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S3のエントリー向けビデオカード「Chrome 430 GT」を試す

Chrome 430 GT

発売中

実売価格:6,700円前後



 S3 Graphicsから久々の新製品となるGPU「Chrome 430 GT」を搭載したビデオカードが、ようやく日本でも発売開始となった。実売価格は6,700円前後とリーズナブルだ。今回1枚入手できたので、レポートをお届けする。

 Chrome 430 GTは、DirectX 10.1に準拠したGPUだ。汎用シェーダは32基で、メモリバス幅は64bit、メモリクロックは1GHzとスペックは決して高くない。従来製品のChrome S20シリーズがバス幅128bitでミドルレンジ向けだったのに対し、本製品は完全にローエンド向けにフォーカスした仕様となっている。

 また、同カードを2枚利用することでパフォーマンスを向上させられる「MultiChrome」にも対応する。カード同士を接続するブリッジを必要としないうえ、チップセットを問わずに構築できる点は、ATIやNVIDIAの2製品にはない魅力と言える。しかし現時点では対応ドライバがリリースされておらず、今回はテストできなかった。

 一方、現在のトレンドであるH.264/VC-1再生支援機能として「Chromotion 2.0HD」を搭載しており、Blu-ray DiscなどのHDコンテンツ再生に好適だとしている。

●シンプルな上級者向けパッケージ内容

 パッケージ内容物はビデオカードのほかに、ドライバが入ったCD-ROM、保証書のみ。説明書やDVI-VGA変換アダプタ、LowProfileブラケットなどは一切同梱されておらず、あっさりしている。

 カードは背が低い上に全長が短く、コンパクトにまとまっている。コンデンサ数が少なく、電源回路周りも軽装備であることから、低消費電力であることが伺える。ファンも小さいことから、発熱が小さいことも想像できる。なお、このファンは動作中でもそれほど騒音を発せず、同クラスのGeForce 8400 GSと比較しても静かという印象だ。

パッケージとビデオカード本体 ビデオカード本体。ファンはかなり小型だ インターフェイスはミニD-Sub15ピンとDVIのみ
本体裏面 ビデオメモリはHynix製の「H5PS5162FFR20C」 GPU-Zによる表示

 今回試用するにあたり、S3から最新ドライバである「0217β」を利用した。設定ユーティリティは「ScreenToys」と呼ばれるもので、従来からUIがやや変わっている。しかし設定できる項目はほぼ同じで、3D設定や画面回転、Chromotionビデオによるエフェクト、および色管理などができるようになっている。

ScreenToysの3D設定画面。設定できる項目は多くない ビデオ設定の画面。各種エフェクトをリアルタイムにかけることができる

 GPU-Z 0.6.2を用いて情報を表示させたところ、GPUのプロセスは65nmで、ダイサイズは85平方mmとなっている。コアクロックは625MHz、メモリクロックは1GHzとリファレンス通り。さらに、シェーダクロックのみが900MHzに高められているようで、このあたりはNVIDIAと同じく演算速度を上げるための手段とみられる。

 Vistaのエクスペリエンスインデックスはグラフィックスが4.1、ゲーム用グラフィックスが4.8と、高点数をマークした。実際にAeroをONにした状態で、ウィンドウを10個ほど開き、ウィンドウフリップをやってみたが、フリップは非常にスムーズだった。従来のChrome S27で少しカクついたことを考えると進歩が見える。いくつか3Dゲームを起動してみたが、表示バグもなく、ベータドライバであるにもかかわらず、動作は安定している印象である。

●各種ベンチマーク

比較用に用いたZOTAC製のGeForce 8400 GSビデオカード

 性能を計測するために、CPUにCore 2 Duo E6600(2.4GHz)、メモリ2GB(PC-6400)、マザーボードにInnoVision製NF 680iSLI(nForce 680i SLI)、HDDにWesternDigitalのWD5000AAKS(500GB)、OSにWindows Vista Ultimate(SP1)の環境を用意した。やや古い環境だが、ボトルネックになることはないだろう。また、比較用にZOTAC製のGeForce 8400 GS(256MB)を用意した。GeForce用ドライバのバージョンは175.19である。

 なお、DirectX 10.1の競合としてはRadeon HD 3450があるが、今回はテストできなかった。ご容赦いただきたい。

 ベンチマークは3DMark Vantage(1.0.1)、3DMark06(1.0.3)、ロストプラネット、UnrealTournament3を用いた。エントリー向けである性質に考慮し、あえてアンチエイリアスをかけていない。また、3DMark06とUnrealTournament3についてはもっともユーザーが多いと思われる1,280×1,024ドット(SXGA)でテストしている。

