Blu-ray(BD)とHD DVD、次世代DVD規格が市場に登場してから早くも2年が経過しようとしている。ハリウッド映画が次世代DVDの画面の緻密さで攻勢をかける一方、和製アニメーションはボックス化で物欲を刺激するなど、じわじわとソフトが充実してきている現状がある。 そこで、そろそろ高まってきた気運とボーナスに乗じて、次世代DVDを視聴する環境を整えてみよう。 ざっくばらんに言うと、手間とコストを勘案すると、再生機を買った方がずっとお手軽に次世代DVDを視聴できる。BD派ならば「Playstaion 3」(39,980円)を、HD-DVD派ならば東芝製プレーヤー「XF2」(24,800円、1080p出力非対応)を用意し、あとはTVがあればいい。 しかし、PCでの視聴には“ならでは”のメリットがある。例えば、BD/HD DVD両対応のコンボドライブが使えることや、液晶ディスプレイが流用可能なこと、慣れ親しんだPC用インターフェイス(リモコンが嫌な人に)が利用可能なこと、そしてPCラックのスペースで完結した環境を構築できることなどだ。 PCでの最低限の再生には、対応ドライブと付属の再生ソフトがあればよい。D-Sub15ピンによるアナログ出力によって次世代DVDを視聴可能だからだ。デジタルの出力には、HDCP対応のDVI-DかHDMIに対応したディスプレイが必要になる。 また、PCでの次世代DVD再生にはそれなりのスペックが必要だが、ビデオカードに搭載されている動画再生支援機能により、2万円程度のミッドレンジのCPUでも次世代DVDが再生が可能。場合によってはCeleronなどのエントリーレベルのCPUでも視聴可能になる 本稿では、同機能を軸に、BDとHD DVDを視聴可能にするデバイスを紹介する。必要なデバイスは下記の通り。 ・BD/HD DVD両対応ドライブ(45,000円~) ディスプレイを流用できれば、トータル費用としては、ドライブとビデオカードを合わせて5万円からといったところだ。以下より、必要なパーツを紹介していこう。 ●BD/HD DVD両対応はPCだけのメリット まず、次世代DVDを読み込むためのドライブである。日立LG電子の「GGC-H20N」はBDとHD-DVDの読み込みに対応し、その上位モデル「GGW-H20N」は加えてBD-R/REの書き込みに対応するコンボドライブだ。これは、家電製品では未だに実現されていない、PCならではで、最大のメリットと言っていいだろう。 これらのドライブは、日立LG自身が販売するほか、バッファローやアイ・オーといった周辺機器メーカーもOEM先として展開している。主な機能はほぼ共通で、ベゼルのデザインとバンドルソフトなどが異なる。
いずれも内蔵タイプを挙げたが、外付けタイプもラインナップしている。このほか、HD DVD専用であれば、バッファロー「HDV-ROM2.4FB」が2万円で、BDではパイオニア「BDC-S02J」シリーズが実売4万円で購入できる。
□関連記事 ●ビデオカードの再生支援機能を使う 最新のビデオカードでは、前述の動画再生支援機能を利用することで、CPUへの負荷を大幅に下げることが出来る。 同機能を利用することで、さほど高スペックなマシンでなくとも、例えば非デュアルコアのCPUでも、次世代DVDをなめらかに再生可能になる。また、ハイエンドのユーザーにとっても、CPUの負荷を下げることで、発熱やファンの騒音を抑えるといったメリットがある。というわけで、ビデオカードには、次世代DVDのデコードをサポートする機能を搭載したビデオカードを利用する。 □関連記事 具体的には、Radeon HD 2400シリーズと、GeForce 8400/8500シリーズなどのローエンドで十分だ。これはRadeonもGeForceも、ハイエンドとローエンドで再生支援性能はほぼ同じだからだ。また、ローエンドではファンレス仕様のモデルがあるので、騒音の低さも映画視聴にはうれしい。 では、RadeonとGeForceのどちらを選ぶべきかというと、Radeonを推す。これは、Radeonの動画再生支援機能「UVD」が、GeForceの「Video Processor 2」(以下VP2)よりも負荷軽減効果が高いためだ。