元麻布春男の週刊PCホットライン

Windows 7はVistaの焼き直しだからこそ良いかもしれない




 今回PDCへ参加する前に、「Windows 7」について、いくつか予想していたこと、あるいは想定していたことがある。それを列挙すると次の3点になる。

(1)Windows 7はWindows Vistaの改良版となる
(2)Windows 7において重要なポイントの1つは見た目と名前を変えることである
(3)Windows 7はネットブック/ネットトップに対応せねばならない

●ウケたOSはみんな改良版だった

Windows 7がインストールされたULCPCをかかげるシノフスキー副社長

 まず(1)については、大方の人が予想していたことであり、Microsoft自信も非公式にそのむねの発言をしていた。筆者も今年1月のこのコラムで、Windows 7はWindows Vistaの改良版となることを、Intelのプロセッサ戦略であるTick-Tockになぞらえて指摘している。

 Windows 7がWindows Vistaの改良版ということになると、必ずWindows 7はWindows Vistaの焼き直しだと批判する人が出てくる。これはある意味でしようがないことだが、歴史を振り返れば大ベストセラーとなったのは、いずれも焼き直しのOSであったことが分かる。要するに焼き直しのOSこそ人々が求めているものなのだ。

 わが国でWindowsとして最初の大ヒットとなったのはWindows 3.1だが、これはWindows 3.0のマイナーチェンジ版である。今のWindowsを築く礎となったのはWindows 95だが、機能的な積み残しの多さや互換性問題で決して好意的な受け止められ方ばかりではなかった。Windows 95がヒットしたのは、店頭販売されるPCにプリインストールされるWindows 95が、名前は同じまま、その焼き直しであるWindows 95 OSR2、あるいはWindows 95 OSR 2.5に差し替えられたことと無縁ではない。Windows 9xの完成形とされるのはWindows 98 Second Editionだが、これが焼き直しのOSであることは名前からも明らかである。Windows 2000の完成形がWindows XPであるとは、よく言われることだ。

 新しい試み、大幅な改良を加えたOSは少なからず互換性に問題が生じる。OSベンダーはその痛みを和らげるべく準備(デバイスドライバの整備、アプリケーションの対応)を要請するものの、それが古いOSと同じレベルになることはない。

 今回Microsoftは、Windows 7がWindows Vistaのエコシステムをそのまま利用可能であることを協調している。Windows Vista用のデバイスドライバやアプリケーションがそのまま利用できる、という意味だ。もちろん、拡張されたタスクバーやマルチタッチをサポートしたパッドのように、Windows 7で追加された新しい機能については、ソフトウェアやドライバの対応が必要になるが、とりあえずこれまでのVistaと同じ機能性であれば、Vistaのものがそのまま使える、というのは心強い。Windows XPからWindows 7への移行が容易になるかはともかく、Windows Vistaからの移行はかなりラクになるだろう。

●VistaはVistaという名前だからウケない

 (2)について言えば、ユーザーインターフェイスを少し変えたWindows Vista SP1を、次期Windowsとの触れ込みでユーザーテストを行なった「Mojave Project」は、Windows Vistaに関する不評の少なくとも一部が、Windows Vistaという名前に由来するものであることを明らかにした。たとえ次のWindowsがWindows Vista 2nd Editionだったとしても、その製品には全く新しい名称と、誰もがWindows Vistaとは異なるものであると確信できる見た目が必要になる。

 その点で考えてWindows 7という名称は、開発コード名をそのままいただいたことの善し悪しは別にして悪くない。見た目については、まだ製品化まで時間があるから、これからジックリと検討されるだろう。が、ユーザーが最も頻繁に利用するタスクバーの機能を拡張したことは、Windows 7をWindows Vistaとは別物、という印象を与えることに寄与するだろう。実際には、Windows 7のユーザーインターフェイスの拡張や変更には、もっと大きな意味、あるいは方向転換が含まれていると思うのだが、それについてはまた別の機会で取り上げることにしたい。

●ネットブックへの対応は時間が解決する?

 (3)のネットブック/ネットトップへの対応については、現時点では明らかにされていない。そもそもWindows 7がどのようなSKU構成になるのかも不明だ。PDC参加者に配られたプリベータ版はWindows 7 Ultimateエディションとなっているが、この名前を用いることが最終決定なのかどうかも分からない。

 確かに、スティーブ・シノフスキー副社長は、キーノートスピーチにおいて、Windows 7が稼働しているULCPCを掲げて見せた。しかし、1枚のスライドも用意されていなかったことから考えても、最後になって急に追加された印象が否めない。とってつけたようなパフォーマンスだった。

 Windows VistaがULCPC向きでないのは、バイナリサイズが大きく、4GBや8GBといった小容量のSSDに収まりきれないこと、性能やメモリに対する要求が高く、ULCPCの多くが採用する最大1GBのメモリ、古いチップセット統合グラフィックスといった仕様には荷が重いこと、などが理由としてあげられる。

 今回PDC参加者に配布されたWindows 7プリペータ版の配布バイナリサイズは、32bit版が2.72GB、64bit版が3.35GBというところ。これはWindows Vistaとほぼ同じ大きさだ。インストール後のHDD上のイメージサイズは16.8GB(32bit版の場合)で、多少がんばっても8GBのSSDで快適に使えるようになるとは思えない。16GBならギリギリ動作させられるのではないかと思うが、現実的には32GBのSSDがスタートポイントだろう。

Windows 7プリベータ版(x86)の容量は2.72GB インストールイメージは約16.8GB

 おそらくCPUやGPUに関する要求も、Windows Vistaと変わらないのではないかと思われる。メモリについては、シノフスキー副社長が1GBのマシンで、半分が余っている(1GBのメモリで余裕を持って使える)とアピールしているが、昨今のDRAM価格を考えれば価格的にはたいした問題ではない。実態は、多分にスペックで「縛り」をかけたいという政治的な問題なのだ。つまりULCPCにWindows 7を展開する際の障害となりそうなのは、GPU性能とストレージ容量ではないかと思われる。

 この問題についてMicrosoftの公式な見解は今のところない。が、おそらく何もしないのではないか、というのが筆者が得ている感触だ。Microsoftは現在のPCのトレンドとして、今後もますますPCの高性能化と低価格化が進むと述べている。そう考えているのであれば、ストリップダウンバージョンを用意したり、軽い専用バージョンを作るということは考えにくい。

 最大のネックと思われるSSDの容量だが、現在ULCPCでは4GB〜8GBのMLCタイプが主流だ。しかし黄(ファン)の法則からすると、2009年には同じ価格で8GB〜16GB、Windows 7のリリース時期と見られる2010年には16GB〜32GBが安価に入手可能となる。そうであるなら、今一生懸命に努力して、必要なストレージスペースを減らしたULCPC版を作るより、ジッとSSDが安価になるのを待った方が賢明だ。CPUやGPUの性能向上は、ムーアの法則に任せておけば良い。

 おそらくMicrosoftはULCPCにもWindows 7というメッセージを出してくるだろう。そして、それはWindows 7が登場するであろう2010年あたりでは、たとえSSDを前提にしてもそれほど無茶な話ではなくなる。それまでは、小容量SSDを搭載したULCPCではWindows XP Home EditionあるいはLinuxを使い続けることになるのではないだろうか。

□Microsoftのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/
□PDCのホームページ(英文)
http://msdn.microsoft.com/en-us/events/bb288534.aspx
□関連記事
【PDC 2008基調講演レポート】 「Windows 7を初披露」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1030/pdc02.htm

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(2008年10月31日)

[Reported by 元麻布春男]


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