既にニュースがあるように、バッファローは手のひらサイズの1TB NASである「LinkStation Mini」を発表。おまけに価格を発表時の89,250円から77,000円に改定するといった動きもあり、早速好評なようだ。内部に2.5インチの500GB HDDを2台搭載し、RAID 0/1の構成が可能で、USB HDDやUSBプリンタ、UPSとの連動まで可能という多機能ぶりを誇る。既に清水理史氏のレビューもあるが、改めて紹介したいと思う。 ●まさしく手のひらサイズ 今回はまだ出荷前のサンプルを借用した関係でパッケージは無いままである(写真01)。その本体だが、まさしく手のひらサイズ。横に並べたのが2.5インチのSATA HDDだから、そのサイズの小ささがおわかりいただけよう。背面はこんな具合(写真03)で、電源スイッチとUSB、ACアダプタポート、Ethernetが並ぶ。Ethernetの下の突起は、ACアダプタケーブルの抜け防止である(写真04)。また底面には本来シリアルナンバーやMACアドレスのシールが貼り付けられるようだ。稼動中は、こんな感じ(写真06)にLinkStationのロゴが電源ONであることを、グリーンLEDがEthernetがLink/Activeであることを示す。 ところで本機の電源スイッチ、トグル型ではあるが実はソフトスイッチである。つまり、これをOFFにしたからといって、いきなり電源が切れる訳ではなく、ちゃんとシャットダウン処理を行なってから電源OFFになるのはなかなか丁寧である。またここの“Auto”という項目は、こちらで説明したPC連動機能である。これをONにしておけば、(LinkStation Miniに同梱される)NASNavigator 2がインストールされているクライアントが1台でも立ち上がっていると自動的に電源が立ち上がり、全てのクライアントがOFFだと自動的にシャットダウンされるという仕組みだ。
●性能的には十分 さて、インストールは至極簡単である。マニュアル通りにインストールすれば、NASNavigator2がインストールされ、ここでLinkStation Miniが参照できる(写真07)。設定画面はここから開くことが可能だ(写真08)。 Web設定画面は、従来のLinkStationの流れに沿ったもので、使い勝手も悪くない。LinkStation Miniで特徴的と思われるものだけをいくつかピックアップしておくと、RAID構成が可能ということでRAIDアレイ情報が追加されているほか(写真09)、当然RAID設定や障害時対策(写真10)、Webアクセス(写真11)などだろうか。その他の項目は、ほぼ従来の製品と変わりない。強いて言えば、メンテナンスのシャットダウン画面(写真12)に、再起動はあってもシャットダウンそのものが無いのはちょっと不便という程度だろうか? ちなみにUSBであるが、USB接続でサポートしているのはバッファローのUSB HDDに限るという旨がマニュアルには記載されている。が、実際に繋いで見ると、案外にその他の製品でも繋がってしまうあたりは、割と融通が利いており嬉しいところだ(写真13)。
さて、気になるのはやはり性能である。Gigabit Ethernetを搭載したことで、どの程度のスループットが出ているのかはちゃんと確認しておきたいところだ。ということで、まずはCrystal DiskMark V2.1を使ってアクセス性能を比較してみた。テストは CPU:Core 2 Quad Q6600 といった構成のクライアントにIntel PRO/1000 PT Desktop Adapterを装着して、ここにLinkStation Miniを接続している。 さて、まずはRAID 0/RAID 1構成を取った場合と、USB接続で(クライアントと同じ)WD5000を接続した場合、それと比較対照でローカルHDDをアクセスした場合の結果である。 ご覧の通り、10MB/secの大台は超えているとは言え、あまり芳しい性能とは言いにくい。特にRAIDでもほとんど性能が出ていないのはちょっと残念なところ。バックアップ程度には十分でも、普段からドライブをマウントするにはやや力不足にも感じる。 ただ、これはEthernetのフレームサイズを1,518Byteにした場合の話。LinkStation Miniはジャンボフレームをサポートしており(写真18)、最大9,694Bytesまでフレームサイズを拡大できる。同様の設定はIntel PRO/1000 PTでも可能である(写真19)。そこで LinkStation Mini:9,694Bytes に設定して同じテストを行なったところ といった具合にスコアは倍増した。この位のスピードが出てくれると、体感速度的にはちょっと前のIDE HDDといったところで、かなり快適である。USB HDDについても、ほぼRAID 0/1と遜色ないスピードが出ており、USB HDDを常時接続して容量を増すという使い方もアリだろう。ちなみにUSB HDDをクライアントに直接接続した場合のスピードは
といった結果になっており、先の結果がほぼUSB HDDの性能に近いところまで達している事がお分かり言えよう。
ちなみにFTPであるが、RAID 0を構成したLinkStation Mini上に対して2.1GB(2,257,059,328Bytes)のファイルの送受信を、やはりフレームサイズが1,518Bytesの場合と9,694/9,014Bytesの場合で行なった結果は
となった。ジャンボフレームを使っても送信が高速にならない理由はLinkStation MiniのFTPサーバー側の実装を見ないと判断できないが、受信に関してはほぼCrystal DiskMarkと同じ傾向を示している。察するに、パケット数が多くなると、処理が飽和してしまい性能が上がらないように見える。それでもジャンボフレームを使えば30MB/sec内外の性能が出るわけだから、価格を考えれば十分優秀とも言えるだろう。 ●ネジが1つも無い!
