今回は、2008年春モデルの中から、個人向けのスタンダードモデルとなる「HP Pavilion Notebook PC dv6700/CT」(以下、dv6700/CT)を取り上げる。 ●新デザイン「mebae(芽生え)」を採用 HP Pavilion Notebook PCシリーズは、従来より優れたデザイン性が大きな特徴となっている。そのデザインのコンセプトとなるのが「ZEN-design」と呼ばれているものだ。その名前からもすぐにピンと来るとは思うが、ZEN-designでは“禅”をモチーフとしたデザインを採用している。 従来のZEN-designでは、禅寺の石庭の砂紋をモチーフとした「Samon(砂紋)」、池の水面に拡がる波紋をモチーフとした「Shizuku(雫)」、雪が降り積もる様をモチーフとした「Sekkei(雪景)」の3種類が用意されていたが、dv6700/CTでは新たに、大地から草木が一斉に芽吹く様をモチーフとした「mebae(芽生え)」という新デザインが採用されている。 下の方は直線的に引かれた線が、上に行くに従って左右に無規則に拡がり、躍動感や力強さが感じられる。表面は光沢仕上げとなっているため高級感もある。しかもこのデザインは、液晶背面の天板部分にとどまらず、キーボードのパームレスト部分にも及んでいる。それも、タッチパッド部分にまでも装飾を施すという凝りようだ。 ちなみに、天板部分のベースカラーが明るい茶色のため、筆者は稲穂が頭を垂れる秋を強くイメージした。春モデルということでグリーン系のカラーでも良かったように思うが、見た目のインパクトの強さはもちろん、一般的なノートPCの固定概念を崩すデザインは非常に好感が持てた。 dv6700/CT以外のHP Pavilion Notebook PCシリーズ2008年春モデルでは、音などが放射線状に広がっていく様をモチーフとした「hibiki(響き)」、潜在的なエネルギーが臨界に達し、一斉に噴出する様をモチーフとした「ibuki(息吹き)」というデザインも用意されており、mebaeと合わせて3種類のデザインが追加されている。またdv6500/CTでは、新デザインのmebaeだけでなく、従来からのデザインであるShizukuも選択可能だ。
●CPUなどの基本スペックを強化 dv6700/CTは、価格が比較的安価に抑えられたスタンダードA4ノートに位置付けられているが、その基本スペックは充実している。 まずCPUは、Celeron 540およびCore 2 Duo T7250/T7500に加え、45nm High-KプロセスによるCore 2 Duo T9300をBTOメニューに追加。これにより、ハイエンドノートに匹敵するパワーを実現可能となった。 また、チップセットはIntel GM965 Expressがベース仕様となるが、Intel PM965 ExpressにGPUとしてNVIDIA GeForce 8400M GSをセットにした組み合わせも選択可能となっている。GPUの搭載により、最新3Dゲームを快適にプレイするには少々厳しいものの、Windows Vistaの動作はもちろん、動画再生支援機能も利用できるようになることで、マルチメディア能力が向上することは間違いない。 そして実際に、GPU搭載時には、BD-ROMドライブまたはHD DVD-ROMドライブが選択可能となり、次世代DVDメディアの高品質映像を楽しめるようになる(試用機にはBD-ROMドライブが搭載されていた。また、HD DVD-ROMドライブの選択肢が今後も継続されるかは不明)。液晶パネルの解像度はフルHD解像度(1,920×1,080ドット)ではないものの、HDMI端子を標準で用意しているため、フルHD対応のTVに接続するなどすれば、本来の解像度を損なわずに映像を楽しめる。スタンダードA4ノートに位置付けられているモデルにもかかわらず、BD-ROMドライブまたはHD DVD-ROMドライブが選択できるという点は、十分評価していいと思う。 もちろん、これらに加え、メインメモリ容量(最大2GB)やHDD容量(最大320GB)などの基本スペックは、ユーザーが購入時に自由にカスタマイズできる。BD-ROMドライブまたはHD DVD-ROMドライブの搭載などは標準仕様ではないため、コストを重視したいユーザーも安心だ。
●15.4インチワイド液晶を搭載 液晶パネルは、1,280×800ドット(WXGA)表示対応の15.4インチワイド ウルトラクリアビュー液晶を搭載。表面パネルは、グレア処理の施された光沢パネルとなっており、やや外光の映り込みが気になるものの、非常に鮮やかな発色性は申し分なく、視野角も十分だ。また、輝度も高く、明るさは少々まぶしく感じるほどだ。これなら、デジカメ画像の表示はもちろん、BD-ROMドライブまたはHD DVD-ROMドライブなどを利用したHD映像の再生も、非常に優れた品質で楽しめるだろう。 液晶パネル上部中央には、Webカメラ用のCCD(640×480ドット)を搭載。また、Webカメラ左右にはマイクも用意されており、標準でWebチャットなどに利用できる。 ●フルサイズキーボードと大型タッチパッドで操作性は申し分ない キーボードは、縦横ともに19mmピッチのフルサイズキーボードを搭載。タッチは、堅くもなく柔らかくもなく適度な堅さがあり、しっかりとしたクリック感もあって、デスクトップ用キーボードに近い使用感となっている。