 3DMark Vantageは、EntryのスコアがE2719、PerformanceのスコアがP296となっている。ローエンド向けGPUということもあり、Performanceのベンチマーク終了時に「正しく計測されなかった可能性がある」というダイアログが出てきてしまった。よってこのスコアの信憑性は低いと思われる。対するGeForce 8400 GSのスコアがそれぞれE2686、P273であった。こちらもPerformanceのスコアは正しく計測されなかった可能性があるというダイアログが出た。

3DMark Vantageの結果

 3DMark06は2081というスコア。対するGeForceは1648であり、DirectX 9アプリケーションにおいても性能のアドバンテージがあることがわかる。詳細を見ると、Fill RateがGeForce 8400 GSを大きくリードしていることから、好結果に結び付いているのだろう。

3DMark 06の結果

 ロストプラネット エクストリームコンディションのベンチマークについては、自動検出による1,280×720ドットでベンチマークしている。各種設定も自動検出させたが、Chrome 430 GTとGeForce 8400 GSでは異なる設定となってしまった。

 Chrome 430 GTは、アンチエイリアスがなし、HDRが中、テクスチャフィルタが異方性4倍、テクスチャ解像度が中、モデル詳細が高、影の品質が中、影の解像度が低、モーションブラーが低、エフェクトの解像度が高、エフェクトの品質が中だった。それに対しGeForce 8400 GSでは影の品質とモーションブラーは自動的になしに設定された。よってChrome 430 GTをGeForce 8400 GSの条件に合わせたテストも行なっている。

 Chrome 430 GTのデフォルトはSnowが平均12.4fps、Caveが平均15.3fpsという結果。画面を見てもギクシャクしており、快適にゲームが遊べるとは言いづらい。一方GeForce 8400 GSのデフォルト設定はそれぞれ15fpsと21.6fpsとやや高い結果。そしてChrome 430 GTにGeForce 8400 GSと同じ設定をさせてテストしたところそれぞれ17fpsと22.4fpsに向上した。ここでもGeForce 8400 GSを超える性能を確認できた。

ロストプラネット エクストリームコンディションの結果(単位:平均fps)

 最後にUlrealTournament3のテストだが、ここはTexture Detail、World Detailをそれぞれ3に設定してテストした。Chrome 430 GTはHeat-RayでのFlyThroughが平均23.86fps、Botが18.27fpsだった。一方GeForceはそれぞれ18.03fps、13.87fpsとなった。やはりChrome 430 GTが優勢だと言える。

 とは言え、いずれのテストにおいてもこれらの3Dゲームを満足にプレイできる結果とは言えず、プレイするにあたり解像度を落としたり、ディテールを省く設定をするなどの工夫が必要だ。価格から考えれば妥当だろう。

UlrealTournament3(単位:平均fps)

 ビデオ再生支援機能については、H.264のフルHD(1080p)ビデオをQuickTimeで再生したところ、Chrome 430 GT/GeForce 8400 GSともに20~40%前後のCPU使用率で安定した。再生中コマ落ちが発生することもなく、スムーズな再生を見せた。

Chrome 430 GTのH.264ビデオ再生中のCPU使用率推移 GeForce 8400 GSのH.264ビデオ再生中のCPU使用率推移

 システム全体の消費電力は、Chrome 430 GT装着時がアイドル時で125W、3DMark Vantage動作時が135Wだった。GeForce 8400 GS装着時はそれぞれ126W、142Wだった。3DMark動作中はGPUのみならず、PCI ExpressバスやCPU、メモリなどもフルで稼働しているので、単純に比較することはできないが、低消費電力重視に開発されたという謳い文句に偽りはないだろう。

消費電力(単位:W)

●旧PCのパワーアップに最適

 以上見てきたように、Chrome 430 GTはDirectX 10.1という最新のAPIをサポートしているものの、最新の3Dゲームをプレイできる性能というより、動画再生や低消費電力にフォーカスして開発されたGPUであることがわかる。

 しかしChrome 430 GTと同等の性能や機能、消費電力を求めるならば、AMDの790GXやIntelのG45などの最新チップセットでカバーできる範囲内であり、あえてこのクラスのビデオカードを増設するメリットはない。最新のチップセットと組み合わせるというよりも、一世代前の統合型チップセットを搭載したPCを、HDコンテンツ再生対応にするためのパワーアップ手段の1つとして捉えると、良い選択肢になるだろう。

□S3 Graphicsのホームページ(英文)
http://www.s3graphics.com/
□製品情報(英文)
http://www.s3graphics.com/en/products/chrome_430gt/
□関連記事
【2月18日】S3、DirectX 10.1対応GPU「Chrome 400」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0218/s3.htm
【2006年5月31日】S3「Chrome S27」ベンチマーク
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0531/chrome.htm

(2008年8月8日)

[Reported by ryu@impress.co.jp]

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