というわけで性能も確認できたところで、さっそく分解してみた。なかなか感動できるのが、組み立てには一切ネジを使っていないことだ。まずケースであるが、蓋ははめ込み式になっており、爪を緩める形で取り外す(写真24)。HDD 2台に挟まれるようにコントローラが位置しており、その外側を2枚のアルミシャーシで挟み込む形状がわかる(写真25,26)。アルミシャーシは放熱も兼ねていると思われる、やや肉厚のアルミ製で(写真27)、HDDとコントローラの間に僅かな隙間を作るように配慮されている(写真28)。
さてそのコントローラであるが、作りは至ってシンプルであり(写真29)、裏面もほとんどパーツは配されていない(写真30)。主要なパーツであるが、まず中央に位置するのがMarvell 88F5182。以前の玄箱PROと同じものである。メモリもやはり同じエルピーダのものだった(写真31)。またフラッシュメモリも、同じブート用の2Mbit品が搭載されていた。GbEのPHYも、やはり玄箱PROと同じ(写真34)だった。 細かいところでは、恐らく88E5182の電源供給回路用にMarvellのMVPG30x(写真35)が、2台のSATA HDDの電源供給回路用にMVPG31(写真36)がそれぞれ用意されている。このうちMVPG30xに関しては玄箱PROでは別のもの(88PG847x)を使っていたが、MVPG31に関しては同様となっている。両者の差は、恐らく88E5182の駆動周波数(と、それに伴なう消費電力)や周辺回路の差(≒2Gbフラッシュの有無など)に起因するものと思われるが、逆に言えば異なるのはその程度であり、コントローラ基板の形状こそ大きく異なるものの、基本的には玄箱PROと同じ設計を踏襲しているものと思われる。
ちなみに搭載されるHDDはやはりHGSTの5K5-500(TS545050KTA300)(写真37)であった。で、ここまで分解すると、「んじゃ他のHDDは搭載できるの?」という疑問は湧くところ。ためしに3.5インチのSATA HDDが取り付けられるかをやってみたら、理論上は取り付け可能(写真38)だったが、当然ながらアルミシャーシが使えないので、別途機械的位置を保持できる方法を用意する必要がある。これは余りに馬鹿馬鹿しいので、もう少し現実的なところで、同じHGSTの2.5インチ120GB SATA HDDを2台用意し(写真39)、これを組み込んで立ち上げてみた。これで立ち上がれば、HDD故障時にメーカー修理の必要がなくなるのだが、世の中そうは甘くない。色々試してはみたものの、全く起動しなかった(写真40)。
●持ち運び用NAS? そんなわけで、玄箱ではないので中身を交換とか考えてはいけないが、そうではなくて普通に使う分には、なかなか快適な製品だった。消費電力は待機時に実測値で3W、HDDアクセス時が6W~10W、一番消費電力が高かったのはブート時で、ピークは12W程度。内部のHDDそのものは相応に熱くなるものの、絶対的な消費電力は少ないから、空冷でもちゃんと連続運用できるレベルだった。騒音も、2.5インチHDDということもあってか、アクセス時もほとんどわからない程度。 また本体、電源アダプタともに小さいので、必要なら持ち運びもできる。とはいえ、持ち運びを前提とした、衝撃吸収構造にはなっていないので、移動時に適切な緩衝材で保護するのはユーザーの責任である。故障時にはメーカー修理になってしまうから、あんまり過度の持ち歩きにはお勧めしにくい感じだ。こうした用途には、やはり対衝撃構造を持ったUSB HDDの方が向いているように思う。 この製品でネックがあるとすれば、内部のプロセッサの性能がやや不足気味で、ノーマルフレームサイズだとやや性能が頭打ちになることか。気になる向きは、やはりジャンボフレームでの運用をお勧めしたいところだ。 □バッファローのホームページ (2008年4月2日) [Reported by 槻ノ木隆]
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