■夏のボーナス特別企画■ケータイ超/モバイルノート未満、本命はどれ?
6月25日 公開 ケータイ超、モバイルノート未満のデバイスは、ASUSTeKのEee PCより開拓された。それ以前に、OLPCによって低コストをキーにしたエマージング市場の存在が指摘されたとも言える。これまでにもソニーの「VAIO Type U」や富士通の「LOOX U」など、同様に小型なデバイスは発売されている。しかしそれらは小型だが低価格ではなかった。 Eee PCによって発見された市場に対して、多くのシステムビルダーが新製品を投入しつつある。性能については、Intelの低消費電力なモバイル向けプロセッサAtomがリリースされたことで、ある程度の目処がついた。また、アジア最大のトレードショウ「COMPUTEX 2008」を経て、新製品発表が一段落した面もある。 このあたりで、ケータイ超/モバイルノート未満のデバイスをひとまとめしていこう。
●ネットトップ? MID? 携帯電話とモバイルノートPCの間に属するデバイスには明確に統一された定義がない。各社各様にネーミングしているのが現状だ。
例えば、Microsoftは「UMPC」や「ULCPC」といった枠組みを提唱するが、Intelは「Nettop(ネットトップ)」や「MID(Mobile Internet Device)」を提唱する。どちらもセグメントを2分しているが、液晶サイズやメモリ容量などで恣意的に分類している。簡単に分類する方法は、手にもって文字入力を行なうか(ハンドヘルド)、否かに着目することだ。この基準を携帯電話より大きく、かつ12.1インチ未満の液晶を備えるデバイスに適用すればよい。 とはいえ、ULCPCとネットトップについては低価格を志向していると考えて間違いない。MicrosoftはULCPCの条件として10.2型以下の液晶ディスプレイ、16GB SSDか80GB HDD、最大1GB メモリ、1GHz以下で動作するシングルコアCPU(あるいはAtom N270かCeleron 220、AMD Geode LX、VIA C7-M(ULV)のいずれか)、DirectX 9対応のグラフィックス機能、タッチスクリーン機能を持たないことを挙げている。 本稿では、とりあえず、テーブルやひざ上に置いて利用するものをネットブックとし、手に持てるサイズのものをMIDとして話を進める。 ひとまず、各デバイスの代表的な仕様を下表にまとめたので眺めてもらいたい。いずれも発売済みか、近日中に発売が予定されている製品だ。CPUや解像度の違いや、モバイルノートPCに迫る重量など、それぞれのイメージをつかんだところで各モデルを紹介していこう。
●HP 2133 Mini-Note PC
ヒューレットパッカードのHP 2133 Mini-Note PCは「フル機能のミニノートPC」を謳うネットブック。CPUはVIA C7-M ULVで非力だが、WXGAの解像度や120GB HDDなど、総合的に他のマシンを上回る性能を備えるほか、アルミとマグネシウム合金のボディとしたことで堅牢性と一定の高級感を獲得している。 加えて、上位モデルでは2GBメモリ搭載や、Windows XPへのダウングレードが可能なのもポイント。上位モデルには3セルと6セルのバッテリが標準で付属する。ただし、重量が3セルバッテリで1.27kg、6セルバッテリで1.44kgとなっており、通常のモバイルノートPCよりも重たいのが弱点。とはいえ、上位モデルは性能/価格ともに手ごろにまとまっているため、本命視するユーザーも多い。 キーボードは17.5mmのピッチを確保。タッチパッドの誤操作を防止するスイッチを備えるなど、文字入力の快適性向上に余念がない。なお、本製品は6月上旬発売から下旬発売に延期されていたが、24日に予約が開始され30日に出荷される。
□日本HPのホームページ ●Wind Notebook
MSIのWind Notebook U100は、Atomを搭載したオーソドックスなネットトップ。解像度が1,024×600ドット(WSVGA)の10.2型液晶を採用し、キーボードのピッチを17.5mmとすることで、一般的なモバイルノートPCと同程度の打鍵感を実現しているのがポイント。 スペック面ではWindows XP搭載で、512MB/1GBメモリを搭載。標準メモリは少ないが、Vistaよりも軽快に動作するXPの動作ならば十分だろう。また、ほかのネットトップは1.33GHzのAtomが主流だが、本製品は1.6GHz搭載によるアドバンテージがある(COMPUTEX TAIPEI時の情報)。 また液晶も他より大型な10.2型液晶を採用。Eee PCよりも一回り大きくなっているものの、重量は1kgに抑えている。Wind Notebookは6月末の発売が予定されていたが、現在まで正式なアナウンスは行なわれていない。また、今回掲載した仕様は海外向けのもので、国内向けの仕様は公開されていない。
□エムエスアイコンピュータジャパンのホームページ ●Eee PC
ASUSTeKのEee PC 4G-X/4G-XUは、実売5万円を切る低価格路線で投入されたネットブック。発売からすでに半年が経過しようとしており、パフォーマンスで一歩劣るものの、フラッシュドライブ採用による高速起動や910gの重量(4G-XU)など、キーとなるスペックは色あせていない。店頭で普通に購入できる点も評価したい。 インターフェイスは、USB 2.0×3やSDカードスロット、ミニD-Sub15ピン、Ethernet、IEEE 802.11b/g対応無線LANを備えるなど充実している。そのほか、旧モデルと合わせて5色のカラーバリエーションもポイントだろう。4G-X/4G-XUは7型の液晶を採用しているが、海外では8.9型液晶を搭載した「Eee PC 901」シリーズも出荷中。国内にも投入される見込みのため、7インチの液晶が不満な場合は、待つという選択肢もある。