UVDは、次世代DVDのエンコードフォーマットであるMPEG-2とAVC、VC-1のすべてに対応するが、VP2はVC-1に非対応というディスアドバンテージがある。 また、Radeon HDシリーズは、いずれもHDMIによる出力が可能なのもポイント(アダプタ利用を含む)。HDMI出力では映像だけではなく音声も出力可能なため、HDMI付き液晶ディスプレイがスピーカーを搭載する場合は有効に活用できる。 具体的な製品としては、GIGABYTEのRadeon HD 2400 Proカード「GV-RX24P256H」や、エルザのGeForce 8400 GSカード「GLADIAC 584 GS LP 256MB」といったものがある。
□関連記事 また、再生支援機能だけではなくゲームなどで3D機能も重視する場合には、ハイエンド向け製品を選択したいが、大容量の電源が必要なことや発熱の高さが障害になるだろう。なお、ゲームでの利用が主目的の場合には、3D関係のパフォーマンスから、GeForce 8800 GTがおすすめである。また、前述の理由から、Radeon系ではRadeon HD 3870/3850といった選択肢もある。 注意点として、Radeon HD 2900 XTはUVDを非搭載。また、GeForce 8800 GTX/GTSはVP2を非搭載なため、最新の動画再生支援機能は利用できない。
□関連記事 ●再生支援を有効にする再生ソフトが必要 次世代DVDを再生するソフトウェアは、ドライブに付属するもので十分機能する。しかし、ビデオカードの動画再生支援機能を利用するためには、動画再生支援機能に含まれるCPUの負荷を下げる機能に対応した再生ソフトが必要だ。 再生ソフトは、「PowerDVD Ultra」と「WinDVD 8 Platinum」が定番である。しかし、バンドル版やダウンロード版など、パッケージの違いや、パッチの有無によってサポートする機能が異なっているので注意してほしい。 バンドルされているソフトの内、バッファローの製品に付属する「PowerDVD 7.3 Ultra」は、CPUの負荷を軽減する動画再生支援機能に対応しているので、追加購入の必要はない。各ドライブのバンドルソフトを考慮して、追加購入してほしい。
□関連記事 ●次世代DVDはWUXGAで見たい 最後になるが、再生した動画を表示する液晶ディスプレイが必要になるだろう。基本的にはHDCP対応DVI-Dか、HDMIをインターフェイスとして備えたディスプレイで良い。アナログ出力なら、D-Sub15ピンを備えたPC用ディスプレイでもいい。 しかし、次世代DVDの解像度はいわゆるフルHDの1,920×1,080ドットである。ゆえに、そのポテンシャルを再現できるディスプレイを用意したい。最近のトレンドと合わせると、24型ワイドがエンスー(熱心)なユーザーの間では定番となっている。一例として、下記のようなモデルがある。
WUXGA対応の液晶ディスプレイについては、「2007年 年末お買物企画WUXGAディスプレイカタログ」で紹介しているので参照してほしい。 ●まとめ
以上みてきたように、BD/HD DVDドライブと動画再生支援機能付きビデオカードを利用し、対応ソフトウェアを用意することで、PCならではの次世代DVD再生環境を構築できる。そして、出力先にはフルHD対応のディスプレイを用意することで、よりリッチな体験ができるだろう。 もし、さらなる環境構築を目指すというのであれば、サウンドカードを利用したアナログ出力によるサラウンドが可能だ。そのほか、BDAV/BDMV/AVCHD対応のオーサリングソフトとBD書き込み対応ドライブを利用することで、HDカムで撮影したHD動画の編集やDiscの作成も可能。各自のビジョンに応じて次世代DVD環境を拡張してほしい。 □関連記事 (2007年12月10日) [Reported by matuyama@impress.co.jp]
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