MicrosoftのOffice Live Small Businessが14カ月間という長いベータ期間を終え、正式にサービスインした。ただし、Outlookとの連携という、もっとも重要な仕様の1つを積み残したままのスタートとなってしまっているのが残念でならない。 ●Live戦略とSoftware + Service Microsoftがここのところ熱心にアピールしているスローガンにSoftware + Serviceというものがある。世の中のトレンドは、Software as a Services(SaaS)が優勢だが、Microsoft としてはデスクトップアプリケーションの存在を否定せず、クライアント/サーバー/サービスという図式を強調する。それがSoftware + Service戦略だ。 その戦略の一環としてサービスインしたのが「Office Live Small Business」だ。スモールビジネスがターゲットとされているが、実際には、個人や仲間で使っても便利なものとなっている。電子メールや予定表はもちろん、ウェブサイトの提供、ドキュメントの保存スペース、Wiki、Blog、チームディスカッションなど、一般的に必要だとされているサービスがスイートとして揃っている。しかも、これらの基本的なサービスは、すべて無料で提供されている。ちなみに、これらのサービスは、Microsoft Windows SharePoint Servicesによって提供され、そこに既存のLiveサービスが付帯するような仕組みだ。 サービスの利用にあたっては、Windows Live IDが必要になる。このIDは、新たに取得してもいいし、自分が普段使っている既存のメールアドレスを使ってもいい。また、有料で自分専用のドメインを取得してもいい。自分の既存メールアドレスを使った場合は電子メール機能は提供されないが、~@live.jpなどのIDを新たに取得した場合には電子メールと予定表を利用できるようになる。 以前にも書いたが、複数のPCやモバイル端末を使い分けるユーザーにとって、メールと予定の管理は悩ましいテーマだ。メールに関しては、POPで受信してもサーバーに残したままにするとか、POPを使わずIMAPを使うといった工夫ができる。所有しているPCの数だけGmailアドレスを取得し、すべてのアドレスにメールを転送し、個々のPCに受信させているユーザーの話も聞いたことがある。でも、予定表ばかりはそうもいかず、仕方なく紙の手帳で管理しているユーザーも少なくない。 ●1年近く放置されたままの不具合 複数の端末を所有し、どの端末で予定を追加、修正しても、すべての端末にその結果が反映されるというのはモバイルユーザー共通の願いだ。常時、インターネットに接続されていて、MicrosoftがいうところのServiceを確実に受けられるのであれば、すべてをServiceにまかせてもいいかもしれない。だが、モバイル端末は、オフラインとなる時間も長く、どうしても、予定表のコピーをローカルに持つ必要がある。 Microsoftは、そのようなユーザーのために、Outlook Connectorというアドオンを用意した。Microsoft Office標準の個人情報管理ソフトはOutlookで、電子メールや予定表、連絡先といった各種の情報を管理することができる。Outlook ConnectorをOutlookに組み込むことで、特定のLive IDとOutlookを関連付け、サービス側のメールや予定表データをローカルPCと同期させ、オフライン時にも参照、修正、追加等ができるようになるというものだ。 Outlookは、複数の電子メールアカウントを管理でき、それぞれのアカウントで受信したメールは、どれか1つのアカウントの受信トレイに集めることができる。Outlook Connectorが関連付けたLiveアカウントは、アカウントの1つのように扱うことができるので、受信したメールをそこに集めるように設定しておけば、受信したメールがすべてLiveメールにも反映されるようになる。所有しているすべての端末で同じ設定をしておけば、結果として、すべての端末の受信トレイ、送信済みアイテムを同じに保つことができるようになる。 一方、予定はどうかというと、Outlook Connectorでは、予定の同期をサポートしているものの「この予定表に追加しようとしている予定はMSNカレンダーと同期していません。MSNカレンダーの同期を利用できるのは、有料サービスに加入しているユーザーのみです」というダイアログボックスが表示され、MSN 9 Premiumの購入ページに案内される。これは月額1,344円と、ちょっと高額なサービスだ。 Micorosoftでは、それとは別にWindows Live Hotmail Plusというサービスを用意している。こちらは年額2,520円と、まずまずリーズナブルな価格で、保存容量が10GBとなり、送信メールにバナー広告が表示されなくなったりするほか、Outlook Connectorを使ってOutlookとの連携ができるようにになると記載されている。そして、リンクされたOutlook Connectorのダウンロードページを開くと、有料サブスクリプション アカウントの場合、Outlook Connector を使うと、以下の追加機能を利用できるようになります。
11月になって、Windows Liveカレンダーのベータサービスが開始されたため、もういちどサービスを契約した。今度こそ大丈夫だろうと思ったからだ。しかし、その願いもかなわなかった。カスタマーサポートでは、その問題が発生することを認識しているが、その時点ではどうしようもないということだった。 Microsoftのオンラインサービス事業部のPR担当に問い合わせたところ、対応を進めているところということだったので、今回は、サービスを解約せずに維持することにした。そして、この3月、Office Liveが正式サービスインしたので、期待して試してみたところ、予定表はやっぱり同期ができないままだ。 配布された評価ガイドにもしっかりカレンダーの同期ができると記載されている。記者会見の会場でも聞いてみたが、その問題は認識しているというし、フィックスに向けて努力を続けているともいうが、なにやら奥歯にもののはさまったような言い方だ。1年になろうとしている不具合を、未だに放置しているというのは、いったい何なのだろう。しかも、Office Live Small Businessの予定表リンク先は、MSNカレンダーとWindows Liveカレンダーベータが混在していて余計にややこしくなっている。これでは使いものにならない。Office Live Small Businessの崇高な志も、こんなつまらないことで台無しになってしまっている。つまり、Microsoftは予定表に関して、まともなサービスを提供する気がまったくないととられても仕方がないだろう。 ●MicrosoftはGoogleに白旗をあげるのか PCのOutlookやWindows Mobile端末のPocket Outlookの予定表をWeb上の予定表サービスと同期させたいというニーズが確実にあることは、ちょっと調べてみればわかる。たとえば、Googleカレンダー用のOutlook同期ユーティリティは、フリーウェア、シェアウェアをあわせれば、相当の数にのぼる。折しも、先週、米Googleは、純正の同期ユーティリティをリリースした。 □関連記事 英語版だが、とりあえず使えそうなので試してみたところ、どうも同期が不完全で、同期されない予定が散見される。何度かチャレンジしても、不具合を誘因する特定の条件を見い出すことができず、使用を断念した。日本語版のリリースを待って、また試してみることにしよう。 でも、Googleは、確実に、そのニーズがあることを把握しているし、そのための努力もしているのだと思う。ユーザーのニーズを察知しても、それを実現に移すには、大きな舵取りが必要で、スピーディには動けないほど、Microsoftは巨大化してしまったということなのだろうか。Software + Serviceをアピールするのなら、デスクトップアプリケーションとの連携くらいは、最低限の機能としてきちんとサポートしてほしいし、それができなければ、ブラウザがあればWindowsもOfficeもいらないというトレンドが優勢となるだろう。そうなれば誰もMicrosoftを必要としなくなる。つまり、Googleに負けるということだ。 □関連記事
(2008年3月14日)
[Reported by 山田祥平]
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