□ASUSTeK Computerのホームページ ●SC3KP06A/SC3WP06A 工人舎のSC3KP06A/SC3WP06Aは、7型液晶を搭載したコンバーチブルタイプのネットトップ。差額プラス1万円でGPS搭載モデルを、差額プラス2万円でOffice Personal 2007搭載モデルをラインナップする。 前モデルに当たる「SH」シリーズと比較して、液晶周りのボタンを取り除くことで小型/軽量化しながらも、キーボードの幅を十分にとり打鍵の快適性を確保したという。加えてCPUにAtomを搭載し、3.2時間の駆動時間を実現した。約798gの重量は、今回取り上げたネットトップの中で最軽量となっている。 インターフェイス面では130万画素Webカメラのほか、Express Card/34スロット、USB 2.0×2などを備え、拡張性も高さをコンパクトにまとめている。オプションの4セルバッテリで駆動時間を約6.4時間に延長可能。国内メーカーならではの仕様として、ワンセグチューナーも搭載する。
□工人社のホームページ ●SX3KP06MA/SX3WP06MA 工人舎のSX3KP06MA/SX3WP06MAは、光学ドライブを搭載した2スピンドルのコンバーチブルPC。2スピンドルの筺体で1.25kgの重量と4.2時間の駆動時間を実現しながらも、モバイルPCとして低価格な108,800円という設定になっている。差額プラス21,000円でOffice Personal 2007搭載モデルもラインナップする。 CPUはAtom Z520(1.33GHz)を搭載し、ラージバッテリ搭載時の駆動時間は約8.2時間。ほか、Express Card/34スロットやUSB 2.0×2、ミニD-Sub15ピンなど必要最低限のインターフェイスを搭載する。このほか、ワンセグチューナを内蔵する。 重量は1.25kgということで、並みのモバイルPCと同等かそれ以上だが、付属のACアダプタは小型軽量のものとなっている。
●D4
ウィルコムのD4は今回取り上げるなかで唯一のMID。スライド式のボディにWindows Vista Home Premiumを搭載する。分割購入時の価格は頭金39,800円+3,700円×24回だが、「W-VALUE SELECT」プランで1,600円×24回の割引が適用され、実質価格は90,200円となる。 ハードウェアは一般的なPCに準じるが、W-SIMを内蔵し通信/通話が可能。本体サイズは約188~192.3×84×25.9mmで、携帯電話より一回り大きなサイズ。重量は約470g。スライド式ながらキーボードを出した状態で液晶部を手前に立てることが可能で、ノートPCのように卓上において操作できる。キーピッチは約12.2mm。 インターフェイスは、IEEE 802.11b/g無線LAN、Bluetooth 2.0+EDR、microSDカードスロット、ワンセグチューナ、198万画素Webカメラ、USB 2.0(miniAB)、クレードル端子を装備するなど、小型筺体のわりに充実している。またオプションのクレードルで、Ethernet、ミニD-Sub15ピン、USB×2なども利用可能。
□ウィルコムのホームページ ●このほか 発売時期は明確にされていないものの、ASUSTeK「Eee PC 901」とAcer「Aspire One」の国内投入がアナウンスされている。また、Dellはワールドワイドのスケールメリットを生かし、日本へも「Inspiron Mini」を投入するとみられる。Gigabyte「M912」については7月に台湾で発売され、その後ワールドワイドに展開されるとしている。また、Everexの「CloudBook CE1210J」は流通量が少ないため参考として掲載する。
●まとめ 今回紹介したいずれの製品もワールドワイドで人気を博しており、国内への出荷は限定的になる見込みだ。また、Atom搭載モデルについてはIntelが出荷を絞っているという観測があり、当面の間は製品が潤沢に供給されることはないと見ていい。ただし、SilverthorneベースのAtom Z520を搭載した工人舎の製品の発売日がアナウンスされたことから、他社のAtom Z520搭載マシンの発売も順次アナウンスされると見られる。 ネットトップはモバイルノートPCよりも小型化したことで、キーボードもサイズ縮小を免れない。また、筺体デザインについてもコストの削減を目的として、高価なモバイルPCと比較してチープな質感となっているものが散見できた。各社とも打鍵感の向上を図ると共に、デザインについても腐心しているようだが、キーボードについてはピッチに加えて、ストロークの浅さなどによりスムーズな打鍵が苦しいものもある。そのあたりのルック&フィールについては、実際に店頭で確認し、納得した上で購入することをお勧めする。
□ボーナス特集~北京五輪に備える~ (2008年6月25日) [Reported by matuyama@impress.co.jp]
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