2004年末に発売されたバッファローの初代TeraStation(HD-HTGL/R5)は、売り切れ店が続出するほどのヒットとなった。テラバイト(TB)級の大容量と、RAID 5によるデータ保護が、10万円を切った一般ユーザーにも手が出せる価格で提供されたからだ。それから4年近く、TeraStationシリーズは、モデルチェンジを行ないつつも、初代に近いサイズのまま販売されてきた。 先日発表された「LS-QL/R5」シリーズは、名前こそ同社のコンシューマー向けネットワークストレージ製品のブランドである「LinkStation」になったものの、その前面パネルのデザインといい、かつての「TeraStation」を思い起こさせるものになっている。この新しいLS-QL/R5シリーズについて、バッファローに話を聞いた。 ●前モデルの半分以下の大きさ 写真を見ているだけでは分かりにくいが、今回発表されたLS-QL/R5シリーズは、前モデルのHS-DHTGL/R5との比率で約42%と、大幅に小型化されている。いわば全面モデルチェンジになっているわけだが、その狙いはもう1度個人ユーザーに使ってもらうことを意識したからだという。
これまで販売されていたTeraStationは、個人向けモデルであっても基本的には企業向けモデルと同じ筐体で、色を黒から銀に塗り替えたものだった。企業向けでは、デザインの善し悪しが問われることはなく、冷却性だけが重視され、いかにも冷却が良さそうなデザインが好まれるという。が、個人向けでは、冷えないのは問題だが、デザインの善し悪しも売れ行きに大きな影響を与えるとのこと。今回のLS-QL/R5は、個人向けに好評を博した初代TeraStationの金庫を思わせるデザインを踏襲したそうだ。 個人向けということでもう1つ考慮したのが騒音だ。オフィスで利用される企業向けと異なり、家庭で利用される個人向けではファンのノイズは極力避けたい。かといって、冷却能力が不足するのも困る。この相反する課題に対する解が、冷却に必要なエアフローを確保した大きさの筐体と、背面パネルの半分以上を占める大口径ファンをゆっくり回すことの組合せだった。 家庭の場合、企業(マシンルーム)と違って留守の際は空調が切られることが多い。が、この大口径ファンのおかげもあって、本機の動作環境は摂氏0~45度となっており、よほどのことがない限り、空調のない部屋での運用も可能だ。内部には温度センサーも用意されており、万が一温度が上がりすぎた場合は、ドライブの電源をシャットダウンする仕様になっている。この場合でも、コントローラはシャットダウンしない。 熱によるシャットダウン以外にLS-QL/R5シリーズでは、接続されたPCの電源に連動してドライブの電源をオン/オフしたり、付属のユーティリティ「NASナビゲーター2」を常駐させることで複数のPCと電源連動することができる。が、熱によりシャットダウンした場合は、ユーザーが電源スイッチを押して復帰させねばならない。安全な温度に下がっている場合は自動的に復旧できるよう、さらにはWake on LanのようにPCからのアクセスにより自動復帰する動作が実現できないか、検討しているそうだ。
●HDD交換は簡単 もう1つデザインで配慮したのは、ドライブ交換のしやすさだ。RAID 1/5/10の魅力は、ドライブの1台に障害が発生してもデータが失われず、ドライブを交換することでそのまま利用し続けることが可能な点にある。が、初代TeraStationは、インターフェイスがパラレルATAということもあり、故障したドライブへのアクセスが困難で、交換するのも一苦労だった。 LS-QL/R5シリーズでは、ホットプラグこそできないが、前面パネルをポンと外し、ラッチを解放してレバーを引くだけでドライブを取り外すことができる。
この前面パネルだが、マグネットで固定されており、簡単に取り外すことが可能だ。また、若干ではあるものの、外した方が冷却は向上するという。それならば、ホコリの進入を防ぐサランネット(オーディオスピーカーの保護ネットを連想して欲しい)のような前面パネルをオプションとして用意すれば、カラーバリエーション等の展開も含めて、商品の魅力が増すのではないかと思う。
逆に、デザイン変更で少し残念なのは、電源がこれまでの内蔵からACアダプタに切り替わっていることだ。ACアダプタは何かとじゃまくさいものだが、電源をACアダプタ化することで、電源の排熱を気にしなくて済む上、本体が小型化できる。こうした損得以上にACアダプタ化を行なった理由は、ACアダプタの交換のみで電源対応ができるため、製品の海外展開が容易になるということだった。基本的にコンシューマー向けの製品については、電源をACアダプタにしていく、というのが基本的な方針のようだ。理屈はわかるのだけど、ちょっと残念ではある。 ●2TBモデルを割安に設定
本機の内部には標準で4台のHDDが内蔵されて出荷される。1TBモデルが250GBドライブ×4の構成で、同様に2TBモデルが500GBドライブ、4TBモデルが1TBドライブを採用する。今回の特徴の1つは、2TBモデルが78,015円と、1TBモデル(61,215円)や4TBモデル(143,115円)に比べて、割安な設定になっていることだ。従来製品では2TBモデルの比率は20~30%程度だったというが、今回は50%を超えたいとしている。 出荷時における内蔵HDDの設定は、RAID 0(ストライピング)になっているが、RAID 1(ミラーリング)、RAID 5、RAID 10、なし(4台個別)を設定することが可能だ。2台内蔵だと個人ではミラーリングを行なうユーザーは少ないとのことだが、せっかくハードウェアによるRAID 5をサポートした本機を購入するのだから、データ保護と利用効率のバランスに優れたRAID 5を活用したいものだ。 内蔵される4台のドライブは、いずれも7,200rpmの3.5インチSATAドライブが用いられる。消費電力や熱の問題を考えれば、5,400rpmのドライブも有力だと思うのだが、現時点ではドライブ製品の種類が7,200rpmドライブに比べて限られるため、やや供給に不安があるとのこと。その問題さえなければ、国内向けには検討の余地があるようだ。ただし、海外市場向けには、「7,200rpmの高速ドライブ搭載」と明記しないとサッパリ売れないという。EthernetがボトルネックになるNASの場合、ドライブの回転数の差はほとんど性能に反映しないと思うだが、難しいものだ。ちなみに日本では7,200rpmうんぬんは、カタログやWebでも特に触れられていない。 コントローラには、ここ最近のモデルと同様、ARM系のプロセッサが使われているという。ただし、個人向けに価格を抑える必要性から、性能的にも若干低めになっているようだ。初代TeraStationはPowerPC系のプロセッサでNASのOSとして採用されているLinuxのカーネルが2.4系だったが、プロセッサをARMに切り替える際にカーネルを2.6系に変更、Samba等のモジュールもすべてバージョンを上げて、内部文字コードをUTF-8に切り替えている。したがって、今回の製品も、Windows、Macを問わず日本語フォルダ名やファイル名を利用することが可能だ。 このほか個人向けの製品らしくDLNAに対応するほか、Mac OS X LeopardのTimeMachineのバックアップ先としても利用できる。バッファローが提供するサービスを利用して、外出先から自宅のNASを利用するWebアクセスにも対応する。筆者を含め1TBのNASを利用しているユーザーも多いハズだが、そろそろ手狭になってきたころ。値頃感の高い2TBモデルの導入を検討するべきタイミングかもしれない。
□バッファローのホームページ (2008年9月19日) [Reported by 元麻布春男]
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