筆者個人は、比較的軽めのタッチのキーボードが好みではあるが、それでもdv6700/CTのキーボードは非常に扱いやすく感じた。 ただ、Enterキーの右にもHomeやPgUp/PgDnなどのキーが配置されている点はやや気になった。これによって、BSキーの上にInsキーが来ており、キーの打ち間違いも懸念される。これ以外には、ピッチの異なる部分や無理な配列はほとんどないため、できれば改善してもらいたい部分だ。 また、ポインティングデバイスとしては、キーボード手前にパッド式のタッチパッドを搭載している。このタッチパッドはサイズが大きく、非常に扱いやすい。また、パッド中央上部のボタンを押すことで、タッチパッドの機能を切れるようになっている点も嬉しい。A4サイズのノートPCでは、外付けマウスを利用することが多いかと思うが、その場合でもタッチパッドが有効になっていると、予期せぬカーソル操作を引き起こしてしまうことがある。しかしdv6700/CTでは、ボタンでタッチパッドの機能を簡単に切り離せるため、そういった心配はない。 キーボード上部には、静電式の「HPタッチ式コントロールボタン」が用意されており、DVDや音楽CDなどの再生コントロールが行なえる。また、その上部にはスピーカーが配置されているが、HPのノートPCではおなじみのALTEC LANSING製スピーカーを採用しており、ノートPCとは思えないような高音質で再生してくれる。表示品質に優れる液晶と合わせ、マルチメディア能力は優れていると言っていいだろう。 ●有線LANは100BASE-TX対応にとどまる
dv6700/CTに搭載されているネットワーク機能としては、有線LANおよび無線LANが標準搭載となる。ただし、モデルによって機能面に違いがある。 無線LAN機能は、Core 2 Duo搭載モデルではIEEE 802.11a/b/g/nドラフト対応(Intel Wireless WiFi Link 4965AGN)、Celeron搭載モデルではIEEE 802.11b/g対応(Broadcom 4311BG)となる。Celeron搭載モデルで802.11a/nドラフトをサポートしない点は少々残念ではあるが、802.11nドラフトはまだ普及が進んでいないため、実際にはそれほど問題とはならないはずだ。 これに対し、有線LANは両モデルとも100BASE-TX対応にとどまっている。デスクトップPCはもちろん、サブノートクラスのノートPCでもGigabit Ethernetのサポートが広がっていることを考えると、この点は少々残念。せめてCore 2 Duo搭載モデルではGigabit Ethernetを採用してもらいたかった。ちなみに、Core 2 Duo搭載モデルでは、無線LAN機能に加え、Bluetooth機能も標準搭載となる。 無線LAN機能およびBluetoothは、本体手前のスライドスイッチで機能のON/OFFが可能。基本的に持ち歩いて利用するカテゴリーのノートPCではないものの、さまざまな場面での利用を想定し、無線機能をOFFにできるスイッチを備えている点は嬉しい配慮といえる。 ●コスト重視から機能重視まで幅広いユーザーに対応 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトはいつものとおり、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」の3種類。Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。 今回の試用機では、NVIDIA GeForce 8400M GSを搭載していたが、ノート向けGeForce 8シリーズのローエンドモデルということもあり、さすがに最新3Dゲームを快適にプレイできるほどのパフォーマンスではないことがわかる。それでも、3D描画能力はチップセット内蔵機能よりは優れており、Windows Vistaの動作は十分快適。比較的動作の軽いゲームなら問題なく楽しめる。加えて、動画再生支援機能「PureVideo HD」も搭載しているため、Blu-rayやHD DVDも安定した再生が可能。試用機にはBlu-rayドライブが搭載されており、実際にBlu-rayビデオを再生させてみたが、描画が追いつかないなどの問題は全く発生しなかった。 その他のパフォーマンスに関してはほぼスペック通りで、特に弱い部分は存在せず、十分快適に利用できるだけのパフォーマンスが発揮されている。
他のノートPCとは一線を画す斬新なデザイン性がHP Pavilion Notebook PCシリーズの特徴ではあるが、デザイン面だけでなくスペック面にも抜かりがない。しかもdv6700/CTは、販売価格が最小構成で79,800円(HP Directplus価格)から、今回試用したマシンと同スペックでも151,200円(HP Directplusでの発売記念キャンペーン第2弾価格、4月30日まで)と、安価に抑えられている点も嬉しい。インターネットアクセスやビジネス系ソフトの利用、ホビー用途まで、幅広い用途に対応できることも合わせ、デザイン性に優れた家庭用のメインノートPCを探している人におすすめしたい。 □日本ヒューレット・パッカードのホームページ (2008年3月12日) [Reported by 平澤寿康]
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