工人舎のSAシリーズは、AMDのGeode LXを搭載したミニノートPCで、で最下位モデルの「SA5SX04A」で69,800円とかなり安価に設定されているのが特徴となっている。 レビューに関してはすでにHotHotレビューで取り上げた通りだが、今回は上位モデルで120GBのHDDを内蔵した「SA5SX12A」(79,800円)を分解して内部構造に迫っていきたい。 ●分解の手順は意外と難しい、HDD交換などはそれなりの覚悟が必要
今回SA5SX12A(以下本製品)を分解するにあたり、特に資料などはなく気軽に分解を始めたのだが、実のところ結構時間がかかった。というのも、外側から見えるネジを全部外してみたのだが、それでも外れず、どうやらどこか内部でまだネジ止めされている感じであることはわかったのだが、そのネジの位置が全くわからずかなり戸惑った。 途中で、ディスプレイモジュールの下にある化粧パネルを外すところまではわかったのだが、その後キーボードをなかなか外すことができず、結局キーボードと下部のボディを繋いでいるプラスチック部分を破損してしまった。その結果、キーボードがボディに両面テープでとめられていることがわかり、まずキーボードを外したあとでキーボードの下にあるネジを外せばよいことがわかった。 その結果、下記のような手順で分解していけば、パネルやボディなどを傷つけずに分解できる。
ポイントは、キーボードがネジ止めでなく両面テープでとめられていることだ。最初キーボードを外そうとすると、意外と強く止まっているので、見えないネジで止まっているのかと思ったのだが、実際には両面テープで止まっているだけなので、ある程度覚悟を決めて外すしかない。なお、キーボードと本体はフレキケーブルで接続されているので、キーボードを外す場合にはこのフレキケーブルを傷つけないように気をつけて作業を行なうようにしたい。 これは余談だが、日本のノートPCベンダーには、ぜひモバイルPCの分解手順を公開して欲しいものだ。特にHDDは保証期間が終わった後に壊れる可能性が高く、それだけを取り替えれば直るという場合には、ユーザー側で交換したいというニーズはあるはずだ。ちなみにデルやレノボといった外資系のPCベンダーでは、(英語の場合も多いが)サービスマニュアルがきちんと公開されており、それを参照しながら作業すればユーザー側でパーツの交換などができるようになっている。 メーカーとしては、修理はメーカーでやって欲しいということだと思うが、それを選択するのはユーザーであっていいはずだ。もちろん、欧米に比べて日本では“自己責任”という言葉に対する理解が足りていないという状況も否定できないとは思うのだが、ぜひ検討していただきたいものだ。 もちろん、負け惜しみでしょ? と言われると、そういう面は否定できないのだが……。
●アンテナなどは必要最小限に抑え、低コストを実現 さて分解し終わった本製品だが、細かく見ていくと随所に低コスト化のための努力の跡が見て取れる。例えば無線関連のアンテナだ。最近の製品では無線LANのアンテナは2本が最低で、3本の場合もでてきているのに対して、本製品では1本のみとなっている。確かに、アンテナが増えれば受信状況はよくなるが、その分コストアップにつながってしまう。コストとのバランスを考えれば、納得のいく選択だろう。 また、本製品はBluetoothも搭載されているが、外部アンテナは利用しないアンテナ内蔵タイプのモジュールになっている。もっとも、Bluetoothは最近ではこうしたアンテナ一体型のモジュールを利用するのが一般的になってきている。Bluetoothは無線LANと同じ2.4GHzを利用しているので、外部アンテナを出すと無線LANアンテナケーブルとの取り回しが難しくなるし、何よりもアンテナケーブル分のコストが増えてしまうからだ。 低コスト化という意味では、ファンが1つも利用されていないのも1つの特徴と言える。CPUであるGeode LXにはヒートシンクがついているだけで、ファンは1つも用意されていない。これは、Geode LXが非常に低消費電力で、ヒートシンクだけで充分放熱できるためだ。なお、ヒートシンクはボディの骨格に接地しており、本体全体に熱を逃がすような設計になっている。 なお、本製品はファンは1つもないが、モーターという意味ではHDDに1つ内蔵されている。逆に言えば、音を発する駆動部分はHDDだけということができ、HDDの動作音を除けば非常に静かであるのも本製品の1つの特徴と言える。また、ノートPCが故障する箇所としては、HDD、ファン、液晶あたりがベスト3だと思うのだが、特にファンはよく壊れる部品の1つといえ、それがないだけ信頼性の意味でも安心できると言えるのではないだろうか。
●Geode LXを採用したことがマザーボードの低コスト化に大きく貢献 さまざまな低コスト化の工夫がされているSA5SX12Aだが、中でもマザーボードはやはり最大の低コスト化の理由だと考えることができる。なぜかと言えば、ノートPCのコストの中でマザーボードは2割程度を占めると言われており、ここを低価格化することでより安価にすることができるからだ。 すでにレビュー記事でも触れたとおり、CPUにはGeode LX 800が採用されている。Geode LX 800は、AMDが家電向けなどに提供しているCPUで、動作周波数は500MHz、TDPは3.9Wと非常に低くなっている。しかも、このGeode LX 800は、1チップでCPU、メモリコントローラ、GPUなどを内蔵しているSoC(System On a Chip)になっており、サウスブリッジを追加するだけでPCを構成することができるのだ。2チップで済むこと、そして元々家電向けであることなどからこのGeode LX 800は非常に安価に提供されているのだと推測することができる かつ、2チップですむことはマザーボードへの実装面積を減らすことができるので、マザーボード自体の大きさを小さくすることができる。Geode LX 800の場合、SoCが40×40mm、サウスブリッジが23×23mmとなっており、2つのチップ合計で2,129平方mmとなっている。ちなみに、IntelのCore 2 Duoの場合、CPU+ノース+サウスで3,592平方mmとなるので、その小ささがわかっていただけるだろうか。 細かなところでは、EthernetコントローラはRealtekのRTL8100CL、オーディオチップには同じくRealtekのALC655を採用している。カニさんマークで知られるRealtekのEthernetコントローラやオーディオコントローラはコストパフォーマンスに優れていることで知られており、そうしたところにも本製品の徹底的な低コスト路線を伺うことができる。
●低コストを意識した設計で、Webサービス中心の利用方法のユーザーに新しい選択肢 以上のように、本製品は非常に低コストを意識した設計になっている。そのため、一般的なノートPCに比べると制限が多いのは事実だろう。しかし、一般的なモバイルノートが20万円弱と高めな価格設定がされているのに対して、本製品は79,800円と破格の価格設定がされており、低コスト設計はそのトレードオフだと考えれれば充分に満足がいくのではないだろうか。 レビューでも触れたが現行のベンチマークが動かないぐらい非力なPCだが、Webブラウザを利用してYahoo!やGoogle、Windows LiveなどのWebサービスを利用するには十分といえ、すでに1台目のフルスペックPCを持っていて、2台目はWebさえ使えればよいというユーザーに新しい選択肢がでてきたということを素直に歓迎したい。 □関連記事 (2008年3月24日) [Reported by 笠原一輝]
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