FTFJ 2008レポート【高橋社長基調講演編】
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フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの代表取締役社長を務める高橋恒雄氏。Freescale本社のシニアバイス・プレジデントを兼務する |
9月10日 開催
会場:東京・目黒雅叙園
フリースケール・テクノロジ・フォーラム・ジャパン2008(FTFJ2008)では例年、午前の基調講演セッションでフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの代表取締役社長(米国Freescale Semiconductorのシニアバイス・プレジデントを兼務)を務める高橋恒雄氏が同社の幹部を交えて最近のトピックスを紹介する。今年もいくつかの話題が披露された。
始めに、フリースケールのオートモーティブ セールス&マーケティング本部ジェネラルマネージャーを務める林章氏が登壇し、車載半導体製品に関する最新情報を説明した。
林氏が最初に説明したのは、自動車エアバッグ用バスの新規格に準拠した半導体製品である。フリースケールは'99年に米TRW社と共同でエアバッグ用のバス規格「DSI(Distributed Systems Interface)」を開発し、DSIに準拠した半導体製品を提供してきた。DSIは電子制御ユニット(ECU)をマスター、衝突センサーをスレーブとするツイストペアのバスである。エアバッグと衝突センサーの数が増えたときでもワイヤーハーネスをそれほど増やさずに済む、電磁ノイズに対する耐性が高いといった特徴を有する。
FTFJ 2008では第2世代のDSI規格「DSI 2.0」を発表した。DSI 2.0ではバスのチャネル数を4本と第1世代の2倍に拡大する、実用的に接続できるスレーブの数を1チャネル当たり4個に増やす(第1世代では1チャネル当たり3個)、ワイヤーハーネスのシールドを不要にするといった改良を加えた。
また重要な改善点として、第1世代に比べて外部に放射する電磁ノイズの強度を減らした。ノイズを低減するため、バス信号を平衡出力にしたほか、スペクトラム拡散技術を導入した。基調講演では、AMラジオ(600kHz)を受信しているアンテナをDSIモジュールに近接して配置し、電磁ノイズの違いを実際に示した。また午後の報道関係者向け説明会ではDSI 2.0に準拠したマスタICとスレーブICを発表したほか、展示会ではDSIモジュールとアンテナ、スペクトラムアナライザを使った電磁ノイズの測定結果を実演していた。
自動車エアバッグシステムの構成。基調講演のスライドを撮影 | DSIの第1世代と第2世代の主な仕様。基調講演のスライドを撮影 | DSIの第1世代と第2世代の電磁ノイズ強度の違い。スペクトラム拡散技術によって15dBほど、ノイズレベルが低下する。基調講演のスライドを撮影 |
第2世代DSIに準拠したマスタICとスレーブIC。報道関係者向け説明会の資料を引用 | 展示会では、DSIの第1世代と第2世代による電磁ノイズ強度の違いを測定し、表示していた。左上のモニターが電磁波のスペクトラム表示。展示会のブースで撮影 |
次にフリースケールでコンシューマ&ワイヤレス セールス&マーケティング本部ジェネラルマネージャーを務める友眞衛氏がスクリーンに登場したのだが、少し様子がおかしい。スクリーンに映った友眞氏の顔が髭を生やしたり、アフロへアになったりしている。これは「モーションポートレート」と呼ぶ画像処理技術によって友眞氏の顔写真を加工した画像だとの説明があり、この技術を開発したモーションポートレート株式会社の藤田純一代表取締役社長が登壇した。
髭を生やした友眞衛氏(コンシューマ&ワイヤレス セールス&マーケティング本部ジェネラルマネージャー)。基調講演のスライドを撮影 | さらに眼鏡をかけてアフロヘアになってしまった友眞衛氏。基調講演のスライドを撮影 |
藤田社長の説明によると「モーションポートレート」とは、静止画像を元に、ビデオと同様のアニメーション(動画像)を生成する技術である。生成した動画像は、ポインタやテキスト音声合成などと連動して動く。人間の顔写真だけでなく、動物の顔写真やイラストレーションなども原画像として取り込める。藤田社長は人間の顔やイラストレーションなどをアニメ化したビデオを流して見せた。人間の顔だとアニメ化した場合にまだ不自然さが残るものの、イラストレーションの場合は違和感をあまり感じない。
