Intel Developer Forumの2日目は多数の報道関係者向けのセッションが行なわれ、Intelの今後の製品戦略が語られた。 Intel副社長兼エンタープライズ事業本部ディレクターのスティーブ・スミス氏は、Intelのデスクトップ、ノートPC、ウルトラモバイルなどのCPUに関するロードマップの概要を説明した。 それによれば、Intelは今年の第4四半期に開発コードネーム「Bloomfiled」と呼ばれてきたNehalemアーキテクチャの製品を「Core i7」のブランドで製品投入し、来年の後半にはCPU、ノース、サウスという3チップ構成からCPUとPCH(Platform Control Hub)という2チップ構成になる新世代CPUの“Lynnfiled”、“Havendale”、“Clarksfiled”、“Aubundale”の各製品が投入されることになる。 また、スミス氏はIntelが2009年に投入する予定のMoorestownの後継として、2010年以降にさらに統合度を高めた32nmプロセスルールの後継製品を計画していることを明らかにした。 本レポートではスミス氏が明らかにした内容と、IDF周辺でOEMメーカーの関係者などに取材した内容などから、現時点でわかっているIntelのロードマップをまとめておきたい。 ●Core i7 ExtremeとCore i7は11月半ばに投入 すでに明らかになっているとおり、Intelは第4四半期にBloomfiledの開発コードネームで知られてきたNehalemアーキテクチャのCPUを投入する。ブランドはパフォーマンスセグメント向けが「Core i7 Processor」となり、マニア市場向けが「Core i7 Extreme Processor」となる。 その仕様は、物理4コアで、HT(Hyper Threading)テクノロジと組み合わせて論理8コアの構成、各コアに64KBのL1キャッシュ+256KBのL2キャッシュ、共有のL3キャッシュが8MB、3チャネルのDDR3メモリコントローラを内蔵。チップセットはIntel X58+ICH10となる。 スミス氏は「Core i7 Extreme」と「Core i7」の2つのブランドがあることは説明したが、それぞれどのようなSKUが存在しているのかは説明しなかった。OEMメーカー筋の情報によれば、リリース時点では下記のような3つのSKUが投入されることになるという。
現時点ではCore i7 Extremeが3.2GHz、Core i7に関しては2.93GHzと2.66GHzの2つのSKUが存在しているとのことだ。Extremeとノーマル版の大きな違いはQPIの転送速度が異なっていることだ。Extreme版は6.4GT/secであるのに対して、ノーマル版は4.8GT/secに留まっている。3Dゲームなどでは、CPUからGPUへのデータ転送の速度が性能のボトルネックになることがあるので、ゲーマー向けと位置づけられるExtreme版のプレミアムをつけるために、こうした構成になっていると考えることができるだろう。 メモリに関してはDDR3-1066(64bit/1チャネルで8.5GB/sec)になっている。前世代のCore2 Extreme+X48/38ではDDR3-1333(64bit/1チャネルで10.6GB/sec)にも対応していたので、いささか後退した感じを受けるかもしれないが、メモリのチャネル数が2チャネルから3チャネルに増えているのでトータルの帯域幅ではむしろ上回ることになる。 DDR3-1066の3チャネル 8.5×3=25.5GB/sec おそらく新しいプラットフォームであるので、安全を見越して余裕をとったのと、将来のヘッドルームを残すという2つの意味があるのだろう。 また、スミス氏はCore i7 Extreme/Core i7のリリース時期に関しても第4四半期とだけ説明し、具体的な時期に関しては言及しなかった。しかし、OEMメーカー筋の情報によれば11月半ば頃のリリースが計画されており、現時点では11月10日~19日あたりのどこかのタイミングでの発表と言うことになりそうだ。
●普及価格帯のLynnfiled/Havendaleは2009年第3四半期 最初のLGA1366ソケットのCore i7は、プラットフォームとしては短命なものとなる宿命を背負っている。というのも、パフォーマンスからメインストリーム向けには、別のプラットフォームが2009年の後半に投入されるからだ。ちょうど、Pentium 4導入時に、Socket 423のプラットフォームが1年程度しか利用されなかったのと同じように、LGA1366のCore i7に関してはほぼ1年だけの短命なCPUソケットになる可能性が高い。 スミス氏は2009年の後半にデスクトップPC向けにはクアッドコアのLynnfiledとデュアルコアのHavendale、ノートPC向けにはクアッドコアのClarksfield、デュアルコアのAuburndaleがリリースすることを明らかにした。 クアッドコア版はGPUを内蔵せず、メモリは2チャネルで、1x16ないしは2x8のPCI Expressスロットをサポート可能、デュアルコア版はGPUを内蔵し、メモリは2チャネル、1x16のPCI Expressスロットを実装することが可能になっている。 なお、スミス氏は特に言及はしなかったが、OEMメーカー筋の情報によればCore i7 Extremeに関しては、LGA1366が継続されることになりそうだ。そもそも、Bloomfiled自体が、サーバー/ワークステーション用のNehalemであるNehalem-EPの1P版であることを考えると、Extreme向けだけは引き続きサーバー/ワークステーション用チップが転用されると考えるのが自然だろう。 また、前述のようにスミス氏はLynnfiled/Havendaleのリリース時期を「2009年の後半」とだけ説明したが、OEMメーカー筋の情報では第3四半期と説明されているという。思い返してみれば、Pentium 4の時も2000年11月にSocket 423版がリリースされ、翌年の9月にSocket 478版がリリースされている。今回もそれに似たスケジュールになるようだ。
●32nmプロセスのMoorestown後継製品はスマートフォン向け
最後にスミス氏は、ウルトラモビリティのロードマップについて触れ、2009年にリリースを予定しているMoorestownの後継製品に関しても言及した。 それによれば、次の製造技術である32nmプロセスルールの世代でMoorestownの後継製品を計画しているという。詳細に関してはスミス氏は説明しなかったものの、「この後継製品はMoorestownの統合度をさらに高めた製品となる」と述べた。 なお、別のセッションでウルトラモビリティ事業部を統轄するアナンド・チャンドラシーカ上級副社長に聞いてみたところ「Moorestownの後継製品でも無線関連の機能を統合する予定はない」とのことだったので、可能性として高いのはMoorestownの2チップ構成から1チップ化に進むというストーリーではないだろうか。 IntelはMoorestown、そしてその構成製品となるこれらの製品で、スマートフォン市場を狙っている。1チップとなれば実装面積も消費電力もさらに下げることができるだけに、有力な武器となるだろう。
□IDF 2008 レポートリンク集 (2008年8月22日) [Reported by 笠原一輝]
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