CeBIT 2008現地レポート【Intel編2】 Centrino2/Centrino Atom/4シリーズチップセット説明会
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Intel モバイルプラットフォーム事業本部 コンシューママーケティングディレクター カレン・レジス氏 |
Intel モバイルプラットフォーム事業本部 コンシューママーケティングディレクター カレン・レジス氏は、2008年の第2四半期に投入を予定している次世代モバイルプラットフォームのMontevina(開発コードネーム)について説明を行なった。Montevinaはすでに初日の記者会見においてブランド名が「Centrino2プロセッサー・テクノロジー」になることが明らかにされており、内容に関してもほぼ初日の内容と同じだった。
しかし、追加の情報として同社が展開しているモバイル向けのCore 2 Extremeに関してのアップデートが行なわれた。すでに1月のInternational CESではPenrynベースのCore 2 Extreme X9000が発表されており、市場への投入も始まっている。このモバイル向けCore 2 Extremeは、ゲーミングPCと呼ばれるハイエンドゲーマー向けのノートPCをターゲットにした製品で、欧米で盛んに行われているLANパーティのようなゲーム大会にPCを持ち込んで勝負するハイエンドゲーマーをターゲットにした製品だ(このため、LANパーティがあまり盛んではない日本ではそんなに注目されていないのだが…)。
レジス氏によれば「今年(2008年)の半ばにリリースされるMontevinaプラットフォームの投入にあわせて、Core 2 Extremeに関しても新しいSKUを投入する。さらに今年後半にはクアッドコアのCore 2 Extremeを投入していく事になる」とのことで、今後もハイエンドゲーマー向けのラインナップを拡張していくという姿勢を明らかにした。
さらに、そうしたゲーミングノートPC向けに、新しいDDR3 SO-DIMMの仕様とユーティリティを提供していくことを明らかにした。現在IntelはデスクトップPCのDDR3モジュール向けに、XMP(eXtreme Memory Profile)というメモリモジュールの設定を書き込むROM(SPD)の拡張仕様を定めており、対応メモリがメモリモジュールメーカーなどから発売されている。XMPを利用することで、メモリに関する知識がないユーザーでも、最初から書き込まれている設定にするだけで手軽にメモリをオーバークロックできるようになっている。今回レジス氏が明らかにしたのは、そのノートPC版で、ノートPC用のSO-DIMMを手軽にオーバークロックできるようになる。
また、デスクトップPCのハイエンド製品X38/48など向けに提供されているオーバークロックツールのIntel Extreme Tuning UtilityもノートPCにも提供されることを明らかにし、実際にそれを利用して手軽にオーバークロック出来る様子などがデモされた。
●新興市場や成熟市場の2台目ニーズを狙ったNetbook市場を作っていく
レジス氏はASUSTeKが発売して世界中で話題になっているEee PCを例に挙げて、こうした低スペックながらインターネットを利用するには十分なノートPCを“Netbook”というカテゴリーに分類し、今後積極的に市場を作り出していきたいというIntelの意向を明らかにした。
「こうしたNetbookは新興市場向けと思われているが、実際には米国やヨーロッパなどの成熟市場でも受け入れられている。我々は成熟市場でもNetbookはインターネットさえ出来ればよいという2台目のPCとしての需要があると考えている」(レジス氏)と述べ、2011年には世界市場でNetbookが5,000万台に達するという見通しを明らかにして、市場としての大きな可能性があるとした。
レジス氏としては、そうしたNetbook向け市場としてAtomプロセッサを当てていく意向だ。Netbook向けのAtomはパッケージも22×22mmとUMPC/MID向けのAtomより大きく、おそらく開発コードネームDiamondvilleと呼ばれてきた製品であると推定される。
実際、OEMメーカー筋の情報によれば、IntelはDiamondvilleベースのAtomプロセッサをIntel 945GMベースのチップセットとセットでNetbook向けに提供していくと説明しており、第2四半期から提供が開始されるという。Netbook向けDiamondvilleは1.6GHzで駆動し、N270のプロセッサー・ナンバーで呼ばれることになる。おそらくASUSのEee PCに搭載されているULV-Dothanよりは高いパフォーマンスを持っている可能性が高く、これまでのEee PCにおけるASUSとIntelの協力体制などを考えると、未だ未発表の次世代Eee PCのプロセッサはこれになる可能性が高いのではないだろうか(今のところ確定情報はない)。
日本でもEee PCは一時期品切れになるなどの話題の製品となったが、今後Diamondvilleが広く販売されるようになれば、他社からも登場する可能性が出てくるわけで、Netbook市場は今後も要注目の市場になるのではないだろうか。
新しい市場としてNettopと呼ばれるインターネットに特化した端末の市場拡大を目指す | 成長市場では安価な1台目として、成長市場では2台目としての需要を狙う |
2011年には需要が5,000万台にも達するという見通しだという | Nettop向けにはDiamondvilleベースのAtomプロセッサが投入される |
●Centrino Atom/Atomベースの製品は2008年後半に25~30デザインが市場に登場
Intelの公式見解では第2四半期(筆者の予想は4月2日)にリリースを控えるUMPC/MID向けのCentrino Atomプロセッサー・テクノロジーとAtomプロセッサだが、すでにお伝えしたように新たにPanasonicが搭載したTOUGHBOOKのリリースを明らかにするなど、着実にOEMメーカーの獲得も進んでいるようだ。
すでにノートPCという市場があり、そこに魅力的な半導体を提供することで大成功を収めたCentrinoとは異なり、今回のCentrino AtomやAtomでは新たにマーケットを作っていかなければならないため、立ち上げが2003年のCentrinoの時よりも大変だと思うのだが、Intel ウルトラモビリティ事業部 MID&UMPC グローバルエコシステムプログラム ディレクターのパンカジャ・ケディア氏は「すでに多数のデザインを獲得している。第3四半期から第4四半期にかけて25~30ぐらいのデザインが登場するだろう」と述べ、多数のOEMメーカーにより、立ち上げが順調に進むだろうという見通しを示した。
