペックは横並びなので予想通り劇的な差は生まれていない。差があるとすればストレージでHDDかSDDの違い、HDD自体のスペック差がわかる程度となっている。HDDのスコアを見るとNB100はよいスコアを出している。NANDフラッシュメモリを製造する東芝だけに、SSD搭載モデルの登場も期待したい。 【お詫びと訂正】初出時、HDDの回転数を7,200rpmとしておりましたが、5,400rpmの誤りでした。お詫びして訂正いたします。 ●独自機能とマニュアル NB100はFnキーと「A」「S」の組み合わせで画面の拡大、縮小が行なえる。東芝オリジナルの「Toshiba Smooth view」によるもので、ちょっと文字が小さくて見にくいといったときに便利だ。自動設定の場合は、ブラウザやメーラーなどアプリの種類を問わず対応している模様で、意外と使い勝手がいい。またFnキーと「F8」でファンのサイレントモードのON/OFFが可能。騒音はON/OFF問わずあまり気にならないので常時OFFでも構わないだろう。強いていえば、高負荷時、数秒間全力で回転するのでそのときにうるさく感じたらONにするくらいでいい。
国産といえばマニュアル類やサポート体制に目がいきやすい。マニュアルはソツなく作られており、パワーユーザー以外のユーザーにも配慮されている。基本的な操作方法から手入れまで記載されているので、あまりPCに自信のない人の練習機としてもよさそうだ。ただFnキー回りの解説は少ないので、その点だけ不親切だと感じた。 ●実勢価格の低下で選びやすくなった 発売当時は他のネットブックよりも価格が高く「国産」というだけでその差を埋められるのか? と疑問視されていたが、実勢価格が59,800円に値下がりしつつあることで、価格差の面は回避され、選択肢の1つとして選びやすくなった印象を持った人もいるだろう。たしかにバッテリ駆動時間の面では劣っているのものの、それ以外の点は仕上がりがよく、持っていて気持ちよく感じる。またLibretto U100と同じく出っ張ったバッテリで片手持ちがしやすいため、出先での使い勝手も上々だ。光沢のある液晶パネルは屋外では弱いものの、室内での作業であればなんら問題はない。 すでにネットブックを持っている人よりも、これからネットブックを手に入れてみようという人にオススメできる製品だ。ASUSTeKやAcer、NEC、Dellなど、どれにしようか迷ってしまうが、液晶が大事というなら東芝「NB100」がベストだと思う。 □東芝のホームページ (2008年11月6日) [Reported by 林 佑樹]
【PC Watchホームページ】
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