なおFTFJ 2008の展示会では、フリースケールのARM1136コア内蔵プロセッサ「i.MX31」を実装したボードで「モーションポートレート」を実演していた。来場者の顔写真を撮影し、その場でアニメ化するデモンストレーションである。記者も顔写真をアニメ化してもらった。撮影画像をアニメ化するのに必要な時間は数十秒である。
モーションポートレート株式会社代表取締役社長の藤田純一氏。基調講演のスクリーンを撮影 | モーションポートレート技術の説明。説明には「3Dアニメーション」とあるが、キャラクタが後ろに振り向いたりはしないので、厳密には「疑似3Dアニメ」。基調講演のスライドを撮影 | 顔写真を取り込んだキャラクタに眼鏡をかけたり、帽子をかぶせたりしたところ。基調講演のスライドを撮影 |
イラストレーションもアニメ化できる | 展示会では来場者の顔写真を撮影し、その場でアニメ化して見せていた。デモンストレーションには「i.MX31」の開発ボードを使用している |
イラストレーションをアニメ化した動画像。基調講演のスライドとビデオを撮影 |
記者の顔写真をアニメ化した動画像。展示ブースで撮影 |
そして本物の友眞氏がようやく登場し、ARMコア内蔵のプロセッサ「i.MX」シリーズの新製品「i.MX37」を紹介した。i.MX37はARM1176コアを内蔵し、消費電力(mW)当たりの演算処理能力はi.MX31の24倍に達するという。
本物の友眞氏の顔。基調講演のスクリーンを撮影 | i.MX31プロセッサとi.MX37プロセッサの比較。基調講演のスライドを撮影 | Di.MXシリーズのロードマップ。報道関係者向け説明会の資料を引用 |
続いて友眞氏と交代で、プロダクト・マーケティング本部のジェネラルマネージャーである伊南恒志氏が登場した。伊南氏は、32bit組み込み用プロセッサ「PowerQUICC」の次世代ファミリ「QorIQ」を紹介した。QorIQについてはPowerQUICCプロセッサ編で報じたので、本レポートでは省略する。
そして日本の高齢者層(65歳以上の層)におけるインターネット環境の説明があった。日本政府の調査によると、高齢者層では携帯電話機をほとんど使用していない人の割合が70%に達しており、PCをほとんど利用していない人も半数近くの49%を占めていた。
一方で人口当たりの医師の数はOECD(経済協力開発機構)加盟諸国で4番目に少なく、高齢化の急速な進行によって総人口に占める65歳以上の層の割合は2020年に30%、2050年には40%に達すると予測されている。
ここでフリースケールのディストリビューション・インダストリ セールス&マーケティング本部マス・マーケット・プログラムのマネージャーを務める長竹功二郎氏が、犬のぬいぐるみを抱いて登壇した。このぬいぐるみは無線トランシーバとカメラ、センサを内蔵しており、高齢者を含めた人間をインターネットにつなげる媒介として考案された。人間にとって親しみやすい「ぬいぐるみ」を使い、高齢者の様子をネットワーク経由で外部に伝達する。
日本の高齢者層(65歳以上の層)におけるインターネット環境。基調講演のスライドを撮影 | 人口当たりの医師数と高齢化の進行状況予測。基調講演のスライドを撮影 | 左は犬のぬいぐるみを持って登壇した長竹功二郎氏。右は高橋社長。基調講演のスクリーンを撮影 |
犬のぬいぐるみ(フリースケールのマスコット「フリス犬」)に2.4GHzの無線トランシーバとセンサ、カメラを内蔵し、無線端末とした。基調講演のスライドを撮影 | 展示会では、無線端末のぬいぐるみを触ることができた。ぬいぐるみの頭にさわるとタッチセンサ(電界センサ)が反応し、ぬいぐるみが「ワン、ワン」と鳴く。展示ブースで撮影 |
□フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンのホームページ
http://www.freescale.co.jp/
□モーションポートレートのホームページ
http://www.motionportrait.com/
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【2005年9月9日】Freescale Technology Forum Japan 2005レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0909/ftf01.htm
(2008年9月17日)
[Reported by 福田昭]