なお、Centrino Atomとなる要件に関しても説明が行なわれた。PCベンダーがCentrino Atomのブランドを関するには以下のような条件を満たす必要があるという。
(1)、(2)、(4)に関しては解説は必要ないと思われるが、(3)、(5)に関しては説明が必要だろう。無線に関しては無線LAN、WiMAX、無線WANなどがこれに該当するが、どれを搭載するかはOEMメーカー次第になる。かつ、Centrinoとは異なり、絶対にIntelの無線LANを搭載しなければならないという縛りは特にない。だから、無線LANは搭載しないで、HSDPAのみを搭載するという場合であってもCentrino Atomブランドを冠することができるという。(5)のサイズに関しては、液晶のサイズが6型以下で、マシンの外枠が7型とこちらも大きさが決められており、これらの要件を満たすことでCentrino Atomを名乗ることができるようになる。
Centrino Atomのロードマップ | Centrino Atomの要件はAtomプロセッサ(Silverthorne)、Poulsboチップセット、何らかのワイヤレス、バッテリ、小型フォームファクタの5つ | 第3四半期から第4四半期にかけて25~30ものCentrino Atomマシンが登場する見通し |
さらにケディア氏は2009~10年に登場する予定のCentrino Atomの次世代プラットフォームになるMoorestown(ムーアズタウン、開発コードネーム)についてふれ、LINCROFT(リンクロフト、開発コードネーム)というSoC、LANGWELL(ラングウェル、開発コードネーム)というI/Oチップの2つから構成されており、それ以外に無線LANかWiMAX、Bluetooth、GPSが1モジュールになったEVANS PEAK(エバンスピーク)とMoorestown用に設計された専用のパワーマネージメント用ICなどから構成されていることが正式に明らかにされた。
ケディア氏によればLINCROFTは45nmプロセスルールで製造されており、Silverthorneのコアにメモリコントローラ、GPU、ビデオデコーダ/エンコーダなどが統合される形になるという。さらに、専用のパワーマネージメントチップを採用することで、平均消費電力を1/10にすることが可能になるという。さらに、チップの実装面積などが削減されることで、MoorestownのマザーボードはMenlowに比べて50%小さくすることができる。
ケディア氏は「Moorestownでは熱設計消費電力も、平均消費電力も下がり、マザーボードもさらに小型化ができるようになる。これにより、スマートフォンも明確にターゲットとなる」と述べ、Moorestown世代ではスマートフォンをターゲットにしていくという意向を明らかにした。
Moorestownのブロック図 | Moorestownではスマートフォンもターゲットになる。さりげなく写真がのっている“あの”スマートフォンにも入るのだろうか… |
●G35のDirect3D 10ドライバはG45の対応ドライバと同時にリリースする
Intel グラフィックス&チップセットマーケティングディレクター スティーブ・ピーターソン氏 |
Intel グラフィックス&チップセットマーケティングディレクター スティーブ・ピーターソン氏は、同社が第2四半期に投入を予定しているチップセットIntel 4シリーズチップセット(開発コードネームEaglelake)についての説明を行なった。
ピーターソン氏によればIntel 4シリーズチップセットには
ピーターソン氏は特にG45にハイライトを当て、G45のGPUであるIntel GMA X4500 HDの機能の1つであるH.264/VC-1/MPEG-2のハードウェアデコーダのデモを行なった。InterVideoと共同で開発したIntel GMA X4500 HDのハードウェアデコードに対応したWinDVDでBDのビデオを再生し、BDがスムーズに再生される様子がデモされた。
なお、ピーターソン氏は筆者の“G35でも未だにDirect3D 10対応ドライバはリリースされていないし、G45のDirect3D 10対応は発表に間に合うのか?”という質問に対して「G35のDirect3D 10対応ドライバはG45のそれと同時にリリースされる」とだけ述べ、その具体的なリリース時期については明言しなかった。
なお、レジス氏によれば、モバイル版のCantigaのDirect3D 10対応は、Centrino2のリリースには間に合わない見通しだという。「CantigaはDirect3D 10に対応するが、発表時ではない。数カ月の間にドライバのアップデートで対応する予定だ」(レジス氏)と、こちらの方は明確にリリースには間に合わないということを明らかにしている。従って、少なくともノートPCに冠してはOEMメーカーがVista Premiumロゴを取得するためには、外付けのGPUを採用するしかなさそうな状況だ。
Intelの“公式な”Intel 4シリーズチップセットのラインナップ | G45とG43を説明するスライド、GPU周りが大幅に強化されている |
□CeBITのホームページ(英文)
http://www.cebit.de/
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【3月7日】【笠原】2008年のIntelプラットフォームを支える“4”シリーズチップセット
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0307/ubiq211.htm
【3月6日】ASUS、8.9型液晶を搭載した「Eee PC」上位モデルを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0306/cebit05.htm
【3月5日】Intel、Montevinaのブランド名を「Centrino2」に決定
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0305/cebit01.htm
(2008年3月7日)
[Reported by 笠原一輝]