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S3「Chrome S27」ベンチマーク
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「XIAiS27-DV128DDRIII」 |
発売中
実売価格:14,000円前後
XIAiから、S3製GPU「Chrome S27」を搭載したビデオカード「XIAiS27-DV128DDRIII」が発売された。実売価格は14,000円前後。同製品は、Chrome S27に128MBのDDR3を搭載したビデオカードだ。今回2枚入手できたので、マルチGPU技術「MultiChrome」もあわせてベンチマークをお届けする。
Chrome S27は、Vertex Shaderを4個、Pixel Shaderを8個備えたGPUで、富士通の90nmプロセス技術により「業界最高水準のワット(W)あたりの性能」を実現したという。また、コアクロックは700MHzで、これも業界最高と謳っている。
さらに、NVIDIAのSLIやATIのCrossFireと同様のマルチGPU技術「MultiChrome」に対応しているのも特徴。ブリッジなどを必要としないうえ、チップセットを問わずに構築できる点は、ATIやNVIDIAの2製品にはない魅力だといえる。
一方、欠点としてはShader Model 2.0までしかサポートしないことが挙げられる。市場に出回っているビデオカード新製品の大半がShader Model 3.0であることを考えると、やや時代遅れな印象はぬぐえない。
●簡易なパッケージ内容
パッケージは、カード本体、ドライバーCD、DVI→ミニD-Sub15ピン変換コネクタ、コンポーネント出力ケーブル、マニュアル、保証書といたってシンプル。購入した2枚ともマニュアルにはなぜかGammaChrome S18用のものが同梱されていた。
カードは標準的な高さのものだが、GeForce 6600 GT搭載カードと比較すると長さが短い。microATXケースなど内部が狭いケースへの組み込みも容易だろう。搭載するコンデンサ数も少ないうえ、放熱機構もアルミヒートシンク+小型のファンでさほど大がかりなものではないことから、低消費電力であることがうかがえる。
パッケージ内容 | XIAiS27-DV128DDRIII。ヒートシンクはメモリまでカバーしているが、密着されていない | 本体裏面 |
ヒートシンクを外したところ | Chrome S27のチップ。「JAPAN」の文字がくっきり見える |
ビデオメモリはSamsungの「K4J55323QG」。1.4ns品だ | カード長はGeForce 6600 GTよりも短い |
ドライバは従来のChromeシリーズとほぼ同様で、目新しい点はMultiChromeへの対応程度である。独自のビデオエンジンを駆使し、リアルタイムでビデオにエフェクトをかけられる「ArtisticLicense」なども健在だ。
ドライバをインストールするとタスクトレイにアイコンが格納される | MultiChromeの設定画面 |
●性能はGeForce 6600 GTに一歩及ばず
性能を計測するために、CPUにAthlon 64 3500+(2.2GHz/L2 512KB)、メモリPC3200 DDR SDRAM 2GB、マザーボードにASUSTeK A8N-SLI、HDDにBarracuda 7200.8 200GB(7,200rpm)、OSにWindows XP Professional(SP2)の環境を用意した。
なお、Chrome S27のドライバに関しては付属CDのもの(6.14.10.2212)だと3DMark06の描画が一部おかしくなってしまうため、執筆時点でS3 Graphicsのサイトからダウンロードできる最新の「Ver.6.14.10.2217」を利用している。新ドライバはマイクロソフトのWHQLをパスしており、テスト中も安定した動作をみせた。GeForce 6600 GTのドライバは最新のVer.84.21である。
まずは3DMark03、同05、同06、およびFinalFantasy XI オフィシャルベンチマーク3でテストしてみた。比較用にGigabyte製のGeForce 6600 GTを用意した。なお、3DMark06に関してはGeForce 6600 GTではShader Model 3.0のスコアが反映されるが、Chrome S27では3.0に対応しておらず2.0ベースのスコアになっている。
また、アンチエイリアスおよび異方性フィルタリングを利用時のテストでは。ドライバ上でアンチエイリアスを4xに、異方性フィルタリングを8xに設定している。
Chrome S27 vs GeForce 6600 GT |
