電子回路とはなんでしょう? 「何かの目的のために電子部品をつないだもの」。もっとも単純な定義はこんな感じです。部品の数は2つでもいいんです。それらがつながって意味のある動作をするならば、それはもう立派な電子回路。まずは2個の部品から始めましょう。
我々ブレッドボーダーズは、電子回路を作る際、簡単に使えてやり直しも容易なブレッドボードを使って部品をつないでいきます。便利で手放せません。でも、部品が2つならブレッドボードすらいらないかもしれません。そこで今回はまだブレッドボードを使わずに、部品を“直結”して電子回路を作ってみます。
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使用する部品は発光ダイオード(LED)とボタン電池(CR2032)の2点。そのほかに、粘着テープが1本必要です。我々は撮影の都合で赤色のLEDを使いましたが、青色または白色のものを使ってください。LEDの大きさは直径5mmのものがちょうどいいです。テープは電気を通さないものであれば使えます。今回は模型用のマスキングテープを使用しました |
最低限の部品を使ってLEDライトを作ります。工具はなくても大丈夫ですが、先の細いラジオペンチがあるとキレイに仕上がります。
電池に直接テープを貼って、部品の固定と絶縁(電気を通さないこと)を行ないます。電子回路の製作では、電気を通すこと以上に、通してはいけない部分では完全に通さないようにすることが重要です。
それでは、順を追って、作り方を見ていきましょう。
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電池のマイナス側を半分ほどテープで覆います。なにも書かれていない面がマイナスです(反対側には+の刻印があるはずです) |
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LEDの2本の足の間に電池を差し込みます。LEDの足は長さが違います。短い方の足がマイナスの面に来るようにします。また、LEDの足が直接電池に触れないようにします。電池の角で接触してしまうときは、テープを張り直して調整します。接触していると、LEDが光ってしまうのでわかるはずです |
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プラスの側では、LEDの足の上からテープをかぶせて固定します |
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スイッチとして機能する部分を加工します。ラジオペンチで足の先を曲げて、指でつまんだとき、電池に接触しやすくします |
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こんな感じにまとめると、持ったときに指に線が刺さらず、電池に対する接触もよくなります。先細のラジオペンチがない場合は、もっとおおざっぱな曲げ方でも問題ありません |
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プラス側の長い足の先端を曲げて、電池の縁にひっかかるようにすると安定度が増します |
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できあがり。こんなふうに持って、LEDの足をつまむようにすると光ります。2個100円の電池を用いれば、製作費は100円以下に収まるでしょう |
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【動画】動作中のボタン電池直結LEDライト。保管時は、絶縁のためビニール袋に入れておきましょう。透明な袋ならば、そのまま袋の上から持ってもライトとして使えますね |
ブレッドボードを使わずに電子回路を簡単に作る方法をもう1つ紹介しておきましょう。部品の足(正しくはリード線といいます)を配線用の端子に代えるテクニック。
必要な工具は今回も先細のラジオペンチです。ない場合はただの細い棒でもかまいません。
先ほどと同じくLEDを電池で光らせます。
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乾電池3本が入る電池ボックス、青色LED(他の色でもOKです)、200Ω前後の抵抗を用意します。すでに、リード線がクルッと巻かれた状態に加工されていますが、ここが端子となります |
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端子化は簡単。リード線の端をつまんで、クルクル巻きます |
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撮影用ということで力が入りすぎ、巻き方がキツめです。もう少し大きく巻いて、ゆるいスプリングにしたほうが使いやすいでしょう |
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スプリング状の部分に、別の部品の足を差し込みます(学研のマイキットの端子と同じ原理です)。見た目は悪いですが、ちゃんと光りました |
2つ目の回路には、抵抗器という部品が電池とLEDの間に入っています。抵抗器の役割については次回以降に説明しますが、今回はこの抵抗器がないとどうなるか、を見ておきましょう。
1つ目の回路を、ボタン電池の代わりに、2本の乾電池を使って作ってみます。つまり、2本の乾電池にLEDを直結します。電圧は同じ3Vですから問題ないはず。
次の動画は実際に試した時の様子です。
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【動画】一瞬弱く輝いたあと、内部が焦げ始め、煙が立ち上りました。ノドが痛くなる嫌なニオイの煙です |
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【動画】スローモーションで、もう一度(別のLEDです) |
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アノード(LEDのプラス極)端子の根本の樹脂が焦げています。電池に繋がっている間、この部分を中心にフツフツと煙を上げていました |
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今回使用したLEDの場合、8個試して8個とも破壊されましたが、同じ条件でも燃えないLEDはたくさんあります |
電圧はボタン電池と同じ3Vなのに、乾電池の場合は電流が流れすぎてLEDが焼けてしまいました。このような現象を焼損といいます。もちろん、この部品はもう使えません。
家電製品であれば絶対に避けなければならない焼損ですが、我々ブレッドボーダーズは、焼ける可能性を考慮しつつも、疑問に思ったら繋いでみる、というのが基本スタンスです。皆さんが実験するときは、机の上の整理整頓と後片付けを欠かさないでください。燃えやすいものや電気を通すものを実験中の回路の間近に置かないことと、電流が通っている状態の部品や回路を置きっぱなしにしないことが肝心です。それさえ気をつけていれば大丈夫。
通常のエレクトロニクス製品ではまず見られない、あるいは見逃してしまいがちな電子回路の振る舞いを、自分の目で見て体験できるところが趣味の電子工作の面白さの1つです。積極的にいろんな部品をつないでいきましょう。
■■ 注意 ■■
・この記事の回路や部品の使用例は、短時間の実験を目的としたものであり、一般的な利用を想定していません。
・実際に実験を行なう際は、怪我や火災などが起きないよう十分注意してください。
・この記事を読んで行なった行為によって生じた損害はPC Watch編集部および、メーカー、購入したショップもその責を負いません。
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□バックナンバー
(2008年7月17日)
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船田戦闘機、スタパ齋藤、上杉季明によるユニット。電子工作からバンド演奏までさまざまな活動を行なうが、各活動に共通するテーマは“電気が通ること”としている。電子部品・電子回路の玄人ではなく、それらに対して強い興味を抱いている。ブレッドボーダーズは、そんな立ち位置から電子部品・電子回路に触れていくプロジェクトである。 |
PC Watch編集部
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