今回、MicrosoftがPDC参加者に配布したWindows 7のプリペータ版は、マイルストーン3(M3)リリースと呼ばれるもので、そのビルド番号は「6801」であった。 これに対して、Windows 7を扱った2日目のキーノートに使われたのはビルド番号「6933」というものだった。ビルド6801と6933の大きな違いは、拡張されたタスクバー、Jump Lists、Windows Aeroデスクトップ拡張といった、最新のユーザーインターフェイス(UI)関連機能の有無である。当然、ビルド番号の若い6801に最新のUIは含まれていない。今回のWindows 7がWindows Vistaの改良版であり、ことさらUIが注目されるだけに、ビルド6801に最新UIが含まれていないのが残念だ。 ●許し難いVistaの振る舞い 今回、Microsoftが公開したWindows 7のUIには、Aeroの拡張やタスクバーの機能強化など、目立つ機能がある。が、こうした個々の機能以上に、Windows 7のUIデザインには、大きな方向転換/方針変換があるようだ。 「Welcome to the Windows 7 Desktop」というセッションで使われたスライドでは、以下の4点がゴールとして挙げられていた。 ・使用頻度の高いものは手元に・ウインドウの管理は自信を持って ・決めるのはあなた ・スッキリかつ軽量に 中でも3番目が筆者にとって重要なポイントだ。
現在、筆者はメイン環境としてMac OS Xを使っているが、Windows Vistaが我慢できなくなったのは、OSの干渉が必要以上にウザいことだった。 無線LANに接続できないと言ってはポップアップが表示され(Balloon Tips)、コントロールパネルのアプレットをダブルクリックしては警告が表示される(UAC)。それどころか、自動更新だといって、夜中に勝手に再起動する(Windows Update)。たとえユーザーがエンコードや予約録画等のタスクを実行していてもおかまいなしである。含まれるファイルやフォルダの数、あるいはその種類によっては、前回ユーザーが変更したアイコンサイズを無視して、毎回OSが最適と考えるアイコンサイズでフォルダを開くような挙動さえ見られる。どうしてユーザーの行動を邪魔しようとするのか。 もちろん、これらの多くはマニュアルで無効にすることはできる。しかし、初期設定がこのような設定になっているということが、Windowsの方向性や哲学を物語っているのではないか。少なくとも、こうしたウザい仕様が目立つようになったのはWindows XPのLunaからであり、Windows 2000まで(あるいはClassicインターフェイス)は目立たなかった。Windows XPがリリースされた後、少なくともメインのデスクトップPCでは、フルClassic構成のUIで使っていたのだが、Windows Vistaでさらにウザい方向に進んでしまったため、筆者は白旗をあげてしまったのだ。 もちろん、PCあるいはOSがユーザーに対してどのような振る舞いをする方が良いのか、ということについては、人それぞれに好みがある。極力PCやOSが世話を焼いてくれた方がいい、という人もいるかもしれない。しかし、開いておいた光学ドライブのトレイがリセットで自動的に閉まるのも好きではない筆者は、こうした干渉が我慢ならない。ユーザーがトレイを開けた以上は、開けたままにしておいて欲しいのである。そういう筆者は、Windows XP~Windows Vistaで示された方向性に性格の不一致を感じたわけだ。 そう思っていただけに、Windows 7で「決めるのはあなた(You are in control)」などと言われたのは意外だった。実際、通知領域のうっとうしいポップアップ(BallonTips)は、Windows Solution Centerへ統合され、通知領域内のアイコン上にマウスカーソルを乗せた際に控えめな警告を出すにとどまっている。これさえも目障りなら、通知領域にアイコンを表示しないように設定することも可能だ。 ユーザーの操作にいちいち文句をつけてきたUser Access Control(UAC)も、システムにどれくらいの変更を加える時に警告を表示するか設定できる。もちろん、全く警告を表示しないようにすることも可能だ。有効と無効のどちらかしか選べなかったWindows Vistaよりずっといい。これなら付き合っていけるかもしれない。
●ユーザーの意向を汲む存在であってほしい 人はOS自体を利用するのではなく、その上で動くアプリケーションを利用する。そのためにPCを購入する。なのにポップアップ等でOSがアプリケーション利用の邪魔をしていてどうする。これは筆者ではなく、上のセッションにおける講師の発言だ。まさにその通りだと思う。 PCがユーザーの先回りをして、何かをしてくれようとすること自体は悪くない。ただ、もう少しインテリジェントに振る舞って欲しいのだ。そしてそれができないのなら、余計なことなどせず、おとなしくしておいて欲しい。 たとえばWindows Updateは、推奨設定では時と所を選ばず、更新をダウンロードしようとする。せめてPCのバッテリ残量、接続されている回線の種別(ダイヤルアップか否か)を見て、賢く振る舞って欲しい。インストール後にリブートする際、ユーザーのタスクが動作しているかどうか、ちゃんとチェックして欲しい。 ユーザーのタスクが動いていればスリープに入らないことができるのだから、ユーザーのタスクにおかまいなしにリブートしないくらいのことは難しくないハズだ。それをちゃんとやっていないから、腹が立つのである。Windows 7では外部のGPSや無線LANを使って利用されている場所を特定し、その場所に応じた振る舞いをすることがAPIから可能になる。外のセンサーを使うのも結構だが、すでに中にあるデータをもっと上手に使って欲しい。 Windows 7が、そういう思いを受け止めてくれるOSになるかどうか、まだわからないが、見直すきっかけにはなると思う。 □Microsoftのホームページ(英文) (2008年11月1日) [Reported by 元麻布春男]
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