結果からわかるとおり、いずれのテストもGeForce 6600 GTにあと一歩及ばない。GeForce 6600 GTのVertex Shaderは3個、コア/メモリクロックはそれぞれ500MHz/1GHzと、スペック上ではChrome S27のほうが上でより良い性能を得られるはずだが、結果からいえることは、Chromeシリーズはシェーダー性能よりも低消費電力にフォーカスして開発されたということだ。
アンチエイリアスおよび異方性フィルタリングのテストでは、FFベンチのLowを除くいずれの結果も非利用時と比べて大きくスコアダウンしている。FFベンチのHighでは非利用時から約25%、3DMark05では約40%の性能低下が見られたほか、3DMark03では約76%、3DMark06では約67%と大幅にダウンしてしまう。ビデオメモリが128MBしかないことが大きく影響しているようだ。
●スコア上昇が期待できるMultiChrome環境
次に、このビデオカードを2枚利用してMultiChrome環境を構築してテストを行なってみた。
テストマシン | XIAiS27-DV128DDRIIIを2枚装着 |
構築は簡単で、nForce 4 SLIの環境ではマザーボード側でPCI Expressをx8×2の構成に設定し、もう1枚のビデオカードを挿し、ドライバ上でMultiChromeをONにするだけで有効となる。試した限りでは、構築中になんらか問題が起きるようなことはなかった。
MultiChrome環境のスコア |
結果は、3DMark系ではシングル時と比較して45%~73%の性能向上が見られた。特に3DMark03と05のスコアはGeForce 6800 GT/GSに肉薄する性能をみせている。対応アプリであればかなりの性能向上が見込めるだろう。一方FFベンチでは、1.4%~5.5%の低下が起きた。これは、このベンチがマルチGPU技術に対応していないためで、致し方がないところだ。
●優れた低消費電力を発揮
最後に消費電力と発熱について計測した。先に触れたようにChrome S27は電力あたりの性能にフォーカスしたGPUであり、ユーザーがもっとも気になる部分である。
今回、計測にサンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」を利用。手順としては、まずMultiChrome環境を構築し、3DMark05動作中の消費電力を計測。次に1枚取り外した状態で同様に計測すれば、おおよそChrome S27の1枚あたりの消費電力が割り出せるはずである。
MultiChrome環境でのシステムの全体の消費電力は150W前後 | Chrome S27シングルだと125W前後になる | GeForce 6600 GTは146W前後 |
結果は、システム全体でMultiChrome環境が約150W前後、シングル環境が125W前後であった。よって1枚あたりの消費電力は25W前後であることがわかる。一方GeForce 6600 GTは1枚でシステム全体の消費電力が146W前後のため、1枚あたりの消費電力は46W前後という計算だ。
3DMark05のスコアでそれぞれの消費電力を割ると、Chrome S27が1Wあたり128.08、GeForce 6600 GTが76ということになる。比率で言うとChrome S27はGeForce 6600 GTより約1.68倍も電力あたりの性能に優れる結果となり、「業界最高水準のワットあたりの性能」という謳い文句もうなずける。
もう1つ気になる発熱だが、3DMark動作中のヒートシンク温度は40度前後、GPUの裏側が50度前後だった。参考までに、GeForce 6600 GTカードのヒートシンクは38度前後、GPU裏側が57度前後だった。
Chrome S27チップ背面の温度は50度前後 | ヒートシンクは40度前後 |
GeForce 6600 GTチップ背面の温度は57度前後 | ヒートシンクは38度前後 |
Chrome S27は、ワットあたりの性能に優れた製品であり、キューブやスリム型PCなど電源容量が小さいPCに向く。絶対的な性能とShader Model 2.0までの対応であるということに目をつぶれば、低消費電力でゲームマシンを組みたいというユーザーのニーズにも応えられるだろう。
やや残念なのはXIAiS27-DV128DDRIIIが冷却機構にファン付きヒートシンクを採用している点だ。S3はファンレスも可能だと謳っているため、今後ファンレスデザインを採用した製品の登場に期待したい。
□XIAiのホームページ
http://www.xiai.jp/
□製品情報
http://www.xiai.jp/products/xiais27-dv128ddr3.html
□関連記事
【2005年11月4日】S3、コアクロック700MHzのGPU「Chrome S27」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1104/s3.htm
(2006年5月31日)
[Reported by ryu@impress.co.jp]